125: いつか、きっと 05/02/18 02:13:02 ID:???
「ねぇねぇ、碇くん、明日は学校に来れるの?」
「え、うん、特に何もなかったと思うから来れると思うけど、どうして?」
「え~だって明日はバレンタインでしょ、エヴァのパイロットとしていつもお世話になってる
碇くんにチョコでもあげようかなと思って」
「あ、そうなんだ、ハハ…」
…エヴァのパイロット、そうだ今の僕には常にそれが付きまとう
みんなは僕がエヴァのパイロットになった経緯なんて知らないから、その苦しみを知らないから、
こうも無邪気に人を傷つけられるんだろう、でも彼女たちを責めてどうなる、諦めるほかない
沈みこみそうになった僕に思わぬ人物から救いの手が差し伸べられる

126: いつか、きっと 05/02/18 02:14:10 ID:???
「ちょっとシンジ、アンタ今日放課後ヒマよね?買い物に行くから付き合いなさい」
「え、どうして僕?委員長と行けばいいじゃない?」
「駄目なのよ、ヒカリ、今日は委員会があるとかで遅くなりそうなのよ
それにいろいろ買いたいものがあるしさ、荷物持ってくれる人が欲しいのよ」
「あ、そうなんだ……、うん、僕でよければついて行くよ」
「そっ、じゃ荷物持ちよろしく~♪」
アスカはそれだけ言うと去っていった
その態度が気に食わなかったのだろう
僕の周りにいた女生徒たちは口々に喋る
「惣流さんひっど~い」
「碇くんを小間使いかなんかと勘違いしてるんじゃない?」
「碇くん、あんなの気にする必要ないわよ、無視しちゃいなよ」
「そうそう、どうせボディガードみたいなひと付いてるんでしょ?」
「でも、アスカも余計な仕事とか頼みづらいだろうし、
ボディガードの人たちを従えて歩くのも息苦しいみたいだしさ。
それに僕なら気を遣わずにすむみたいだから分かってあげてよ、ね?」
「でもぉ~~」
「お願いだから、ね?」
「まあ、碇くんがいいって言うならしょうがないけど…」
と本当に渋々といった感じで彼女たちは引き上げいった

127: いつか、きっと 05/02/18 02:16:30 ID:???
「せんせぇ、センセも一遍ビシッと言うてやったらどうや?」
「いいんだよ、あれがアスカなりの優しさなんだから」
「優しさぁ?あのオナゴがそんなもん持っとるかいな」
「アスカは優しいよ、ただちょっと不器用なだけでさ」
と僕がいうと二人はやれやれといった感じでため息を漏らす
「痘痕もえくぼってやつだねぇ、
惚れた欲目かあの惣流を優しいとまでいえるんだからね」
「かもね、でも加持さんのこと話してるときのアスカは楽しそうで優しい笑顔を見せてくれるんだ。 本当に可愛いんだから、そのときのアスカは」
「でも、センセは辛ないんか?惚れたオナゴに別の男の話なんぞされたら、ワイやったらはらわた煮えくり返りそうや」
「そりゃ、辛くないっていや嘘になるけど、でも今はアスカのこと見守っていられればそれでいいんだ…
……それにアスカがもし振られてもそのとき、側にいて慰められれば僕にもチャンスが回ってくるかも知れないでしょ?」
なんてホンのちょっぴり本心が混じった強がりを僕が見せると二人は納得したような
していないような微妙な表情を浮かべる
「そうかぁ、まぁセンセがええんやったら、ワシらはなんも言うことないわ」
「そうだな、俺たちに手伝えることがあったら何でも言ってくれよ友達なんだからな」
「アリガト、トウジ、ケンスケ」

128: いつか、きっと 05/02/18 02:17:36 ID:???
アスカが振られれば僕にもチャンスがあるって言ったのは本心だ
けれどうまくいって欲しいという気持ちも僕の中にはある。
だってアスカの悲しむ顔なんて見たくはないから
ユニゾン特訓の夜にアスカが見せたあの顔は今も僕の頭にこびりついている
何か悲しいことがあったんだろう…とは思うけど僕なんかが癒せるとは思えない
ならせめて側にいてその悲しみを癒せる相手とうまくいくことを
応援するぐらいしか今の僕にはできない

129: いつか、きっと 05/02/18 02:18:23 ID:???
「アンタも、もうちょっと自分に自信持ちなさいよ、
エヴァのパイロットだって立派なお仕事なんだから」
帰り道、約束どおりアスカの買い物についていったらアスカは唐突にそう言った
相変わらずアスカは鋭い、僕が女の子たちに絡まれてるときに感じた
鬱屈とした感情をズバリと指摘する
「そりゃそうだけど、やっぱり怖いよ。あんなバケモノと戦ってるんだから」
「でも、怖いことばっかりじゃなかったでしょ?こ~んな美少女と一緒にいれて
同居までしてるんだから、バケモノ退治ぐらいじゃお釣りがくるわよ」
と茶化すかのようなアスカの言葉に僕は一瞬呆気に取られた
僕の心を見透かされたような気がしたからだ
「あ~~っ、もしかして図星だった?ホーント罪作りなオンナね、アタシって」
「自分でいうかな、そういうこと」
「でもでも、駄目よ、アタシには加持さんって心に決めた人がいるんだからね」
「そうだね、加持さんカッコイイもんね」と自嘲交じりに僕は返す
「そうそう、この超絶天才美少女に似合うのは加持さんみたいなイイオトコだけよ」

130: いつか、きっと 05/02/18 02:19:33 ID:???
「……アスカは加持さんにチョコあげるの?」
「あ、そうなのよ、アタシ今日ヒカリにそのこと初めて聞いてビックリしたんだから」
「バレンタインにチョコあげること?」
「それそれ、ドイツじゃ男性が女性にプレゼントするのが当たり前だったから、
アタシなんの準備もしてなくてさ、 買いに行こうにもアタシこの辺のこと知らないし」
「そうなんだ…。でも、どうして荷物持ちが必要だったの?それに…別にチョコあげなくてもいいんじゃない?加持さんもドイツに長い間いたんだから別に気にしないんじゃないかな」
「郷に入りては郷に従えっていうじゃない?それに……どうせ渡すなら綺麗なカッコして渡したいじゃない?アタシの気持ちはホンモノだって知ってもらいたいしさ」
と笑顔で宣言するアスカは僕が好きになったアスカだった
「じゃ、可愛い服選ばなきゃね」
「そ、アンタは光栄にもそのお手伝いができるんだから誇りにおもいなさい」
「うん、そうだね」
うまくいくといいな、そのときの僕はなんの邪心もなくそう思えた

131: いつか、きっと 05/02/18 02:20:22 ID:???
バレンタインの当日、クラスの女の子たちは言っていたとおりチョコをくれた
でも、僕にはそんなことどうでもよかった
アスカは加持さんにちゃんと渡せるかな?
ただそのことだけが僕の心を支配していた

学校もおわり、夕食の買い物をおえて家につくとちょうどアスカが出かけるところだった
「ただいま~、ってアスカ、今から出かけるの?ネルフ?」
「そ、愛しの加持さんにバレンタインのチョコをね」
「そうなんだ、頑張ってね」
「もっちろん、アタシのこの美貌をもってすれば加持さんだってイチコロなんだから」
「うん、そうだね。やっぱりそのワンピースも良く似合ってて可愛いよ」
「へへぇー、当ったり前よ、このアタシに似合わないものなんてないんだから」
「うん、うん…、そうだ!今日の晩御飯はお祝いしようか?加持さんとアスカの記念にさ」
「そうね、バカシンジにしちゃいいアイディアだわ。あ、でも、もしかしたら加持さんと食べてくるかもしれないから」
「あ、そっか……」
「でも、ディナーのあとでちょっとしたお祝いぐらいならいいかもね」
「うん、そうだね、待ってるよ」
「あ、もう時間だから行くね。じゃね、シンジ」
「うん、いってらっしゃい」

132: いつか、きっと 05/02/18 02:21:24 ID:???
加持さんはどこにいるのかな?あっ、いた
「加~持さん、なにしてるの?」
「おっ、ああ、アスカか。いや、なんでもない
それよりどうしたんだ、今日は?特に訓練もなかったんじゃないのか?」
「加持さん分かってないんだから。ほら、こーれ」
「ああ、バレンタインか、スマンなアスカ」
「もう、加持さんもっと喜んでよ。それより、どう、このワンピース?」
「おお、似合ってる、似合ってる」
…加持さん、こっちをほとんど見ないで言ってる
「ねえ、加持さんちゃんと見てる?」
「スマン、今忙しいんだ。またあとでゆっくり相手になってやるから」
「そう………、じゃ…、また」

加持さん全然関心もってない…
アタシのこと分かってくれてると思ってたのに、もういい……

133: いつか、きっと 05/02/18 02:22:43 ID:???
アスカ、うまくいったかな?
一人きりの寂しい夕食を終え、
まんじりともしない時間を過ごしていたその時だった
プシューッと圧縮空気の音がすると
いかにも気落ちしたような様子でアスカが帰ってきた
「お帰り、アスカ早かったんだね。夕食は食べてこなかったの?」
「………………………………」
「おなか空いてたら、今から何かつくるけど」
「いい、食欲無い……」
「…どう、したの?」
「………………………」
「加持さんに…、渡せた?」
「………………………」
おかしい、帰ってきてからほとんど喋ってない
アスカのこんな様子をみていると胸が締め付けられそうになる
言葉を探し続ける僕を無視するかのようにアスカはバスルームに入っていった

134: いつか、きっと 05/02/18 02:24:15 ID:???
……散々、考えた末に出た結論がアスカのためになにか美味しいものを作ろうということだった
オトコとして少し情けなく思いつつ、今の僕にできることはこれぐらいだろうと思う
サンドイッチぐらいなら食べてくれるだろう……
アスカが出てくるまでに作らなきゃ、そう思って急いで作った
シャワーも終え、部屋に戻ろうとするアスカに精一杯の勇気を振り絞って声をかける
「アスカ、ちょっとだけでもいいから何か食べなよ
なんにも食べなかったら身体に悪いよ」
「いらないって言ってんでしょ………」
「でも、アスカのこと心配なんだよ…」
「うるさいっっ!アタシに構うな、どっか行け!!」
一瞬、怯みそうになる
けれど落ち込んだアスカの姿なんて見たくない、そんな感情が爆発する
「見てらんないんだよ……、今のアスカ」
「誰がアンタに見てって頼んだ?!いいからアタシのことはほっといてよっ!!」
「ほっとけないんだよ、アスカのこと!ねえ、いつものアスカはどこ行ったの?
いつもアスカは傷つけられたプライドは十倍にして返してやるって言ってたじゃない?
なら、もっともっと綺麗になって加持さんよりいいオトコ掴まえてさ
加持さんに後悔させるような女の子になりゃいいじゃない」
「うるさい、うるさい、うるさーーーい。アンタに、アンタなんかにアタシの何がわかるってのよ!!」
………しまった、僕は馬鹿だ、やっぱり僕はバカシンジだ。そうだ、そうだった。僕は知ってたはずなのにアスカが人一倍傷つき易いことも、まして好きになったひとに邪険にされたらどれだけ悲しむだろうかも
分かっていたはずなのに、あまりに無神経だった、
「あっ……、そうだったね、ゴメン、勝手なことばっかり言って…。ホント、ゴメン、今言ったこと全部忘れて」

136: いつか、きっと 05/02/18 02:25:09 ID:???
居たたまれなくなって踵を返して自分の部屋に戻ろうとする僕の身体が引き戻される
後ろを振り向こうとした僕はアスカの押し殺した声に凍りつく
「こっち…向くな……、みたらコロスから」
「ゴ、ゴメン…」
「ひぐっ……ぐすっ…………うえっ、うっ、うっ………」
「…………………………………………」
アスカの泣き声に僕は言葉を失う
どうすればいい?なんて言えばいいんだろう?
焦り、戸惑い、驚き、さまざまな感情がない交ぜになって僕の頭を支配する
「ううっ、うっうっ…………ひっく、ぐすっぐすっ……………」
未だアスカは泣き止まない、僕は無力感に打ちひしがれたままだ

137: いつか、きっと 05/02/18 02:25:51 ID:???
……どれほど時間が経ったのだろう、気がつくとアスカは落ち着きを取り戻したようだ
僕のTシャツの端をずっと掴んでいた手がスッと離される
「寝る………」
「あ、おやすみ……」
アスカの背中から言い知れぬ迫力を感じて、僕は辛うじてそう言葉を発する

自分の部屋に戻ってからもさっきの光景が頭に浮かぶ
アスカを見守るはずじゃ無かったのか?
追い詰めてどうするんだ?
後悔の念が僕を苦しめる
苦しみを抱えても睡魔には勝てない自らの身体を少し恨めしく思いながらも
僕はその抗いがたい欲求に身を任せた……

138: いつか、きっと 05/02/18 02:26:45 ID:???
ジリリリリッという目覚ましの無粋な音で目が覚めた
昨日の夜思い悩んでいたことが嘘のように晴れやかな朝だった
そうだ、思い悩んだところで答えなんて出るわけないじゃないか
後悔してもしようがない、それをどう活かすかが大切なんじゃないか
こういった考え方ができるようになったのも君に出会えたおかげかな?
そんな発見に嬉しくなる
そうだ、今日はアスカを誘ってどこかに遊びに行こう
僕なんかの誘いに応じてくれるかなんて分からないけど
その時は土下座でもなんでもしてみよう
ただアスカが元気になってくれればいいんだから
ささやかな決心を持って僕は部屋を出た……

139: いつか、きっと 05/02/18 02:27:29 ID:???
お風呂の用意もおわった僕はアスカを起こすために彼女の部屋に向かう
アスカを起こすためドアをノックしようとしたそのとき、唐突にドアが開いた
「あ、おはよう、アスカ…」
「オハヨ、バカシンジ…」
「あ…うん、あっ、お風呂の用意できてるよ、先入ってきたら?」
「うん、そうする………
あっ、そうだ、シンジ…昨日のことは忘れなさい、いいわねっ?!」
「う、うん、分かってるよ……」
「そ、ならいいわ、さっさと朝ごはんの準備してよね」
「あ、うん…」

140: いつか、きっと 05/02/18 02:29:09 ID:???
シャワーをおえたアスカが無言で食卓につく
いつもなら、取りとめもないようなことを話すけど
今日はそんな気分でもなかった
重苦しい雰囲気が漂う食卓だったが、僕は意を決してアスカを誘う
「ねぇアスカ今日は暇?」
「えっ、うん、特になんにもないけどどうして?」
「じゃあさ、どっか遊園地にでも遊びに行かない?」
「えーー、アタシが?アンタと?」
「お願いだよアスカ、この通り」
思わず土下座をしてしまう自分を少し情けなく感じる、でも仕方がない
アスカが元気になってくれるならなんだってするって決めたんだ
アスカから反応が返ってこないことで不安で押しつぶされそうになった時
突然アスカの笑い声が響く
「アーーッハッハッハッ、なぁに必死になってんのよ、
もうしょうがないわね、付き合ってあ・げ・る・わ・よ。カワイソウなシンジくんのためにね」
「ホント?!いいの、アスカ?」
「いいわよ~。た・だ・し、誘ったのアンタなんだから全~~部アンタの奢りね」
「うん、うん、いいよ、ありがとう、ありがとうアスカ」
飛び上がらんばかりに喜ぶ僕にアスカは僅かに笑みを浮かべ 

 呟いた

「ホント、馬鹿なんだから……」

141: いつか、きっと  05/02/18 02:34:12 ID:???
あとがき
以上で終りです
初めて書いてみたんですが
やっぱり読むのと書くのは勝手が違いますね
普段はベタ甘のLASを好んで読んでるんですが
書いてできあがったら微糖も微糖でした、バレンタインものなのに_| ̄|○
甘LAS期待した人にはゴメンなさいということで




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