522: だぶ 2009/09/06(日) 22:06:53 ID:???
シンクロテストも各種訓練もない日曜の午前。
アスカはソファを背にして床に腰を下ろし、ぼーっとテレビを見ていた。
シンジはそのソファに座って、のんびりと料理雑誌をめくっている。
「……シンジ、シンジ!」
シャツをアスカに引かれたシンジは、ちょっと迷惑そうに応える。
「…どうしたの、アスカ?」
「あれ、あれ!」
アスカが指さすテレビ画面では、丸々と肥えた芸能人が丼物に舌鼓を打っていた。
隠れた名店を紹介するグルメ番組のようだ。
「…でみかつ丼?」
「あれ、食べてみたい」
「夕食で作れってこと?」
シンジはレシピを考えてみる。デミグラスソースを出来合のものにすれば作れないこともないかな。
「ちがうちがう。あの店、第3新東京の○○3丁目の丼専門店だって。今から食べに行こうよ!」
「…今からねえ」
ちょっとシンジは考えるそぶり。基本的にインドア派のシンジにとって、カツ丼食べるためだけに炎天下に外出するのはちょっと遠慮したいところ。
「今日の夕食当番は私が代わるからさ!お昼はあれにしよう!」
高校生になってアスカは少しずつ家事を始め、今では食事の準備や掃除などはシンジと交代で行うようになっていた。
最初は危なかしげだった腕前も、今ではシンジに肉薄する程度にまで成長している。
アスカにそこまで譲歩されたのならば、シンジも断れない。
「うん、それじゃあ行ってみようか」
ちょっと苦笑しながらソファから立ち上がった。
「よしよし、聞き分けのいい子にはお姉さんサービスしちゃうぞ」
アスカもはねるように立ち上がり、着替えるために自室へと向かう。
その姿を優しい目で追いながら、シンジはリモコンでテレビの電源を切った。
アスカはソファを背にして床に腰を下ろし、ぼーっとテレビを見ていた。
シンジはそのソファに座って、のんびりと料理雑誌をめくっている。
「……シンジ、シンジ!」
シャツをアスカに引かれたシンジは、ちょっと迷惑そうに応える。
「…どうしたの、アスカ?」
「あれ、あれ!」
アスカが指さすテレビ画面では、丸々と肥えた芸能人が丼物に舌鼓を打っていた。
隠れた名店を紹介するグルメ番組のようだ。
「…でみかつ丼?」
「あれ、食べてみたい」
「夕食で作れってこと?」
シンジはレシピを考えてみる。デミグラスソースを出来合のものにすれば作れないこともないかな。
「ちがうちがう。あの店、第3新東京の○○3丁目の丼専門店だって。今から食べに行こうよ!」
「…今からねえ」
ちょっとシンジは考えるそぶり。基本的にインドア派のシンジにとって、カツ丼食べるためだけに炎天下に外出するのはちょっと遠慮したいところ。
「今日の夕食当番は私が代わるからさ!お昼はあれにしよう!」
高校生になってアスカは少しずつ家事を始め、今では食事の準備や掃除などはシンジと交代で行うようになっていた。
最初は危なかしげだった腕前も、今ではシンジに肉薄する程度にまで成長している。
アスカにそこまで譲歩されたのならば、シンジも断れない。
「うん、それじゃあ行ってみようか」
ちょっと苦笑しながらソファから立ち上がった。
「よしよし、聞き分けのいい子にはお姉さんサービスしちゃうぞ」
アスカもはねるように立ち上がり、着替えるために自室へと向かう。
その姿を優しい目で追いながら、シンジはリモコンでテレビの電源を切った。
523: だぶ 2009/09/06(日) 22:07:48 ID:???
あれから3年。
使徒戦役が終わっても、ネルフのオーバーテクノロジーの保守・管理は必要なわけで。
特にぜーレとの争いを制し、事実上世界の覇者の位置に立ったネルフにとって、エヴァンゲリオン各機の能力維持については最優先項目の一つである。
故に、搭乗者達の訓練・テストなどはスケジュールの遅延・未消化などの無いように、粛々と実行されなければならない。
のはずだったが、ある日曜日の午前8:00、その日予定されていたシンクロテストが突然中止となった。
原因はテスト最高責任者の某博士の体調不良…ぶっちゃけて言えば、リツコがつわりが酷くなり、テストへの立ち会いが不能となったためである。
テストに臨むために連れ立って自宅を出ようとしたところでその報を受け取った二人の適格者は、
(これが世界に冠たる組織の実情なの?)
(父さん…もう弟妹はいらないよ…)
と、あまりの情けなさにがっくりと肩を落としたのである。
ちなみにシンジの父親は第1適格者を養女とし、新妻に毎年子供を産ませている。
この3年で、シンジには実に3人もの弟妹が出来ていた。
養女の旧姓綾波嬢はともかく、思春期に年の離れた弟妹が次々と出来るシンジ君の苦悩は、結構大きいものがある。
使徒戦役が終わっても、ネルフのオーバーテクノロジーの保守・管理は必要なわけで。
特にぜーレとの争いを制し、事実上世界の覇者の位置に立ったネルフにとって、エヴァンゲリオン各機の能力維持については最優先項目の一つである。
故に、搭乗者達の訓練・テストなどはスケジュールの遅延・未消化などの無いように、粛々と実行されなければならない。
のはずだったが、ある日曜日の午前8:00、その日予定されていたシンクロテストが突然中止となった。
原因はテスト最高責任者の某博士の体調不良…ぶっちゃけて言えば、リツコがつわりが酷くなり、テストへの立ち会いが不能となったためである。
テストに臨むために連れ立って自宅を出ようとしたところでその報を受け取った二人の適格者は、
(これが世界に冠たる組織の実情なの?)
(父さん…もう弟妹はいらないよ…)
と、あまりの情けなさにがっくりと肩を落としたのである。
ちなみにシンジの父親は第1適格者を養女とし、新妻に毎年子供を産ませている。
この3年で、シンジには実に3人もの弟妹が出来ていた。
養女の旧姓綾波嬢はともかく、思春期に年の離れた弟妹が次々と出来るシンジ君の苦悩は、結構大きいものがある。
524: だぶ 2009/09/06(日) 22:10:24 ID:???
で、突然完全フリーとなった日曜日であるが、当然何の予定も入れて無かったシンジとアスカである。
インドア派のシンジはともかく、アウトドア派のアスカはどうにかしてシンジと外に行きたかったわけで。
ちょっと強引ではあったがシンジと一緒に歩けることになり、アスカの御機嫌は上昇傾向にある。
「…今日も日差しが強いや」
「男の子でしょ、そんな情けないこと言わないの!」
「そーゆーの、男女差別じゃないの?」
「男女差別という言葉は、女性の権利保護のためだけにあるのよ!」
「…やっぱり男女差別じゃないか…」
口論をしながら、並んで歩く。言い合いながらも、二人の表情は柔らかだ。
口論という名のじゃれ合いは、二人にとって一番大事なコミュニケーションのひとつ。
お互いの顔を見なくても、お互いに優しい顔をしているのがわかっている。
目的地の丼屋までの結構な距離も、この二人にとってはなんら苦になるものではなかった。
インドア派のシンジはともかく、アウトドア派のアスカはどうにかしてシンジと外に行きたかったわけで。
ちょっと強引ではあったがシンジと一緒に歩けることになり、アスカの御機嫌は上昇傾向にある。
「…今日も日差しが強いや」
「男の子でしょ、そんな情けないこと言わないの!」
「そーゆーの、男女差別じゃないの?」
「男女差別という言葉は、女性の権利保護のためだけにあるのよ!」
「…やっぱり男女差別じゃないか…」
口論をしながら、並んで歩く。言い合いながらも、二人の表情は柔らかだ。
口論という名のじゃれ合いは、二人にとって一番大事なコミュニケーションのひとつ。
お互いの顔を見なくても、お互いに優しい顔をしているのがわかっている。
目的地の丼屋までの結構な距離も、この二人にとってはなんら苦になるものではなかった。
525: だぶ 2009/09/06(日) 22:12:22 ID:???
「…ご注文はお決まりになりましたか?」
従業員のおばさんが、オーダー確認にやってきた。
「えーと、このでみかつ丼を」
シンジがメニューの写真を指さした。
「私、地鶏親子丼で」
「えっ?」
シンジが驚いた顔をする。
「アスカ、でみかつ丼じゃないの?」
「それは、あなたが頼んだんだからいいの。せっかく名店と言われてる店に来たんだから色々試すべきでしょ?」
「それって、つまり…」
「そ、いつもみたいに半分ずつ食べればいいじゃない」
パタパタと戻って行く従業員を見ながらアスカは応えた。
「そりゃそうだけど…」
シンジは少し赤くなっている。外で二人で食事をする時に、たまにケーキなどを半分ずつ食べることはある。
しかし、そういう時は最初に二つに分けてから交換するわけで。
丼物だとどうしても半分食べてから交換することになり、妙に生々しさを感じてしまうのだ。
恋人同士ならばいざ知らず、一応友達以上恋人未満の関係である二人にとって、それはちょっと行き過ぎた行為にも思えて。
シンジは少し上目遣いにアスカの表情をうかがった。
アスカはその事実に気がつかないかのように、特に何も言わずに手に顎をのせて厨房の方を眺めていた。
ただ、その頬は少し赤く染まっていたが。
客の多い店内の喧噪の中、二人は静かにオーダーが届くのを待っていた。
従業員のおばさんが、オーダー確認にやってきた。
「えーと、このでみかつ丼を」
シンジがメニューの写真を指さした。
「私、地鶏親子丼で」
「えっ?」
シンジが驚いた顔をする。
「アスカ、でみかつ丼じゃないの?」
「それは、あなたが頼んだんだからいいの。せっかく名店と言われてる店に来たんだから色々試すべきでしょ?」
「それって、つまり…」
「そ、いつもみたいに半分ずつ食べればいいじゃない」
パタパタと戻って行く従業員を見ながらアスカは応えた。
「そりゃそうだけど…」
シンジは少し赤くなっている。外で二人で食事をする時に、たまにケーキなどを半分ずつ食べることはある。
しかし、そういう時は最初に二つに分けてから交換するわけで。
丼物だとどうしても半分食べてから交換することになり、妙に生々しさを感じてしまうのだ。
恋人同士ならばいざ知らず、一応友達以上恋人未満の関係である二人にとって、それはちょっと行き過ぎた行為にも思えて。
シンジは少し上目遣いにアスカの表情をうかがった。
アスカはその事実に気がつかないかのように、特に何も言わずに手に顎をのせて厨房の方を眺めていた。
ただ、その頬は少し赤く染まっていたが。
客の多い店内の喧噪の中、二人は静かにオーダーが届くのを待っていた。
526: だぶ 2009/09/06(日) 22:14:18 ID:???
「お待たせしました、でみかつです」
最初にでみかつ丼がやってきた。おばさんが机の中央に置いた丼を、アスカがさっと奪ってしまう。
「アスカ、それ僕のだろ?」
「どうせ半分ずつにするんだから、どっちのものでもいいでしょ。レディーファーストよ!」
などと言いながら、アスカは割り箸を割っていた。
「やっぱり、男女差別じゃないか…」
シンジは苦笑した。さっきまで二人の間に展開していた微妙な空気、その空間を払拭するためにアスカがあえておどけたのだ。
アスカの優しさの発現はいつもかなりの変化球で、ややもすると彼女の真意と反対の方向に受け取られかねないこともある。
しかし、シンジはそんなアスカの真意を常に理解し、その不器用さを非常に心地よく感じることが出来る能力を会得していた。
続いて親子丼もやってきた。二人はそれぞれの獲物をゆっくりと吟味する。
「ふむふむ、トンカツの下のキャベツがいいアクセントになってるわね」
「関西風の甘い煮汁が地鶏の濃厚な味わいをうまく包み込んで…」
「はむはむ、トンカツも軟らかくて、でもかりっとしてて…」
「う~ん、玉子も地鶏に負けない腰を持ってるなあ。きっとこの地鶏の玉子なんだろうなあ」
こんなことを言いながら飯を食う高校生カップルが来たら、飯屋もさぞやりにくいことだろう。
527: だぶ 2009/09/06(日) 22:15:04 ID:???
そのうちシンジが親子丼を半分食べ終えてしまった。
「アスカ、半分食べたよ」
アスカもシンジに丼を差し出す。
「はい、それじゃ交換ね」
「…アスカ、これ4分の1も食べてないじゃないか」
「ばかね、ここの丼は大きいから両方とも半分ずつ食べるのは私には多すぎるの」
「ああ、太っちゃうから…」
「バカシンジ!!」
びし!と割り箸がシンジの眉間数センチ手前に突きつけられた。
「それ以上言うとセクハラだぞ?女の子はデリケートなんだからね」
「はいはい、デリケートデリケート」
「…なんかぞんざいね…」
「それより、僕が食べる量が多くなりすぎるんですけど」
「シンジは育ち盛りなんだから、たくさん食べてうんと大きくならないとね」
「僕は幼稚園児ですか…」
じゃれ合いながら、二人とも新たな丼に挑みかかった。
(…さっきのデミグラスソース味も良かったけど、この親子丼の優しい甘さはさらにいいわねえ)
もむもむと咀嚼しながら、アスカは目の前のシンジを見た。
「…う~ん、カツを香ばしく揚げるために豚肉の厚さを…」
「かけているソースも、自己主張をせずあくまでもカツのソースとして機能しているなあ…」
「ご飯もコシヒカリと何かをブレンドしているようだし…」
首をひねったり目をつぶったり、真剣に吟味しているシンジ。
その様々に変化する表情を見ているだけで、美味しい親子丼がさらに味の深みを増す気がする。親子丼を食べながら、ほのかな幸せを実感するアスカだった。
「アスカ、半分食べたよ」
アスカもシンジに丼を差し出す。
「はい、それじゃ交換ね」
「…アスカ、これ4分の1も食べてないじゃないか」
「ばかね、ここの丼は大きいから両方とも半分ずつ食べるのは私には多すぎるの」
「ああ、太っちゃうから…」
「バカシンジ!!」
びし!と割り箸がシンジの眉間数センチ手前に突きつけられた。
「それ以上言うとセクハラだぞ?女の子はデリケートなんだからね」
「はいはい、デリケートデリケート」
「…なんかぞんざいね…」
「それより、僕が食べる量が多くなりすぎるんですけど」
「シンジは育ち盛りなんだから、たくさん食べてうんと大きくならないとね」
「僕は幼稚園児ですか…」
じゃれ合いながら、二人とも新たな丼に挑みかかった。
(…さっきのデミグラスソース味も良かったけど、この親子丼の優しい甘さはさらにいいわねえ)
もむもむと咀嚼しながら、アスカは目の前のシンジを見た。
「…う~ん、カツを香ばしく揚げるために豚肉の厚さを…」
「かけているソースも、自己主張をせずあくまでもカツのソースとして機能しているなあ…」
「ご飯もコシヒカリと何かをブレンドしているようだし…」
首をひねったり目をつぶったり、真剣に吟味しているシンジ。
その様々に変化する表情を見ているだけで、美味しい親子丼がさらに味の深みを増す気がする。親子丼を食べながら、ほのかな幸せを実感するアスカだった。
528: だぶ 2009/09/06(日) 22:16:12 ID:???
店の外に出て、アスカは手をかざしながら空を見上げた。
シンクロテストで潰れる予定の休日が、シンジと一緒にお出かけとなったのだ。
夏の太陽の光すら、今の彼女には幸福感をもたらせてくれる。
今日の晩ご飯は何にしよっかな?
鼻歌交じりに献立を組み立てるアスカだった。
「ありがとうございましたぁ!」
シンジが会計を済ませ店を出た。アスカは跳ねるようにシンジのもとへと向かう。
「さ、シンジ。晩ご飯の買い物をして帰るわよ」
そうしようか、というシンジの返事を予想していたアスカだったが、シンジは
少し逡巡した後、意外な返事を返した。
「アスカ、これからどこかに行かない?」
「へっ?」
「今から買い物して帰っても中途半端な時間になるしね。どこかで遊んでいこうか」
アスカは一瞬驚いた。シンジが自分から誘ってくるなんて、雪でも降るんじゃないかしら。
そう思ったアスカだが、真っ赤な顔であさっての方を向いているシンジの姿を見て、不器用な彼の勇気を察した。
「…そうね、せっかくの休みだもんね」
アスカは、シンジに満面の笑みを返した。その笑顔に、シンジの鼓動が少し早くなる。
シンクロテストで潰れる予定の休日が、シンジと一緒にお出かけとなったのだ。
夏の太陽の光すら、今の彼女には幸福感をもたらせてくれる。
今日の晩ご飯は何にしよっかな?
鼻歌交じりに献立を組み立てるアスカだった。
「ありがとうございましたぁ!」
シンジが会計を済ませ店を出た。アスカは跳ねるようにシンジのもとへと向かう。
「さ、シンジ。晩ご飯の買い物をして帰るわよ」
そうしようか、というシンジの返事を予想していたアスカだったが、シンジは
少し逡巡した後、意外な返事を返した。
「アスカ、これからどこかに行かない?」
「へっ?」
「今から買い物して帰っても中途半端な時間になるしね。どこかで遊んでいこうか」
アスカは一瞬驚いた。シンジが自分から誘ってくるなんて、雪でも降るんじゃないかしら。
そう思ったアスカだが、真っ赤な顔であさっての方を向いているシンジの姿を見て、不器用な彼の勇気を察した。
「…そうね、せっかくの休みだもんね」
アスカは、シンジに満面の笑みを返した。その笑顔に、シンジの鼓動が少し早くなる。
619: だぶ 2009/09/12(土) 22:46:46 ID:???
常夏の第三新東京も、日が傾いて来る頃になれば幾分涼しい風が吹いてくる。
灼熱の日差しが降り注ぐ昼間に比べれば過ごしやすい時間帯、彼ら二人はぽてぽてと帰路についていた。
「…アスカ、まだ怒ってるの?」
「…別に」
「気持ちはわからないでもないけどねえ…」
「怒ってません!!」
昼食の後に遊びに行くことにした二人、遠くに行く時間があるわけでもなかったので、とりあえず映画を見ることにした。
ちょうど昔TVで大ヒットしたドラマがリメイクされて封切られたばかりで、そのドラマの大ファンだったアスカが有無を言わさずシンジを引っ張っていったのだ。
しかしその映画の内容は、アスカ嬢の想定したものから大きく外れたものだった。
「リメイクだからねえ、旧作と全く同じものにするわけにもいかないだろうし」
「だからって、あのヒロインの活躍するシーンを削ったり、お色気担当にしたり、あまつさえ他のキャラがやるはずだった
やられ役まで押しつけるのってあんまりじゃない!?」
灼熱の日差しが降り注ぐ昼間に比べれば過ごしやすい時間帯、彼ら二人はぽてぽてと帰路についていた。
「…アスカ、まだ怒ってるの?」
「…別に」
「気持ちはわからないでもないけどねえ…」
「怒ってません!!」
昼食の後に遊びに行くことにした二人、遠くに行く時間があるわけでもなかったので、とりあえず映画を見ることにした。
ちょうど昔TVで大ヒットしたドラマがリメイクされて封切られたばかりで、そのドラマの大ファンだったアスカが有無を言わさずシンジを引っ張っていったのだ。
しかしその映画の内容は、アスカ嬢の想定したものから大きく外れたものだった。
「リメイクだからねえ、旧作と全く同じものにするわけにもいかないだろうし」
「だからって、あのヒロインの活躍するシーンを削ったり、お色気担当にしたり、あまつさえ他のキャラがやるはずだった
やられ役まで押しつけるのってあんまりじゃない!?」
620: だぶ 2009/09/12(土) 22:47:42 ID:???
どうやらアスカ嬢は、お気に入りのヒロインの扱いがひどいことについて憤激しているようだ。
「まあ、その分性格は良くなったようだし…」
「何か言いました?」ギロ
「いいえ、何も言ってません」
「その上、あんな変な女を登場させたりして!」
「変な女って…」
「あんなエロメガネかけて、『にゃあにゃあ』媚び売って、チーターの物まねまでして!オタク男に媚び売るためだけに登場させたのが見え見えじゃない!
あのクソ監督、正ヒロインを引っ込めて、あんな女を主人公にあてがおうとしてるのよ!あ~、またムカムカしてきた~!」じたばた
(三番目の『チーター』はオタク向けじゃないような気もするなあ)
映画の内容を思い出したのか、怒りが再燃してきてうがうが言ってるアスカと、それを見て苦笑するしかないシンジ。荒れ狂う美少女に恐れをなしたのか、通行人の皆さんも二人から距離をとり、迂回しながら歩いている。
「まあ、その分性格は良くなったようだし…」
「何か言いました?」ギロ
「いいえ、何も言ってません」
「その上、あんな変な女を登場させたりして!」
「変な女って…」
「あんなエロメガネかけて、『にゃあにゃあ』媚び売って、チーターの物まねまでして!オタク男に媚び売るためだけに登場させたのが見え見えじゃない!
あのクソ監督、正ヒロインを引っ込めて、あんな女を主人公にあてがおうとしてるのよ!あ~、またムカムカしてきた~!」じたばた
(三番目の『チーター』はオタク向けじゃないような気もするなあ)
映画の内容を思い出したのか、怒りが再燃してきてうがうが言ってるアスカと、それを見て苦笑するしかないシンジ。荒れ狂う美少女に恐れをなしたのか、通行人の皆さんも二人から距離をとり、迂回しながら歩いている。
621: だぶ 2009/09/12(土) 22:49:04 ID:???
そんな二人に、勇敢にも近づく影二つ。
「アスカ、碇君、なにしてるの?」
「一般人をむやみに威嚇するのは良くないと思うの」
シンジがその二人に気がついた。
「やあ、洞木さん綾波…あたっ!」
涙目で鼻を押さえるシンジ。その横で、鼻をはじいた格好のままでアスカがシンジをあきれ顔で見ていた。
「どこに『綾波』って人がいるんですかあ?」
「そうでひた…。レイ、洞木さん、こんにちわ」
「くすくす、二人ともあいかわらずね」
おさげの委員長は笑いをこらえきれないようだ。
レイが碇レイと名前を変えて2年以上が経過しているにもかかわらず、シンジは未だにたまに旧姓で呼んでしまう。
そのたびにアスカにからかわれることになるのだが、その様子は彼らの通う高校の風物詩となっている。
「ほんと、あいかわらずシンジはお間抜けなのよね。かわいい妹の名前を間違えるなんて、兄貴としての自覚が足りないとしか言いようがないわね!」
「アスカ、兄さんを許してあげて。お間抜けは薬で治すことは出来ない不治の病だもの」
「うぅ…。二人ともひどいや…」
「まあまあ、ふたりともそれぐらいにしてあげなさい」
見かねたヒカリがその場をとりなす。
「アスカ、碇君、なにしてるの?」
「一般人をむやみに威嚇するのは良くないと思うの」
シンジがその二人に気がついた。
「やあ、洞木さん綾波…あたっ!」
涙目で鼻を押さえるシンジ。その横で、鼻をはじいた格好のままでアスカがシンジをあきれ顔で見ていた。
「どこに『綾波』って人がいるんですかあ?」
「そうでひた…。レイ、洞木さん、こんにちわ」
「くすくす、二人ともあいかわらずね」
おさげの委員長は笑いをこらえきれないようだ。
レイが碇レイと名前を変えて2年以上が経過しているにもかかわらず、シンジは未だにたまに旧姓で呼んでしまう。
そのたびにアスカにからかわれることになるのだが、その様子は彼らの通う高校の風物詩となっている。
「ほんと、あいかわらずシンジはお間抜けなのよね。かわいい妹の名前を間違えるなんて、兄貴としての自覚が足りないとしか言いようがないわね!」
「アスカ、兄さんを許してあげて。お間抜けは薬で治すことは出来ない不治の病だもの」
「うぅ…。二人ともひどいや…」
「まあまあ、ふたりともそれぐらいにしてあげなさい」
見かねたヒカリがその場をとりなす。
622: だぶ 2009/09/12(土) 22:50:28 ID:???
「…それはそれとして、アスカたちは今日は何してたの?」
「今日はアスカと兄さんはシンクロテストだったはず…」
不思議そうな顔をするレイ。
「ああ、今日はリツコ母さんが体調がすぐれないとかで、中止になったんだよ」
「そういえばお母さん、朝、顔色が悪かったの…」
「つわりなんだって。お盛んよねえ~」
「この間まで、たまに夜五月蝿くて眠れないことがあったわ、週に5回ぐらい」
「そう言えば父さん、ここ数年どんどんやつれて行ってるような気が…」
「逆にリツコは妙に肌年齢が若返ってる感じよね」
チルドレンズの会話があきらかにおかしな方に流れかけているので、ヒカリが強引に軌道修正を試みる。
「で、でも、ネルフの用事が無くなったんだったら、アスカも誘えば良かったわね、レイ」
ヒカリとレイは、今日一日連れだってショッピングを楽しんでいたのだ。
どうせ女の子同士で出かけるなら二人より三人の方が楽しい、しかしレイは無表情のままで答えた。
「ヒカリ、それはだめ。二人のデートを邪魔するような真似をしたら、死ぬまで恨み言を聞かされることになるもの」
アスカとシンジは、レイの発言内容の一部に敏感に反応してしまう。
「ちょちょっと、レイ!私たち、別にデートなんかしてないわよ!」
「そ、そうだよ、ちょっと一緒に食事に出ただけで…」
「年頃の男女が二人で外でお食事。これをデートと言わずに何をデートと言うの?」
「それもそうねえ」
「ヒカリまで?!」
「今日はアスカと兄さんはシンクロテストだったはず…」
不思議そうな顔をするレイ。
「ああ、今日はリツコ母さんが体調がすぐれないとかで、中止になったんだよ」
「そういえばお母さん、朝、顔色が悪かったの…」
「つわりなんだって。お盛んよねえ~」
「この間まで、たまに夜五月蝿くて眠れないことがあったわ、週に5回ぐらい」
「そう言えば父さん、ここ数年どんどんやつれて行ってるような気が…」
「逆にリツコは妙に肌年齢が若返ってる感じよね」
チルドレンズの会話があきらかにおかしな方に流れかけているので、ヒカリが強引に軌道修正を試みる。
「で、でも、ネルフの用事が無くなったんだったら、アスカも誘えば良かったわね、レイ」
ヒカリとレイは、今日一日連れだってショッピングを楽しんでいたのだ。
どうせ女の子同士で出かけるなら二人より三人の方が楽しい、しかしレイは無表情のままで答えた。
「ヒカリ、それはだめ。二人のデートを邪魔するような真似をしたら、死ぬまで恨み言を聞かされることになるもの」
アスカとシンジは、レイの発言内容の一部に敏感に反応してしまう。
「ちょちょっと、レイ!私たち、別にデートなんかしてないわよ!」
「そ、そうだよ、ちょっと一緒に食事に出ただけで…」
「年頃の男女が二人で外でお食事。これをデートと言わずに何をデートと言うの?」
「それもそうねえ」
「ヒカリまで?!」
623: だぶ 2009/09/12(土) 22:52:03 ID:???
この二人の誤解(アスカ・シンジ視点)を解くために、このあと十数分に渡ってアスカとシンジは必至にいいわけを並べることになる。
昼食を作るのが面倒だっただけで他意はない、行ったのは丼屋でデートに使うようなところではない、
そもそも私たちはつきあってる訳ではない、etcetc…
顔を紅潮させながら手足をばたつかせ、必死に否定を続ける二人。
そんな二人の様子が余りにかわいく感じられて、ヒカリとレイは優しい笑顔で二人を見つめることしかできない。
その生暖かい視線を感じたアスカはこれ以上の抗弁は逆効果と悟り、戦略的撤退を選択する。
「あっとシンジ、もうそろそろスーパーのタイムサービスの時間じゃない?」
「あっ、そうだね。早く行かないと売り切れちゃうかも」
「そういうわけだから、私たちは帰るわね!」
「洞木さん、レイ、さようなら!」
ユニゾン訓練の成果か、アスカの意思は瞬時にシンジに伝わり、阿吽の呼吸でレイ達の前からすたこらと撤退していった。
後に残されたのは瞬く間の急展開で取り残される格好になった二人。ちょっと呆然としてしまった。
昼食を作るのが面倒だっただけで他意はない、行ったのは丼屋でデートに使うようなところではない、
そもそも私たちはつきあってる訳ではない、etcetc…
顔を紅潮させながら手足をばたつかせ、必死に否定を続ける二人。
そんな二人の様子が余りにかわいく感じられて、ヒカリとレイは優しい笑顔で二人を見つめることしかできない。
その生暖かい視線を感じたアスカはこれ以上の抗弁は逆効果と悟り、戦略的撤退を選択する。
「あっとシンジ、もうそろそろスーパーのタイムサービスの時間じゃない?」
「あっ、そうだね。早く行かないと売り切れちゃうかも」
「そういうわけだから、私たちは帰るわね!」
「洞木さん、レイ、さようなら!」
ユニゾン訓練の成果か、アスカの意思は瞬時にシンジに伝わり、阿吽の呼吸でレイ達の前からすたこらと撤退していった。
後に残されたのは瞬く間の急展開で取り残される格好になった二人。ちょっと呆然としてしまった。
624: だぶ 2009/09/12(土) 22:53:30 ID:???
「…ち、逃げられたか」
「でもさすが兄さんとアスカ、3年経ってもユニゾンの呼吸はぴったりね」
「ほんと、あれだけ息の合ったカップルなんてなかなかいないわよ。もう誰が見ても恋人同士同然なのに、なんで二人とも
つきあっているのを否定するのかしら」
ヒカリが不思議そうにつぶやく。現在同級生の男子(別名関西黒ジャージ)と交際中の彼女には、あの二人がなぜ恋人と言う関係に
踏み込まないのかわからない。
「…前にアスカに訊いたことがあるわ。どうして兄さんと恋人関係にならないのかって」
レイが静かに語り出す。
「アスカ、なんて言ったの?」
「自分は、『シンジが自分のことを一番大事な女性だと想ってくれている』ことを知っている。
そしてシンジも『自分が今までもこれからもシンジだけを見ている』ことを知っているだろう。お互いに相手のことを理解し合えてるから、
今あわてて告白する必要はない、って言ってた」
「それってつまり、何も言わなくても恋人同士だってことじゃないの?」
「そう聞いたら、恋人同士になれば恋人同士としての関係を築き上げなければならない。
今は友達以上恋人未満の関係が心地いいし、シンジもそう考えてると思う。しばらくはこの関係でいたい、だって」
ヒカリは嘆息した。
「ふう、つまり私たちはお互いに相手のことをわかり合えてるのよ、って言ってる訳ね。」
「そうね、話してる時とても嬉しそうだったもの、壮大なのろけを聞かされた気分だったわ」
ふふふ、と微笑み合うふたり。
「でもさすが兄さんとアスカ、3年経ってもユニゾンの呼吸はぴったりね」
「ほんと、あれだけ息の合ったカップルなんてなかなかいないわよ。もう誰が見ても恋人同士同然なのに、なんで二人とも
つきあっているのを否定するのかしら」
ヒカリが不思議そうにつぶやく。現在同級生の男子(別名関西黒ジャージ)と交際中の彼女には、あの二人がなぜ恋人と言う関係に
踏み込まないのかわからない。
「…前にアスカに訊いたことがあるわ。どうして兄さんと恋人関係にならないのかって」
レイが静かに語り出す。
「アスカ、なんて言ったの?」
「自分は、『シンジが自分のことを一番大事な女性だと想ってくれている』ことを知っている。
そしてシンジも『自分が今までもこれからもシンジだけを見ている』ことを知っているだろう。お互いに相手のことを理解し合えてるから、
今あわてて告白する必要はない、って言ってた」
「それってつまり、何も言わなくても恋人同士だってことじゃないの?」
「そう聞いたら、恋人同士になれば恋人同士としての関係を築き上げなければならない。
今は友達以上恋人未満の関係が心地いいし、シンジもそう考えてると思う。しばらくはこの関係でいたい、だって」
ヒカリは嘆息した。
「ふう、つまり私たちはお互いに相手のことをわかり合えてるのよ、って言ってる訳ね。」
「そうね、話してる時とても嬉しそうだったもの、壮大なのろけを聞かされた気分だったわ」
ふふふ、と微笑み合うふたり。
625: だぶ 2009/09/12(土) 22:54:58 ID:???
と、道の向こうから何か言い争う声が聞こえてきた。
「…だから、今日は僕が作るから」
「私が作るって言ったでしょ!あなた女の子に恥をかかせるつもり?!」
「あの親子丼を再現してみたいんだよ」
「明後日のシンジの担当日にやればいいでしょ?!」
「ふ~ん、明後日は照り焼きハンバーグとジャーマンポテトの予定だったけど、親子丼に変更していいのかな?」にやり
「うぐっ…ハンバーグを人質に取るとはなんて卑怯な…!」
立ち止まってやいのやいのと言い争ってる二人。通行人の皆様の好奇の視線が集まる。
「あ~あ、また恥ずかしいまねをさらして…」
「でも、二人とも楽しそう」
アスカとシンジ、お互いに口論しながらも、表情は嬉しそうに微笑んでいる。まるで口論を楽しんでいるかのようだ。
「恋人同士になったら、あの二人はラブラブになってこういうシーンは見られなくなるのかもね」
「アスカと兄さんがラブラブ…。想像の限界を超えているわ」
レイの偏った知識ではラブラブ=甘ったるいベタベタカップルという等式が成り立っている。
二人のラブラブシーンを想像しようとするが、どうしても思い浮かばないレイであった。
「友達以上恋人未満を14歳の時から楽しんでいる二人だもの、恋人同士の甘い生活は10年ぐらい楽しむつもりなんじゃないの?」
ヒカリの言葉にレイは身震いをする。ラブラブになったアスカと兄の甘ったるいベタベタシーンを10年も見続けるのは拷問に等しい。
大学を卒業したら、海外のネルフ支部勤務を志願しよう。
相変わらず口論を続ける二人を見ながら、レイは固く心に誓うのであった。
627: だぶ 2009/09/12(土) 23:01:45 ID:???
後日談という名の蛇足
「…なんて、言ってた時期もあったわね」
そうつぶやいて、ヒカリはグラスに口をつけた。
グラスには透明な黄金色の液体が注がれていたが、今春大学に入学したばかりのヒカリのグラスに入っているのはノンアルコールのシャンパンだ。
これでは酔うことも出来ない。
いくつかの出し物も滞りなく終了し、周りは和やかな雰囲気となっていた。大人達は互いに酒を酌み交わし、子供達はテーブルの間を走り回っている。
隣に座るレイは、すやすや眠る妹を膝に抱いたまま同様にシャンパンジュースを飲んでいる。
「だれよ、あの二人が10年間は恋人同士の関係を楽しむなんて言ったのは?」
「それはあなたよ、ヒカリ」
レイがぼそっと突っ込む。
「あの二人は10年間は恋人状況を楽しむと言ったのも、あなた。なんなら賭けてもいいと言ったのもあなた。もし5年未満であの二人が恋人関係を解消するようなことがあったら、碇レイの言うことを何でもひとつ聞きますと宣言したのもあなた。」
「…わかってるわよう…」
そう言って、ヒカリはまたシャンパンジュースを飲んだ。
今年の4月、ヒカリ・レイを始めアスカ・シンジ達のグループは見事大学に入学を果たした。
心機一転、新たな生活が始まるついでにアスカとシンジは恋人同士になった。
それを聞いた周囲の人々は心からの祝福を二人に贈った。つらい使徒戦役を戦い抜いた子供達を少しでも幸せにすることが、彼らの生きる目的のひとつであったから。
アスカとシンジは恋人関係になったからと特にベタベタ甘々なカップルにはならず、碇レイはそっと胸をなで下ろしたものである。
「…なんて、言ってた時期もあったわね」
そうつぶやいて、ヒカリはグラスに口をつけた。
グラスには透明な黄金色の液体が注がれていたが、今春大学に入学したばかりのヒカリのグラスに入っているのはノンアルコールのシャンパンだ。
これでは酔うことも出来ない。
いくつかの出し物も滞りなく終了し、周りは和やかな雰囲気となっていた。大人達は互いに酒を酌み交わし、子供達はテーブルの間を走り回っている。
隣に座るレイは、すやすや眠る妹を膝に抱いたまま同様にシャンパンジュースを飲んでいる。
「だれよ、あの二人が10年間は恋人同士の関係を楽しむなんて言ったのは?」
「それはあなたよ、ヒカリ」
レイがぼそっと突っ込む。
「あの二人は10年間は恋人状況を楽しむと言ったのも、あなた。なんなら賭けてもいいと言ったのもあなた。もし5年未満であの二人が恋人関係を解消するようなことがあったら、碇レイの言うことを何でもひとつ聞きますと宣言したのもあなた。」
「…わかってるわよう…」
そう言って、ヒカリはまたシャンパンジュースを飲んだ。
今年の4月、ヒカリ・レイを始めアスカ・シンジ達のグループは見事大学に入学を果たした。
心機一転、新たな生活が始まるついでにアスカとシンジは恋人同士になった。
それを聞いた周囲の人々は心からの祝福を二人に贈った。つらい使徒戦役を戦い抜いた子供達を少しでも幸せにすることが、彼らの生きる目的のひとつであったから。
アスカとシンジは恋人関係になったからと特にベタベタ甘々なカップルにはならず、碇レイはそっと胸をなで下ろしたものである。
628: だぶ 2009/09/12(土) 23:02:29 ID:???
「…それが、こんなに早く恋人関係を解消するなんてね…」
自嘲気味にヒカリがつぶやく。
「まさか5ヶ月持たないとは私も思わなかったわ」
レイも相づちを打つ。薄々こうなる予感はあったが、さすがに5ヶ月は速すぎると思う。
「結局、お間抜けなのは兄さんだけじゃなくてアスカもだったってことなのね」
「そう!そうよ!全部アスカのお間抜けが悪いのよ!アスカのせいで私があんな罰ゲームをする羽目になっちゃったのよ~!!」
荒れるヒカリは、またシャンパンジュースを手酌でグラスに注ぎ飲み干した。
レイが賭に敗北したヒカリに指示した罰ゲームは『今後1年間、ジャージ君とのデートは、ジャージ君の希望に添ったペアルックで行うこと』である。
ヒカリは、デートの際には上下ジャージの着用を義務づけられたのだ。そりゃ荒れたくもなるだろう。
そんなヒカリをよそに、レイは続々と人が集まっている壇上を見つめた。
壇上では祝辞を述べる人々の輪の中で、白いタキシードのシンジと、赤いドレスのアスカがにこやかに座っていた。
アスカは時折少し膨らんだおなかを、優しい表情でさすっている。
そんな二人に、レイは心からの祝いの言葉を贈った。
「おめでとう、兄さん。これからよろしく、義姉さん」
なお、それから1年間、ヒカリと某ジャージ君は外にデートへ行くことがなかったそうな。
自嘲気味にヒカリがつぶやく。
「まさか5ヶ月持たないとは私も思わなかったわ」
レイも相づちを打つ。薄々こうなる予感はあったが、さすがに5ヶ月は速すぎると思う。
「結局、お間抜けなのは兄さんだけじゃなくてアスカもだったってことなのね」
「そう!そうよ!全部アスカのお間抜けが悪いのよ!アスカのせいで私があんな罰ゲームをする羽目になっちゃったのよ~!!」
荒れるヒカリは、またシャンパンジュースを手酌でグラスに注ぎ飲み干した。
レイが賭に敗北したヒカリに指示した罰ゲームは『今後1年間、ジャージ君とのデートは、ジャージ君の希望に添ったペアルックで行うこと』である。
ヒカリは、デートの際には上下ジャージの着用を義務づけられたのだ。そりゃ荒れたくもなるだろう。
そんなヒカリをよそに、レイは続々と人が集まっている壇上を見つめた。
壇上では祝辞を述べる人々の輪の中で、白いタキシードのシンジと、赤いドレスのアスカがにこやかに座っていた。
アスカは時折少し膨らんだおなかを、優しい表情でさすっている。
そんな二人に、レイは心からの祝いの言葉を贈った。
「おめでとう、兄さん。これからよろしく、義姉さん」
なお、それから1年間、ヒカリと某ジャージ君は外にデートへ行くことがなかったそうな。
629: だぶ 2009/09/12(土) 23:04:20 ID:???
以上、おしまいです。
一応スレタイに則って、落ち着いたLASを作ってみました。
駄文をお読みくださいまして、ありがとうございました。
それではまたROMに戻りますです。
元スレ:https://changi.5ch.net/test/read.cgi/eva/1215690262/
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