888: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:47:47 ID:???
気が狂いそうだ
この町に来てから誰も優しくしてくれない
優しい言葉をかけてくれる人なんて一人もいない
ただ僕に出来るのはエヴァに乗って必死に戦うことだけだ
いつまでこの戦いが続くのかもわからない

僕は何回も逃げ出そうとした
本当は今も逃げ出したいんだ
でも・・・
たぶん僕と同じくらい苦しんでいる女の子がいるから

だから僕は、逃げちゃだめなんだと思う

889: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:48:44 ID:???
同居人で同僚でもある彼女の名前はアスカ。
僕と同じ決戦兵器エヴァンゲリオンのパイロットだ。

最初彼女と会ったとき、いきなりビンタをされた。
初対面で普通なら頭にくると思う。
でも僕は全くと言っていいほど頭にこなかった。
なぜなら僕はそのときすでに彼女に一目惚れしていたんだから。

別に僕が一目惚れするのなんか全くおかしくない。
彼女は日本人離れした容姿を持っていたし、なにより輝くように明るい性格だったから。
僕とは違って自分に自信を持っている。
何でも前向きに取り組める人。
その時はそう思っていたんだ。

まさか一緒に住むことになるなんて思いもしなかった。
ユニゾンの訓練なんて内心ドキドキいていた。
こんな美人と僕なんかが、こんなに近くにいていいのか。
そんな風に考えていた。

近づけば近づくほど僕は彼女に引き込まれていった。
この頃の彼女はよく笑っていた。
その笑顔を見れば、誰だって彼女を好きになるに違いない。
家で僕をからかって、学校でクラスメイトとふざけあって。
いつも目は彼女の方に向いていた。

だから僕は、彼女が火山に沈みそうになったとき、飛び込んだんだ。
生きていてほしいから、笑っていてほしいから。

第三新東京市に来てから、いや、生まれてきてから。
初めて命をかけて守りたいものが出来たんだ。
つらい毎日に光がさした気がした。

890: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:49:40 ID:???
でも、それから戦いは続いて。
だんだん彼女は僕にきつくあたってくるようになった。
僕はどうして彼女がそうなっていくのか分からなかった。
そして僕もだんだん心が磨り減っていくのが分かった。

僕も、このままじゃ、おかしくなりそうだ。
誰かに優しくしてもらえない。
慣れてたはずなのに、大丈夫だと思ってたのに。
こんなにつらいと感じたことはなかった。

大人は何にもしてくれなかった。
僕にも、彼女にも。
彼女はあまり笑わなくなった。
ミサトさんでも加地さんでもリツコさんでも副指令でも父さんでも学校の先生でも近所の人でもいい。
誰か、彼女を助けてあげて。
僕には無理だから。
僕じゃあ、ちゃんとした言葉をおくれないから。
僕じゃあ、彼女を余計に傷つけるから。
それでも、大人は彼女を助けてあげようとしなかった。

891: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/02/07(水) 15:50:37 ID:???
今、彼女は使途に向かって銃を撃っている。
今回はバックアップ役だ。
その役目は、彼女をさらに傷つける。
彼女はエースじゃなきゃだめなんだ。
なんで大人はそんな簡単なこともわからないんだろう。
シンクロ率が低くたって、起動がやっとだからって。
そんなことが関係あるもんか。
彼女は一番でなければならないんだ。

でも・・・
それを奪ったのは僕だ・・・
彼女がもっとも傷つくことをしたのは、僕だ。

だから、僕は彼女に励ましの言葉なんてかけられるわけがない。
誰か、大人が、上手な言葉と一緒に、彼女を救ってあげないと。
僕じゃ無理なんだ。

「きゃあああああああ!!!!!」

彼女の悲鳴が聞こえる。

「精神汚染が急速に進行! 危険です!!」
「アスカ、戻って!!」
「嫌よッ!!」
「命令よ! アスカ、撤退しなさい!!」
「嫌ッ! 絶対に嫌ッ!! 今戻るならここで死んだ方がマシだわ!!」


892: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:52:39 ID:???
アスカ!!

「僕が初号機で出ます!!」
「いかん! 目標はパイロットの精神の侵食が目的だ」
「今、初号機が侵食される事態は避けねばならん」
「だったら、やられなければいいんでしょう!?」
「その保証はない」
「このままじゃ、アスカが!!」
「………」
「くっ…!」

やっぱり、僕じゃアスカを助けられない・・・
大人が許してくれなかった。
僕が助けるのを、許してくれなかったんだ。



・・・本当にこれでいいのか?
僕は、本当になにもしなくていいのか?

・・・だって、出撃は駄目だって、父さんが・・・

そんなこと、本当はどうだっていいことなんじゃないのか?
彼女が、一人で苦しんでるんだぞ?
火山には飛び込んだじゃないか!

でも、初号機は凍結されてて、起動できないんだ・・・

だけど・・・でも・・・

893: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:53:44 ID:???
ウオオオオオオオオオオオオン!!!!!!

「!?エヴァ初号機、起動っ!?」
「なぜっ!?初号機は凍結中のはずよ!!!」

・・・がんばって

「えっ!?」

誰かの声が聞こえた。
エヴァが、動く。
僕の、思うように。
その瞬間、僕は決心した。

「エヴァ初号機、発進します!!」

声を張って、僕は宣言した。

「いかん!!LCLの濃度をあげろ!!!」
「シンジ!貴様、また命令違反をするつもりか!!」

もう、そんなことはどうでもいい。
誰か、わからないけど、がんばれ、って言ってくれたんだ。
幻聴かもしれないけど、確かに僕の心に届いたんだ!

罰は、帰ってきたらいくらでも受けよう。
大人のせいばかりにしちゃ、いけなかったんだ。
自分で考え、自分で決める。
責任も自分で取るんだ。

894: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:55:09 ID:???
「初号機、地上に出ました!」
「シンクロ率上昇!」
「弐号機の方に向かいます!」

やさしさだけじゃ、駄目だから。

「アスカ!!」

叫ばなきゃやりきれない思いが、今僕の中にあるから。

「アスカ!!!」

君にとって、期待はずれかも知れないけれど。

「アスカ!!!!!」

僕が、でっかい声で、言うんだ!

「がんばれええーーーー!!!!!!」



「・・・シンジ」


「精神汚染レベル、急降下!」
「シンクロ率45パーセントまで上昇!」
「初号機、弐号機と共に撤退します」

895: 人にやさしく 2007/02/07(水) 15:56:04 ID:???
使途は、その後綾波が倒したらしい。
僕は、命令違反で拘束され、今度こそ本当にクビになると思っていた。
でも、オペレーターの人や、整備班の人たちが署名を集めてくれて、禁固一週間だけで済んだ。
結局、僕は大人の人たちに助けられたんだ。

アスカは少しだけ元気になった。
禁固が開けた僕に彼女は、
「余計なことすんじゃないわよ!」
「あんたなんか来なくたって、わたし一人でどうにかなったのに!」
「シンクロ率も戻ったことだし、もうあんたにはでかい顔させないわよ!」
そう一気に言ったあと、反対方向を向いて、
「い、一応礼だけは言っておくわ」
と言った。

903: 君のため 2007/02/13(火) 15:43:48 ID:???
加治さんが死んだ。

ミサトさんが泣いている。

アスカも泣いている。

僕は、泣いちゃいけない。
なんとかして、彼女を慰めないと。

「アスカ、もう泣かないで」
いつまでも、部屋で一人で泣いているアスカに、僕はそう言った。
アスカの部屋に入り、窓から外をみて言った。
「ほら、外見て。月がきれいだよ。」
今日は満月だ。
どう慰めていいかわからない僕は、そんなことしか言えない。

「お願いだからさ。」
「うるさい!!あんたには関係ないでしょ!!!」

「だけどさ、アスカが泣いてると僕もつらいんだ。」
「なによ!だったら、どっかいけばいいじゃない!」

「でも、そんなに泣いてるアスカを放ってなんて・・」
「うるさいうるさいうるさい!!」
「あんたにわたしの何がわかるのよ!!」
「加治さんが死んじゃったのよ!!」
「ずっとわたしを守ってくれたのに!」
「わたしは加治さんが好きだった!」
「わたしの全てをあげれたのに!!」
「大好きだったのに!!!」

904: 君のため 2007/02/13(火) 15:44:52 ID:???

いてもたってもいられなかった。

「あ、あんた、なに抱きついてんのよ!」

気がつくと、僕はしっかりとアスカを抱きしめていた。
もう、二度と離さないというくらい、しっかりと。
今、サードインパクトが起きても、離したくはないと思った。

少しして、アスカは僕の腕にすがりついてきた。
そして、また、大声で泣き出した。
今度は、泣き止むまで、僕はなにも言わなかった。
アスカのために、今、僕がしてあげられることは、これぐらいしかないから。

30分くらいして、アスカは泣き止んだ。
でも、まだ、とても弱々しく見えて。

「・・・アスカ」
「・・・なによ」
「好きだよ」
「!!!!」

言葉が自然に出た。


905: 君のため 2007/02/13(火) 15:45:39 ID:???
「誰よりも、アスカが好きだよ。」
「アスカが、加治さんのことを好きでも」
「僕は、大好きだよ」

「・・・ファーストより?」
「うん」
「・・・ミサトより?」
「うん」
「・・・神様よりも?」
「アスカが、大好き・・・です」

顔が熱くなってきた。
今まで感じたことがないくらい照れくさい。
こんなこと言うつもりじゃなかったんだけどな。

アスカが、僕の肩に頬をうずめてきた。
できれば、ずっとこうして欲しい。
アスカのために、今、僕がしてあげられることは、これぐらいしかないから。

おわり





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