1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 20:56:14.97 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「うん、日本のバレンタインデーはチョコを渡すのよ」

アスカ「ふーん」

ヒカリ「……あんまり興味なさそうね?」

アスカ「だって、私、付き合ってる人いないし」


ヒカリ「日本では別に付き合っていなくても、あげていいのよ」

アスカ「そうなの?」

ヒカリ「うん。好きな人、憧れている人、日頃お世話になっている人……そういう人にあげるの」

アスカ「へぇ」

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 20:58:40.50 ID:dBg6YBHwP
アスカ「じゃあ、2月14日はチョコ食べ放題ね!」

ヒカリ「……なんで?」

アスカ「だって、私に憧れている人なんて、くさる程いるでしょ?」

ヒカリ「そうだと思うけど……あ、そっか」

アスカ「なに?」


ヒカリ「日本のバレンタインはね、女の人が、男の人にあげるの。ドイツとは逆よ」

アスカ「……はぁ!?」

ヒカリ「え、ええ?」

アスカ「なんで女性が損しないといけないのよ!!」

アスカ「えー……」

5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:00:26.49 ID:dBg6YBHwP
アスカ「納得いかない……どうして、そんなことがまかり通っているの……」

ヒカリ「あのね、アスカ、バレンタインはね」

アスカ「なによ?」


ヒカリ「そ、その……日頃、伝えられない感謝や想いを、告げる機会を与えてくれる日っていうか……」

アスカ「……」

ヒカリ「なかなか言えないことってあるでしょ? それをね、チョコに込めて渡すのよ」

アスカ「……」


ヒカリ「アスカ?」

アスカ「なるほど。概ね理解したわ」

ヒカリ「ほんと?」

8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:02:21.51 ID:dBg6YBHwP
アスカ「でも、解せないわ。告白なんて、好きな時にしたらいいじゃない」

ヒカリ「だ、だから、そういう勇気がもてない人もいるから!」

アスカ「そうかもしれないけどー」


ヒカリ「あ、それとね! 最近は友チョコっていうのも流行っててね」

アスカ「友チョコ?」

ヒカリ「うん。女の子同士でね、友達にあげるのよ」


アスカ「……間違ってたらごめんだけど、それってバレンタイン関係あるの?」

ヒカリ「……えーっと……」

アスカ「チョコ繋がりじゃない! チョコの売り上げを伸ばすために誰かが企てた陰謀よ!」

ヒカリ「わぁー……その手の話、久々に聞いたよ……」

9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:04:06.58 ID:dBg6YBHwP
アスカ「駄目よ、ヒカリ、大人に騙されちゃ」

ヒカリ「うーん……アスカにチョコ、あげようと思ったんだけどな」

アスカ「それは貰うわ」

ヒカリ「え、え?」

アスカ「バレンタイン関係なくってことでよろしく」

ヒカリ「いいけどさぁ……」


ヒカリ「……あ、でも、アスカ」

アスカ「なに?」

ヒカリ「碇君には、チョコ、あげるよね?」

アスカ「……はぁ?」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:06:46.18 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……なんで、私があのバカにそんなものあげなくちゃいけないのよ」

ヒカリ「えっと」

アスカ「変なこと言ったら、ぶっとばすわよ」


ヒカリ「……」

アスカ「……」

ヒカリ「……」

アスカ「……」


ヒカリ「……そ、そう、感謝!」

アスカ「あん?」

ヒカリ「感謝のね、思いを込めて!!」

アスカ「感謝ぁ~?」

11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:09:43.80 ID:dBg6YBHwP
アスカ「なんで、私が感謝しなくちゃいけないのよ」

ヒカリ「だ、だって、いつもお世話になってるでしょ?」

アスカ「なってないわよ!」

ヒカリ「……ほら、ご飯とか、作ってもらってるんじゃ」

アスカ「むしろお世話してる!!」


ヒカリ「……」

アスカ「……」


ヒカリ「……そ、そっか」

アスカ「そうよ」

13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:11:50.94 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「でも、本当にいいの?」

アスカ「……なにがよ?」

ヒカリ「チョコ、あげない?」

アスカ「あげない」


ヒカリ「……ほんとに?」

アスカ「あげない!」

ヒカリ「ふーん……」

アスカ「……」



アスカ「…………」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:14:15.04 ID:dBg6YBHwP
ミサト「……んっんっ」ゴクゴク

アスカ「……」

ミサト「……んっんっ」ゴクゴク

アスカ「……」


ミサト「ぷっはぁー! 今日もシンジ君のご飯と、ビールが美味いっ!!」

アスカ「……ミサト、おやじ臭い」

ミサト「なによぉー、アスカだって美味しいでしょ、ご飯ー」

アスカ「別に……普通でしょ、これくらい」


ミサト「普通じゃないわよ!」ドンッ

アスカ「な、なんでよ」

16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:17:11.94 ID:dBg6YBHwP
ミサト「学校行って、エヴァの訓練して……見知らぬ土地で中学生の男の子が一人……まぁこれはアスカも同じだけど……」

アスカ「……」

ミサト「その上、家事をこなして、私たちの分までご飯を作ってくれるのよ」

アスカ「……」

ミサト「これが普通なら、世の中学生全員、NERVの職員として働いてもらいたいくらいよ」

アスカ「……」


アスカ「……なら、ミサトがご飯、作ればいいじゃない」

ミサト「それは無理ー! シンジくーん! いつもありがとー!!」

17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:20:10.65 ID:dBg6YBHwP
シンジ「―――ちょっと、ミサトさん、飲みすぎじゃないですか?」


ミサト「あ、シンジくーん! ご飯美味しいわよ―」

シンジ「はいはい」

ミサト「はぁ、幸せ……シンジ君、私がお婆ちゃんになったら、介護よろしくね」

シンジ「いつの話ですか……まだ若いのに」

ミサト「キャー! ちょっと聞いた、アスカ!? まだ若いですって!」


シンジ「……はぁ」

アスカ「こんな大人にはなりたくないわね」


ミサト「キャーキャー!!」

19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:22:30.74 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……でも、感謝、かぁ」ボソッ


シンジ「なにか言った?」

アスカ「なんでもないわ」

シンジ「そう?」

アスカ「……」


ミサト「シンちゃん、シンちゃん」

シンジ「はい?」

ミサト「吐く」

シンジ「吐きそうとかじゃなくて断定ですか!? トイレ連れていきますから、少しだけ堪えてください!」

ミサト「ううう……」オエッ



アスカ「…………」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:25:55.06 ID:dBg6YBHwP
―――『いらっしゃいませー』


アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「お菓子、お菓子……」


アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「……あった、ここね」

アスカ「……」

21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:28:21.24 ID:dBg6YBHwP
アスカ「チョコって、どういうのが……」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「ポッキー……とかよりは、普通の板チョコ?」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「100円……?」

アスカ「こんなので、いいのかしら?」


アスカ「……」

24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:30:35.76 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……!」

アスカ「バレンタインフェア……」


アスカ「……」

アスカ「いろいろ、あるのね……」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「義理と……本命?」

アスカ「……なに、それ」


アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……ああ、そういう……」

26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:32:20.50 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……私は、当然」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「…………義理、よね」

アスカ「感謝、だし」

アスカ「……」

アスカ「……うん」


アスカ「……」

アスカ「……どれに、しよう」

27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:34:54.19 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「―――あれ、アスカ?」

アスカ「……!」ビクッ


ヒカリ「こういうとこで会うの、珍しいね」

アスカ「……」

ヒカリ「なにを買いに来たの?」

アスカ「……夕飯」

ヒカリ「え?」


アスカ「夕飯の、おかずの、その……足りなくて」

ヒカリ「ああ、おつかいなんだ」

28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:37:43.49 ID:dBg6YBHwP
アスカ「そ、そうよ、バカシンジのやつ、私をおつかいに行かせるなんて、生意気!」

ヒカリ「あはは」


アスカ「ヒカリは、なにしてんのよ」

ヒカリ「私? 私は……」

アスカ「……」

ヒカリ「えーっと……」


アスカ「……バレンタインのチョコ、買いに来たんだ?」

ヒカリ「!」ピク

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:39:49.73 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「ま、まぁ、そう、かな? そうだね!」

アスカ「……鈴原にあげるんだ?」

ヒカリ「な、なんで、そこで鈴原の名前っ!」


アスカ「……」ジトー

ヒカリ「……」

アスカ「……」


ヒカリ「う……そ、そうです、鈴原にあげるためのチョコを買いに来ました」

アスカ「やっぱり」

31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:42:26.15 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「で、でもね、アスカにあげる分もだよ!」

アスカ「別に私の分なんて、ついででも構わないわよ」

ヒカリ「そんな気はないけど……」

アスカ「……で、どんなチョコ、あげるの?」


ヒカリ「うーん、やっぱり手作りにしようかなって」

アスカ「手作り? どうして?」

ヒカリ「だって、やっぱり、本命チョコは手作り……」


アスカ「……」

ヒカリ「……じゃ、じゃなくて、あ、あの」

アスカ「……」

34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:45:30.37 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「や、安上がりになるから! 手作りの方が!」

アスカ「ふーん」

ヒカリ「……絶対、信じてないじゃん……」

アスカ「ま、ね」

ヒカリ「……」


アスカ「そうねぇ、本命ねぇ……」

ヒカリ「……」

アスカ「それだけ、ヒカリの気持ち、込めてれば美味しくもなるわよね」

ヒカリ「ううう……」

35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:48:33.78 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「も、もういいでしょ! 私、行くからね!」

アスカ「―――ちょっと待って!」ガシッ


ヒカリ「……なに?」

アスカ「……」

ヒカリ「アスカ?」

アスカ「……」


アスカ「……て、手伝って、あげよっか?」

ヒカリ「……え?」

36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:51:03.58 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……だから、チョコ、作るの……手伝ってあげるわよ」

ヒカリ「え、でもこういうのって、一人で……」


アスカ「……」

ヒカリ「……あ、そっか……」

アスカ「……」

ヒカリ「そうだね、うん! アスカにも手伝って貰っちゃおっかな!」

アスカ「……うん」


ヒカリ「ん、頑張ろうね!」

アスカ「……ええ」

38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:54:49.57 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「―――それでね、溶かしたやつを、冷水と温水で、温度調節しながら……」


アスカ「……」

ヒカリ「うん、これを型に入れて、コーティングすれば、完成だよ!」

アスカ「……え、お終い?」


ヒカリ「そうだけど」

アスカ「溶かして固めただけじゃない?」

ヒカリ「……で、でもさ、こういうのって気持ちの問題だから」

アスカ「そうかもしんないけど……」

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:56:16.60 ID:dBg6YBHwP
アスカ「あれ?」

ヒカリ「なに?」


アスカ「あのレシピ本って」

ヒカリ「……! ……こ、これはね」

アスカ「ちょっと見せて」

ヒカリ「……だめ!」


アスカ「……」ペラッ

ヒカリ「……ああ」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 21:58:31.36 ID:dBg6YBHwP
アスカ「ねぇ、ヒカリ?」

ヒカリ「……なぁに」


アスカ「この本、ずいぶん読み込んであるわね」

ヒカリ「……」

アスカ「しかも、チョコケーキのベージ、ハートマークでいっぱいだし……」

ヒカリ「……」


アスカ「……まさか、私がいるからって、簡単なやつにしたんじゃないでしょうね?」

ヒカリ「……」

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:03:18.01 ID:dBg6YBHwP
アスカ「ヒカリ」

ヒカリ「は、はい」

アスカ「これ、作るわよ」

ヒカリ「今から!?」


アスカ「当然でしょ」

ヒカリ「でも、もう夜だし……」

アスカ「さっき、ヒカリの保護者には泊まらせてもらえるようにお願いしてきたわ」

ヒカリ「いつの間に!?」


アスカ「うちにも連絡済み。逃げ場はないわよ」

ヒカリ「アスカって、ほんとアスカだよね……」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:05:20.96 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「でもね、お菓子作りって、ちょっとも分量を間違えられないから、けっこう難しいのよ」

アスカ「覚悟は出来てるわ」

ヒカリ「……でもぉ」

アスカ「お菓子作りのっていうか、徹夜のだけど」

ヒカリ「ええー……」


アスカ「お願い! ヒカリ!」

ヒカリ「……はぁ、分かった。どうせ、アスカの頼みは断れないもん」

アスカ「ありがと!」


ヒカリ「じゃ、頑張ろっか」

アスカ「ええ!」

46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:07:39.22 ID:dBg6YBHwP
―――チュン、チュン


アスカ「終わった……」

ヒカリ「本当に、朝になっちゃたね……」

アスカ「疲れた……」

ヒカリ「でも、完璧に出来たよ……」


アスカ「はぁ……」

ヒカリ「後は、渡すだけだね……」

アスカ「渡す……?」


ヒカリ「うん……え?」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:10:12.40 ID:dBg6YBHwP
アスカ「渡すって……これを?」

ヒカリ「考えてなかったの?」


アスカ「……でも、こんなの渡したら……」

ヒカリ「……」

アスカ「……ヤバイでしょ、さすがに」

ヒカリ「大丈夫だと思うけど」


アスカ「ハートのチョコとか、乗っちゃってるし……」

ヒカリ「可愛いよ!」

48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:12:24.24 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……ヒカリ」

ヒカリ「うん?」

アスカ「今、食べちゃおっか」

ヒカリ「やめてよ! 私の徹夜まで無駄になっちゃうよ!」


アスカ「まぁ、そうよね……それは申し訳ないわ……」

ヒカリ「そうして欲しいな」

アスカ「渡す……渡すのか……」

ヒカリ「……」


アスカ「……グチャッ! ってしたくなるわね」

ヒカリ「やめてよ!」

52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:15:13.80 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「―――おはよー、みんな」

アスカ「……」


ヒカリ「……アスカ? どうしたの?」

アスカ「なんなの、この……なんなの?」

ヒカリ「なにが?」

アスカ「……空気っていうか、みんなソワソワしてる感じっていうか……」


ヒカリ「あー……バレンタインって、こんな感じなのよ」

アスカ「教えときなさいよ……」

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:17:33.39 ID:dBg6YBHwP
アスカ「そもそも、いいの? こんなの持ってきて」

ヒカリ「この学校、そういうのは寛容だから」

アスカ「……そう」

ヒカリ「違う学校だとね、持ってるのバレたら、没収されたりするんだって」

アスカ「それは災難ね」

ヒカリ「ねー」


アスカ「……あ」

ヒカリ「ん?」

アスカ「バカシンジ」

ヒカリ「……どこ?」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:19:52.45 ID:dBg6YBHwP
アスカ「校門のとこ」

ヒカリ「んー……? 見えない」

アスカ「ほら、あそこあそこ」

ヒカリ「えーっと……いたいた、ほんとだ」


アスカ「とぼとぼ歩いてるわね」

ヒカリ「えー、普通だよ」

アスカ「覇気がないわね、覇気が」

ヒカリ「そんなことないってば」


アスカ「……あっ」

ヒカリ「今度はなに?」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:21:54.66 ID:dBg6YBHwP
アスカ「あれ……って」

ヒカリ「……あ」

アスカ「……」

ヒカリ「……チョコ、貰ってるみたいだね」


アスカ「……」

ヒカリ「ほら、でも、碇君ってさ、ヒーローみたいなものだから」

アスカ「……」

ヒカリ「そういう意味での、だと思うから、義理だよ、うん」


アスカ「……」

ヒカリ「……」

58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:24:27.91 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……私だって」

ヒカリ「え?」

アスカ「私だって、義理よ」

ヒカリ「そ、そっか、そうだよね、ごめん」


アスカ「……」

ヒカリ「……」

アスカ「……」

ヒカリ「……」


アスカ「……でも、ちゃんと渡すから、安心して」

ヒカリ「……うん!」

59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:27:27.50 ID:dBg6YBHwP
シンジ「……っと」



ヒカリ「ほら、碇君、来たよ」

アスカ「え、え、今渡すの?」

ヒカリ「早く渡した方が、楽だって」

アスカ「……でも」


ヒカリ「そんな悶々とした状態で、授業なんて受けられないでしょ、ほら」トンッ

アスカ「ちょ、ちょっと、押さないでって」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:29:25.29 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……あっ」

シンジ「あ、アスカ、おはよう」


アスカ「……」

シンジ「昨日は委員長の家に泊ったんだって?」

アスカ「……うん」

シンジ「委員長とアスカはほんとに仲良いよね」

アスカ「……」

シンジ「でも、アスカがいないから、昨日はミサトさんの相手するのが大変だったよ」

アスカ「……」

62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:31:24.48 ID:dBg6YBHwP
シンジ「……アスカ?」

アスカ「な、なによ!」

シンジ「どうしたの? 体調でも悪い?」

アスカ「……別に、なんともないわよ」

シンジ「そう? それならいいんだけど」

アスカ「……」

シンジ「……?」


アスカ「し、シンジ!」

シンジ「ん?」


アスカ「あの―――」

64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:34:09.02 ID:dBg6YBHwP
トウジ「―――なんや、けったいなもん持っとるやないか」


アスカ「……!」

シンジ「あ、トウジ。おはよう」


トウジ「おはようさん。朝から仲良いなぁ、お二人さん」

シンジ「べ、別にそんなことないと思うけど」

アスカ「……」


トウジ「あー! せやなぁ、今日はなんて言ってもバレンタインデーやもんな!」

アスカ「……」

トウジ「その箱はつまり、そういうことか! かぁ~、ほんまこっちが火照ってくるわ!」

アスカ「……」

68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:37:31.90 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「―――鈴原!!」

トウジ「な、なんや、そんな怖い顔して」

ヒカリ「この……!!」


アスカ「いいわよ、ヒカリ」

ヒカリ「でも……」


シンジ「そうだよ、委員長。別に言わなくても分かってるから」

ヒカリ「……え?」

シンジ「アスカが僕にチョコなんて、そんなの、あるわけないじゃないか」


アスカ「……っ!」

71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:40:28.11 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……」

ヒカリ「……い、碇君、これはね」


アスカ「やめて、ヒカリ」

ヒカリ「アスカ?」

アスカ「…………なにが、バレンタインデーよ、ばっかみたい」

ヒカリ「アスカ……」


アスカ「私は、ただ、机の上に置いてあったゴミを捨てようとしただけ」ポイッ

ヒカリ「……あ」

77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:44:18.06 ID:dBg6YBHwP
アスカ「アンタたちも、浮かれてんじゃないわよ。ここは学校よ? 勉強する場所なの」

シンジ「……えっと」

トウジ「……お、おう」


アスカ「……」

ヒカリ「……」


アスカ「……ヒカリ」

ヒカリ「なに?」

アスカ「私……早退するから。先生に、そう言っておいて」

ヒカリ「ま、待って!」


アスカ「……」スタスタ

ヒカリ「待って……」

79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:48:16.41 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「……」

シンジ「……」

トウジ「……」


ヒカリ「……碇君」

シンジ「……なに?」

ヒカリ「ゴミ箱のそれ、持ってついて来て」

シンジ「で、でも」


ヒカリ「いいから!」

シンジ「う、うん」

82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:50:24.98 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「ここなら、誰も来ないかな」

シンジ「……そうだと思うけど」


ヒカリ「どうしてついて来てって言ったのかは、分かるよね?」

シンジ「アスカのことだよね?」

ヒカリ「うん」

シンジ「……」


ヒカリ「その箱、開けてみて」

シンジ「……? うん」

84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:52:57.79 ID:dBg6YBHwP
シンジ「これは……」

ヒカリ「ぐちゃぐちゃになっちゃたみたいだけど、匂いで分かるでしょ?」


シンジ「チョコケーキ……だ」

ヒカリ「そうだよ。昨日、アスカが徹夜で作ったやつ」

シンジ「……」

ヒカリ「私の家に泊まったの知ってるでしょ、そういうことだよ」

シンジ「……」


ヒカリ「アスカが、碇君のために作った……チョコケーキ」

シンジ「……」

89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:55:38.21 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「何回も失敗しちゃってさ、アスカってあんまり料理は得意じゃないみたい」

シンジ「……」

ヒカリ「それでもさ、最終的には上手に出来てね、見た目もすっごく可愛くて」

シンジ「……」


ヒカリ「後は、渡すだけって、二人で話して……」

シンジ「……」

ヒカリ「碇君が他の女の子にチョコ貰っても、それでも渡すって、そう言ってたんだ……」

シンジ「……」

90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 22:58:35.05 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「ねぇ、碇君」

シンジ「……なに?」

ヒカリ「アスカの態度もよくないけど、碇君の言葉もよくないよね」

シンジ「……」


ヒカリ「私も、自分に自信のある方じゃないから、気持ちは分かるけど」

シンジ「……」

ヒカリ「でもさ、アスカの心をさ、知ってるわけでもないのに……貰えるわけないって、どうしてそんなこと言っちゃうの?」

シンジ「……」

ヒカリ「そういう人を傷つけちゃう優しさは、一番よくないよ……」

シンジ「……」

94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:00:58.76 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「これが最後の質問だけど」

シンジ「うん」

ヒカリ「この後、どうすればいいのか……分かるよね?」

シンジ「……うん」

ヒカリ「そっか……それなら、もういいんだ。ごめんね、偉そうに」

シンジ「ううん、話してくれて、ありがとう」


ヒカリ「……」

シンジ「……委員長」

ヒカリ「なに?」

シンジ「今から、ちょっと下品なことするけど、見逃してね」

ヒカリ「……え?」

96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:03:35.34 ID:dBg6YBHwP
シンジ「……」ガシ

ヒカリ「……!」


シンジ「……」パクッ

ヒカリ「……」

シンジ「……」モグモグ

ヒカリ「……」


シンジ「ははっ、美味しいや」

ヒカリ「……でしょ?」

シンジ「こんな美味しいケーキ、初めて食べた」

ヒカリ「アスカにも……そう言ってあげて」


シンジ「……うん!」

101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:06:49.57 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……」


アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「……」

102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:08:26.61 ID:dBg6YBHwP
コンコン


アスカ「……!」


『アスカ、家に帰ってたんだ』


アスカ「……」


『少し、探したから、遅れちゃった』


アスカ「……」


『ここ、開けても良いかな』


アスカ「……嫌」


『そっか。じゃあ、このまま話すね』

103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:10:33.53 ID:dBg6YBHwP
『委員長にさ……話、聞かせてもらったよ』


アスカ「……」


『ごめん。僕、なにも知らなくて……もちろん、それで言い訳するつもりじゃないけど』


アスカ「……」


『嬉しかったよ、すごく』


アスカ「……」


『それから、ケーキも食べた。本当に美味しかった』


アスカ「……!」

105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:12:26.23 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……食べたんだ」


『うん』


アスカ「あんな、ゴミみたいなやつ」


『ゴミなんかじゃないよ。世界一美味しいチョコケーキだった』


アスカ「……」


『ねぇ、アスカ。ほんのちょっとだけ、扉開けるけど、許してね』


アスカ「……」

108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:14:25.10 ID:dBg6YBHwP
ガチャ


コトッ


……パタン



アスカ「……なにこれ」


『それさ、僕が作ったチョコなんだけど』


アスカ「……」


『みんなに作ったんだ。感謝している人、全員に』


アスカ「……」 

110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:16:31.65 ID:dBg6YBHwP
『でも、アスカのだけは、他のと違って、特別に作ったんだ』


アスカ「……!」


『アスカには……感謝とか、そういうのと、またちょっと違うから』


アスカ「……」


『こんなこと言うと悪いけど、昨日はアスカがいなくて助かったよ』


アスカ「……」


『良かったら、食べてもらえないかな』

111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:19:37.07 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……」ヒョイ


アスカ「……」

アスカ「……」パクッ


アスカ「……」

アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「……」

113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:21:46.07 ID:dBg6YBHwP
―――カチャ


シンジ「あ、アスカ!?」

アスカ「……」


シンジ「えっと、その……」

アスカ「……」

シンジ「どうかな? チョコの味……」

アスカ「……」


アスカ「……甘すぎね。私の口には合わないわ」

シンジ「え、ええー?」

116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:23:12.67 ID:dBg6YBHwP
アスカ「だから……」

シンジ「……?」


アスカ「来年は……もっと、私の口に合うように、作りなさいよ」

シンジ「……!」


アスカ「……」

シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「……」

120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:26:19.62 ID:dBg6YBHwP
シンジ「学校、戻る?」

アスカ「今日はもう、いいわよ」

シンジ「そっか」

アスカ「後で、ミサトにお説教されるわね」

シンジ「そうだね」


アスカ「……」

シンジ「……」


アスカ「ふふっ」

シンジ「あはは」

121: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:28:05.69 ID:dBg6YBHwP
エピローグ


トウジ「……どーぼ、ずびばぜんでじた」ボロッ


ヒカリ「土下座で駄目なら、この先一年は、アスカの奴隷になるって言ってるけど」

アスカ「……言わせたんじゃなくて?」

ヒカリ「まぁ、そうとも言うけど」


アスカ「ヒカリって、怒らせると実は一番怖い?」

ヒカリ「そ、そんなことないわよ。……ねぇ、鈴原」

トウジ「……ヒッ、そ、そやな!」


アスカ「ださっ」

122: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:30:13.52 ID:dBg6YBHwP
アスカ「ま……アスカ様は寛大だからね。許してあげるわ」

ヒカリ「ほんと!? ……ほら、鈴原!」

トウジ「ははー……ほんま、おおきにー……」

アスカ「……」


アスカ「……で、ヒカリはどうなったの?」

ヒカリ「え?」

アスカ「だから、鈴原にチョコ、あげたの?」


トウジ「なんやて!?」ガバッ

ヒカリ「ちょっ、アスカ!」

124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:32:13.01 ID:dBg6YBHwP
トウジ「委員長、ワシにチョコ、くれるんか!?」

ヒカリ「あの、その……」

トウジ「もう、昨日の一件で女子共からダニ扱いされてもうて、チョコなんて一生拝めへんもんかと……」

ヒカリ「ええと……」

トウジ「ワシは、ワシは……」ウッウッ

ヒカリ「ううう……」


アスカ「あ、ごめん。これじゃ私も鈴原と変わんないわね」

ヒカリ「……」

125: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:34:16.01 ID:dBg6YBHwP
ヒカリ「いいの」

アスカ「え?」

ヒカリ「ほんとは、私もチョコあげられなくて、困ってたから」

アスカ「そっか」


トウジ「てことは、ほんまに!?」

ヒカリ「その代わり、作ったチョコはもうないから新しく作るけど、いいよね?」

トウジ「かまへん! しかも手作りなんて、最高や!」

ヒカリ「ふふ、そっか」


アスカ「……」

126: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:36:05.94 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……ただいま」

シンジ「あ、アスカ、おかえり」

アスカ「……」

シンジ「ごはん、もうちょっとかかりそうだから」

アスカ「そう」


シンジ「……」

アスカ「……」

シンジ「……」

アスカ「……」

129: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:38:14.50 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……バカシンジ」

シンジ「なに?」


アスカ「……あの」

シンジ「……?」

アスカ「……い、一応バレンタイン、渡したんだから、ホワイトデーのお返し……」

シンジ「ああ、うん。もちろん用意するつもりだけど」


アスカ「……」

シンジ「まだ、なにかあるの?」

アスカ「……」

130: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:40:38.44 ID:dBg6YBHwP
アスカ「わ、私も」

シンジ「え?」

アスカ「私も! アンタから貰ったから! ……だから、お返し、あげるから」

シンジ「……!」


アスカ「……」

シンジ「……」

アスカ「……」


シンジ「……そ、そっか」

アスカ「……そうよ」

133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:43:09.48 ID:dBg6YBHwP
アスカ「言っておくけど!」

シンジ「うん」

アスカ「今度こそは、ちゃんとした、とっておきのやつだから!」

シンジ「ふふっ、うん」

アスカ「アンタが作るようなやつの、一千万倍、すごいやつなんだから……」

シンジ「負けないくらい、頑張るよ」


アスカ「……」

シンジ「……」


アスカ「……じゃあ、早くご飯、作ってよね」

シンジ「わかった」

136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:45:42.32 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……はぁ」


アスカ「……」

アスカ「……」


アスカ「……」カパッ

アスカ「……」


アスカ「……」ピッピッ

アスカ「……」

アスカ「……」

138: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/03(月) 23:47:42.00 ID:dBg6YBHwP
アスカ「……あ、もしもし、ヒカリ?」


アスカ「うん」

アスカ「うん」

アスカ「あはは、そっか」


アスカ「あ、うん、それでね」






アスカ「……お菓子作り、ちゃんと、教えてもらおうかなって」



終劇











元スレ

タイトル:アスカ「バレンタインデーにチョコ?」

URL:https://hayabusa.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1354535774/