632: 私を平和の道具としてお使い下さい。 2007/05/21(月) 01:25:50 ID:???
「僕を、平和の道具として、使って下さい。
君の心に苦しみや悲しみがあった時、
それを晴らすものとして。
君の肉体に疲れや異変があった時、
それを癒すものとして。
君の行く道が苦難にみちたものである時、
ちょっと息をつける場所として。
君自身が自己嫌悪に襲われたり落ち込んだりしている時、
君を包み込むものとして。

君の行く人生に、僕を使って下さい。
僕を平和の道具として。
もしも、アスカがそう望んでくれるのなら、
それが僕の幸せなんだよ。」

633: 私を平和の道具としてお使い下さい。 2007/05/21(月) 01:27:15 ID:???
>>632
たまたま部屋の整理をしていたら出てきたシンジからの手紙。
もうお互い将来を意識しあっていて、けれども踏ん切りがつかなかった時に、
海外出張で出かけて行ったシンジが私に残していった手紙。
一瞬色々なものが目の前をよぎり、
その中には勿論忌まわしいものもあったけれども、
シンジは十分に私にとって「平和の道具」として傍にいてくれた。
だから、私は決意したんだっけ。
出張から帰ってきたシンジを出迎えた空港で、
「あ、あたしはそんなにおしとやかじゃないし、がさつだし、
料理はヘタだし、掃除も嫌いだし、
サボテンだって枯らす女よ。それでもいいの?」
な、何口走ってるんだ、とその時は思った。
けど、シンジはにっこりと笑って言ってくれた。
「そんなアスカが僕は好きだし、だから僕はアスカの為に生きたいんだ。」
衆目の前で抱きついてキスしたのは、後にも先にもそれっきり。

その手紙を書いた主は、隣の寝室で眠っている。
ふいに彼にキスをしたくなる。
私は、あなたの平和の道具として役に立ってる?


明日はあの日以来2度目となる、みんなの前で彼とキスをする日。
それと、永遠の誓いも。



716: 即興で短いけれどもしよろしかったらどうぞ 2007/10/10(水) 03:18:26 ID:???
最近、アスカがよそよそしい。
学校が終わるとなんだかんだでいつも僕の脇にひっついて一緒に帰っていたあのアスカが、
ここ数週間は僕が帰り支度を終える頃にはもう校内にいない。
昼休みにお弁当を一緒に食べることもなくなった。
委員長は何か知っているらしいんだけれど、僕を避ける。

「そりゃぁセンセイ、残念ながら、う わ き!ってやつでんなww」
「まあそう落ち込むな、惣流ばかりが女じゃないって」
…はぁ、この2人に相談してみたのが間違いだったよ…。

「アスカ?そう言えば最近寄り道せずに真っ直ぐ帰ってるみたいね…何シンちゃん喧嘩でもしたのぉ?」
いや、そんなに目をキラキラされても困るんですけど…。

「シンジ君もそろそろ大人なんだし、女心の機微を研究しないとこういう事態になるってことよね…」
そんなに冷たい目で見ないで下さいよ…。
「そんなことより昨日のシンクロ試験だけど、シンジ君の数値が下がって…」
あ、急用を思い出しました。失礼します!

結局僕の不安は増大こそすれ、ちっとも解消されることはなかったな…。

717: 即興で短いけれどもしよろしかったらどうぞ 2007/10/10(水) 03:26:41 ID:???
>>716
家に帰ってきた。鍵がかかっている。あれ?アスカはまだ帰ってきていないのかな?
鍵を開けてドアを開くと、中からチェーンロックが。
「アスカ?帰って来てるの?開けてよ!」
ドアの隙間から声をかけてみる。

…しばらくしてから慌てた感じでアスカがやってくる。
「ちょっとあんた、家に帰ってくるなら事前にメールくらいしなさいよ!」
何言ってんだろ?今までそんな事した試し、ないじゃないか。
どーにもおかしい。

翌日、仕方なく僕は最後の手段に頼ることにした。
「他ならぬ親友の頼みなら断れないけど、高いぜこれはwww」
そう言いながら早速小型カメラをいくつも鞄から出すこのケンスケという友人の将来に
一抹の不安を覚えてしまう。
とりあえずネルフ本部に今度連れて行くから、とできそうもない約束をして、契約完了。
あとは結果を待つのみ。

でも、その結果が出るまでが待てないんだよ…。
ほら、今日もドアは中からチェーンロック。
「このバカシンジ、昨日あれほど言ったでしょーが!」
「いや、だって今までこんなことなかったじゃないか…」
勇気を出して抵抗してみるも、みぞおちにクリーンヒットを喰らい、沈黙する僕。

718: 即興で短いけれどもしよろしかったらどうぞ 2007/10/10(水) 03:32:17 ID:???
>>717
結果は意外と早く出た。翌日の放課後、ケンスケが僕の所にやって来る。

「ご依頼の件ですが…」
ごくり。唾を飲み込む音が聞こえたかも。
そのまま肩を抱かれて体育館裏に連れて行かれる僕は、
まるでこれからリンチに遭う下っ端チンピラのようで。

「詳しい証拠は掴めなかったけど、こりゃ限りなくクロだねぇ」
何枚かの写真には、不安げに携帯をのぞき込むアスカの姿や、
昼休みだろうか、屋上で熱心にメールをしているアスカ、
放課後、家とは逆方向の電車に乗るアスカなんかが写っていた。
「まぁ、だからなんだ、惣流だけが女じゃないって」
よっぽど僕は落ち込んでいたらしい。

どうやって家に戻ってきたのかは覚えていない。
気づくと僕は自分の部屋のベッドに突っ伏していた。
このままじゃいけない、自分で白黒つけるんだ!逃げちゃ駄目だ!
そう決心した僕は、覚悟を決めてアスカの部屋に向かった。

720: 即興で短いけれどもしよろしかったらどうぞ 2007/10/10(水) 03:48:30 ID:???
>>719
訊けばネルフの忘年会(そんなものあったのか)で、余興代わりに
クラシックの演奏をすることになったとのこと。
「シンジがチェロ弾けるのは知ってたけど、これは女子だけのいわば隠し芸みたいなもんだったしさ」
家とは逆方向の電車に乗っていたのはレッスンのため。
チェーンロックは、家での練習を聞かれないため。
メールは?
「は?そんなのミサトやリツコと進捗具合について打ち合わせしてただけよ」
あの2人もグルか…orz

「まぁ、驚かそうと思っていたけど、失敗だったわね…」
夕食時のミサトさんは相変わらず呑気なものだ。
「ったく、僕の気も知らないで…」
「ん~?シンちゃんはアスカが浮気してるかも?って心配でたまらなかったんでしょ?」
ミサトさんの酔いに任せた意地悪い突っ込みで、僕とアスカは赤面する。
室温が2、3℃上がったかもしれない。

721: 即興で短いけれどもしよろしかったらどうぞ 2007/10/10(水) 03:49:31 ID:???
>>720
夜、アスカが僕の部屋に訪ねてきた。
「あの…シンジ…」
珍しく何か言い淀んでいる。
「何?あれ?手に持っているのは楽譜?ごめん僕はフルート教えられな…」
「違うの…」
そう言って僕に突きだしたのは、バッハのトリオソナタ。
「え?一緒に、ってこと?」
「う…うん、じゃない、違うわよ、バレちゃって私クビになったのよ、
でもここまで練習した私の超絶美技を皆様に披露できないなんて犯罪モノじゃない?
だからシンジ付き合いなさいよ!」
「う…うん、僕で良ければ喜んで。」
「…あ、ありがと」

「あれ?でもバイオリンが足りないよ?」
「え?聞いてなかったっけ?ヒカリが今猛特訓中よ。」
委員長までグルだったのか…orz


しかし、これが実はアスカの誕生日に向けての綿密な計画の一端だとは、
この時の僕は知る由もないわけで…。

劇終

735: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/03(土) 23:47:23 ID:???
古来より人間は平等たる行為を模索してきた。
集団行為においてそれは必要不可欠なのである。
その行為の結果は誰にも文句を言えるものではない。
だからこそ必要なのである。
そう、『じゃんけん』は。

じゃんけーんぽん!
「へっへーん、頂きぃ!」
「くぅー、最後のコロッケがー、アスカの元にぃー!」
「とほほ、じゃんけん苦手なのに……」

ここ葛城家でもこの行為は大きな意味を持つ。
ありとあらゆる面で融通が利くその行為はこの家庭でも必要不可欠なのである。
まずは定番、最後のおかず争奪戦。

じゃんけーんぽん!
「よっしゃぁ! 今日はあのドラマが見たかったのよねー!」
「ぶーぶー! ミサトが見てるあのドラマ退屈なのよねぇ」
「とほほ、今日の『ガッテン』は見逃せない回なのに……」

お次も定番、チャンネル争い。
さてさてお次は……
じゃんけーんぽん!
「よっし! 今日もアタシが一番風呂ー!」
「むぅー、まぁ二番目になれただけでも良しとしましょ」
「とほほ、ふたりとも長風呂なのに……」

736: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/03(土) 23:49:49 ID:???
これもある意味定番?お風呂の順番決め。
さてさてお次は?
じゃんけーんぽん!
「あっ……こういう時だけ勝っちゃうんだ……」
「……ふん、さっさとやりなさいよ」
「あらあら、アスカ。顔が真っ赤よ?」
「ウッサイ!」
「じゃあ、まずはミサトさんから……」
「はいはい、どーんときなさい」
ちゅっ
「……お休みなさい」
「あはは、これぐらいで照れないの、本番はこれからなのに」
「ほ、本番ってなによ!?」
「なにかしらねー?」
「むむむ……!」
「じゃあ、次はアスカね……」
「ど、どーんと来なさいよ! ほらぁ!」
「いや、顔を突き出されても……、ほっぺを突き出してもらわないと……」
「わ、解ってるわよ、馬鹿!」
「唇にして欲しかったりするわけ?」
「ウッサイって言ってるでしょうに! 外野は黙ってなさい!!」
お休みなさいのキスをする担当決め。
何とも初々しいというか、恥ずかしいというか。
それもこれも家族だから。
三人合意の元の行動なのだ。
これからも三人仲良く幸せに家族として暮らせますように、おやすみなさい。
「でも、このふたり、家族って言うよりも恋人って感じなのよねぇー」
「ニヤニヤしながら訳解んないこと言ってんじゃないわよ!」
「……恥ずかしいから早く済ませたい……」
そんな葛城家。

741: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/22(木) 01:54:24 ID:???
「あ、雨」
気付いたのは窓際に座っていた女子生徒1人だった。
ポツリと零れたその一言にクラス中の目線は外へと注がれ、あちゃー、や、私傘持ってきてないよぉ、
などと溜め息混じりの声が授業中であるにも関わらず漏れ出している。
しかし、教師と呼ばれる存在も人であり、その突然の自然現象には成す術は無く、生徒と同じように窓
の外を眺め、少々困った表情を見せていた。
が、そこはやはり大人である。
その表情も一瞬の出来事であり、お静かに、という一言を大声ではなく力強く発することにより教室の
静寂は守られた。
けれどもそれで天気が変わるわけではない。
これから起こる行事、帰宅という面においてこの雨は避けては通れない試練である。
静寂に包まれた教室内とは言え、生徒達の心は晴れない。
それはもちろん、少年と少女も同じであった。

「やまないね」
「やまわないわね」

授業も全て終わり、後は帰宅するだけとなったところでふたりは足を止めていた。
当然と言えば当然なのだが、このままこうして学校内に居てもただの延命処置でしかない。
それを悟った生徒等の多くは濡れながらも走り帰宅する姿がちらほらと見て取れる。
自分達もその行動しか残された術はないのだが、どうも憂鬱だ。
ただ濡れるだけ、そう考えれば良いのだが、どうもそれだけはない感覚。
皆様にもないだろうか?

「はぁーあ、やんなっちゃうけど走るしかないわねぇ……」
「そうだね」
「ミサトのお迎えでも期待したいところだけど……」
「仕事中だろうし無理は言えないよ」
「解ってるわよ、そんなの」

自分達の姉を思い浮かべる。
が、駄目。頼りにならないだとか、そういうことじゃない。

742: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/22(木) 01:56:12 ID:???
仕事中であろう時に無理は言えない、甘え過ぎるわけにはいかない。

「……雨、嫌いだな……」
「……アスカは雨が苦手なの?」
「ううん、嫌い、なの。なんでかなぁ、嫌なことばっかり思い出しちゃうから」

気の持ち様、だとは良く言う言葉。
だったら悲しい気持ちでいれば少女のようになってしまうのも道理ではないだろうか?
良い風にだけ捉えれば済む話など、人間様には難しいことだ。

「……うん、何となく解るよ、僕も」
「……でしょ?」

ざぁざぁ、と振り続ける雨を見続けるふたり。
その心には何を想っているのだろう?
悲しみだけが巣食う世界なのだろうか?
そうだったとしても、それは人間様だから致し方ない。

「でもさ」
「え?」

突然、少年が少女の手を取り出し外へと駆け出す。
外は雨、どんどん体は濡れていく。
それでも少年は少女の手を離さずに走り出す。

「僕達はまだまだ子供なんだから。こういうのも楽しむべきだと思うんだ」

息を切らし、精一杯濡れながら走る少年。
そしてそれに引っ張られる形の少女。
今の少年の台詞、何てことはない台詞。

744: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/22(木) 02:01:06 ID:???
期待していたとは言え、雅か本当に現れるとは思ってもいなかったふたりは困惑顔。

「どうせ濡れて帰るつもりだろうなぁ、と思ってね。というかその考えがドンピシャだったわけだし」

「でも仕事が……」
「そうよ、何も無理してこなくても……」
「はいはい、子供が大人に気を使ってんじゃないわよ。ほらほら、起きちゃったことは仕方ない。後悔は後だろうが先だろうが立てるもんでなし、ちゃっちゃと帰るわよぉ」

女性の台詞に苦笑を浮かべるふたり。
こういう時、子供というのは今みたいな台詞を言われれば反抗したくなるものだが、つい先ほど自分達はまだ子供だと認めただけになんとも言えない。

「あはは、やっぱりミサトさんには適わないですね……」
「なんのこと?」
「まっ、別に良いけどさぁ……もうちょっと空気読みなさいよね……」
「空気読んで傘を持ってきたんでしょうが! 何よ、私邪魔?」
「べっっにぃー、そうとは言ってないわよ」

どうやら少女としてはふたりっきりで何とも言えない良い雰囲気を壊されたことに少しお冠の様子。
ふたりの時は男女の仲となれるのだが、女性が現れると家族として一纏めにされてしまう。
それがとても幸せだということは解っているのだが、どうにもこうにも歯痒いのである。

「はいはい、悪ぅござんしたね。じゃあ、こういうのはどうよ?」

そう言って女性は傘を持ち、左隣に少年を、右隣に少女を携える。

「これにどういう意味があるのよ?」
「相合傘に決まってるじゃない」
「……アンタ、相合傘の意味知ってる?」

一本の傘に男女が入ることを相合傘と世間は言う。
現状では女性の割合が高すぎるわけだ。

745: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/22(木) 02:03:30 ID:???
「勿論、知らぬわけがなかろうて」
「じゃあ、なんで相合傘になるわけよ」
「ふたりの仲は傘に守られてこそ、だったら傘を持つ私がしっかり守ってあげるわよ」

女性は冗談のつもりで言ったのかもしれない。
だけどその言葉は少女の心に、少年の心にも深く刻み込まれていた。
所詮は『ごっこ』でしないのかもしれない。
けれども幸せなら、誰がそれを笑い飛ばせるのだろうか。
大体、この光景はどう見えるだろう?
きっと仲の良い家族が楽しくじゃれ合っている姿に見えるに見えるに違いない。
それだけで十分なのだろう。
だからこそ女性が用意したふたりの傘は開かれず、3人で入るには些か小さめの傘だけを使用していない。

「さっ! 濡れるのは良い気分じゃないし、さっさと帰りましょー!」
「帰ってお風呂の準備しなくちゃ」
「じゃー、アタシが一番風呂!」
「そこはお迎えに来た私に譲りなさいよ!」
「それとこれとは別問題よ!」
「じゃー、何時も通りじゃんけんで決めましょ」

何時までも家族として幸せでいられるように。
何時までも家族でいられるように。
3人は前へと歩き出して行く。

「そういえばアスカ、相合傘は否定しないの?」
「……コホン、じょーだんじゃないわ! 誰がこんな――」
「はいはい」
「……相合傘ってなんなのか、聞くべきじゃないよね……」

そんな葛城家。

746: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/22(木) 02:05:14 ID:???
で、この家族の後方。
もうひとりのチルドレンである少女。
この少女も雨に悩まされていた。
濡れて帰るという選択肢しかないのだが、後の事を考えるとどうにもこうにも躊躇してしまう。
風邪を引くわけにもいかないのだ。孤独の自分なら尚更。
しかし、そんな少女の前に猫のプリントがされた可愛らしい傘が視界に入る。

「レイ、帰りましょ」
「赤木博士……」

そこに居たのは仕事場で出会う女性。
少女は驚きながらも差し出された傘を受け取り、礼を言う。

「気にしなくて良いのよ」

女性はそれだけ言って少女が隣に来るのを待っていた。
そしてふたりは雨の中、並んで歩く。
妙な沈黙がそこにはあったが、少女にとってそれは嫌なものではなかった。

「少し冷えたでしょ? 帰ったら暖かい野菜スープを作るわね」

わざわざ迎えに来てくれたのだろうか?
少女にはその理由が良く解らなかった。
けれど、今は「喜び」という感情に浸れればそれで良いと思う。
不意に女性が少女の手を握る。

「ほら、こんなに冷えて。早く帰りましょ」
「はい……赤木博士……」
「リツコ」
「え?」

747: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/11/22(木) 02:06:45 ID:???
「リツコで良いわ」

少し照れ臭そうにしながら笑顔を見せる女性。
自分には何も無いと思っていた、少年に違うと言われてもそう思っていた。
確かに何も無いかもしれない。
けれど無いところから生まれるものもある。
それは何かは解らない。
けど、これが『家族』としての暖かさかもしれない。

「はい……」

だって、自分の手から伝わるこの暖かさは本物だから。

「……リツコ博士」
「そうぢゃなくて」

ガックリと項垂れる女性。
これからゆっくりと頑張りましょう。

そんな葛城家と愉快な仲間達。

760: お誕生日に 2007/12/04(火) 02:15:42 ID:???
 近頃シンジがかまってくれない。
家事を早々に切り上げて、チェロばっかり弾いてる。
女も楽器と一緒でたまには触れてあげないと
いい声出さなくなるんだぞ!
 腹立ち紛れにヒカリとショッピング。
2時間たっぷりダベってご機嫌で帰宅した。

 なのに、シンジのやつ、
どこいってたの?とか、帰りが遅いとか、
ぐじぐじ言い出すもんだから
あたしもカッとなってしまって
せっかくの上機嫌が台無し。
些細なことから口論になって、大喧嘩。
部屋中引っ掻き回して手当たりしだい物を投げまくってたら
手元が狂ってチェロに直撃。
こともあろうかチェロの弦を切ってしまった!

761: お誕生日に 2007/12/04(火) 02:17:37 ID:???
「っつ…!」
「アスカ!」
撥ねた弦が指に紅い飛沫を散らす。
慌ててシンジがとんできた。
大事なチェロ…ではなくて、あたしに。
な、な、なんで。あんなに大事にしてるチェロなのに。
「…あたしなんかより、チェロの方が大事なんでしょ。
ごまかさなくたっていいわよ!バカ!」
「…、実はアスカの誕生日が近いから、
アスカの為にいい音聴かせたくて
特訓していたんだ。
僕にはこれしかできないから。
でも、アスカを知らないうちに傷つけてたんだね。
ごめん、僕はバカだな…。」

バカなのはあたしだ。
最低だ。チェロにまで嫉妬して。
挙句、壊しちゃった。

762: お誕生日に 2007/12/04(火) 02:19:02 ID:???
「いいんだ。気にしないで。
楽器はいつでも直せるけど、
アスカの指の怪我と、傷ついた心は
僕じゃなきゃ治せないから…
他の誰かじゃ意味ないだろ?」

傷つけたのが僕なら、
癒すのも僕の役目って真っ赤な顔して
あたしを抱きしめた。
ありがとう、シンジ。
チェロは聴けなくなったけど、
あんたの思いやりの気持ちは
受け取ったからもういいの。

後日

「チェロ修理に出してくれたんだ。ありがとう、アスカ。
結構かかったんじゃない?
お祝いするつもりが逆にプレゼントされちゃって、なんだか申し訳ないよ」
「別に。壊したのはあたしだし、それに、…あたしの為だもん。
早くいい音聴かせなさいよ。
そのあと…いい声で鳴いてあげるわ…」






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