489: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:09:23 ID:???
アラエル戦

光がアタシを包む…
使徒がアタシの心を覗いている…
アタシの過去がグルグルとアタシを締め付ける
怖いから目を閉じる…
ダメダメダメダメ
怖いから耳を塞ぐ…
ダメダメダメダメ
宙吊りのママがアタシを見ている…
怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ
こんなのママじゃないよ…
アタシの大好きなママじゃないよ…
『アスカちゃん…ママよ…』
チガウチガウ、ママジャナイ

加持さん助けて…
ダメダメダメダメ
加持さんはアタシを助けてくれない…
チガウチガウチガウチガウ
アタシは加持さんに助けてほしいんじゃない…
ダレダレダレダレ?
誰?に?助?け?て?ほ?し?い?の?

490: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:10:48 ID:???
1人ぼっちで溶岩の中に居たアタシ…
怖いよ怖いよ怖いよ怖いよ
アタシを助けてくれた人…
ダレダレダレダレ?
シンジだ…
シンジシンジシンジシンジ
シンジ助けて…

『シンジ君じゃなきゃダメ?』
シンジじゃなきゃダメなの
『アスカちゃんはシンジ君が好きなの?』
好き好き好きっ
『よかったわね…』
うんっ
『じゃあ頑張って生きなきゃね』

あ…れ…

「ママ…ここに居たのね…」

弐号機シンクロ率100突破
強力なATフィールドを展開
使徒殲滅

491: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:14:50 ID:???
弐号機を降りたアタシを待っていたのはアタシの待ち望んだモノでは無かった
「…ミサト」
「アスカ使徒殲滅おめでとう!シンクロ率すごい数値よ!」
2時間前のアタシなら飛び跳ねて喜んだであろうその言葉も今のアタシにとってはどうでもいい事…
「シンジは?」
「へ?シンジくんならケージに居るけど」
行かなきゃ…
あれ…?足…動か…?
「ちょ、ちょっとアスカ!?」
そして『グラグラドスン』という音を残しアタシの視界はそのまま暗転した



明転…。病室
目覚めたアタシの寝起きの目にいきなり蛍光灯の光が射す
眩しい…
「ぅんっ…」
しかしアタシの不快感は一気に吹き飛ばされてしまう
蛍光灯の光に負け、右に顔を背けたアタシの目に飛び込んできたのは…。最愛の人の寝顔
「シンジ…」
そして右手に感じる温もりがアタシを完全に溶かす。アタシはたまらず右手を包むシンジの手を引き込み

「あぁシンジ…シンジぃ…」
目を細め愛おしげに頬ずりする

「シンジごめんね…ごめんね…」
散々辛くあたった今までの傷を癒やすように手の甲に2回、3回と口付ける

「んっ、ちゅぷっ…ひんりぃ…」
そしてアタシの渇きを癒やすためシンジの細い指を貪るようにしゃぶった

492: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:17:11 ID:???
「ん・・・。あ!目が覚めたんだねアスカ!!」
「とっくにね。寝ぼすけなアンタとは違うのよ」
「よかったぁ…。あっ、待ってて!リツコさん呼んでくるよ!」
「えっ!?ちょっ!待ちなさいよ!!
・・・って行っちゃった…。もうっ!」
シンジにかまってもらえなかったアタシは、病室ならではの固いベッドにふて寝を決め込んだ
あ~あ。もっとお喋りしたかったなぁ…。・・・でもアタシが寝てる間は手を握ってくれたのに、元気とわかった瞬間ソッコー出て行くとは…
「・・・病気のままだったら、ず~っと…アタシにかまってくれるのかな?」
そんな名案をアタシの天才頭脳がはじき出した次の瞬間、廊下からバタバタとやかましい足音が響きわたる
ガラガラっ!
「アスカ大丈夫!?」
「大丈夫よ」
「よかったぁ…。急に倒れたからビックリしたわよ?」
病室に入って来たミサトはゼイゼイ息をしながら、ベッドに寄って来た
と、そんな事より…
「ねぇシンジは?」
「はぁ…。シンジくんは明日学校があるから帰ったわよ…。ねぇアスカどうしたの?口を開けば『シンジシンジ』って」
「ふんっ!シンジはアタシの恋人なんだから気にするのは当たり前でしょ!」
「はぁっ!?」

493: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:19:04 ID:???
303号室は異様な雰囲気に包まれていた
カルテを睨み付けながらブツブツ独り言を呟くリツコ…
アタシとリツコを不安な顔で交互に見やるミサト…
リツコがたまたま持って来ていたシンジの身体検査結果の用紙を凝視しているアタシ…
えっとB.W.Hは…。うんっ予想通り細身ね!えへへっ可愛いなぁ…
「ねぇリツコぉ、アスカ絶対おかしいわよ…。使徒の精神汚染にやられたのよ絶対」
「いいえ。検査結果は全て正常よ」
はぁ~いつかあの細身の身体を弄くり倒したいわ。シンジったらどんな声出すのかしら…
「アレが正常って言えるの!?」
「言えないわね…。ねぇアスカ?」
「カワユス♪シンジ♪カワユス♪」
「アスカっ!!!」
妄想のアタシがシンジのブリーフの分け目に手を滑り込ませた瞬間、リツコが現実世界にアタシを引き釣り込んだ
「ふぇっ!?なに!?」
「弐号機の中で何があったか、説明してくれる?」
あぁ、そんな事か
「んっとねぇ…
使徒がアタシの精神に入り込んできた時に、アタシもアタシの心の奥に入り込んじゃったみたいなのよねぇ
そして、そこでアタシが見たのは…。
シンジシンジシンジ♪シンジだらけの世界だったの!!」
きゃっ♪言っちゃった恥ずかしいっ♪

494: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:20:57 ID:???
「つまり、アスカが自分でも気付かないほど心の奥にしまい込んでいたシンジくんへの気持ちが、使徒の精神攻撃によって掘り起こされたっていう事?」
「まぁそういう事ね」
ミサトの問いにおざなりに答えるアタシは、身体検査結果の用紙にプリントしてあるシンジの肢体を写し出した写真達に夢中であった
むむぅ…これは鼻血モノね…。あっ、こんな所にホクロ発見!う~んセクスぃ~♪
「はぁ…アホらしい…。帰る」
「おっと、待ちなさいよ」
呆れ顔で帰ろうとしたミサトとリツコを引き止める
「ん?なに?」
「あのさ、アタシ今日からこの病室に住むからね」
「病室に?1人暮らしする気?」
「違うわよ~。これからはシンジと2人で住むの!こ・こ・で♪」
「はぁっ!?」
「シンジには、アタシが使徒の精神攻撃によってツラい入院生活を送ってる事にするの」
「で?」
「毎日アタシを看病する人が必要
でもアタシの病気は難解で、アタシが心を開いた人が看病しないと治らないの
『アスカが心を開いた人間…。それはシンジくん!あなたなのよ!!』
とかなんとか言ってきてよ!素直なシンジなら信じちゃうからさぁ~♪」
「リツコぉ…。あたし頭痛くなってきた…」

495: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:23:48 ID:???
「素敵な作戦だけどそれは無理ね」
リツコはいつもの冷めた口調でアタシの名プランをバッサリ否定する
「なんでよぉ!」
「シンジ君は大切なパイロットよ。たとえ仮病とはいえ看病をするとなったらかなりの体力を消耗するわ
あなたのワガママでパイロットを1人失うなんて、そんな馬鹿げた事が許されると思う?」
「大丈夫よ。使徒なんかアタシ1人で全部倒せるもん
だからシンジがパイロットを引退して、アタシのお婿さんになったら良いのよ
きゃはっ♪ちょっと気が早いかなっ?」
「1人で勝てるほど甘いモノじゃないって知ってるでしょ!?何回戦ってきたのよ!」
ミサトが声を荒げる
「何回も戦ったからわかるのよ。今までの使徒レベルだったら、内部電源が切れる前に9匹は殲滅出来るわね」
「あのね!ちょっとシンクロ率が上がったからって天狗になっちゃダメよ!」
「出来るわよ。アタシと弐号機・・・ううん…
アタシと『ママ』ならね♪」
リツコの黒い眉がピクリと跳ねる
「どういう事…?」
「詳しくはリツコに聞いたらぁ~?」
「・・・リツコ?」
「そこまで知ってるとはね…
・・・・・わかったわ…。シンジ君看病作戦を許可します…」
「サンキュっ♪よろしくね」

496: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:25:43 ID:???
シュリシュリシュリ…
「あーっ!!皮全部剥いちゃダメよ!ウサギにしてよぉ!」
「あっ!ごめん…剥きすぎちゃった」
そう言って極端に耳が短くなったウサギリンゴを差し出すシンジ
「もうっ!これじゃウサギじゃなくてネコじゃないのよ!」
「ご…こめんね」
「駄目っ!罰として、これからシンジはネコ言葉で喋ること!」
「な、なんでだよ!」
「アタシは病人なのよ?アタシの言うことが聞けないの!?」
「うぅ…
・・・ごめんニャさい…」
きゃーー!!可愛いーー!!
・・・こうしてアタシとシンジの病室ライフ初日は始まった

アタシがリツコ達に出した条件は次の通りだ
・シンジがアタシの看病をする
(アタシの看病を任された時シンジは『僕アスカのために頑張ります!』って力強く言ったらしいわ
そのシーン見たかったなぁ…)

・使徒が来たら、シンジは初号機の中で絶対待機
(シンジを危険な目にあわせられないもんね)

・シンジに戦闘中の状況説明は絶対ダメ。使徒は全部ファーストが倒した事にする
(アタシは療養中なんだから戦闘に行ったらおかしいもんね)
以上の事を破ったらアタシは絶対にエヴァに乗らないと決めた
アタシとシンジの甘い生活のためね

497: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:28:02 ID:???
夜10時…
「アスカ、そろそろ寝ないと」
「ん…そうね」
確かに少し眠たいかもしれない
アタシは左目をグシグシとこすりながら、狭い病院ベッドの半分を空ける
「うん。じゃあ僕は仮眠用のベッド借りてくるから待っててね」
「な、なに言ってんのよアンタ!!」
アタシは半分空けたベッドの上をバンバン叩く
「ここで寝ればいいでしょーが!」
「な゛っ!!そ、それは無理だよ!」
真っ赤な顔で、両手をパタパタさせながら声をあげるシンジ
あぁ…可愛い…
「アタシがどういう病気か知ってんでしょうが!1人で寝ると発狂しながら近くに居るアンタの首絞めちゃうかもしれないわよ!」
そんな病気があるのか知らないけど、なんか有りそうな気がする
「それともシンジは恋人の横にしか寝れない?」
「・・・・・」
「アタシはシンジの恋人になってもいいかなぁ~♪」
「・・・・・」
「ねぇ?シンジはどう?アタシの恋人に…」
「わかった。寝るよ」
そう言うとシンジはアタシの隣に背を向けて寝ころぶ
「・・・シンジ…?怒ってるの?」
「怒ってないよ…。でも僕は恋人の横にしか寝れないような男じゃない…」
震えた声で、そう言ったシンジはいつもよりも小さく見えた

498: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 00:29:46 ID:???
深夜2時…
アタシの隣で可愛く寝息をたてるシンジ…。アタシが眠れないのも当然だ
そして、アタシが寝ているシンジに悪戯したくなるのも当然の話だ
「はぁ…シンジぃ…」
弄くる。弄くる。
シンジの身体を好きにしている喜びにアタシは浸る
「ぅん…。・・・え゛っ!?」
気持ち良さそうに息を漏らすシンジが可愛い…
「あ!アスカっ!?」
寝言でアタシの名を叫ぶシンジが愛おしい…
「や、やめてよ!!ダメだよぉ!!」
寝言でイヤイヤと声をあげるシンジが愛くるしい…。・・・あら?起きてる?
「やめてよアスカぁ!!!」
ドンっ!!
「キャアっ!」
身体に巻き付いていたアタシを突き飛ばしすシンジ
「痛っ…」
「あ…!ご、ごめんアスカっ!」
シンジに拒絶された…
シンジに嫌われた…
「ふぇっ…ぐすっ…。ごめん…。ごめんねシンジぃ…」
「な、泣かないでよアスカ!!痛かったの?ごめん!」
「ふぇぇぇぇぇんっ!!シンジごめんねぇぇぇぇぇ!!」
「ごめんよ!お願いだから泣かないでよ!ごめん!ごめんよアスカぁ!」
「ごめんなさいシンジぃぃぃぃぃ!!」
「ごめんアスカ!本当にごめん!!」

その後、15分アタシとシンジの謝り合戦は続いた

503: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 15:24:00 ID:???
そして謝り合戦の20分後…
「はふ、はふ…。シンジぃ…気持ちいいよぉ…」
「うん…」
アタシはシンジに愛撫されている…

あの合戦の後、アタシは先程の夜這いの言い訳を必死で考えた
そして出た結論は…
「精神攻撃のせいで夜になると、とってもHな気分になってどうしても男が欲しい身体になっちゃったのよ!」
…我ながら苦しい言い訳だったと思うわ
でも新世紀のピュアボーイ碇シンジは
『そっか、大変だね…。ねぇ僕に何か出来る事ない?』だってさ
ちょっと将来が心配になるわね…。消火器とか壷とか買わされてないかしら…?
でもまぁこんなチャンスを逃すアタシじゃない
「じゃあね、じゃあね?シンジがアタシの欲求不満を静めてくれる?」
「え…それって…」
「ち、治療よ治療!ヤらしい意味じゃ無いわよ!?」
先程の事があるしあまり意識させすぎると、またシンジが怒っちゃうかもしれない
「・・・うん、わかった…。治療だよね…。治療だもん。アスカが困ってるもんね…うん…」
なぜか自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いた後、アタシをギュッと抱き締めてくれた
「アスカ…」
「シンジぃ…」
そしてシンジはゆっくりとアタシの身体をまさぐり始めた…

504: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/10(水) 15:26:17 ID:???
「ねぇシンジ…?」
「なに?」
「えへへっ、気持ち良かったよ?」
夢のような時間が終わり、シンジの左腕に巻き付いて首筋の辺りに顔をうずめるアタシ…
わかる?アタシいま人生で1番幸せなんだよシンジ…?
「うん。アスカが喜んでくれて、僕も嬉しいよ」
「うんっ♪」
そして、これからもこの幸せは続くの…
だってシンジと一緒なら、いつだって世界1の幸せチャンピオンだもん
「でも明日は本番もしようね…?」
今日は結局Bまでだった。シンジがセックスは駄目だって言ったから
「・・・・・」
「だめ…?」
「・・・ごめん」
そう言うとシンジは目をそらして小さくうつむいた
「あっ!ごめんごめん!気にしないでね?
…アタシは幸せなんだからさ!セックスは大人になってからね!」
「・・・・・」
「でもシンジすごく上手だったね?アタシ初めてなのに、いっぱいイっちゃったし」
「そうかな…?」
「そうよ。はっはぁ~ん♪さてはHなビデオとか見て覚えたんでしょ!このスケベっ♪」
「そんなの見ないよ…」
何故かシンジはさっきから落ち込んだ顔をしている
アタシはこんなに幸せなのに…
「もう寝ようかアスカ…?」
「うんっ」

アタシイマシアワセダヨネ?

507: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/11(木) 01:18:27 ID:???
使徒襲来

「よっしゃー!!全力で行くわよ!!」
敵は円を描いたような形をした使徒だ
まぁ敵が円だろうがドルだろうかアタシには全く関係無い事
こちらに気付いた使徒は蛇のような形に変化し、突っ込んで来る
しかし弐号機が右手をかざしATフィールドを発生させる…
ズギャっ

使徒殲滅

303病室…
「シンジおかえり~。お疲れさん」
「ただいま・・・って僕は何もしてないんだけどね…。綾波が倒して僕は待機してただけだし」
本当はアタシなんだけど、これはトップシークレット
「ふぅ~ん。でもお疲れ様、まあゆっくりしなさいよ」
そう言いながらベッドを半分空けて隣をバンバンと叩く
「ありがとう、でも午後から学校に行くよ。今日は別に疲れて無いしさ」
「えぇ~!?行かなくていいわよ学校なんて~
ほらっおいで?シンジ?」
「あはは…ごめんねアスカ。その代わりに今日は綾波がお見舞いに来るからさ」
ガラガラっ
「こんにちは」
「はやっ!!」
「あっ、綾波お疲れ!今回の使徒戦凄かったらしいね
ねぇ初号機のモニターが映らなくて見えなかったんだけど、どうやって勝ったの?ライフル?ナイフ?」
「4の字固め」
どんだけ嘘が下手なのよこの娘…

508: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/11(木) 01:20:41 ID:???
「はぁ…シンジは結局学校行っちゃったか…」
外は快晴ぽかぽか陽気。だけどもここは雨がザーザー降ってる気分
カチャカチャ…
「むっ?アンタ何してんの?」
「知恵の輪…。赤木博士から暇な時に遊びなさいって貰ったの」
そう言いながらアタシには一切目もくれず知恵の輪を弄くるファースト
「アンタねぇ…。自分からお見舞いに来といて、なにソッコー暇になってんのよ…」
「やってみる?いっぱい有るから」
そう言いながら銀色の物質を差し出すファースト
「はんっ面白いじゃない!どっちが早く外せるか勝負する?」
「別にいい」
「・・・つまんない女…」
アタシもマイペースで知恵の輪の攻略に取り掛かる事にする
「ん~?難しいわね…。こう?こうかしら?」
「違うわ。多分ここをこうよ…」ガギっ
「あははっアンタも出来てないじゃ~ん!」
「・・・ムスッ」
「なに膨れてんのよ?ほらでも、こっちに回したら…」ガギギっ
「クスっ…出来てない」
「うるさーーい!!」

知恵の輪を外そうと手を取り合うアタシとファーストの間には、ほんの少し友達の輪が見えたような気がした

「もう飽きたわ…1人で頑張って。シャリシャリ」
「アンタなに勝手に人のリンゴ食べてんのよ!!」

509: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/11(木) 01:23:56 ID:???
ネルフ本部、技術部のお部屋

「ふぅ…きつぃ…」
私は両目の間を軽く揉みながら、再びパソコンに向き合う。ネルフ職員は大変なのだ
プシューっ
「こんにちは、お疲れ様ですマヤさんっ」
「・・・シンジ君…」
入って来たのは学生鞄をぶら下げたシンジ君
「なにしてるの?今日は午後から学校行くって…」
「サボリです」
「はぁ…」
「マヤさんに会いたくて…。あの、迷惑でしたか…?」
手を前でモジモジさせながら、上目づかいで問い掛けてくるシンジ君
殺人的に可愛い…
「でも学校に行かないんならアスカの所に居てあげなきゃ…。あの子寂しがってるわよ絶対」
「いいんです。アスカとはずっと一緒に居ますし…」
そう言いながら私の肩を持ち、椅子を回して私と向かい合う格好になる
「それにこんな時でしかマヤさんと一緒に居れないです…」
あたしの膝の上に座り、首に手を回してソッと抱きつくシンジくん
「マヤさぁ…ん」
「だ、駄目よシンジ君っ…。ね?帰りなさい?」
私は切なげな声を出しながら首筋に顔をうめているシンジ君の髪を撫でながら説得を試みる
「・・・マヤさんの為に還ってきたのに…」
ビクッと私の肩が震える
「僕を捨てないで…」

510: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/11(木) 01:26:25 ID:???
シンジ君が初号機に取り込まれて15日目、私は初号機の前に立っていた
「シンジ君還ってきてよ…」
最初の方こそ職員達が心配そうに様子を見ていたこの場所も今では私1人…
なんで私はこんなに必死になってるんだろう…自分がわからない
でも私はシンジ君を失いたくないからここに居る
そんな気がした…

サルベージ決行当日、夜11時
ネルフ本部、自動販売機前
「あれ?シンジ君?」
「あっマヤさん!」
私の姿を見ると小走りで近寄って来るシンジ君
「どうしたの?こんな夜遅くに…」
「その…。ま、マヤさんを待ってたんです」
「私?」
シンジ君は少し照れたような顔をしながら私に微笑んだ
「僕、マヤさんのお陰で還って来れたんです!
初号機の中に居た時、ずっとマヤさんの声が聞こえてて…。それで…」
私は驚いた
まさかあんな声がシンジ君に届いていたなんて思わなかった…
「それで…。僕『ありがとう』の他に、もう1つ言わなきゃイケない事が有って…」
そしてさらに驚いたのは…
「マヤさんが好きです」
シンジ君がそう言いながら私にソッと抱きついた事だ…



でも本当に1番驚いたのは、私がシンジ君の背中に迷わず手を這わせた事だったのかもしれない…

511: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/10/11(木) 01:28:23 ID:???
ネルフ本部、女子トイレ
「もう5時…そろそろアスカの所に戻らないとダメよ…?」
私は乱れた着衣を整えながらそう問い掛ける
『不潔…』昔の私が私を見て呟いている…
「はい…わかってます」
シンジ君はゆっくりと私から離れる
「ねぇ…アスカとの事、私知ってるわよ…?
毎晩2人の声が盗聴器に録音されてるの知ってるでしょ?」
「・・・アレは治療です…。アスカはああしないと変になるらしいから…」
「アスカは治療と思って無いわ。アスカにとってアレはシンジ君との愛の儀式よ?
ねぇ、アスカの事考えてあげてよ…。あの子にはシンジ君しかいないのよ…?」
「僕にだってマヤさんしか居ません…
アスカは家族です。家族の間に恋愛なんておかしいですよ…」
個室の開閉レバーに手をかけるシンジ君
「僕が恋するのはマヤさんだけです。僕はアスカの事、そんな風に見れません…」
「シンジ君…」
「でも家族には幸せになって欲しいんです。だからアスカには他の男性と幸せになってもらいます」
バタンっ…

私は便座に座り1人頭を抱えた
目から涙。口元は徐々に引きつり始める
「この事がアスカにバレたら…
・・・ははっ…。完全に殺されるわね私…」

523: パッチン 2007/10/12(金) 00:14:36 ID:???
ネルフ本部、作戦部長室

召集されたアタシ達3人のチルドレンの前にミサトと1人の銀髪紅眼のニヤけた男が立っている
「今日から新しく仲間入りしてくれるフィフスチルドレンを紹介するわ」
「渚カヲルです。よろしく」
この時期に新しいチルドレンが来るの…?
アタシが居る限り使徒戦は問題ないハズなのに…
「アスカどうしたの?ずっと車椅子だから疲れちゃった?」
「へ?あぁなんでもないわよ」
う~んっシンジはやっぱり優しいわねぇ~。今晩も優しく可愛がってもらおっ♪
「よろしくね碇シンジ君」
「あ、うん。よろしくね渚君」
「あははっカヲルでいいよ。僕もシンジ君って呼ぶからさ
ほらっ親愛の握手」
「う、うんカヲル君。ははっ…親愛の握手…」
なっ!なによこの男!!!アタシのシンジに気安く触りやがってぇぇ!!
それに何が『カヲルって呼んで』よ!!気持ち悪いわっホモホモ野郎よ絶対!!
「えっと…セカンドチルドレンの惣流さんだね?
よろしく。親愛の…」
「触るな触るな!!アタシに触っていい男はシンジだけなんだかんね!!」
ガルルと唸るアタシに気押されてサッと手を引くフィフス
「ははっ…ずいぶん嫌われてしまったようだね…」

524: パッチン 2007/10/12(金) 00:17:27 ID:???
「アスカ失礼だろ…カヲル君ごめんね。ちょっとアスカ精神病で、心を開いた人以外と話すと…」
「イヤいいんだよ、でも僕にも心を開いてくれたら嬉しいかな?」
「ぷいっ」
そっぽを向いたアタシをスルーして、ファーストの前に移動するフィフス
「よろしくね?ファーストチルドレンの綾波さん
親愛の握手は…してくれそうに無いね。ははっ…」
ファーストは先程から紅い眼でジッとフィフスを睨みつけている…
怖っ!!
「はいはいっじゃあ今日の挨拶会は終わりね。みんな仲良くするのよ?」
そう言ってミサトは部屋を出て行った。

・・・加持さんが死んだ事はアタシも聞いている
何故ミサトはあんなに気丈に振る舞えるんだろう…
もしシンジが死んだらアタシ…。アタシは…
「ねぇシンジ君。本部内を案内してくれないかな?」
「うん、いいよ。ここ迷路みたいでややこしいからね」
なにっ!?
「はぁっ!?ちょっと待ちなさいよシンジ!!」
「アスカごめんね?
綾波、アスカの車椅子押して帰ってくれる?」
「いいわよ」
「勝手に決めてんじゃないわよぉ!!」
そう叫ぶアタシを背に、部屋を出て行ってしまったシンジとホモ野郎
ヤバい…。シンジが…シンジが掘られちゃう…

525: パッチン 2007/10/12(金) 00:19:34 ID:???
「ったく!あんなホモ野郎と可愛いシンジを一緒に行動させるなんて!」
「彼…危険ね…」
「そんな事わかってるわよ!あのシンジを見つめるイヤらしい目!気味悪いったらありゃしないわ!!」

「カヲル君、さっきは本当にごめんね…アスカ悪い子じゃないんだけど…」
「あははっ気にしなくていいよ本当に。彼女が良い子なのはわかってるよ」
「良い子か…。カヲル君はアスカの事よくわかってるね」

「そういう意味で危険なんじゃないわ…。彼は別の意味で危ないよ」
「別の意味で危ない?なにが?」

「僕が惣流さんの事をわかってる?
あははっ1番わかってあげてるのはシンジ君だよ。彼女の瞳は君一色だ」
「僕はアスカの家族だからだよ。アスカも心を開いてくれたら他の男の人も見えてくるさ」

「彼は人間じゃない…私と似て非なる存在…」
「アンタさっきから何言ってんの…?まるでアンタもアイツも人間じゃないみたいな言い方じゃない」
「・・・・・」

「ねぇカヲル君はアスカをどう思う…?」
「ん?まぁ魅力的な子だとは思うね。とっても一途で情熱的な子だ」
「そっか…」

526: パッチン 2007/10/12(金) 00:21:34 ID:???
「・・・私はセカンド…アスカとは違う…」
「アンタがアタシと違うのは当たり前じゃない」
「違うっ!!私はアスカ達とは違う!!」
「・・・ファースト…?」

「そんな事聞いてどうするの?あははっ彼女の良い所を聞いてノロケたかったのかい?」
「僕とアスカはそんな関係じゃないよ…。家族だ…
アスカは大切な大切な僕の家族だ…」

「ねぇどうしたのよ…?アンタが大声出すなんて…」
「・・・・・」
「そんなにツラい事なの?」
「・・・アスカは私がどんな存在でも一緒に居られる…?一緒に居てくれる…?」

「彼女は君の事をそう思ってないよ?彼女は君の事を1人の男として見ている」
「今アスカが心を開いている男が僕だけなだけだよ…
もっと素晴らしい男性が現れたらアスカもすぐに心を開いてくれるさ」

「・・・アンタがどんなヤツだろうとアタシはアンタを見捨てたりしないわよ」
「・・・ありがとう…」
「こんな事でお礼言ってんじゃないわよ
友達でしょ?レ・イ・♪」
「うんっ…」
「・・・じゃあ話してくれる…?」

「カヲル君は素敵な人だ…。きっとアスカも心を開いてくれるよ」
「シンジ君…なにが言いたいんだい…?」

527: パッチン 2007/10/12(金) 00:24:30 ID:???
「彼、フィフスチルドレン渚カヲルは最後の使徒…タブリスよ
そして私も使徒…
サードインパクトの要…使徒リリス」


「僕はアスカを愛する事が出来ない
アスカは家族だから…
僕には他に愛する人が居るから…
だから…だからカヲル君が、アスカを幸せにしてあげてほしい」

538: パッチン 2007/10/15(月) 00:45:20 ID:???
「ただいまアスカっ」
病室に入って来たシンジはパイプ椅子を組み立て、アタシのベッドの傍に腰を下ろした
「おかえり…。遅かったのね」
さすがのアタシも今回ばかりは明るくシンジと喋る元気は無い
フィフスが使徒…レイが使徒…サードインパクトの要…アタシ達の敵…
「ねぇアスカ、カヲル君の事なんだけど」
アタシの身体がビクリと震える
「カヲル君って格好いいよね。優しいし頭も良さそうだし、何より大人っぽいもん
ねぇアスカはどう思う?僕が女の子だったら好きになっちゃうかなぁ…」
使徒タブリス…
「アイツに関わっちゃダメーーーっ!!!」
病室がアタシの大声に包まれた
「な、なに怒ってるの…?」
「あ、ごめん…
・・・ねぇシンジ…アイツの話は止めよう?アタシ、フィフスの事苦手みたい」
とにかく今はその話題から逃げたい…
「そんな言い方よくないよ。カヲル君はとっても良い人だしアスカも気に入ると思うよ絶対」
逃がしてくれない…

なんで?なんでシンジはフィフスの話をしたがるの?


シンジはフィフスが好きなの…?

539: パッチン 2007/10/15(月) 00:47:07 ID:???
「ねぇレイ…。フィフスが使徒っていう事はアタシ達の敵よね…?」
「そうなるわね」
次の日、シンジが学校に行ってる間いつものようにレイがお見舞いに来ていた
文庫本をパラパラとめくりながらアタシの問いにおざなりに答えていくレイ
「ていう事はアタシがフィフスを殺しても問題ないわよね?」
「えぇ問題ないわ…。でも生身では絶対に勝てないし、エヴァに乗るにはネルフから電力を借りなきゃイケない。だから今すぐ殺しに行くのは無理よ」
「むぐっ…。わかってるわよそんな事!!」
「だったら枕の下の日本刀片付けて。病室には似合わないわ」
「わかったわよっ!!」
アタシはしぶしぶ妖刀『かぼちゃ丸』を窓から投げ捨てた
「フィフスを殺すのは彼が正体を現して、碇司令がGOサインを出してからよ」
「でも正体を現す前にシンジが掘られちゃうかもしれないし…」
アタシは俯きながら、シンジがフィフスに掘られて泣き叫んでいる絵を想像してしまう…





・・・興奮したアタシ死ね!!

540: パッチン 2007/10/15(月) 00:49:43 ID:???
ランチタイム
アタシの前には病院の味気ない飯オールスター達が並ぶ
「本当に病院のご飯は不味いわねっ!なんとかならないのかしらっ!?」
プンスカと怒るアタシを尻目に黙々とオールスター達を口に運ぶレイ
「アンタ文句も言わずによく食べるわね…」
「私は美味しいと思うから文句を言わないだけよ」
そう言いながら、ほぼ調味料ゼロのほうれん草のお浸しをムシャムシャと頬張る
「アタシは嫌いだな~。はぁ…シンジの料理が恋しいわ」
「碇くんの料理はそんなに美味しいの?」
「もっちろん!シンジの料理はぜ~んぶ美味しいんだから!特にハンバーグは最強よ最強!世界チャンピオンなんだから!!」
シンジの自慢話が出来るとわかったアタシは身振り手振りで説明しだす
「アンタも今度食べに来なさいよ?歓迎するわ!」
「そうね。全て終わったらね…」
「・・・あっ…」

サードインパクトの要…
『使徒リリス』
それがレイの正体…

「・・・ねぇ…?アタシ達っていつか殺し合うのかな…?」
「わからない。でも私はアスカを殺したくない」
「アタシだって…!!」
「私を殺さなければ碇くんも死ぬわ」


「・・・・・じゃあ殺す…」
「くすっ、正直ね」

541: パッチン 2007/10/15(月) 00:52:01 ID:???
同時刻、発令所

「パターン青!使徒です!ターミナルドグマへゆっくりと下降しています!!」
オペレーター伊吹マヤの声が響く
「モニター表示されます!」
モニターに最後の使徒が映し出される。その人の形をしたモノは学生ズボンのポケットに両手をつっこみ、当然のように重力を無視したスピードで落下していく
「渚くん…?」
その使徒は昨日、葛城ミサトの隣で笑顔を浮かべていた

再び303病室
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「使徒…?使徒…。使徒っ!?
ホモホモ野郎だわっ!!」
「思ったより早く尻尾を出したようね…」
先程まで気落ちした顔をしていたアタシはベッドから飛び降り、青い瞳に炎を燃やす
「シンジをたぶらかしたホモホモ野郎…。この手で潰してくれるわ!!」

同時刻、ジオフロント内の小さな湖
「はぁ…」
湖のほとりで少年は気弱そうな顔を俯かせ、小さな小さな溜め息を吐いていた

「不安なのか?世界を守るヒーローさん?」

背後から聞こえる声…
あの時と同じ声…
二度と聞けない思っていた声…
「非常警報が出てるぞ。またあの時みたいに男の会話でもするか?」
「加持さん…?」
そこには死んだはずの男がスイカ片手に立っていた

545: パッチン 2007/10/17(水) 00:37:36 ID:???
「加持さん生きてたんですね…」
湖のほとりで非常警報が鳴り響く中、肩を並べスイカを食べる少年と中年
「あぁ、まあ加持リョウジは死んだ事になるがな。名前を変えて海外のどこかで静かに暮らす事になる」
「そうですか…。ミサトさんには会ったんですか?」
「もちろん真っ先に会いに行ったぞ
・・・全て終わったら一緒に暮らしてくれるらしい。こんな俺とな…」
そう言いながら少し照れた顔をごまかすようにスイカにかぶりつく
「ところでシンジ君は行かなくていいのか?」
「初号機は凍結中だし僕が行っても意味無いんです…」
そう言い、膝を抱えて深く溜め息をつく
「そうか…。アスカは元気か?」
「会ってないんですか…?」
「はははっ、会いたかったんだが口が軽そうな人には会わないようにしてるからな」
『みんな聞いて聞いてー!加持さん生きてたのよー!!みんなでパーティー開きましょうよー!!』とか叫んでいるアスカが目に浮かぶ…
「ところでアスカとはどうだ?葛城の話では一緒に病室で二人暮らししてるらしいじゃないか」
「・・・・・」
静かに目をそらし、スイカを口に運ぶシンジ
「・・・悩みの原因はそれか…?」

546: パッチン 2007/10/17(水) 00:39:29 ID:???
「僕…アスカが好きなんです…。たまらなく大好きなんです…」
湖を眺めながらポツリポツリと『自分』を話し始めるシンジ
「いつ頃から好きになったかなんか覚えてないけど…。でも、マグマに飛び込んだ頃には『この娘のためなら死んでもいい』と思えるくらい好きだったんだと思う…」
「・・・・・」
「でもアスカは僕のこと嫌ってて…
僕はアスカに嫌われるような事しかしなくて…」
叱られる前の子供のように小さく震えだす
「初めてキスした日にうがいされたんですよ…?
アスカの誇りのシンクロ率ぬいたんですよ…?
僕はアスカにとって邪魔な存在なんだ。居ない方がアスカは喜ぶんだって思えてきて…」
「シンジ君…それは…」
「初号機に取り込まれた時だってそうだ…。
外の世界からみんなの声が聞こえきたのに…。ミサトさんやリツコさん、加持さん、そして綾波
なのに…
なのにアスカの声は聞こえなかったんだ!!アスカは僕の事なんかどうでも良かったんだ!!アスカは僕が死んでもよかったんだ!!」
非常警報が鳴り止んだ静かな湖に悲痛な叫びが響いた

547: パッチン 2007/10/17(水) 00:41:29 ID:???
「・・・初号機の中にいた時…。1番支えてくれたのがマヤさんの声だったんです…」
「・・・・・」
「それで…。僕…還ってきた時、マヤさんに…」
「シンジ君…」
先程まで大声をあげていた少年の声は小さな涙声に変わり、瞳からはボロボロと涙がこぼれ落ちてくる
「ぼく…マヤさんを汚しちゃったんです…優しい…優しいマヤさんを…
拒絶されたイライラを忘れたくて…セックスいっぱいして…。マヤさんは嫌がらないから…」
シャツの袖で涙をグシグシと拭い、再び顔を上げる
「・・・そんな時にアスカが使徒の精神攻撃をうけて入院して…。そして、僕の事を好きになって帰って来たんです…
・・・でも、僕はアスカの恋人にはなれない…」
「シンジ君…。アスカは精神汚染でシンジ君を好きになったんじゃない
葛城が言ってたぞ…?アスカは心の奥でシンジ君を求めていて、それを使徒が掘り起こしただけだ…
だからアスカが君を好きなのは使徒のせいなんかじゃない。そんなことに負い目を感じなくてもいいんだ」
加持はシンジの正面にまわり、顔を覗き込みながら説得する

548: パッチン 2007/10/17(水) 00:43:02 ID:???
「アスカが精神病じゃないことなんて知ってます…。四六時中一緒に居るんです、いくらバカな僕でもそれくらいわかります…」
「ならいいじゃないか…。好きな者同士が結ばれるのは自然の摂理ってもんだ」
「でも、でもマヤさんが…」
「シンジ君…」
「僕にはもうマヤさんがいるからダメだって…アスカが僕のこと好きになった途端マヤさんにサヨナラなんて言えない…
アスカへの気持ちは家族愛だって誤魔化そうと…。アスカが別の男を好きになったら諦められる…」
「君はそれで満足なのか…?アスカを他の男に取られていいのか?」
「でもマヤさんが…」
「アスカが他の男と恋に堕ちてもいいのか?
アスカが他の男とキスしても平気なのか!?
アスカが他の男とセックスしても笑ってられるのか!?」
「・・・っ!!」
身体を縮こませて耳を塞ぐ
「逃げるな!!これは君が望んだ事だ!!
自分で考えて決めた未来だ!!」
加持の怒声が湖に響きわたり、その後再び静寂が周りを包む
「・・・怒鳴って悪かったな…。あの時も言ったが最後に決めるのは君自身だ」
加持はシンジの頭をゆっくりと撫でてやる
そして、しばらくすると『スンっ…スンっ…』と少年の泣き声が小さく響き始めた

549: パッチン 2007/10/17(水) 00:44:26 ID:???
「加持さん…、僕アスカが好きです…アスカを盗られたくない…」
その言葉を聞き、フッと笑顔になる加持
「あぁ、それでいいんだ…。マヤちゃんには一緒に謝りに行ってあげるから安心していい」
決心した少年の頭から手をどけ、そう言って勇気付ける
・・・すると先程まで泣いていた少年は中年の胸に飛び込んで抱きついてきた
「お、おいっ!?シンジくんっ!!」
経験豊富な加持とはいえ、男に抱きつかれた経験などほとんど無い…
「加持さん、僕がんばります。アスカと幸せになってみせます」
「あ、あぁ…。がんばれよ…」
少し涙で濡れた顔を上げて会心の笑顔を見せながら、そう言った少年は男らしくと言うよりも可愛らしく見えた
「えへへっ…、やっぱり加持さんは優しいです」
「はははっ…。そ、そうか…?」
「はいっ大好きです♪」
14才の少女に動じなかった男が、14才の少年にドキリとさせられている…
少年はゆっくりと加持の胸に顔を寄せて小さく溜め息を吐いた
「加持さぁ…ん」

『果たしてこの常軌を逸した可愛いさを持つ少年を伊吹マヤが手放すのだろうか…?』
加持リョウジは少年の背に両手を這わせながら、そんな事を考えていた…

555: パッチン 2007/10/18(木) 00:44:16 ID:???
セントラルドグマを下降する大小の影
ガギィっ!!
ホモホモ野郎のATフィールドが弐号機のプログナイフをはじく
「ふんっ、やっぱ最後の使徒だけあるわね
でもアタシが本気出したらアンタなんか速攻で千切りに出来んだから!」
「はははっ…。それは勘弁してほしいからお先に失礼するよ」
そう言い残すと猛スピードで最下層に落下していくホモホモ野郎
「あぁーー逃げたーー!!
ちょっとミサト!このケーブル最下層まで伸びる!?」
『大丈夫よ!アスカ早く追いかけて!!』
「よっしゃー!!」
先程まで掴まっていたロープから飛び降り、そのまま落下していく弐号機
『目標、弐号機、共にロストしました!』
『・・・頼むわよ…アスカ』


バシャーーーン!!
「ひゃ~なにここ?ネルフの地下にこんな所があったとはねぇ…」
地下なのに明るいそこはLCLが湖のように広がり、巨大なドアがぽっかりと開いている
「ん…?
いたーー(゚∀゚)ーーっ!!ホモホモ野郎!!」
その巨大なドアのむこうに、巨大な十字架と、巨大な白い巨人と、小さなホモホモ野郎の存在が確認できた
「あ…見つかっちゃったみたいだね…」
「ふんっ!生まれてきたこと後悔させてやるわ!」

556: パッチン 2007/10/18(木) 00:46:41 ID:???
弐号機はフィフスの体を掴むと握り潰すように構える
「抵抗は諦めたようね!」
まさに弐号機の手中に収まっているフィフスは、これから殺されるというのに何故か笑顔が崩れない
「ねぇ、なんで君はそんなに怒ってるの?」
コイツっ…!!
「アンタがシンジを盗ろうとするからよ!!」
「盗ろうとした…?
ふっ…、僕はシンジ君を奪ったりなんかしないよ?彼にはもう大切な心に決めた女性がいるみたいだしね」
「こ、心に決めた女性!?」
や、ヤダっ!シンジったらフィフスに話しちゃったのかしら!?アタシとシンジの熱~い関係を♪
「嬉しいかい?シンジ君に大切な女性いて」
「当ったり前でしょ!
くぅ~っ!!『心に決めた女性』かぁ~♪こりゃ結婚まで既に秒読み段階ね!!」
あぁ…結婚かぁ…。嬉しいなぁ…
「くすっ…、結婚式か…呼ばれるといいね
『誰かとシンジ君の結婚式』にね」
は??…誰かと…?
よばれる…?
「はぁ?花嫁のアタシが、なんで呼ばれる側なのよ馬っ鹿じゃないの?」
なに…?
コイツなに言ってるの…?

「くすっ…シンジ君の隣に座る花嫁は君じゃないよ?
だって惣流アスカラングレーは碇シンジの心に決めた女性じゃないからね」

557: パッチン 2007/10/18(木) 00:48:44 ID:???
・・・どういうこと…?
ア?タ?シ?何?を?言?わ?れ?た?の?

「残念でした。でもしょうがないよね、シンジ君は惣流アスカを家族としてしか見てないって言ってたもん」
あまりに悪質な嘘だ…。シンジがアタシ以外の女を愛するワケ無い…
「嘘言ってんじゃないわよ…」
信じない…。こんなヤツの言葉なんか…
「嘘なんかじゃないよ?シンジ君が自分で…」
「シンジがアタシより大切に想ってる女がいるって言うの!?」
「クスっ…、だって言ってたもん」
早く握り潰さなきゃ…こんなヤツ…。こんな嘘つき…
「君、シンジ君に『愛してる』って言われた事ある?」
無い…
「クスクス…
・・・あっ、ねぇ良いこと教えてあげようか?」
聞きたくない…!!殺さなきゃ…!!
「・・・っく…!」
聞いちゃ駄目!!
「シンジ君。僕と君に付き合って欲しいんだって。幸せになって欲しいんだって♪」

う…そ…だ…

『アスカはカヲル君の事どう思う?
きっと気に入ると思うよ絶対』

シ…ン…ジ…

「うそよ!!!
うそようそようそようそよ!!!
ウソウソウソウソウソウソウソウソ!!!」
アタシの心の中に大切に保存されていたシンジの言葉が急激に凍りついていく…

558: パッチン 2007/10/18(木) 00:50:34 ID:???
「シンジはアタシを看病するって言ったもん!!面倒見るって言ったもん!!」
「だって家族だもん。家族の面倒見るのは当然だしね」
チクショウ…チクショウ…チクショウ…
「シンジは毎晩アタシの身体を慰めてくれるもん!!」
「シンジ君は治療としか思ってないよ。
それにシンジ君は毎日『大切な女性』に慰めてもらってるんだろうね」
チクショウ…チクショウ…チクショウ…
「シンジはアタシの病室以外には学校くらいしか行ってない!!学校が終わったら寄り道せずに5時には帰って来るもん!!
その女に会ってる暇なんて無いわよ!!」
「クスっ…、学校の生徒なんて全員疎開して1人もいないよ?
だから朝から5時までずっと『大切な女性』と一緒に居るんだね」
チク…ショウ…
アタシはシートにゆっくりと身体を沈めて顔を両手で覆った…
「ふぅ…、もう諦めたのかい?」
「ふっ、ひっく…。シンジぃ…シンジシンジぃ…」
ホモ野郎なんか信じたくないのに…。アタシが信じてるのはシンジだけなのに…。
アタシの思い描いていたシンジとアタシの幸せへの確信は、アタシのタダの勝手な妄想へと姿を変えようとしていた

「あぅ…あぅ…あぅ…」
「こんな事で壊れる弱い心…」

559: パッチン 2007/10/18(木) 00:52:40 ID:???
「ガラスのように繊細で…とても割れやすく弱い心…」
シンジシンジシンジシンジ…
「割れたガラスの破片は触れる物を傷付ける」
うるさいうるさいうるさいうるさい…
「憎いんだろう?シンジ君を奪った女が」
殺したい殺したい殺したい殺したい…
「シンジ君が欲しいんでしょ?」
欲しいよ欲しいよ欲しいよ欲しいよ…
「自分だけの物にしたい心、独り占めしたい心、リリンの心に存在するどうしようもなく汚い部分…」
そんなのどうでもいいよ…。シンジがアタシだけの物ならそれでいい…
「君の願い…。どうしようもなく身勝手で…、悲しいくらい一途な願い
叶えてあげるよ…この僕が…」

弐号機がゆっくりと口を開き始める
「僕を取り込むんだ…」
シンジが欲しい…アタシだけの物にしたい…
「僕を取り込めば教えてあげるよ。この世界の秘密も、ネルフの謎も、シンジ君を手に入れる方法も…」
シンジ…欲しい…。アタシだけを見てくれるシンジが欲しい…。

もしもシンジがアタシを見てくれないなら
そんなシンジいらない
そんなシンジ殺しちゃうよ…
そしてシンジが見てくれないアタシもいらない
そんなアタシも死んじゃうよ…

567: パッチン 2007/10/19(金) 02:51:45 ID:???
303病室
「アスカただいま」
「シンジ…」
病室に入ってきたシンジはベッドに腰掛けているアタシの隣に座る
「フィフスが使徒だった…」
「うん、さっき聞いたよ…。ビックリした…」
そう言うとシンジは肩をすくめて小さく俯く
「元気だしてよシンジ…。シンジが元気無かったらヤダよ…?」
アタシは右手をゆっくりとシンジの左手に重ねる
「アスカ…」
「・・・ねぇ、シンジは…」
コンコンっ
いつもよりぎこちない会話を中断させるように病室の扉がノックされる
「あ…ごめんアスカ、外に人待たせてるんだ。ちょっと出掛けるね?」
「・・・・・」
アタシは立ち上がろうとするシンジの腰にしがみつく
「ん…?アスカ?」
コンコンコンっ
「アスカごめん…行かなきゃダメなんだ、すぐ帰ってくるから…」
「・・・イヤ…」
絶対に離さない…離してたまるか…
「アスカの甘えんぼ…」
そう言うとシンジはアタシの前髪をかきあげると、額にスッとキスをした
「絶対すぐに帰ってくるよ…
・・・それで帰ってきたらさ…」
シンジはアタシの耳元に唇を寄せて静かにささやく

「…セックスしよ?」

その言葉を残し病室を出て行ったシンジの瞳は微かに涙で濡れていた…

568: パッチン 2007/10/19(金) 02:53:52 ID:???
ネルフ本部、技術部のお部屋
プシューっ
「ん…?シンジ君、・・・加持さん!?」
まさかの訪問者に驚く私に気さくに手を振り、シンジ君の肩を押しながら部屋に入る加持さん
「はははっ、まぁ一応生きてたんだ」
「ハイ!よかったですね加持さん!
心配してたんですよ?絶対死んだと思ってました」
「はははっ…、それはそれは…」
「じゃあいよいよ葛城さんと結婚ですね?」
「いや、それが明日海外に高飛びするつもりだ」
「あ、そうなんですか…。ごめんなさい…」
「まぁあまり長居できないんだが、ちょっとマヤちゃんに用事が…な?シンジ君?」
先程から顔を伏せていたシンジ君は加持さんの言葉を受け、静かにひざまづいて土下座した…
「ちょ、ちょっとシンジ君!?」
慌てる私の声を遮るように床に顔を貼り付けたシンジ君は涙声をあげた
「ごめんなさい…マヤさん…。ごめんなさい…。
ぼく…、ぼくが…最低で…。マヤさんを汚して…傷つけて…
ごめんなさい…。ごめんなさいごめんなさい…」
清掃班がサボって、汚れに汚れている床にポタポタとシンジ君の涙が小さな水たまりを作っていく
「シンジ君…」
「・・・まぁ…、なんで謝ってるかわかるだろ…?」
「はい…」

569: パッチン 2007/10/19(金) 02:56:02 ID:???
私は土下座するシンジ君の前にしゃがみ込み、頭を撫でてあげる
「シンジ君、顔上げて?ね?」
「ひっく…、マヤさぁ…ん」
シンジ君は顔を上げて涙と鼻水でグチョグチョな顔を私に向ける
「クスっ…泣いちゃダメでしょシンジ君?これからアスカと幸せになるんだから」
私はポケットからハンカチを取り出し、シンジ君の顔を拭っていく
「私は大丈夫よ?シンジ君が居なくても
逆にこんな小さな彼氏、友達に紹介したら笑われちゃうわよ」
ハンカチをポケットに戻し、今度は一枚の写真を取り出す
「ほら、恋人っていうか年の離れた姉弟みたい」
「マヤさん…、これ…」
「ふふっ…偉いでしょ?いつも持ってたんだよ?」
そこに写るのは私とシンジ君
私達に残る唯一の思い出の品
「シンジ君はもう捨てちゃったかな?」
「あ、あります!」
そう言うとシンジ君もポケットから一枚の写真を取り出す
「うん、偉い偉い
でもアスカを愛してるなら、こんな写真持ってちゃダメよ?
これは私が大切に保存しとくから」
シンジ君から写真を取り上げ、2枚の写真をポケットにしまう
「マヤさん…」

570: パッチン 2007/10/19(金) 02:58:00 ID:???
「ふふっ、アスカにこの事も言っちゃダメよ?あの娘なにするかわからないし、私殺されちゃうかもしれないわ」
私は冗談っぽく…でも本気で心配していた事を言って、シンジ君の頭を撫でながら笑ってあげる
「私のことで悩んでくれて…私のことで泣いてくれて…
私はそれだけで嬉しいよ?シンジ君とサヨナラしても寂しくないよ?」
可哀想なくらい真っ赤に泣きはらして私を見つめるシンジ君の瞳にソッと口づける
「マヤさん…」
「これで最後…。
いっぱい私で泣いた分、アスカといっぱい幸せにならなきゃダメよ…?」

シンジ君はまた泣いた
瞳につけた『最後の私との絆』は涙と一緒に流れていったことだろう



「頑張ったなマヤちゃん。偉かったぞ」
「はい、大人ですからね」
シンジ君を見送った後、私と加持さんはネルフ内の廊下を歩いている
「じゃあ俺もそろそろ行くよ。元気でな」
「はい、加持さんもお元気で」
エレベーターのボタンを押し、振り向いた加持さんは私の頭を撫でてくれた
「君は良い子だ。本当に良い子だ。
だから絶対に幸せになれる」
「ありがとうございます…。さようなら加持さん…」

571: パッチン 2007/10/19(金) 03:00:31 ID:???
ネルフ本部、喫煙所
「あらマヤ、どうしたの?こんな所で」
「あっ先輩!ちょっと煙草を…。えへへ…」
灰皿の前に腰掛けて、持っていたライターを慌てた様子で隠すマヤ
瞳からは涙がポロポロとこぼれている
「ケホッ…、でもやっぱり煙草なんて駄目ですね、けむたいだけでした。あははっ」
「はぁ…慣れない事するからよ…、ほら涙拭きなさい」
そう言い、猫が可愛くプリントされたハンカチを差し出すリツコ
「ありがとうございます。
・・・ホント慣れないことするもんじゃないですね…」
「マヤ…?」
「えへへっ…さて、私は仕事に戻ります!」
力強く立ち上がり、仕事場まで小走りで戻って行ったマヤ

1人喫煙所に残されたリツコは、ソッと灰皿の中を見やる
「はぁ…。馬鹿なんだからあの子…」
そこには煙草の吸い殻など1本もなく、燃えカスになった2枚の写真が寄り添う様に転がっていた

さよなら私の恋…

572: パッチン 2007/10/19(金) 03:03:36 ID:???
303病室
「アスカただいま
・・・あれ??」
病室にアスカの姿は無かった
ベッドの上はパジャマが脱ぎ散らかしてあり、私服を入れていたロッカーが開けっぱなしになっている
「アスカ…?」
病気が嘘なのは知っていたがシンジの前ではあくまで病弱だった。1人で外に出るなんて今まで無かった
「どこ行ったの?アスカ?」
『…セックスしよ?』
自分が言った言葉がアスカを苦しめたのだろうか…?



「アスカ…遅い…」
すでに病室に帰ってきて5時間はたった…
ベッドに1人腰掛けて深いため息を吐く…
「アスカ…帰ってきてよアスカ…」
ドーーーーーンッ!!!!
ビーッビーッビーッビーッビーッ!!!!
けたたましい爆発音と非常警報が鳴り響く
「…っ!?使徒!?」
ガラガラガラっ!!
「シンジ君!!」
「青葉さん!?」
病室に飛び込んできた青葉さんは僕の手首を掴むと走り出した
「戦自が攻めてきたんだ!!おそらく君達を狙っている!!」
青葉さんは廊下を走りながら状況説明をする
「アスカはっ!?アスカが病室に居ないんです!!」
「アスカちゃんはロストした!!
弐号機と共に!!」

579: パッチン 2007/10/21(日) 03:46:27 ID:???
ネルフ本部、発令所

「初号機は!?シンジ君は乗った!?」
作戦部長葛城ミサトの声が響き、確認作業に取りかかる日向マコト
「はい!いつでも発進できます!」
「よし、シンジ君聞こえる!?」
『ミサトさん…』
スピーカーから聞こえてきたのは戦いの前にしては、あまりにも弱々しい声
『アスカがいないんです…。なんで…弐号機もなくなるなんて…』
「あの子がいなくなった理由はわからないけど、あの子が弐号機を動かした事は間違いないわ
多分さっきの使徒戦の時にS2機関を取り込んだんだわ。電力無しで誰にも気付かれずに発進するなんて…」
そう言うとミサトは悔しそうに顔を歪める
「レイも行方がわからないし、今戦えるのはシンジ君。あなただけなのよ」
『・・・・・』
俯き黙っているだけのたった1人の戦士を必死で励まそうとするミサトだったが、死がすぐそこまで迫っている
「時間が無いわ。作戦を発表します」
『・・・・・』
「シンジ君、今回戦う相手は使徒じゃないわ…戦略自衛隊、人よ」
『・・・人…?
人を殺すんですか…?』
「そうよ、全員殺しなさい。
…作戦は以上よ」

580: パッチン 2007/10/21(日) 03:49:45 ID:???
『・・・・・』
予想通りの沈黙に深くため息を吐く発令所の一同
「シンジ君行きなさい!命令よ!!」
『・・・・・』
沈黙
「はぁ…。もうどうしたらいいのよ…」
座席に腰掛けて両手で頭を抱える作戦部長
…と、その時
プシューっ
「シンジ君!!」
そんな重い空気が流れる発令所に飛び込んで来たのは伊吹マヤと赤木リツコ
『マヤさん…?』
「リツコ!!」
座席から立ち上がり、リツコの所まで走って行くミサト
そしてマヤは入れ替わりにその座席に座り、シンジに話しかける
「シンジ君聞こえる!?」
『マヤさん…、僕…』
「シンジ君!行かなきゃダメよ!!
アスカと幸せになるんでしょ!?このままじゃアスカどころか誰も救えないわよ!!」
『・・・アスカを…救う…』
モニター越しに説得の声を荒げる
「アスカも葛城一尉も加持さんも碇司令もレイも友達もいない、そんな世界で幸せなの!?
そんな世界で幸せになれるの!?」
『・・・・・』
マヤの説得をうけ、ゆっくりとインダクションレバーに手をかけるシンジ
瞳は涙で潤んではいるが迷いの色はだいぶ薄れている
『・・・・・わかりました…。戦います…
僕は…、アスカと…
みんなと一緒の世界がいいです…』

581: パッチン 2007/10/21(日) 03:51:25 ID:???
「エヴァンゲリオン初号機、発進!!」
地上に射出された初号機を見送り、ミサトはリツコのもとに向かう
「はぁ…、言いなれた言葉もこれが最後かと思うと少し寂しく感じるわね…」
そんなことを言いながらリツコからコーヒーを受け取る
「指示はいいの?作戦部長さん?」
「オペレーター3人が頑張ってるから大丈夫よ
・・・そんな事より、あんたのポケットがさっきから気になんのよねぇ…
自爆作戦なんか指示してないわよ?」
そう言うとリツコは白衣のポケットからリモコンのような物を取り出す
「ふふっ…、徹夜で作ったのに使わなかったわね…」
クスリと笑い、フタを開けて単3電池を取り出し、ポイポイと捨てるリツコ
「・・・ネルフ爆破未遂の動機は?」
「好きな男と心中したかったのよ」
自分には似合わない言葉ね…。リツコはそんなことを考えながら静かにコーヒーを口に運ぶ
「・・・未遂で終わらせた理由は?」
「幸せにならなきゃいけない子がいたからよ…」
リツコの目線の先には必死に初号機を援護する1人の女性
「あの子が幸せになるまで死なせたくなかったのよ…」
「ふぅ~ん…、天下の赤木リツコが人の幸せを願うなんてね」
「本当…。無様ね…」

582: パッチン 2007/10/21(日) 03:53:33 ID:???
同時刻、ネルフ本部最深部…

エレベーターから降り、ターミナルドグマへと向かう碇ゲンドウと綾波レイ
「この時を待ち望んでいた…」
レイは無言でゲンドウの後をついて行く
「もうすぐターミナルドグマだ。
レイ、心の準備はいいな?」
「はい…」
リリスへと続く扉を開くゲンドウ
・・・が、そこにはすでに先客がいた

「お待ちしておりましたわ」

その先客はゆっくりと振り向き、青い瞳をこちらに向ける

「お義父さまっ♪」

リリスの真下に立ち、微笑みながらそう言ったのはセカンドチルドレン
惣流 アスカ ラングレー
「セカンドチルドレン…?貴様なぜここにいる…」
拳銃を取り出し、微笑みながらふざけた態度をとるアスカに銃口をむける
「そこをどけ…殺すぞ…」
「お義父様!?家庭内暴力はダメですわ!!」
なおもふざけるアスカに苛立ち、ゲンドウは拳銃の引き金を引く
バキューーーガギンッ!!!!
だが、赤い血が舞い上がるハズだった視線の先に現れたのは六角形の心の壁
「っ!?」
驚愕に顔を歪めたゲンドウの前には、クスクスと笑いをこらえているアスカが立っている

583: パッチン 2007/10/21(日) 03:55:38 ID:???
「レイ。こっちに来なさい危ないわよ…」
「えぇ…アスカ」
ゲンドウの後ろに立っていたレイはアスカのもとに歩いていく
「ATフィールド…。レイ、お前が出したのか…?」
アスカと並ぶように立ったレイはゲンドウの問いに無言で首を横に振る
「ママのATフィールドよ…
アンタ達ネルフが殺したママのね…」
先程まで笑っていたアスカの目が、冷たいモノに変わっていく
「ママ、出てきていいわよ?」
アスカが呼びかけると、巨大な十字架に隠れていた弐号機がゆっくりと顔を出す
「貴様…何が目的だ…」
「アンタみたいな糞野郎には教えるつもり無いわよ
ねぇアタシさぁ、アンタ嫌いなのよね…。シンジをイジメるから…シンジを苦しめるから…
そしてなにより…
糞野郎のクセにシンジがアンタと仲良くしたがってるから…」
アスカはゆっくりと左手を上げる
「シンジが…俺と仲良く…?」
「そうよ…。アンタはシンジの気持ちを踏みにじったのよ…」
シンクロする弐号機もゆっくりと左手を上げる
「・・・そうか…
・・・すまなかったな…シンジ…。」
「ママ…。右手以外いらないから切って…」

アスカと弐号機が同時に左手を振り下ろした瞬間ゲンドウの右手以外の部分が吹き飛んだ

608: パッチン 2007/10/24(水) 23:40:44 ID:???
地下
アタシは血にまみれた碇ゲンドウの右手を拾い上げ、手袋を抜き取って手のひらを見やる
「これがアダム…」
「そうよ。それがアダム…、サードインパクトの要…」
独り言のようにポツリ呟くアタシの後ろから声をかけるレイ
「これがあれば、アタシの望む世界になるの…?」
「そう、あなたの望むままの世界…
あなたの思い描くイメージに限り無く近い世界に生まれ変わるわ」
アタシはアダム片手にレイの言葉に振り向く
「…ねぇレイ?
アタシの願い事わかる?」
アタシの問いかけにレイはフッと微笑む
「あなたの考えることなんか大体わかるわ…」


地上
S2機関を取り込み、強力なATフィールドを操る初号機に次々と破壊され、戦自の軍隊はほぼ壊滅的であった
…が、今は戦自など相手にしていられない
新たに上空から舞い降りた量産型エヴァ9体
「ハァ…ハァ…。
なんなんだよコイツら…」
腹に穴を開けても、足を切り落としても、蘇る9体のエヴァ相手に戦い始めて1時間は経過した
そもそも戦闘自体が久しぶりなシンジは体力も限界に近い
「…っくそぉ!!!」
グヂュッ!!
再び量産エヴァの顔面にナイフを突き刺す
シンジは殺しの無限ループに突入していた

609: パッチン 2007/10/24(水) 23:42:39 ID:???
地下
アダムを手に入れたアタシはレイのもとに歩み寄っていく
「・・・レイ…」
「さぁ、アダムを私に…」
両手を前に出したレイにアタシはアダムを差し出す
アタシは今、アタシの望む物のためにレイを…
友達の命を利用しようとしている
「・・・ねぇレイ…、ごめん…ごめんね…。
アタシ最低かな…?」
アダムをレイに渡したアタシは、血に濡れた手で流れでた涙を拭った
「最低かもしれないわね…。
・・・でも私はアスカがどんな存在であっても見捨てたりしないわ」
アダムがゆっくりとレイの腹部の辺りに吸い込まれていった…
「友達でしょ?」
そう言ったレイは最高の微笑みをアタシに向けてくれた
「・・・うんっ…。ありがとうレイ…」
レイがアタシの視界からゆっくりと消えていく

ただいま

リリスの仮面が剥がれ落ちていく

おかえり

白い光がアタシを包む
何も見えない真っ白な世界がアタシを包む
レイの姿は見えない。でも聞こえるレイの声
アタシの心に聞こえるレイの声
『アスカ・・・。あなたは何を望むの・・・?』
アタシの身体が溶けていく…
シンジに抱かれるような温もりに包まれながら…
LCLに溶けていく…

610: パッチン 2007/10/24(水) 23:45:12 ID:???
発令所
地上で量産エヴァに苦戦するシンジを援護していたマヤは、地下からの異変にいち早く気付いた
「…っ!?ターミナルドグマより強力なATフィールドが発生しています!!
パターン青!!使徒です!!」
マヤの報告に一気に混乱に陥るネルフ職員達
「な、何が起こったのよリツコ!!」
ミサトは一番状況を把握していそうなリツコに問う
慌てふためくミサトに対して、冷静とも諦めともつかない表情でリツコは問いに答える
「…何が起こったかは大体わかるけど
どうなるかはサッパリわからないわ」


地上
すでに限界を超えた疲労は初号機の動きにも完全に現れていた
一体の量産エヴァの腕を引きちぎり、次の相手に身構える
「ハァ…ハァ…。・・・っ!!」
後ろからの気配に、振り向きざまにATフィールドを発生させる
そこに存在したのは巨大な槍
「・・・なんだ…?・・・この槍…」

槍はATフィールドをゆっくりと貫通していく

「ひっ…」
急激に恐怖がシンジの身体中を這い回る
そして次にシンジを襲ったのは右目から全身に広がる激痛
「ぎゃあああああああああ!!!!」
悲鳴をあげたシンジは右目を両手で抑え、指の隙間から大量の血をこぼす

611: パッチン 2007/10/24(水) 23:47:56 ID:???
「あぐぅぅ…。ひぃぃい…」
痛い・・・痛いよぉ・・・
右目を抑えていた手をゆっくりと離す。
「はぐぅ…。ぐぎぃぃ…」
もうやだ・・・戦いたくない・・・
血まみれの両手でインダクションレバーを握る
「はぁ…あぐぅぅ…」
でも・・・負けたら終わりだ・・・
初号機は右目に刺さっている槍を握り、ゆっくりと引き抜いていく
「ひぎぅぅ…。くふぅっ」
コイツらを殺して・・・僕は・・・みんなと生きる
自らを貫いた槍を右手に持ち、量産エヴァに向き直る
「うあああああああああ!!!!」

『苦しまなくていいよ…シンジ…』

「ーっ!!?」
心に直接響くような声が、血と狂気に染まったシンジを止まらせた。その声は最愛の女性によく似ていた
「アスカ…?アスカなのっ!?」
『シンジぃ、ここだよぉ~』
キョロキョロと辺りを見やるシンジを、『アスカ』が後ろからギュッと抱きしめる
『頑張ったね…偉かったよシンジ?』
「・・・あぅ…。・・・アスカぁぁ…」
シンジはアスカの胸に顔をうめて、小さな子供のようにエンエンと泣く
『ふふっ…。気持ちいい?シンジ?』
・・・うん・・・気持ちいいよアスカ

僕の身体が溶けていく…
アスカに抱かれながら…
LCLに溶けていく…

612: パッチン 2007/10/24(水) 23:49:46 ID:???
発令所
「ターミナルドグマの使徒がどんどん巨大化していきます!!
初号機、量産エヴァ、共に活動停止しました!!」
「シンジ君!!シンジ君返事して!!」
地下、地上の異変の状況説明に必死な青葉シゲルと、急に通信が途絶えた初号機に呼びかける伊吹マヤの声が響く
「・・・リツコ、どうなるの…?」
「さぁ?どうなるかしらね
でも初号機と量産エヴァが止まったのは地下にいる人が原因なのは間違いないわ
そして、これから私達がどうなるかも、その人次第よ」
リツコはそう言うと煙草に火を灯す
「『その人』って誰よ!?誰が地下にいんのよ!!
そいつは、なんでこんな事すんのよ!?」
ミサトは隣で煙を吐き出すリツコに向き直り、怒鳴りつける
「・・・それがわかっても私達にはどうする事も出来ないわよ
ほらっ、煙草いる?」
そう言うと、胸ぐらを掴む勢いのミサトに1本差し出して少し微笑む
「・・・もらうわ」
再び煙草片手にリツコの隣に立つ

「・・・あんたの笑顔なんか久しぶりに見たわよ」
「そう?最後かもしれないし、いい思い出でしょ?」
「ハァ…。ホントどうなんのかしらね…」
「さぁね。・・・まぁ生きて還ってきたら、また笑ってあげるわ」

618: パッチン 2007/10/28(日) 06:31:43 ID:???
第3新東京市 コンフォート17

「んぁ…。朝…か…」
朝日差し込む僕の小さな部屋の、小さなベッドの上で僕は目を覚ました
見飽きた天井だ
「むにゃ…、ふぁ~ぅ…」
まだショボショボする瞼をグシグシと擦りながら、ノソノソと布団から這い出す
朝には強い方だけど、日曜日の朝は強敵なのだ
「…眠い」
でも起きなきゃダメだ。今日も遊びに行く約束しちゃったし
はぁ、顔洗お…

洗面所には先客がいた。
「おはよう。カヲルお兄ちゃん」
「や、やぁ。おはようシンジ君」

顔洗いの途中だったカヲルお兄ちゃんは声をかけた僕の方を、ボトボトの顔で振り向たせいで床を濡らしまい、1人焦っている
カヲルお兄ちゃん29才
血のつながりこそ無いけど僕の大事なお兄ちゃんだ
…まぁお兄ちゃんと言える年でもないのだが、昔からこうだから今更だよね
「ははっ、今日は休みなのに早いね。どこかに出かけるのかい?」
長身の体を縮こませ、床を拭きながら僕を見上げるカヲルお兄ちゃん
「うん。遊びに行くんだ」
「そうかい。じゃあ早く朝ご飯を食べよう
僕は先に行くよ」
そう言いながら何事もなかったかのように、キッチンに向かう姿は少しマヌケに見えた

619: パッチン 2007/10/28(日) 06:33:48 ID:???
キッチン

「おはようございますマヤさん」
「おはようシンジ君。朝ご飯出来てるわよ」
キッチンに来た僕を笑顔で出迎えたのは、伊吹マヤさん
今年さんじゅう××才になる僕のお母さんみたいな人だ
「今日も出かけるんでしょ?早くご飯食べましょ」
「はいっ」
席についた僕は朝ご飯の目玉焼きにプツリと箸を刺して黄身を潰す
…何故かこれをする時は、いつも右目が少し疼く
「今日もお隣に行くのかい?」
そう言ったのは僕の隣で、大量の納豆をグリグリとかき混ぜるカヲルお兄ちゃん
「うん。一緒に宿題もしたいしね」
「ふふっシンジ君も来年から受験だし、いっぱい勉強しなきゃね」
キッチンでの作業を終えたマヤさんは僕の後ろに回り込んで、僕の頭を撫でる
「わかってますよぉ!」
「あはは、怒った怒った~♪」
「もうっ!子供扱いしないでください!」
からかわれた僕は少しムスッとしながら、お味噌汁に口をつける
「ねぇシンジ君。僕も一緒に行っていいかい?」
僕とマヤさんを傍観していたカヲルお兄ちゃんは僕にそう言ってきた
「え…カヲルお兄ちゃんも来るの…?」
「ははっ。心配しなくても アスカちゃん を盗ったりしないよ」
「そ、そんな事気にしないよ!!」

620: パッチン 2007/10/28(日) 06:35:38 ID:???
ピンポーンっ

お隣のチャイムを鳴らすと中からトテトテと足音が聞こえ、ガチャッとドアが開く
「あら、いらっしゃい」
出て来たのはレイお姉ちゃん。カヲルお兄ちゃんと同い年の、とっても綺麗な人だ
「こんにちは、レイお姉ちゃんっ」
「ふふっ、こんにちはシンジ君
・・・それで、ソコのあなたは何しに来たの?」
僕には微笑みで挨拶してくれたレイお姉ちゃんは、カヲルお兄ちゃんをギロリと睨みつける
「ははっ、まだ怒ってるのかい?過ぎた事は水に流そうよ」
この2人は同じネルフという研究所で働いてるらしいんだけど、カヲルお兄ちゃんがいつも余計なことをやらかして仕事を増やすらしく、仲が非常に悪いんだ
「ごめんねシンジ君。アスカまだ寝てるから起こしに行ってきてくれる?」
「はい。わかりました」
「じゃあ綾波さんは僕と一緒に映画でも行こ…」

メギュッ!!

「さよなら」
「・・・好意にあたいしないよ」
靴べらでカヲルお兄ちゃんの鼻をへし折ったレイお姉ちゃんは、僕だけを部屋に入れてドアを閉めた
血まみれの靴べらを持ったレイお姉ちゃんは僕にむかって微笑んだ
「シンジ君はあんな大人になっちゃ駄目よ?」

・・・怖い…

621: パッチン 2007/10/28(日) 06:37:52 ID:???
「あら、シンジ君いらっしゃい」
玄関で待っていたのはリツコおばさん今年よんじゅう××才
アスカのお母さん代わりの人だ
「ふふっ、いつも大変ね。アスカ待ってるわよ」
いつもの笑顔を浮かべて僕にそう言ってくれるリツコさん
僕はこの人の笑顔が大好きだ。
優しい優しい笑顔だから
「あら、レイ今日は靴べらで殺ったの?」
「えぇ、虫ケラでも血は赤いのね」
「うふふっ、本当ね♪」
でもこの人のこういう笑顔は怖い
「ほらシンジ君、アスカ起こしてきて」
「あっ、はい」
僕はリツコおばさんの言葉にハッとして、アスカの部屋にむかった



「アスカ~?僕だよ~」
アスカの部屋に入った僕は、ベッドの上のこんもり膨らんだ掛け布団に話しかける
「すぴゅ~すぴゅ~」
寝息らしきモノが聞こえる
いつものようにアスカのベッドに顔を寄せる僕
「ねぇ起きてよアスカ…」
すると、なんとビックリ
静かな寝息と共に上下していた布団が吹っ飛んで、アスカが顔を出したのだ
「ジャーン!!起きてま~したっ!!」
「わ~びっくりしたな~」
そして『いつものように』驚いた僕は

「シンジぃ~♪おはようのキスぅ~!!」
『いつものように』アスカに唇を奪われた

622: パッチン 2007/10/28(日) 06:41:17 ID:???
その後、しばらくベッドの上でキャッキャとじゃれあっていた僕とアスカだったが
『ぐぅ~っ』
…というアスカのお腹から発生した終了の鐘により、シーツがしわくちゃになったベッドの上は沈静化した
「うっ…。だって朝ご飯食べてないしさ…」
少し頬を紅く染めて、言い訳がましく呟くアスカ
「じゃあ朝ご飯リツコおばさんに持って来てもらう?」
「うんっ♪」
嬉しそうに頷くと、寝転がっていたアスカは今まで入り込んでいた僕の腕の中から出ようとする
…でも僕は離さない
「ぅんっ?ちょ、ちょっとシンジ、ご飯食べるんでしょ?離してよ」
「・・・ねぇ、寝起きのアスカって温かいね…。それに甘い香りがする…
シャンプー?石鹸?…アスカの匂い?」
抗議の声を無視して、僕はアスカの首筋に顔を埋める
「ば、バカっ!!朝っぱらから何言ってんのよぉ!!」
耳まで真っ赤っかだね…
僕は首筋に埋めていた顔を徐々に下げていき、アスカのお腹の辺りに辿り着く
「ねぇ、もう1回お腹鳴らしてよ…?
可愛かったよ、さっきのアスカ…」
「や、やだぁ…。恥ずかしいよシンジ…」
気弱なアスカの声
僕しか聞けない…、そして他の誰にも聞かせたくない
そんな、どうしようもなく可愛い声
そんな声を聞いてしまった僕は、お腹に貼り付けていた顔をゆっくりと上げてアスカを見上げる

「アスカ…。セックスしよ…」
そう言った僕の顔を見つめて、顔を真っ赤にして『迷うフリ』をするアスカ
…そして、いつものように小さく頷く

623: パッチン 2007/10/28(日) 06:43:14 ID:???
僕とアスカには両親がいない
今から14年前の2016年、僕らが産まれた年にネルフという研究所で働いていた僕の両親とアスカの両親は、事故で亡くなったらしい
そして引き取ってくれるような親戚もいなかった僕らを、ネルフで働いていたマヤさんとリツコおばさんが引き取ってくれた
(当時からカヲルお兄ちゃんと、レイお姉ちゃんは研究のお手伝いをしていたから、一緒に住んでいたらしい)

そして同じ境遇にあり、お隣さんの幼なじみだった僕とアスカは急激に仲良くなり、小学5年生の頃には『こいびとどうし』になっていた
そしてそれと同時に・・・大人の階段を登ってしまった
正直なんであんな歳であんな事をしたのか、なんであんな事をしようと思ったのかもわからない
でも何故か行為が終わった後は、罪悪感や後悔の念は欠片も無く
僕もアスカも、まるで『昔からの約束』を果たしたかのような充実感の中、いつまでも抱き合っていた

『この娘と一緒に生きよう』と思った
『僕と一緒に生きたい』と思ってくれた

こうなる事が…。アスカと愛し合ってるのがすごく当たり前のような、でもなんだか夢の中ような不思議な気分だった

僕達は何故こんなにも愛し合うんだろう・・・

629: パッチン 2007/10/30(火) 00:28:52 ID:???
赤木家のベランダ

赤木家のベランダと伊吹家のベランダは壁一枚を隔ててあるだけなので、少し体を外に出せば相手の家の人間と会話が出来るような仕組みになっている
そして今日も煙草片手にリツコが、布団叩き片手にマヤが楽しげに世間話をしていた
…だが、会話の合間に赤木家からは、朝とは思えないような声が時たま響いてくる

『ふわうぁぁ~っ!!シンジもっとぉ!もっとぉぉ~!!』

「はぁ…うるさいわねぇ、あの子達」
リツコは煙と溜め息を同時に吐き出しながら、愚痴を吐く
「ホントですねぇ
…あれで付き合ってるのが、バレて無いと思ってるからスゴいですよね」
マヤはそう言うとクスリと笑った
あの2人はあくまでも他の人達の前では、ただの幼なじみを演じている
(演じてはいるが目を覆いたくなるような三文芝居である)

「まぁ成長したって事よね…」
「そうですね。もう『あのアスカとシンジ君』と同い年ですもん」
「はぁ…。年取るワケね」
リツコは自らの顔を指でさする
すっかり母親が板についてしまったリツコの顔は、多用し過ぎた『笑顔』のためか、優しさの年輪が増えてきていた
「私が母親か…
ふふっ、14年前の私が聞いたら発狂しそうね…」
そしてリツコは煙を吐き出し、14年の思い出にふける

630: パッチン 2007/10/30(火) 00:32:12 ID:???
14年前
2016年 ネルフ本部

戦自を壊滅に追い込んだ初号機と、量産エヴァが停止した
そしてその後、地下の使徒の反応が役目を終えたかのように消えた
一時の緊急事態の連続がウソのように、一気に平和になってしまったネルフ職員達は呆気にとられていた
「リツコ?これで終わり?あたし達の戦い…」
葛城ミサトはポカンと口を開けながら、隣のリツコに訪ねる
「・・・みたいね。サードインパクトも防げた。
戦自と量産エヴァも攻撃してくる様子無し。
つまり私達の勝ちね」

静まり返る発令所は伊吹マヤの猛烈なタイピング音のみが響いていた

「・・・あっ!初号機エントリープラグ内のモニターが映ります!!」
その声に、やるべき事が見つかった職員達は慌ててモニターに目をやる

しかし、そこに見えた様子は過去に見た映像と非常に酷似していた

「いない・・・。シンジ君がいない・・・」
「LCLの成分を調べて!!急いで!!」
モニターの映像に呆然と立ち尽くすミサト
その隣で職員達に早急に指示を出すリツコ
職員達がリツコの指示に従い、発令所を出ようとした瞬間、その職員達を押し戻すようにこちらに向かってくる2つの影
ミサトは目を丸くする

「レイ!!…渚君!!」

631: パッチン 2007/10/30(火) 00:34:04 ID:???
「LCLの成分は調べなくてもわかるよ
惣流さんとシンジ君がその中で溶け合っているんだ
ね?綾波さん」
カヲルは笑顔でそう言うと、隣のレイを見やる
「えぇ、これがアスカの望んだ結果
碇君と共に、永遠に一緒でいたい…。
アスカはそう願ったの」



その後、状況把握がまるで出来ていない作戦部長のあたしのために、緊急会議が開かれた
その時、レイと渚君は全てを話してくれた
『自分達が使徒だったこと』
『2人がLCLに溶けたのは、アスカの仕業だったこと』
『その時、アスカが願った事はそれだけでは無く
量産エヴァの停止
レイと渚君を人間にする事
を願ったらしい。』

「ははっ、正直僕は惣流さんに嫌われてると思ってたからビックリしたよ」…と渚君
「大事な弐号機に変な寄生虫がいるのが嫌だっただけでしょ」…とレイ

『アスカとシンジ君は、もともとお互いを愛し合っていたから、LCLからサルベージするのは非常に難しいとのこと』
そしてネルフ職員達に、・・・もちろんリツコにも告げられる最後の報告
『碇司令はドグマで死んだ
殺したのはアスカ』…との事だった

その最後の報告の後も会議は続いたが、リツコは1人会議室を抜け出して行った

632: パッチン 2007/10/30(火) 00:36:19 ID:???
そして会議から3ヶ月後…

ネルフ本部 研究所
初号機から取り出したアスカとシンジが溶け合ったLCLは、本部内の巨大なガラス張りの水槽の中に移動させられていた
その水槽を前にリツコ、マヤを筆頭としたネルフの頭脳達が作業を続けている
そして今、アスカとシンジのサルベージが始まった


同時刻、ネルフ本部 休憩所
「あの2人還ってくると思うかい?綾波さん」
自動販売機前のベンチに腰掛け、白玉入りおしるこを飲みながら隣の少女、綾波レイに話しかける渚カヲル
「知らない。私はあの2人じゃないもの」
素っ気なく答えるレイを見て、カヲルはニヤリと笑う
「クールなキャラ演じても、お守り両手に握りしめながらじゃ違和感ありありだよ?」
見透かしたようなその言葉に、レイは頬を少し紅らめる
「…文句言わないであなたもお祈りしなさい」
レイはスカートのポケットから、神社で大人買いしたお守りをカヲルに投げつけた
「うわっと・・・安産祈願のお守り…。
叶うかな…?」
カヲルは苦笑いを浮かべて、缶の奥に溜まった白玉を口に放り込み、そのまま空き缶をゴミ箱に放り込む
そしてレイと同様にお守りを両手で握りしめ、再びベンチに腰掛ける

633: パッチン 2007/10/30(火) 00:39:05 ID:???
「ねぇ、惣流さんとシンジ君を補完したのは綾波さんだろ?
なんで還ってきてほしいの?」
アスカの望むように2人をLCLに溶かしたのは、他ならぬ綾波レイだ
そのレイが2人が還ってくるのを願う事にカヲルは疑問を抱いていた
「わからない
でも私は間違っていたような気がするの…」
お守りを握る両手に顔を押し付けて、悲しげに呟く
「ふぅ~ん
・・・まあ僕も後悔してるんだけどね
惣流さんに補完計画の秘密を教えたのは僕だし」
お守りの紐を指で摘みながら、カヲルはそれをクルクルと回す
「ゼーレの計画に惣流さんの気持ちを利用した僕は最低だ
しかも、作戦は大失敗。補完されたのは2人だけで、ゼーレはネルフに撲滅される
そして、ゼーレの回し者であるその使徒は人間になり、今はネルフ本部で暮らしてる」
「ツラいの…?」
おどけた様子で話していたカヲルの瞳は、うっすらと涙が滲んでいた
「・・・ツラいよ、僕は裁かれていないんだ。
ネルフは僕をかばってくれた、殺さなかった
あの2人を利用しようとした僕は最低なのに…」
自らの犯した罪が自らを苦しめている

最低な僕を、あの2人を裏切った僕を殺してほしい

パーーーーンっ!!!!

634: パッチン 2007/10/30(火) 00:40:29 ID:???
いつの間にか立ち上がって正面にまわっていたレイはカヲルの銀髪を左手で掴むと、右手で頬を思い切り張った
「…っ!?」
急な出来事に反応できないでいるカヲルに、レイが口を開く
「あなたは最低よ。だから叩いたの
あなたの気が済むまで…。あなたの罪が消えるまで私が叩いてあげる」
そう言ったレイは少し微笑むと、カヲルの右手を握る
「綾波さん…?」
「そして私も最低な人間よ
あの2人を溶かした私の罪が消えるまで、あなたも私を叩いてほしい」
あまりにも不器用な方法だ

パーーーーンっ!!!!

「まだ消えない?」
「うん…、こんなもんじゃ消えないよ」

パーーーーンっ!!!!

「消えそうかい?」
「まだまだかかるわ…」

パーーーーンっ!!!!

休憩所の床には血が滲み始めていた

635: パッチン 2007/10/30(火) 00:43:03 ID:???
「あ、あんた達なにやってんのよ!!」
廊下を歩いている時、凄まじい張り手の音が聞こえた葛城ミサトは、張り手音の発信元である休憩所に来た
すると、そこに居たのは鼻血と頬のモミジで真っ赤な顔になった2人だった
「葛城三佐…」
「ケンカしてる場合じゃないわよ!!
アスカとシンジ君のサルベージ終了の連絡が来たのよ!!」
「…っ!!」
何か言いたげな顔をしたレイだったがミサトの言葉にハッとした表情になり、無言のまま研究所に走り出す
そしてカヲルとミサトも後を追うように走る
廊下にはレイとカヲルの鼻血が点々と足跡を残していた



その時、研究所は異様な静寂に包まれていた
「先輩…。これは成功なんでしょうか…?」
「わからないわ…」
悩む2人の前には、サルベージされたアスカとシンジが存在するが…

「「「赤木博士(リツコ)!!!」」」

そんな研究所に飛び込んで来た3人の人間は、先程まで静寂していた研究所を再び慌ただしくする

「「ふぎゃあああ!!」」

「・・・リツコ…。なによコレ…」
「ちょっと起こさないでよミサト!!やっと寝たんだから!!」
アスカとシンジが居るハズだった水槽の前には、赤ん坊が2人
「え~っと…、紹介します。
サルベージされたアスカとシンジ君です」
苦笑いでそう言ったマヤは、研究員に抱かれた赤ん坊2人を指差す

呆然とするレイのポケットから『安産祈願』のお守りがポロポロとこぼれ落ちた

650: パッチン 2007/11/01(木) 01:10:26 ID:???
ずっと2人だけでいたい。2人だけなら幸せだから
みんなと一緒にいたい。一緒に幸せになりたい
アスカとシンジ君の中にある二つの思いが、中途半端なサルベージを引き起こしたらしい



第3新成田空港
「私がシンジ君を引き取ります
だから心配しないで下さいね」
手を上げたのはマヤだった。そして渚君も
「こんなことで罪滅ぼしになるなら、僕は一生シンジ君のお兄さんでいいよ」
そう言うと、しゃがみ込んだ渚君は青いベビーカーで眠るシンジ君の頭を優しく撫でる
「アスカは私が育てます。イタイ…
だから安心して行って下さい。ヤメテ…」
続いて手を上げたのはレイ
最初は赤いベビーカーに乗っていたアスカだが、じっとしてるのが嫌らしく、今はレイに抱かれながら青い髪の毛を不思議そうに引っ張っている
「…レイ1人じゃ心配じゃない?」
彼女には悪いが、レイ1人に任せるのは不安でしょうがない
「私も居るから大丈夫よ」
「リツコ?」
先程まで無言を貫いていたリツコが口を開いた
「リツコ…。あんたでも碇司令…」
「飛行機出るわよ。早く行ったら?ミサト」
確かに時間はあまり無い…
しゃあない。少々不安だが、マヤも近くに居るし大丈夫だろう

651: パッチン 2007/11/01(木) 01:13:12 ID:???
「ふぅ、じゃあそろそろ行くわ」
私はそう言うと、レイが抱っこしているアスカに顔を寄せる
「ふふっ、今度はもっと素直な可愛い性格になるのよアスカ?」
好奇心旺盛の蒼い瞳で私をパチクリ見やるアスカのプルプルほっぺにソッとキスする

可愛い私の妹ちゃん。今度は天才じゃなくてもいいんだよ?
幸せになってくれたらそれでいい

続いてベビーカーで眠るシンジ君に顔を寄せる
「あんたはもっと男らしくなること。もうウジウジ悩んだりしちゃ駄目よ?」

可愛い私の弟くん。今度は苦しまなくていいんだよ?
元気に育ってくれたらそれでいい

私は眠るシンジ君のほっぺに唇を寄せる…
「あぅ~!!た~う~っ!!!」
「ん?・・・ぷっ、なに?アスカ嫉妬してるの?」
ほっぺに唇が触れる寸前にアスカがもの凄いうめき声をあげる
私はクスクスと笑いながらほっぺから狙いを変えて、寝ているシンジ君のプリプリの唇に唇を重ねる
「あ゛う゛~!!!あ゛あ゛~め゛~!!!」
私は唇を離してアスカの方を見て、ニヤリと笑う

「葛城三佐…。根性悪い…」
暴れまわるアスカを抑えながら、レイは呟く

652: パッチン 2007/11/01(木) 01:15:13 ID:???
「みんな~バイバ~イ♪」
スーツケース片手に私は搭乗口にむかう
「また14年後会いに来るわね~!!」
ブンブンと手を振る私
最後まで明るくね
お別れの寂しさは、あのバカにだけ話そう
そして14年後…、再会の喜びはみんなでね♪

653: パッチン 2007/11/01(木) 01:17:12 ID:???
『ああああ~っ!!シンジぃ好き!!好きぃ~イクイクぅぅ~っ!!
あああ~んっ好きぃ~!!』
バタバタドタンッ

「はぁ…。なによ、人がせっかく思い出に浸ってる時に…」
屋内から響く、聞いてるだけでも恥ずかしい声にリツコは現実に引き戻される
「思い出?14年前のことですか?」
「まあね。
・・・ふぅ、ミサトが帰ってくるまで、あと3日か…」
やっと静かになったベランダに、ライターで煙草に火を灯す音が小さく響く
「この前ひさしぶりに連絡ありましたよ。『リツコはちゃんと母親してるの?』って」
「ふふふっ、想像つかないでしょうね。私のこんな姿」
「そうですね。でも、エプロン姿の先輩も素敵ですよ♪」
「ありがと。もう『ママ』って呼ばれることにも違和感ゼロだもの」
そう言うとリツコママは再び煙を吐き出す
「あら、もうこんな時間ね…。昼ご飯作らなきゃ」
煙草をくわえて腕時計を見やる
おそらくお腹ペコペコで昼飯にありつくであろう2人のためにリツコは主婦に戻る
「じゃあシンジ君のお昼はこっちで作るから
マヤ。また後でね」
「あ、はい。じゃあよろしくお願いします」
リツコが部屋に戻ったのを確認すると、マヤも布団叩き片手に部屋に戻った

654: パッチン 2007/11/01(木) 01:23:08 ID:???
カラカラカラ…
「ふぅ、暑かった…」
ベランダから部屋に戻ったリツコは、後ろ手に窓を閉めるとキッチンに行き、冷蔵庫を開ける
額にたまった汗に当たる、ヒンヤリとした冷気が心地いい
「…チャーハンでいいわね」
材料を取り出し、まな板の上に並べる
「ん?・・・あ、これ…」
ふと目に止まった戸棚を開ける。中には黒っぽい液体の入った小ビンが転がっている
…ハッキリ言って毒薬である
「そうか…。14才の誕生日に…」
14年前の私…。アスカを憎んでいた私…。
14才のアスカを。碇司令を殺した『14才のアスカ』を殺したかった私
アスカを殺すためにアスカを育てる決意をした私
14年前の私は今の瞬間を待ち望んでいただろうに…。14才のアスカに料理を振る舞う瞬間を…
でも・・・「くすっ、忘れてたわね…。」
本当に忘れていた

「幸せすぎて…」

目の前に広がる世界に小さくため息を吐く
3才のアスカが書いてくれた私の絵
額縁に飾ってある素敵な思い出
10才のアスカと24才のレイと、3人で芦ノ湖に行った時の写真
テレビの上に飾ってある素敵な思い出

流し台の排水溝に黒っぽい液体が流れていく…

『し、シンジ~っ!!激しいよぉ~!!
2回目だから優しくしてよぉ~っ!!』
「無様ね…」

668: パッチン 2007/11/03(土) 04:39:00 ID:???
「ねぇママぁ~まだ着かないの?
ていうか、どこ行くのよ?」
平日だというのに、学校を休まされた僕とアスカは、リツコおばさんの車の後部座席に並んでいる
「さぁ?どこかしらね」
「もう!朝からそればっかりなんだから!!」
どこに行くのかもわからない車に乗せられ、アスカはかなりカリカリしている
…僕は学校サボれて嬉しいけどね
「ふふっ、もうすぐだから安心しなさい
邪魔しないから、その間2人でイチャイチャしてたら?」
「な、なに言ってんのよママ!!アタシとシンジはそんなんじゃないわよ!!」
…と、叫びながらバックミラーの死角を利用して僕と絡めている指を、キュッと握り直した



第3新成田空港
空港に着いて、ロビーをうろついていた僕達3人。
はじめはポカンとした表情で僕の隣を歩いていたアスカだが、徐々に顔がニヤけ始める
「旅行!?旅行だったのねママ!?嬉しいぃ~っ♪♪」
「違うわよ」
「ガーーーン!!」
アスカの喜びピョンピョン運動は、おばさんの一言で完全停止した
「なによなによ…
なによもうっ!!」
ドスドスと地団太を踏むアスカに苦笑いを浮かべながら、僕はリツコおばさんの方に振り向く
「ねぇリツコおばさん?」
「なに?」
僕は、『何故この場所にいるのか?』という疑問をリツコさんにぶつけ…

「しっ、シンちゃーーーんっ!!!!」

…ようとしたが、僕の開きかけた口は巨大な胸に押さえつけられた

669: パッチン 2007/11/03(土) 04:40:42 ID:???
「うぅ…。シンちゃん、シンちゃん…」
むりむりと胸を押し付けられながら、ワシャワシャと頭を撫でられる
凄まじい混乱の中聞こえるのは、どこか懐かしい女性の泣き声と、怒髪天を突くアスカの絶叫
「だ、誰よアンタぁーーー!!
こら糞ババア!!さっさとシンジから離れろぉぉ!!」
「あぁ!!アスカぁーーー!!!」
ぎゅぅぅぅっ
「ぎゃああああ!!!」
そして僕を抱き締めていた女性は僕から離れ、そのまま怒り狂うアスカを抱き締め始めた
ハグ魔か…?
「ヤダぁぁ離れろぉぉ!!シンジ見ないでぇぇ!!」
無茶苦茶に撫で回す手によってアスカの髪はグチャグチャになっている
ごめんねアスカ。ちょっと面白いから見ちゃうや
「アスカもすっかり大きくなってぇ~!!あの頃と変わらないじゃないのよぉ♪♪」
『大きくなった』『あの頃と変わらない』
矛盾しまくりな言葉を発しながら、アスカのほっぺにキスの乱れ撃ちをする
「ひぃぃっ!!やめてぇぇーーーーー!!!!」
・・・こんな目に合わせるために僕達を連れてきたんですか…
リツコおばさん…?

670: パッチン 2007/11/03(土) 04:42:32 ID:???
コンフォート17
「ただいま~♪嗚呼久々の我が家!!」
「シンジの家よ!!アンタの家じゃない!!」
空港、車内、そしてマンションに着いてからも常にハイテンションな葛城さん

葛城ミサトさん今年よんじゅう××才
元ネルフ職員で、僕とアスカも赤ちゃんの頃可愛がってもらったらしい
…正直こういう人に会うと、どうしていいかわからない
相手はノリノリで僕らに話し掛けてくるが、こちらは苦笑いを浮かべるしか対処のしようがない
…まあアスカは『空港抱きつき事件』から、ずっと葛城さんのこと毛嫌いしてるみたいだけどね

「おかえりなさいみんな!葛城さんもお久しぶりです!!」
キッチンから、スリッパをパタパタいわせながら走ってきたマヤさん
「久しぶりぃマヤ!う~んっ、あんたはあんま変わってないわね」
そう言うと、葛城さんはリツコおばさんをチラリと見る
「ふふっ、先輩が変わり過ぎなんですよ
葛城さんも老けた以外は昔と変わらないですね♪」
「・・・あんた、やっぱ変わったわ」
葛城さんとマヤさんが話をしてる間に、僕とアスカはキッチンに行くことにした
「おかえり、シンジ君。アスカちゃん」
「2人共おかえりなさい」

671: パッチン 2007/11/03(土) 04:44:14 ID:???
キッチンで調理中だったカヲルお兄ちゃんと、レイお姉ちゃん
「ただいま。ねぇあのババアって、レイ姉さんの知り合い?」
「えぇそうよ。昔はあなた達も可愛がってもらったのよ」
「はいはい。その可愛がってもらった話は、あのババアから腐るほど聞きましたよ~だ」
耳にタコをぶら下げたアスカはムスッとしながら、調理場のお皿に目を移し…
「すっご~い!ご馳走じゃない♪」
すぐに機嫌を直した

「おぉっ!!渚君もレイも大人になったわね!!
そっか、もうあの時のあたしと同い年だもんねぇ~」
ウキウキした様子でキッチンに入ってきた葛城さんは、2人を交互に見やりながら、ニタニタ笑う
「お久しぶりです葛城三佐」
「ふふっ、再会はいいね。心まで昔に戻れる気がするよ」
3人共幸せそう
僕とアスカは、置いてけぼりをくらったような気分で、ちょっと寂しくなり、小指同士をつなぎ合わせてその様子を傍観していた

672: パッチン 2007/11/03(土) 04:46:54 ID:???
「それじゃ!みんなの再会を祝して、かんぱ~い♪♪」
その一言を残し、猛烈な勢いでビールを飲み干す葛城さん
「飲みすぎですよ葛城さん…。肝臓とか大丈夫ですか…?」
「あははっ、へっちゃらへっちゃらよん♪
リツコママ~?ビールおかわりぃ~」
若干引き気味なマヤさんの発言を無視して、グビグビとビールを流し込んでいく
「はぁ…。マヤの言う通りよ、肝臓の検査とか行ったら?」
「をぉっ!!さっすがリツコママ!優しいわねんっ♪」
「・・・酔いどれババー」
ぼそりと呟くアスカ
「あっ、そうだそうだ!ちょっちアスカとシンちゃんに渡す物があんのよねぇ」
「へ?僕とアスカにですか?」
「そうよんっ。今のあんた達に渡したいのよ
他の人は悪いけど、出て行ってくんない?」
キョトンとする僕とアスカにそう言うと、他の4人にキッチンから出て行くように指示する葛城さん
「ん…。わかったわ行きましょみんな
・・・アスカ、シンジ君?ミサトの言うことよく聞くのよ。いいわね?」
リツコおばさんはそう言うと、いち早くここから退散していく
その後に続いて3人もキッチンを出て行った

そして残された僕とアスカは、葛城さんと向かい合う形で座っている

673: パッチン 2007/11/03(土) 04:52:12 ID:???
「なによプレゼントってさぁ?」
アスカは疑いの目で葛城さんを見ている
まあ顔には出さないが、僕も不安でいっぱいだ
「うふふっ、懐かしいわ…。ホントに懐かしい…」
「はぁ?」
先程までの『酔いどれババー』から一転『センチメンタルばばあ』に進化した葛城さんを不思議そうに見つめる僕とアスカ
「ホントにあたしまで若返ったみたいね…。
ぐすっ…こうして14才のあんた達と、この部屋で、このテーブルでさぁ…」
「あのさぁ?全然話が見えてこないんだけど。あんた何が言いたいの?」
しまいには涙まで流し始めた葛城さん
はっきり言って意味不明だ
「ねぇ?あんた達付き合ってるんでしょ?」
ボンっ!!
急な爆弾投下に真っ赤に熟す僕ら2人の顔
「な、な、アンタ馬鹿あああ!?」
「そ、そんなこと誰に聞いたんですか!?」
「照れなくてもいいじゃない。ホントのことでしょ?
愛し合う事を恥ずかしがることはないわ」
今度は真面目な顔になる葛城さん。彼女のキャラがわからない…
「そうよ!付き合ってるわよ!!悪い!?」
「愛し合ってるんでしょ?」
「…愛し合ってます」
「好きで好きでたまんないでしょ?」
「好きで好きでたまんないわよ!!」
「なんでかわかる?」
「「…え?」」

「なんでかわかる?」

674: パッチン 2007/11/03(土) 04:54:06 ID:???
そう言うと葛城さんは、スーツケースから一本のビンを取り出す
中にはオレンジ色の液体が…
っ??

な?ん?だ?こ?れ?

「変な気分でしょ?」
隣を見るとアスカもビンをボーっと見つめている
「無理もないわ。あなた達の半身だもん」
半?身?
「何故この液体が半身なのか、何故あなた達に親がいないのか、何故2人が愛し合うのか
今からあたしが説明するわ」
隣のアスカがブルブルと震えだす
「この液体はLCLという液体よ」
あ…れ…?
「そして、あなた達に絶対に知ってもらわなくてはいけないこと…」
僕も震えてる…?
「14年前、あなた達は…」
怖い…!!
「エヴァという…」
僕じゃなくなる…!!
「あなた達は、エヴァに乗っていた14年前の…」
あ…あ…あ…

「うるさーーーーーーい!!!!」

突如ダイニングにアスカの叫び声が響いた

675: パッチン 2007/11/03(土) 04:55:43 ID:???
「うるさいうるさいうるさいうるさーーーい!!!
アタシはアタシよ!!
シンジはシンジよ!!
他の何者でもないわ!!
アタシ達に親がいない!?笑わせんじゃないわよ!!
アタシのママは赤木リツコよ!!
シンジのママは伊吹マヤよ!!
変わりなんて存在しない!!そこに嘘なんか欠片も無いんだから!!
アタシ達が愛し合う理由!?
アンタなんかに何がわかんのよ!!
アタシがシンジを愛した理由なんて、アタシにも説明できないわよ!!
ただ好きで好きでたまらないだけよ!!
それ以外に理由が必要!?
もし、その理由が無くなったらアタシはシンジを嫌いになるとでも言うの!?
なめんじゃないわよ!!
アタシはシンジに何があっても、シンジが何かしたって、アタシは一生シンジのこと愛し抜いてやるわ!!
ここで証明しろって言うんなら、いくらだって証明してやるわ!!
アタシ達がどれだけ愛し合ってるか見せてやるわよ!!
シンジ!!服脱ぎなさい!!セックスするわよ!!」


アスカ暴走

676: パッチン 2007/11/03(土) 04:57:54 ID:???
シンジ・・・シンジ・・・

なになに・・・アスカ・・・

お外に・・・変な3人がいるの・・・

ホントだ・・・ケンカしてるね・・・

でも・・・悲しい顔じゃないよ・・・

3人共・・・お互いが大好きなんだよ・・・

ねぇシンジ・・・シンジ・・・

なになに・・・アスカ・・・

アタシも・・・シンジのこと好き・・・

うん・・・僕もアスカのこと好き・・・

シンジ・・・好き・・・


おわり

677: パッチン 2007/11/03(土) 04:59:10 ID:???
あとがき

以上で『二つの涙』終了です。
長かったですね、ごめんなさいorz
自分の頭の中では、もっと短くまとめるハズが…。ねぇ…
え~、題名は私の愛するサンボマスターさんの曲名から取り、実際この曲を聞いて思いついた感じです
(一応、涙がLCLのつもりです)
では、また短編をちょこちょこポトリしていこうと思います。ではさようなら





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