640: 639 2007/06/06(水) 10:48:19 ID:???
・・・6月6日午前0時・・・

toシンジfromアスカ
ちょっとシンジ、いまからアタシのへやにきなさい!

toアスカfromシンジ
なんだよ藪から棒に・・・
隣の部屋なんだから直接呼べば良いだろ

toシンジfromアスカ
なによ、あんただってちゃっかりメールしてるじゃないの!
だいたい『?から?に』ってなんてよむのよ
ぐだぐだいってないでさっさときなさい!!

toアスカfromシンジ
うっ・・・わかったよ、行けばいいんだろ?
今行くからちょっと待ってて。

641: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2007/06/06(水) 10:53:00 ID:???
・・・そして・・・

「ったく、こんな時間になんだよ、
アスカはいつも自分勝手なんだから。
・・・でも、そんなところもかわいいんだよな」

コンコン・・・響くノックの音
「アスカ、入るよ?」
ミサトを警戒してかいつになく小さなシンジの声
対照的に大きく脈打つアタシの胸
『やばい、来ちゃった。
・・・大丈夫、今日はちゃんと伝えるって決めたんだから・・・
アスカ、いくわよ。』

シンジの気持ちを知ってか知らずか、こっちはこっちで
想いをめぐらせてるようで・・・

「ど、どうぞ」
ガチャ
「いったいどうしたんだよアスカ・・・
って、そんな格好でどうしたのさ!?」
「いいから、そんなとこに突っ立ってないで
こっち来て座りなさいよ」
「う、うん」

シンジが自分の隣に座ったのを確認すると
「ねぇ、覚えてる?この服。アタシとシンジが初めて逢った時の服よ」
アスカは静かに話し始めた・・・

642: おわり 2007/06/06(水) 10:56:11 ID:???

「あの時はあんたの事ほんと『冴えない奴』って馬鹿にしてた
でも、一緒に生活して一緒に使徒を倒してくうちに
だんだんと認識が変わってきたの・・・」

じっと前を見て話すアスカ
それを優しい顔で見つめるシンジ

お互いの気持ちは同じはずなのに、
今まで幾度となくすれ違ってきた二人
それでも今夜は、なにかいつもとは違う雰囲気を感じながら
静かに夜は更けていく・・・




「誕生日おめでと、シンジ」

645: 一日遅れた 2007/06/07(木) 01:17:22 ID:???
初夏を思わせるこの時期の太陽は、夏の到来を感じさせる様な力強さを感じさせるくせに、ヨク雲に隠れている
なんか恥ずかしがってるような、それとも隠しきれないような、
どうせ出てくるんだから表にでてくればイイのに、堂々と尻尾を見せて隠れたつもりになっている、なんだか微笑ましい
今はそんな季節だ・・・・

「ボーットしてんじゃないっ!」

夏の尻尾を見つけた感じだなぁ、なんて空をみてた僕に突然言葉が落ちてきた
なんかコレ、落雷みたいだな

「え?」

突然の落雷に何も考えずに浮かんだ反応だけが口からとびだして

「『えっ?』って何よっ『えっ?』って!」
右足を力強く踏みしめながら彼女は全身を使って不満をボクにぶつけてくる

最近の雷神様は落雷と同時に軽く地団駄を踏むらしい

646: 一日遅れた2 2007/06/07(木) 01:18:32 ID:???
「あっゴメン、ボーットしてて、いや・・・ははっ」
とりあえず誤魔化しようのない非が自分にあるだけにココは正直に、非情に素直に謝って彼女の不満にサグリをいれてみた

「はぁーボーットしてんのはアンタの専売特許だけど、こんな近距離で話しかけてる事ぐらいは反応してもイイんじゃないのっ?」
「ご、ごめん、」
「で、どっから?」
「え?」
「だから、どっから?」

もう一回聞き返すとこれは殴られるね、うん

「信号を見てたら青になって、それから上を見たら空に目を奪われちゃって・・・」
自分が意識を手放したタイミングを彼女に報告した
「ア、アンタ信号ってスンゴイ前じゃないっ、その間ズーーットあたしは一人で楽しくアンタに話しかけたってわけ!?」
振り返ってみると今は赤く点灯している信号機が陽炎でボヤケテ見えて、それがボクの失態の長さを物語ってるようでもあったわけで
一瞬だけ長考してみた、、
「はは、」
ハニカンデみた、、

「はは、じゃないわよコノ バッ カ シンジーーーーー」

本物の落雷がカバンの形をしてボクの頭を直撃した
おかげでボクは母さんのバツの悪い笑顔に会えた
真っ白な星と共に・・・・

647: 一日遅れた2 2007/06/07(木) 01:19:23 ID:???
「いったいなっ!そんなに強く殴る事ないだろ!」
母さんとの再会を果したボクは、その不満と共に彼女に抗議する
「これぐらい強く殴っといた方がいいのよっアンタには!」
いや、だって母さんに会っちゃうぐらいですよ?
「大体アンタおおげさね、おっおっげっさっ」
いや、カバンの角がヘコンでません?

「はぁーこのアタシが話しを聞いて貰えないで怒る事があるなんて・・・アンタある意味最高の贅沢な存在だと思うわよ、
ホ、ン、ト、ウッ」

最高の贅沢ってのはカバンがヘコムぐらいの衝撃で母さんに会う事なんだろうかと未だにジンジンする頭を擦りながらアスカに
問いかけてみた

「ごめん、本当ボーットしてて、でもどうしたの?」
そういうと彼女は少し顔を赤らめて
「アンタ今日誕生日なわけでしょ、だから、何かリクエストがあるかって聞いてんのよ」

こういう彼女はチョットカワイイ、言ったら今度は本当に母さんと同居しなきゃいけなくなりそうだし、
それに少しの優越感をもってボクはこれを独占している。

「あ、別に何でもいいよ、祝ってくれるならそれだけで嬉しいから」
本当の本心(何か変な表現だよね)でボクは彼女に答える
「あんたねぇー」
そう言った彼女はどこか疲れたような、少し諦めたような何とも複雑な表情で(でも少し頬が赤いよね)
「じゃあ聞くけど、アンタ半年後、逆にアタシに『何でもイイわよ』って言われたらどうすんのよ?」
半年後、そうか、半年経てばアスカも17になるんだなぁ

648: 一日遅れた3 2007/06/07(木) 01:24:31 ID:???
「うーん、何か美味しい料理を作るよ」
「あたし、現在、カッチリ、出来ません」
(カップラーメンでもいいよ・・・うん、黙っておこう)

「じゃ・・じゃあ服をプレゼントすると」
「『向上心』とかプリントされたシャツ着てハシャゲっての?」
(別にそういうシャツばっかじゃないよ!)

「手編みのマフラー」
「それはケンカもプレゼントしてる?」
(手芸部に入ろうとしたらメチャクチャ怒られたなぁ)

ことごとく跳ね返される提案を抱えながら、他に何があるんだろうとボクは自分のスキルが可能な範囲で考えにハマッテいる姿に落胆した彼女は
「アンタほんとーにコウイウことには鈍いっていうか素敵!っていう部分に欠けるんじゃないのぉ」
しょうがないじゃないか、てかそれって身もふたも無い・・・いやその前に今日はボクの誕生日だろ!

「そ、そんなの急に言われたって難しいよっボクだって半年あればチャント考えられるよ!」
そう言ったボクを少し驚きながら見つめる彼女は
「あら、意外と強気な発言じゃない、言っとくけどアタシは優しくないわよ?改めて11月ぐらいにこんな質問しないけど、
本当にその時は大丈夫なのかしら?」
『意地悪な顔』そんな題名がピッタシな表情で楽しそうに投げかける彼女を見ながら少し腹をたてたボクは、なぜか唐突に出てきた願いに
少し驚いて、でも悩むのも面倒臭いっていうか、これは自分の本心、本当に欲しいものだから素直に言葉に出た

649: 一日遅れた(4) 2007/06/07(木) 01:29:33 ID:???
「じゃあ居て」

「?」
意表を突かれる彼女、こういう時の表情も他人には渡せない、だから続ける

「居てよ、隣に、側に、すぐ近くに・・・・」
「!?」
「そ、そうすればアスカの誕生日までにイイ案が浮かぶかもしれないし、それにさ、」
「・・・・・」

「それがボクはやっぱり嬉しいんだよ、うん、代えがたいんだ」

雲に隠れていた夏の日差しが突然顔をだして
ドンッと彼女はボクに自分のカバンを突き出して
反射的にそれを抱えたボクを尻目に

「バーーーーーカッ」

それは昔、彼女が乗っていた赤鬼さんより赤い表情で
昔のボクには信じられないような幸せそうな不機嫌な顔で
あの時は見てくれなかった、見れなかったお互いの瞳をしっかり確認して
そんなお互いを確認した様に一つ頷くと彼女は一目散に走り出した

650: 一日遅れた(5) 2007/06/07(木) 01:32:06 ID:???
その先には学校があるんだ
そしてあの時は望んでなかった友達が居る
彼女だけじゃない、ボクも包んでくれる暖かい日常の空気が、そこにも待っているんだ
そんな幸せな空気に彼女は一時退避、もう、見事なまでに退避していってる
紅茶色だった髪が何時の頃からか黄金色の輝きを宿しだしてた、
淑女と呼ぶにはマダマダかわいい彼女の後ろ姿を見つめながらボクはまた空を見上げた

そこにはヤッパリ雲に隠れた太陽が居て
そのお陰でボクはそれを眩しいけど直視する事ができて
暖かい日光に包まれながらボクは思った

ボクのプレゼントは?

651: 一日遅れた(完) 2007/06/07(木) 01:34:48 ID:pwLxYSHr
「シンジーーーー」

陽炎の向こうの太陽がボクを呼ぶ

「誕生日までなんてゼッタイだめだからねっ、ズットよ!覚悟しなさいっ、ハッピバーースデーー!」

少し泣きそうだ、ってココ通学路だよアスカ

色々あったと思う、これからも色々あるだろう、ボクの誕生日、それはボクの節目
ボクの節目ってのはボクだけじゃない、ボクを彩る沢山の人たちに対する節目でもあるのかもしれない
今ボクはここに居て、そして彼女がココに居てくれた

確認出来た事は素直に嬉しいと思おう、
これから有るかもしれない不安には少し捻くれて迎え入れよう
でも、これだけは変わらずに大事に思おう
来年も、その先のボクにとっては永遠に続く今日を迎えるたびに

「アスカが側に居てくれる事を」

皆も居るだろう?
だからそう思う度に言おう心から、心だけでも

「ありがとう」

そう言おう、ボクから君達に、君達がボクに

そしてボクはアスカに




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