417: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:06:32 ID:???
窓から空を見上げると、灰白色と鼠色が混じった陰鬱な雲が広がっている。
重苦しい空。
今にも雨が降りそうな気配を感じた。

今日は、何も予定のない日。
バカシンジはどこかに遊びに行っているようだし、私も何も予定がない。
ミサトはネルフで残務処理があるからとのことで家にいないから、私一人。

やることも何もなくて、ただぼけっと空を見上げていた。

陰鬱な気分。何か釈然としない気分。
何かが足りない気分。

「バカシンジ」

意味もなく、理由もなく呟いてみた。
すると、少しだけ気が晴れた。
なぜだろう。アイツの名前を言うだけで、少し楽になる。
そして、少し苦しくなる。
不思議。

ピリリリリ、と、携帯電話が鳴りだした。
私は「誰よ・・・・もう」と愚痴りながら、のそのそと携帯電話を取る。

・・・・・って、優等生!?

な、なぜ。あの優等生がなぜ私の携帯電話に連絡を?
何か問題が起きたとでも言うの!?

418: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:08:07 ID:???
「・・・・あ、ええと。こほん。めっずらしいじゃなーい!何よ突然」
「起きてる?」
「・・・・夕方よ。何で寝てないといけないのよ」
「猫はよく寝る」
「・・・・どういう意味よ」
「あなたは猫っぽい。以前からそう思っていた」
「・・・・喧嘩を売るためにわざわざ電話をしてきたの?いいわよ買うわよいくらよ」
「違う。私は喧嘩を売るために電話をしたのではないわ」

抑揚のない喋り方は癇に障る。
最近、何だか昔以上にこの優等生に対してムカつくことが多い。

「・・・・じゃぁ、何よ。早く用件をいいなさいよ」

電話の先で、優等生は少しため息をついた。
そしてゆっくりと話し始める。


419: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:11:10 ID:???
「今日、碇くんはそこにはいない」
「出かけているわよ。何よバカシンジに用事でもあるの?直接電話しなさいよ」
「もう、した」
「・・・・・・・・・・どういう意味?」
「碇くんに電話をして、これから会うことになっている」
「・・・・・・」
「碇くんに会うことになっている」
「・・・・・・・・二度言わなくていいわよ。何、それがどうしたのよ」
「二人だけで碇くんと会うことになっている」
「だから、それがどうしたっていうのよ!」
「まだわからない?」

何を言っているんだろう、この女は。
わかるわけないじゃない。
シンジと会うことになっているって、どういう意味よ。
日本語喋りなさいよ。
変なヤツとは思っていたけど、ここまで変だったとは。

「私、決めたの」
「・・・・・何を」
「碇くんに、好きだと言うことを決めた」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。

「言葉を換えれば、告白をするということ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ええ!?

420: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:12:49 ID:???
「告白【名詞】。心の中に秘めたる思いを告げること。その思いを全て伝えること。またはその言葉」
「説明しないでいいわよ!」
「そして、私の心の中に秘めたる思いというのは、好きであるということ」
「な・・・・・」
「そしてその対象者は、最初に言ったとおり、碇くん」
「・・・・あ・・・・」

な、な、何を言っているの、この女。マジでわけわからない。
え? どういう意味?
告白するって、アンタ、シンジのこと好きだったの?
そんな素振りなかったじゃない。
どういうことよ!

「今日、告白する」
「・・・・・」
「そのために呼び出したわ。これから会って伝えるつもり。私の思いを」
「あ・・・・・ええと」
「あと1時間が過ぎれば、私は告白し、そして碇くんと恋人同士になるわ」

なんと!?

421: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:15:12 ID:???

「ちょ、ちょ!」
「それを伝えたかった」
「ちょ!ちょっと待てって!な、なんでバカシンジに告白ですぐに恋人同士なのよ!」
「私の思いは伝わるはずよ。そして、碇くんは私の思いに応えてくれる」
「・・・・・・・・・・・そ、そんなわけないでしょ。なに言っているのよバッカじゃない!?」
「なぜそんなわけがない、といえるの?」

え。

「・・・・・・ええと、バカシンジがそういうアンタの気持ちに、ええと、応えるわけないじゃない」
「理由になっていないわ」
「と、とにかくやめなさいよ! アンタが傷つくだけよ。あのボンクラはそんな恋愛とかそういうのダメっぽいし!」
「なぜフられること前提なの。碇くんには恋人はいない。それとも、誰かと付き合っているとでもいうの?」
「・・・・・し、知らないわよ。誰とも付き合っていないんじゃない?」
「もちろん、あなたとも付き合っていない」

あ、あったりまえでしょ!?
バカよこの女。
頭おかしいんじゃない?

「ば、ば、バッカじゃない!? なんでアタシがあんなバカと付き合わないといけないのよ!?」
「それについては調査済み。あなたと碇くんは何もない。また、碇くんは他の女性とも付き合っていないことは確定している」
「あ。あ。あったりまえじゃない!何で私があんなのと・・・・・」
「碇くんは恋人がいない。だから、私が恋人になる」
「・・・・・・・・・・・だから、どうしてそういえるのよ!」
「なぜあなたが無理というのか、そっちの理由のほうが聞きたい」
「・・・・・・・・・・・・」
「とにかく、これから碇くんと会うから。告白するから。そして恋人同士になるから」

422: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:16:48 ID:???
「・・・・・・・・・・・ちょっと待ちなさいよ。どこで会うのよ」
「その質問に答える義務は何一つないわ」
「そりゃそうだろうけども! ええと、別に邪魔なんかしないから場所と時間を教えなさいよ」
「あなたが邪魔をする理由はない」
「ないわよ!」
「でも、あなたに教える理由もないわ。じゃあ、電話を切るわね」
「・・・・・・・ま、ま、ま、ま、待ちなさいって言ってるでしょ!何でどうして私にこんな電話をかけてきたのよ!」
「なんでかしら」
「・・・・・・私が聞いているのよ」
「あなたに言いたかった。ただそれだけな気がする。じゃあ、切るわね」

携帯電話から、ぷーぷーぷーという音が聞こえた。
私は唖然として、立ち尽くした。

しばらくして、身体中に強い感情が湧き出てきた。この感情の名前は、怒りというものだろう。
意味も分からず、私は強い怒りを感じた。その裏には、さらに訳の分からない感情が渦巻いている。

「やっぱり喧嘩売るために電話したんじゃないの!」

私は携帯電話を床に投げつけた。

423: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:17:58 ID:???

しばらく、私はイライラとしながら部屋をうろついた。
何度かバカシンジの携帯電話に連絡をしたが、バカはやはりバカだ。携帯電話の電源を切っている。
どうするつもりよ、もしバカシンジか優等生が、待ち合わせの時間に遅れることがあったら連絡どうするのよ。
女の子と会うのに携帯の電源切る、普通?
というか、優等生に呼び出されて、何のこのこと会いに行くのよ。

私はイライラしながら、再度、バカシンジに連絡を試みる。
ダメ。
あのやろう・・・・・。

なぜイライラするのかわからないけど、とにかくバカと能面が会う場所を調べないと。

ミサトに聞くか。

424: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:19:14 ID:???
「ねえ、ミサト。ちょっと教えて欲しいんだけど」
「あらアスカ。電話してくるなんて珍しい。急ぎ?」
「急ぎ。今、あのバカはどこにいるの?」
「バカ?」
「バカシンジ」
「あのねぇ、アスカ。シンちゃんのことバカバカバカというのやめなさいよ。嫌われるわよ」
「何言っているのよ! 嫌われてどうだっていうのよ!あんなヤツにどう思われても関係ないわよ!」
「もう。ほんとに素直じゃないわねぇ」
「とにかく、バカシンジの今いる場所を教えて。あずすーんあずぽっしぶるよ」
「アスカ。ぷらいべーとって言葉、知ってる?」
「バカシンジにプライバシーって言葉もプライベートって言葉も存在しないわ」
「・・・・・・」
「どうせ私たちのことはいつも監視しているんでしょ?場所くらいわかっているんでしょうから教えて」
「ええと。そう簡単には教えられないわよ」
「バカシンジが駄目なら、優等生の居場所でもいいわ。とにかく教えて」
「ん? シンちゃんじゃないくて、レイなの?」
「いいから。どっちでもいいから教えてってば!」

ミサトが小さなため息をついた。
そして、なにやら機械を操作している音が聞こえる。

よし。これであのバカ二人の居場所がわかる。

425: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:20:33 ID:???
しばらくして、何やら楽しそうなミサトの声が電話口から聞こえた。

「・・・・・・・・・・理由」
「え?」
「理由を聞かせてくれたら、教えてもいいかなぁ~」
「り、理由?」
「なんで、シンちゃん若しくはレイなのかなぁ~。シンちゃんだけじゃなくてレイもなのかなぁ~」

ミサトの楽しげな声が、妙に気に障った。
何か、とても嫌な予感がする。

「い、いや。別に。ファーストなんて関係ないわ。ぜんっぜん関係ないわよ。いいからシンジの」
「あれー。おやー。んー? なんでシンちゃんとレイは、同じ方向に向かって進んでいるのかなぁ~」
「!」

なんだと!

「このままだと、二人は同じ場所で遭遇しそうねぇ~。あらら、なにかしら。二人で待ち合わせ?」
「!!!!!」
「ん~? あれ~? なに、二人はデート? あれ。あれれ。デートなのかしら~」
「し、知らないわよ! なっ、ば、バカじゃないの? 何よデートなんて」
「あれ~? なんでアスカは二人の居場所を知りたいのかなぁ~?」
「・・・・・」
「同じ場所に向かっている二人がどこに行くのか知りたい理由は何~?」

426: 灰白色の空 2007/09/05(水) 21:21:45 ID:???
語尾をのばすミサトの口調がとってもムカつく。

「ええと、その。あ・・・・・そ、そう。私、シンジに用があるのよ。急ぎで伝えることがあるから、その、直接」
「へーへーへー。用があるんだ~。電話でいいんじゃないの~?駄目なの~?」
「あのバカ。ケータイの電源切っているのよ」
「急ぎなの~?」
「い、い、急ぎって言っているじゃない!」
「だったら~♪ 私がその用事聞くわよん~。シンちゃんに伝えるから。ネルフの力があればすぐに伝えることできるわよん」
「・・・・・・」
「で、用件って何~」

こ、このクソ女・・・・・。

「あ、え、う、い・・・・。ええと、プライベートな用事よ。ネルフには知られたくないわ」
「シンちゃんにはプライバシーもプライベートはないってさっき聞いたわよん~」
「・・・・・」
「で~、何~?用件って何~?場所を知りたい理由って何~?」

我慢の限界。

「頭キタ。電話切る」
「あれ~?いいの~? 二人の場所、わからなくなっちゃうわよーん?」
「う」

427: 灰白色の空 2007/09/06(木) 09:22:48 ID:???
そうくるか。確かに、ミサト以外に無理やり二人の場所を突き止めることができる人はいなさそうだ。
ここは我慢しなければならないということ?
でも、どう答えればいいのよ。私だって理由を知りたいわよ。
なんで私、こんなに二人の居場所を突き止めようとしているんだろう。

「まぁ。これ以上イジメるのもかわいそうかなぁ。でもね。本当に簡単に教えるわけにはいかないのよ。規則だし」
「・・・・・」
「規則を破るとね。大人はね。責任をとらないといけないのよ。だからそう簡単には規則を破ることはできないの」
「・・・・・・・・」
「規則を破った罰は、とても辛いのよん」
「・・・・・・・・・・・何が望みよ」
「ん~ どーしよっかなー」
「いいなさいよ。何をすりゃいいのよ」
「ん? あれ。キャッチが入ったみたい。ちょっと保留にするわよ」
「・・・・・」

電話口から、何だか古い歌謡曲のような音楽が聞こえ始める。
イライラ。
イライラ。
なんかわからないけどとにかくイライラ。
ああ、こんなことしていたら、もうあのバカシンジと優等生が会っちゃうじゃない!
会ったからどうだってわけじゃないけど!
何を長電話しているのよ、本気でつかえないミサトね!

しばらくして、さらに嬉しそうな楽しそうな気持ち悪いミサトの声が聞こえた。

428: 灰白色の空 2007/09/06(木) 09:25:00 ID:???
「あーあーあーごめんごめん。いや。うふふ。なるほどね。よくやるわ、あのコも」
「・・・・どういうこと? 誰、電話?」
「うふふん内緒。しかし単純なのね、アスカって」
「どういう意味よ!」
「こっとっばどおりー。まぁ、いいわ。タイミングもとても良かったし。シンちゃんの場所、教えてア・ゲ・ル」
「なんかとても殺したいわ」
「場所、携帯にメールで教えるわね。よーく考えて行きなさいよん」
「・・・・・? 意味わからない」
「とにかく。感謝しなさい。色々と。さてと一旦切るわよ。メールで場所送信するから」
「・・・・・・・なんかイヤな感じがするけど、とりあえずお礼はいうわ」
「いいのいいの。これから私も忙しくなるし」
「?」
「カメラとか色々と設置しないといけないし・・・・あ、こっちの話ね。うふふふふふふふ」
「キモい」
「んじゃ、頑張ってね~ん」


ミサトとの意味不明の電話は終わった。
たぶん、私は永遠にミサトの頭の中の構造を理解することはできないだろう。
あの女はおそらく使徒よりも意味不明な存在なのだ。
深く考えるのはやめよう。

429: 灰白色の空 2007/09/06(木) 09:28:45 ID:???
ミサトから送られた地図をみると、なんだ、私がいるマンションのすぐそばの公園にシンジはいるようだ。
シンジはその公園から動かず、一人で立っているとのこと。
ミサトの情報が正しければ、二人の待ち合わせ場所は間違いなくその公園。
優等生はその公園に向かって現在進行中だそうだ。

私は慌てて着替えて、マンションから外に出る。
空を見上げると、まだ陰鬱な灰白色の空が広がっている。ああ、エヴァで雲を蹴散らしたい。

私は走った。
理由も分からないけど、とにかく二人が会う前に、その公園にたどり着かなければならないと思った。
走った。
走った。
息が切れそうだけど、それ以上に心が張り裂けそうだったから、とにかく走った。

公園まで15分くらい。私はずっと走り続けた。
泣きそうだった。
私は泣かない。今までどんな辛いことがあっても泣かないって決めた。
でも、どうしても我慢できないくらい泣きたくなっていた。
理由なんかわからない。どうしてこんな気持ちなのか分からない。
喪失感が漂う。
失ってしまう。私から何かがなくなってしまう。怖い、とても怖い。

イヤだ。こんなわけの分からない状況で、涙なんて流したくない。
涙を流す状況になるのがイヤだ。
イヤだ、イヤだ、イヤだ。

430: 灰白色の空 2007/09/06(木) 09:32:09 ID:???
公園には、シンジが一人でぽつんと立っていた。
誰もいない。公園にはシンジ一人。まだ、優等生はついていないようだった。
私が走りながら公園に入ってきたのをみて、バカシンジはびっくりしているようだった。

「・・・・・アスカ。いくら時間に遅れたからってそんなに走らなくても」

なんだかシンジが笑みを浮かべている。
この笑顔の意味は分かる。不安を隠そうとして愛想笑いを振りまいているのだ。
さらにムカついてきた。

「・・・・・・・・・・なに、いっているのよ・・・・・まだ、ファースト、来てないのね」
「ん? 綾波? なんで? 綾波も来るの?」
「なんでって・・・・・・・・・・・・・何、いってるのよ。あの女から電話あったんでしょ」
「うん。あったよ」

シンジはさらに愛想笑いを振りまく。
この愛想笑いを、今後ずっと、あの能面女に振りまき続けるってことか。

・・・・・・・・・・恋人になるから。

いや。

なんか、絶対に、いや。

暗い。本当に暗い、汚い、そんな気持ちが渦巻く。
どろどろする。身体中を取り巻いていく。イヤだイヤだイヤだ。

431: 灰白色の空 2007/09/06(木) 09:40:43 ID:???
「あんた。どうするのよ。・・・・・・・・・・付き合うの?」
「・・・・・・・・・?」
「やめなさいよ。絶対やめたほうがいいわよ。あんなのと付き合っても絶対に幸せになんかならないわよ」

私は何をいっているんだろう。
気持ち悪い。私自身がおかしい。なんでこんな気分の悪いこと喋っているんだろう。
なんで、優等生の悪口を言おうとしているんだろう。
おかしい。こんなこと、私が言うわけがない。でも、言葉が止まらない。

「ああそうか。まだ、アンタ・・・・告白されたわけじゃないもんね。知らないのよね。でも、忠告するわ」
「アスカ?」
「絶対にあんなのと付き合ったら後悔するから。先にいっとくわ。絶対に、後悔する」

なに私。
私ってなに?
なんでこんなイヤなこと喋っているの。最低な人間。おかしいわよ。
私、何でこんな気持ちを抱いているの?
わかっているのに止められない。どうして、どうして・・・・・・。

「アスカ・・・・意味わからないけど」
「そうよね。わからないわよね。でも、すぐにわかるわ」
「?」
「どうせ、告白されたらニコニコして尻尾振るわ。アンタ。でも、絶対に後悔することになるから」
「・・・・・告白? え、僕、誰かから告白されるの?」

あ、キレそう。

432: 灰白色の空 2007/09/06(木) 09:49:00 ID:???
「あ。だからアスカ、ここに呼び出したんだ・・・・・・なんだ、大事な話って聞いていたけど・・・・そうなんだ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「アスカの友達? ええ、でも、困るな・・・・どうしよう」

友達なわけがない。あんなの、友達じゃない。
そう思う。思わないと辛すぎる。

「アスカ・・・・・その、アスカは何も思わないの?・・・・・僕が、その、誰かに告白されるのが」

ナニモオモワナイノ。

シンジの言葉が私を貫いた。

・・・・・・・・・・・わかった。
わかってしまった。
私の今の気持ち。
私のこの邪な気持ち。そして純粋な気持ち。
・・・・・・・・・・嫉妬。独占欲。
それらの気持ちの根底にあるのは・・・・・・・・・・私の、シンジへの・・・・・・。

駄目だ・・・・・もう、駄目・・・・・。

「な、な、な! 何でアスカ泣くの!? ど、どうしたの」
「・・・・・・うるさい」
「ちょっとどうしたの? 何か悪いこといった?」
「うるさいっていってるでしょ・・・・・」

433: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:00:05 ID:???
もうどうしようもない。この場にうずくまりたい。逃げ出したい。

「・・・・・・アスカ、本当にどうしたんだよ。いきなり呼びつけて、いきなり誰かが告白とかいって、それで泣くなんて」

・・・・・・・・・・え?

「バカシンジ・・・・・・今、なんていった?」
「え?」
「そういえば・・・・・・さっきもそんなこと言っていたわね。私が呼びつけた?」
「そうじゃないか。わざわざ綾波に伝言を頼んで、ここで待ってろって」

えええ?

「なにいってるのよ。あんた、優等生に呼び出されたんじゃないの?」
「綾波から連絡はあったけど。なんかアスカが大事な話があるとかで、この公園にて待ってろ、って」
「え?え?え?」
「あれ?違うの?とてもとても大事な話だから、絶対に行くように、て言われたよ?」
「・・・・・・・・・?」
「綾波からは話の邪魔にならないよう携帯の電源を切っておくように、ともいわれた」
「なにそれ」
「いや、なにそれ、って聞かれても・・・・・。アスカが用事があったんじゃないの?」
「いや、私は別に・・・・・・・」
「大事な話って聞いたらから・・・・・まさか、もしかしたらって・・・・・・でも、そんなはずはないとか・・・・・」
「・・・・・?」

突然、私の携帯電話が鳴り響く。
見ると、電話をかけてきたのは、あの優等生。

434: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:17:16 ID:???
「・・・・・・・お疲れ様」

私が電話に慌てて出ると、いつもとは少し違う感じの優等生の声が聞こえた。

「お、お疲れってなによ!」
「そろそろちょうどいい時間かと思って」
「意味分からないわよ! あんた、今どこにいんのよ!」
「部屋に戻るところ」
「部屋って・・・・・・・・・アンタ、まさか自宅に戻っているの!? どういうことよ!」
「気持ち、わかった?」

・・・・・・・・・え?

「・・・・・アンタ、なに言ってるの」
「あなたの『秘めたる思い』がなにか、わかった?」
「・・・・・・・・・」
「あなたがいつも抱いていた。でも認められなかった思いがわかった?」

私の想い。
もう、間違いなく理解できている想い。
シンジに対する想い。私の大事な想い。それが、わかったのか、と聞かれている。

わかっている・・・・そう、もうわかった。
私の想いの内容。その意味。求めるもの。全て、わかった・・・・・・・・。

435: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:19:07 ID:???
「・・・・・・・」
「わかったのなら、やることは一つ。告白という言葉の意味、もう伝えた」
「・・・・・・・・」
「今のあなたなら言える。たぶん、言える。いいえ。言わなければダメ」
「・・・・・・・・」
「ここまでお膳立てした。これを台無しにするなら、私もさすがに怒る」

お、お膳立てって・・・・・。
アンタ、まさか、今までのこと、全て・・・・・。

「じれったい、という気持ちを毎日感じていた。だから、強攻策にださせていただいた」
「・・・・・・あ。アンタ・・・・・」
「さっさと碇くんに正直に思っていること全部話しなさい。それはあなたの大事な仕事」
「・・・・・・・・ちょ、ちょっとアンタ」
「碇くんを見て」

いわれるまま、シンジに視線を向ける。
シンジは、何があったのかさっぱりわからないような顔をしていたけど、私と視線があうとまた愛想笑いを浮かべた。

・・・・・・・・違う。
これは、愛想笑いじゃない。
いつもみせていたのは、愛想笑いじゃない。

436: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:20:37 ID:???
「碇くんの気持ちも、あなたの気持ちも、同じもの。でも、二人とも臆病すぎる」
「・・・・・・・・」
「あなたは怖がって認めなかった。でも、もうその気持ちを認めたはず。だから、今がチャンスよ」
「・・・・・・・チャンス、って・・・・・・・」
「行け」
「・・・・・・・・・」

見たこともないけど、なんだか、この電話の向こうの優等生が笑顔を浮かべているような気がした。

想像したその笑顔は、けっして、ムカつきもしなかった。
むしろ、とても綺麗な笑顔のような気がした。

優等生からの電話は、切れていた。

私は、もう一度、シンジを見つめる。
シンジは少し照れたように視線を外すけど、また私のことを見つめなおす。

「ええと・・・・・今の電話、綾波? で、あの。結局、どういうことなの?」
「・・・・・・・・」

シンジの声音が私の身体を優しく撫でる。

437: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:27:40 ID:???
「なんか、アスカも泣き止んでいるし・・・・。あの、できれば説明をしてくれると嬉しいんだけど」

シンジの笑顔が、私の心を包んでいく。

「ええと、アスカ?」

自然に笑みが浮かぶ。ああ、なんだ、とっても簡単に、とっても幸せな気持ちになる方法があったんだ。

ミサトの声が聞こえる。
素直になったほうが、って。

そうね。ムカつくけど認めるわ。素直になったほうが、とても楽なのね。辛くないのね。

「アスカ?」
「・・・・・・・・・バカシンジ」
「はい!?」
「ちゃんと聞きなさいよ」
「え?」

438: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:30:00 ID:???
「いい。一言一句、聞き漏らさないで聞きなさいよ。一言でも聞き逃したら、あんた、殺すから」
「え、え?」
「それでちゃんと答えるのよ。考え込んだりためらったりしたら本気で殴るからね」
「ど、どういうこと?」
「大事な話、って聞いているんでしょ!? 黙って聞きなさい!」
「は、はい!」


「いい? 私はね」


空はいつの間にか、晴れようとしていた。
雲の切れ端から差し込む光は、灰白色だった雲を光り輝かせていた。
私の心のように、それはとても晴れやかで。
私の気持ちのように、それはとても穏やかで。

私の想いのように、それはとても・・・・・・・・・・・・。



439: 灰白色の空 2007/09/06(木) 10:33:09 ID:???

なお、後にこの公園の出来事が全てミサトという最低な女の手によって録画されていたことを知り。
その映像がネルフ内部のネットに全て流出されていたことを知り。
司令を含む全ての職員が生暖かい目で見ていた事実を知り。

その映像に出演していた一人(女)が、汎用人型決戦兵器人造人間を用いネルフ本部で大暴れしたことは、

また別の話である。

   終




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