890: 32行プチ劇場―――味噌 ◆SAT.xTLxFk 2005/10/12(水) 01:01:47 ID:???
「―――いたいけな少女が昇降口で雨を見ながら途方に暮れてるわ」
「いたいけな少女は自分のことをいたいけだなんて言わないと思う」
「………鬼でしょ、アンタ」
「僕は今朝、ちゃ~んと 『傘持って行きなよ』 って言ったと思うな」
「シンジ」
「何」
「悪魔」
「今日は間違い無くアスカに責任があるよね」
「キス魔」
「………ゔ。それは、その………」
「スケベ」
「あぅあぅあぅ………」
「否定しないの?」
「アスカがあんな格好で家の中をうろつくのが悪いんじゃないか…」
「ま、それは置いといて」
「何」
「いぢわるぅ。傘、傘」
「傘が何?」
「入れてって」
「………」
「シンジ」
「何」
「好きよ」
「………………、そういうトコ、ずるいと思うな」
「嫌いになった?」
「………カバン、持つよ」
「やった☆ダンケっ!」
「アスカ」
「?」
「好きだよ」
「………………、そういうトコ、ずるいと思うわ―――嫌いになんて、ならないけどね」
――――――――"addicted to you" is very very fine end.――――――――

897: 32行プチ劇場・弐―――味噌 ◆SAT.xTLxFk 2005/10/14(金) 02:05:29 ID:???
(ターゲットを肉眼で確認―――アスカ、行くわよ)
暴れる心臓を抑えて息を鎮める。
スピーディに、なめらかに、かつ慎重に。歩幅は普段の半分。
ターゲットまで目測5メートル。まだこちらには気付いていないみたいだ。
少し息を吸って、止めて、ゆっくり、落ちついて、焦らずに、慎重に一歩―――

「つまみぐいは駄目だからね」
「ふわぇあぅあ!?」
で、あっさりバレた。

「ちょっとっ!何でバレるのよ?アンタこっちに背中向けて料理してるのに!?」
「あー、うん。そろそろお腹すいてきたころかと」
シンジが振り向かずに言う。エプロンが妙に板についていて可笑しい。
「もうちょっとでできるからさ、ちょっと待っててよ」
「むぅ。喋るときはこっち向きなさいよー」
「ゴメンゴメン、ちょっと手が離せないんだって」
あーあ。つまんないの―――別に、つまみぐいに来たわけじゃないんだけどなぁ。
えと、その、ちょっとかまってほしかったり。あ、あくまで暇潰しに、さ。
アタシってそんなに食い意地はってるように見えるかなぁ。
複雑な思いでシンジの後姿を見つめる。艶のある黒い髪。華奢な首筋。対照的に最近広くなった肩幅。
―――あれ、なんか唐突にお腹減ってきたかも。
ごめんシンジ、やっぱつまみぐいさせてもらおーかな。

かぷ。

「あ、アスカぁ!?わわ、だ、駄目だってば、耳たぶは!」
「気にしないで料理続けてくれていーわよ?………あむっ」
「う、うわ、ちょっと!やめ、や、わ、わ、わ―――――」

月夜のマンションに絶叫が響く。
葛城家の夕飯、順調に遅延の模様。
――――――――"Today's dinner is …" is end dericiously.――――――――



345: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2005/12/11(日) 12:00:10 ID:???
アパートでアスカが電話している。
「お義父さん、未来のために、気が早いのかお雛さま買いに行くって電話があったんだけど..」
と困った顔をしてヒカリに相談しているアスカ。
「お金でもらったらどうかな?碇くんには話したの?」
ききかえすヒカリ。
「まぁ、一応。あのバカシンジ、実家に飾ればいいんじゃないとか初孫が生まれた父さんの気持ちも考えてとか言うだけなのよ。」とアスカ。
「碇くんのお父さんがほしいのはどれくらいのなの?」
「それがね、子どもの頃から一流のものをってことで百万円出しても買うってゴネちゃってるらしいのよ。ユイお義母さんも諦めてるみたい。七段の大きな京雛をかざるのが夢なんだと言ってるらしくて」と呆れ顔のアスカ。
「うちもそうだったよ。鈴原んちの親、関西だから女の子ならって話してたけど。うちは男の子だったから兜になったけどね。未来ちゃんの初節句大変になりそうね。」と心配するヒカリ。
確かに孫を可愛がってくれるたり、ベッドにつけるオルゴールを買って持ってきてくれたことはうれしいんだけど今度ばかりはと思うアスカだった。

346: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2005/12/11(日) 12:35:14 ID:???
その夜のこと
「父さんがね..。わかったアスカ僕から話すよ。母さんからも事情きいているし、安くてもいい物を君の実家へと思ってるから。」
とシンジ。
羽子板はユイが説得して平均的な値段の物を惣流家(アスカの実家)へ手狭なので送ってもらったけど、今回ばかりはゲンドウの夢だから後が怖いと思うシンジだった。

次の日の夜
「あのね、父さん未来のことに関してはとてもうれしいんだけど、百万以上しなくてもいいお雛様はあるし、今は三段飾りが主流だから僕もアスカもそれを望んでいるんだけどね」とやさしく説得するシンジ。
「わかった。あの後、ユイから叱られたよ。未来の初節句には、父さん何かしてやりたくてな。お金じゃないのにうかれてたよ。すまん、シンジ。アスカちゃんにあやまっといてくれ」と済まなそうに謝るゲンドウ。
これで、なんとかなると思うふたりだった。
しかしぬか喜びだと二人はまだ知らなかった。

三月桃の節句
惣流家での未来の初節句にはゲンドウが購入した京雛の七段飾りが飾ってあったことは言うまでもなかった。
百万もするものではなかったが。
ざっとその半額の物をお買い物。
孫バカの祖父ゲンドウの将来の行方が思い遣られるふたりだった。





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