973: パッチン 2008/07/07(月) 22:33:16 ID:???
『おかずの価値は』

放課後の夕焼け染まる静かな教室。
掃除が終わった3バカトリオは、何やらトウジの机に集まって密会中。

「ねぇ見せたい物ってなに?」
「へへっ、シンジに見せんのは初めてだったかな?最新号が出たんだよなトウジ?」
「そやそや、ほなご開帳やでぇ~♪」

そう言ったトウジの鞄から飛び出したのは、絶対に18歳未満が見てはいけない本

「な…なななな!!なんだよコレぇぇ!!」
「あ、アホ!声がデカいっちゅーねん!!」
あまりの衝撃に声を荒げるシンジを必死で抑える2人。
「だ、だってコレ!」
「なに14歳にもなって、エロ本くらいにビビってんだよ!」
「なんやシンジはエロ本見たことないんか?」
「な、無いよ!そんなの犯罪だよ!」
顔を真っ赤にしてエロ本から目を離さずに声を荒げるシンジ。
「みんな見てるでコレくらい?ほれほれ、ヤらしいやろぉ♪」
「う、うわっ…!」

トウジがページをめくる度にシンジを初めて襲うピンクタイフーン。
いくら女性2人と同居してても、同僚である裸の少女を押し倒した経験があっても…

「エロい撮り方やでコレ~。よかったら貸したるでセンセ?」
「そ、そんなの…!」


一週間だけ借りた。

974: パッチン 2008/07/07(月) 22:34:45 ID:???
「おかえり~」
「た、ただいまアスカ!今日はミサトさんも帰ってこないし、ご飯にしよっか?」
「は…?早くない?」
「早い方がいいよ絶対!今日の夜はだって…」
「夜?」
「あ…いや…何でもないやゴメン」


「珍しく出前かと思ったら…何よコレ」
「す、スッポン。なんか食べたくて…」
今夜のピンクタイフーンに思いを馳せるシンジは、微妙な顔をするアスカに対して愛想笑いを浮かべながら、パクパクとスッポンを食べていく。
「アンタ、スッポンなんか好きだったの?」
「きょ、今日は食べなきゃダメなんだよ!」
「今日は…?」


夕飯後、シンジに急かされるまま早めにお風呂に入ったアスカは、いつものタンクトップとホットパンツ姿でリビングに登場する。
「まだ6時半じゃない。寝るにはまだ早いわね」
「・・・」
「シンジ?」
「あ、ゴメン!」
ポーッとした表情で露出度の高いアスカを見つめていたシンジ。
夕方に見た本の内容が頭を駆け巡ってしまう。

「…なにしてんのよアンタ」
「も、もう寝ようかアスカ?」
「はぁ!?まだこんな時間よ!?」
「だ、ダメなんだよ僕…もう…ごめん!」

そう言うと、自室に駆け込んでしまうシンジ。

975: パッチン 2008/07/07(月) 22:36:53 ID:???
「あ、アスカ怪しんだかな…?」
閉めた扉にもたれかかりながら、胸を両手でグッと押さえて溜め息を吐く。
そして、そのすぐ後で隣にあるアスカの部屋のドアが閉まる音が小さく聞こえた。
「ふぅ・・・アスカが寝付くまで待とう…」
本が入った鞄を見て、少しドキリとしながらベッドに入っていくシンジ。
一時間ほど後に来る楽しい時間に思いを馳せながら…。

が・・・

スパーーン!!
「うわっ!?」

いきなり開いた扉に目を移すと、そこには枕を片手にコチラを睨みつけているアスカ。
「な、なんだよ急に!」
「こっちのセリフよ!アンタが来る前にこっちから来てやったのよ!!」
ドスドスと音をたてながらベッドにやって来るアスカに、目を白黒させながら戸惑うシンジ。

「夕飯がスッポンだったり…早めに寝かそうとしたり…風呂上がりのアタシの身体ジロジロ見たり…」
「あ、アスカ…!」
言いながら自らのタンクトップを脱ぎにかかるアスカ。
甘過ぎる香りがシンジの鼻をかすめていく…。
「アンタが考えてることなんか全部お見通しなのよ!!
でもアンタの思い通りになんかなってやらないから!!」
「あ、アスカ誤解してる!誤解してるよ!」
シンジは半裸に近いアスカに、ベッドの端へとジリジリ追い詰められていく…。
「アタシから夜這ってやるんだから!!」
「あ、アスっ!あ…あぁ-!!」

その叫びと共に、鞄の中の雑誌がただの紙切れに変わったのだった。

976: パッチン 2008/07/07(月) 22:38:40 ID:???
『白』

「人が他人に抱くイメージっていうのは、第一印象が8割らしいね」
「ふ~ん…。ていうことは、第一印象の良し悪しで相手の人間と上手くやっていけるかが、ほとんど決まっちゃうワケね」
「みたいだね。ちなみにアスカから見た僕の第一印象ってどんなだった?」
「冴えないヤツぅ~って感じだったわね!」
「じゃあ今の僕と第一印象の僕のイメージって、やっぱり8割いっしょ?」
「10割じゃない?今も全然冴えないじゃない」
「・・・ふん」
「冗談よバぁカ…かなり変わったわよ。良いイメージにね」

わしゃわしゃと、いじけたシンジの黒髪を撫でてやる。

「じゃあ逆に質問するけど、アンタから見たアタシの第一印象ってどんな感じだった?」
「う~ん・・・白かな…」
「なにそれ?白人ってこと?」
「ううん。下着が」

『ガスッ』と撫でていた手をグーにして殴る。

「いたい…」
「自業自得よ!どんな第一印象なのよそれは!」
「うぅ…でも、第一印象から今のイメージはかなり変わったよ!」
「なに?アタシそんなに変わった?」
「うんっ、白以外にもピンクとか黒とか…」

ガスッ!

977: パッチン 2008/07/07(月) 22:40:17 ID:???
『七夕1』

「さぁさのはサ~ラサラ~、の~きばにゆ~れるぅ~♪」

「…なにしてんの?あの子達」
学校帰りの通学路にて、子供が小さい笹を振り回しながらハシャぐという見慣れない風景に、キョトンとするアスカ。
「パンダ来日?」
「違う違う…。あれは七夕の笹、今日は笹を飾る日なんだ」
「七夕…?ささ…?
あぁ!出たわね日本の意味不明行事!!」
「いや…そんな言い方しなくても」

先々月の今頃、民家に立てられた鯉のぼりに対してアスカが「でっかい洗濯物ね」と言ったのは記憶に新しい。

「で、なんで今日は笹なんかがいるのよ?」
「えっと…短冊っていう紙に願い事を書いて、その笹にくくりつけるんだ」
「で?」
「すると、願い事が叶うっていう…」
「迷信でしょ!」
「・・・うん」

今年の初め、神社に初詣に行った際、おみくじの『大吉』を引いたその日に、加持さんからのお年玉入り財布を落としたアスカ。
それ以来、すっかり日本行事に嫌悪感を抱いてしまったらしい。

「だいたい笹に願い事ぶら下げて、願いが叶うなんて発想がどっから来るのかが知りたいわホント」
「う~ん…昔からある風習だしね。織り姫様と彦星様が叶えてくれるのかな?」

978: パッチン 2008/07/07(月) 22:42:11 ID:???
「ま~たワケわかんないのが出て来た…誰よソイツら」
「えっと、天の川は知ってる?」
「ミルキーウェイでしょ?この前の停電事件の時に見えたやつ」
「うん。織り姫様と彦星様は愛し合ってる恋人同士なのに、ずっと離れ離れで暮らさないといけない可哀想な2人なんだ。
けど一年に一度、そんな2人の間に天の川が掛かる日、その日だけ2人は天の川を渡って、逢うことが出来るんだよ」
「ふ、ふ~ん…」

不覚にもちょっといい話ね…と思ってしまった自分の頭をフルフルと振るアスカ。

「しんきくさい話ねぇ!やっぱり日本って暗い話が多くて嫌んなるわ!」
「そうかな…?」
「そうよ!だいたい一年に一回しか逢えないような2人が未だにラブラブだってことが信用ならないわよ!」
「う~ん…まぁでも作り話だし…」
「それでも納得いかないの!!実際の世界には毎日顔合わせてもラブラブできない可哀想な子がいるのにさぁ!!」
「実際って…。誰のこと言ってるの?」
「え゛っ!?・・・あ…。」

アスカの顔が一気に赤に染まる。

「・・・ひ、ヒカリと鈴原のことよ!!」
「え…えぇっ!洞木さんってトウジのこと好きだったの!?」
「うっるさい!!鈍感バカ!!」

979: パッチン 2008/07/07(月) 22:43:33 ID:???
『七夕2』

夕方6時
葛城家の夕飯前。家主のミサトが、ネルフ帰りに笹と短冊を買ってきたらしい。
ベランダに飾るらしいその笹は、三人分の願い事を吊すには少々大きすぎるように感じるが…
「えびちゅ♪えびちゅ♪えびちゅっちゅ♪」
1人で何枚もの『えびちゅ短冊』を吊すミサトのお陰で、すっかり華やかな笹になってしまっている。

「ハンバーグ♪ハンバーグ♪ハンバーグ♪」

下校時はアンチ七夕だったハズのアスカだったが、今は何故か嬉しそうに短冊に願い事を書いている。

しかし・・・

「ミサトさんもアスカも『えびちゅ』とか『ハンバーグ』とか、単語ばっかり書かない方が…」
「なによ~文句あんのシンジ?」
「だ、だって願い事って普通文章にしない?『なんとかになりたい』とか…」
「いいのよぉ♪願い事なんて人それぞれ、十人十色なんだしっ」
「で、でも…」
「そういうアンタはなに書いたのよ?・・・ちょっと見せなさい!」
「あっ!」
言うが早いか、シンジの書いた短冊をハヤブサのように分捕るアスカ。

980: パッチン 2008/07/07(月) 22:46:30 ID:???
「か、返してよアスカぁ!!」
「なになにぃ?『健康でいれますように』
夢な~い!!なによコレ」
「あら、シンちゃんらしくていいじゃない」
「シンジらしすぎなのよ!お願い事ぐらい夢あるのにしなさいよ」
「ぶ、文章なだけいいだろ!早く返してよ!」
「ダメよぉ~♪ここはひとつ、アタシが夢のある願い事に変えてあげるわ!」

そう言うとアスカはペンを片手に、ニヤリと笑う。
その笑顔にあまりいい思い出が無いシンジは、「やめてよ!」とすがりつくが…。

「で~きた!」
「な、なんだよこの願い事!」
「いいじゃん♪アンタなんかには絶対できない夢のあ~る願い事よ!」
「こんなの外にくくりつけるの恥ずかしいよ!」
「いいじゃない!ホントはアンタだって、こういうお願いしたかったんでしょ!」
「だ、誰がそんなお願い…!」
「違わないわよ!アンタがどうしても実現させたい夢に違いないわ!!」

「・・・それはアスカも一緒でしょ…」
ボソッと呟くミサトの視線の先に、
『いつまでもずっとずっとアスカと一緒にいられますように』
と書かれた短冊が、シンジとじゃれあうアスカの手にぶら下がっていた。

981: パッチン 2008/07/07(月) 22:47:57 ID:???
『七夕3』

深夜1時
絶対に入るな!と書かれたプレートがぶら下がったドアが、ゆっくりと開く。
中から出てきた人影はリビングを通り、ベランダに向かって一直線に進む。

見上げても星が見えない都会の空の下。
彼女は、既に笹にぶら下がっている自らが書いた短冊に目を移し、小さく溜め息。
そして、左手に持っている先程書いた『もう一つの短冊』を、くくりつけようとした。

・・・が、出来なかった…。

情けない自分に対して膨れっ面を作ると、彼女は手近にあった笹の枝をブチ折ると、自室に引き上げていった。


深夜3時
布団に入ってスヤスヤと眠る彼女の枕元に空き缶に刺さった小さな笹の枝がある。
そのか細い枝が重そうにぶら下げている赤い短冊。

「シン…ジぃ…」

彼女は今夢を見ている。
天の川の上で、愛しい人と一緒に仲良く遊んでいる夢。
一年経っても百年経っても、絶対に消えない天の川の上で遊んでいる夢。
何故ならそれが彼女のお願い事だから

『いつまでもずっとずっとシンジと一緒にいられますように』

そう書かれた短冊が、アスカの枕元で揺れていた。




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