403: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
マリ「さて今日お集まりいただいたのは他でもないにゃ」

ケンスケ「諸君らには極秘任務がある」

トウジ「どういうことやねん」

ヒカリ「アスカと碇くんのことで大事な話があるって私は聞いたけど」

マリ「まずはこれを見ていただきたいにゃ。相田軍曹、例のものを」

ケンスケ「イエス、マム」ピッ


モニタ映像

アスカ『ほ、ほら、さっさと口開けなさいよ///』

シンジ『うん。あ、あーん///』

アスカ『ど、どう、おいしい?///』

シンジ『アスカが僕のために作ってくれたものがおいしくない訳ないじゃないか///』

アスカ『もう、シンジってばぁ!じゃ、今度はあたしにも……あーん///』

シンジ『はい、あーん///』

404: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
トウジ「まあ、いつもの光景やな」

ヒカリ「私も鈴原とあんな風にしたい」ボソッ

トウジ「なんか言うたか、委員長?」

ヒカリ「なんでもない!」

マリ「そう、いつもの光景だにゃ。でもこれがいつものになったのはいつからだにゃ!答えろ、相田軍曹!」

ケンスケ「はっ!3ヵ月前の遺跡見学からであります!」

ヒカリ「そういえばあの遺跡見たアスカすごく怖がってたのよね」

ヒカリ「でも碇くんがしっかり手を握ってあげたらアスカすっかり安心しちゃってて」

トウジ「あの時のセンセの顔はびっくりするくらい男前やったなあ」

マリ「そう、それからだにゃ。あの二人がもう所構わず、人目も憚らずになったのは!」

トウジ「まあ、教室でいちゃいちゃはわしもどうかと思うけど幸せそうでええやないか。なんか問題でもあるんかいな」

マリ「問題があるか……だって?大ありだにゃ!相田軍曹、次の映像を出すにゃ!」

ケンスケ「イエス、マム!」

405: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
モニタ映像

トウジ『お、また夫婦揃ってのご登校か』

アスカ『えっ、夫婦だなんて……あたしたちまだ高校生だし……もう少しシンジとは恋人の時間を楽しみたいかな、って』

シンジ『うん。そうだね。でもそういう風に見られてるってことは少し恥ずかしいけど嬉しいことだと思うよ』

シンジ『それだけお似合いだって言われてるってことだからね。ほんとならアスカは僕にはもったいないくらいの女の子だから///』

アスカ『なにいってんのよ、バカね。シンジがあたしにはもったいないくらいなの。でも……誰にも譲ってあげないんだから……///』

シンジ『うん、僕もアスカを誰にも譲る気はないよ///』

アスカ『うん。離しちゃいやだからね///』



トウジ「ああ、そういえば最近はからこうても、それをネタにいちゃつきよるようになっとるなあ」

ヒカリ「最近のアスカ穏やかで幸せそうで見てるとこっちまで嬉しくなる時あるのよね。それにちょっとうらやましい」

トウジ「なんや、委員長もしかしてシンジ狙いやったんか?」

ヒカリ「違うわよ!全く鈍感なんだから……」

406: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
シンジ『………///」

アスカ『………///』

シンジ『ダメだよ、僕にはアスカの魅力を表現できないよ///』

アスカ『あたしだってシンジの優しさを絵にするなんて無理ぃ///』

シンジ『………///」

アスカ『………///』


トウジ「ああ、いつぞやの美術の時間の映像やな。お互いの顔をかきなさいっちゅーやつ」

ヒカリ「で、二人で見つめ合ってずーっとこんなこといってて時間になったんだっけ」

トウジ「このあと職員室に呼び出されたらしいんやけど、説教されてる時もずっと手をつないどったらしいで」

マリ「このように映像や証言などからも最近の二人にはもうなんか初々しさがないというのがわかるにゃ!というかただのバカップルだにゃ!」

トウジ「そないなこというても当人同士幸せそうなんやし別にかまへんのとちゃうか?」

ケンスケ「なにを言ってるんだ、鈴原二等兵!」

トウジ「ああ、わし二等兵なんか」

ケンスケ「こんなにはっきりとカップルアピールされてみろ!我軍の収入は激減である!」

マリ「姫をからかっても頬を染めながら喜ぶだけだにゃ、面白くもなんともないにゃ!」

407: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
ケンスケ「他生徒にチャンスがまだあるのかもしれない。せめて遠くから見るくらいは許されるかもしれない。こう思わせてくれないとあいつらの写真売れないんだよ!」

マリ「あのからかったらムキになって否定してそれでも結局一緒にいるのがあの二人の萌えポイントにゃ!」

ヒカリ「ええと、なにがいいたいの?」

マリ「元の初々しくも微笑ましい二人に戻ってもらって、からかってニヤニヤしたいにゃ」

ケンスケ「写真が売れれば何でもいい」

トウジ「お前らほんま自分の欲望に正直やのう」

ヒカリ「引き離すなんてひどすぎるわ。あんなに幸せそうなのに」

マリ「引き離すなんて言ってないにゃ」

ケンスケ「我々としてもけして友人たちの幸せを踏みにじりたい訳ではない」

アスカ「……誰と誰を引き離すって?」

マリ「だから引き離すんじゃなくて姫とわんこくんを元のからかいがいのある距離感にしたい……って姫、いつからいたにゃ?」

アスカ「ただのバカップルで悪かったわね」

マリ「やばいにゃ、本気で怒ってる目だにゃ」

408: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
アスカ「誰が首謀者なのかしら?」

ヒカリ「わ、私じゃないわよ」

トウジ「わしでもないで」

アスカ「ええ、ええ、わかってるわ。その辺は見てたから。正確にはこうね。どっちが首謀者なのかしら?」

ケンスケ「隊長、ここは撤退を進言します」

トウジ(さらっと自分は部下やってアピールしとるな)

アスカ「あんたが首謀者なわけね?コネメガネ」

マリ「あ、あははー、めんごめんごー。なんか二人とも最近かまってくれなくて寂しくってさーとかそういう理由じゃだめかにゃ?」

アスカ「だめね」

マリ「こ、こういう時どういう顔をすればいいのかににゃ?」

シンジ「笑えばいいと思うよ。笑えるものなら」ニコッ

マリ「わんこくんもいたのか。てかその笑顔怖いんだけど、目が笑ってないんだけど?」

トウジ(ああ、ケンスケいつの間にか逃げとるなあ。うまいこと逃げおったで)

マリ(まずい、これ死んだ。もう必死で謝るしかないにゃ)

マリ「ほんっっっっとすいませんでした―――――!!!!」ドゲザ

409: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
シンジ「…………実害はなかったから今回だけは許そうよ。アスカ」

アスカ「うん、そうね。どうせあたしたちの仲って誰にも引き裂けないしね///」

シンジ「うん///」

トウジ「またこの展開なんか」

シンジ「あ、そういえば僕今週トイレ掃除当番だったんだ。アスカと一緒の時間が減っちゃうな……」チラッ

アスカ「あたしは来週音楽室の掃除……シンジとの時間が減らされちゃう……」チラッ

マリ「わ、わかったにゃ。トイレは軍曹に責任持ってやらせるにゃ。姫の方は私が。それで今回は手打ちってことで一つ」

シンジ「ありがと、真希波」ニコッ

マリ(その笑顔めちゃくちゃ怖いにゃ)

シンジ「でも二度目はないからね?」ニコッ

マリ「」

アスカ「じゃ、帰ろっかシンジィ///」

シンジ「うん、今日はアスカの好きなもの作るね」

アスカ「いつもあたしの好きなもの作ってくれてるの知ってるもん///」

シンジ「じゃ、みんなまた明日ね」

410: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/07/23(火) NY:AN:NY.AN ID:???
トウジ「ふう、やれやれやな。わしらも帰るか」

ヒカリ「あ、う、うん。私買い物して帰らないと」

トウジ「いつも弁当作ってもらってるさかいなあ。わしが荷物持ちしたるわ」

ヒカル「あ、ありがと、鈴原///」

マリ「なんだか姫たちをからかうのも命がけになってきたにゃ」

ケンスケ「やめるという選択肢はないのでありますか?」

マリ「軍曹、おかえり。確かにやめれば安心安全だにゃ……でも……面白いから……いいっ!」

おわり

なぜかにゃーが主役みたいになった。許してほしい


469: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:???
ごくたまに小ネタを投下してた者ですが、この度、このスレの職人さん達の見よう見まねでSSにチャレンジしてみました。
読みづらくてすいません。

夏休みもあと残すところ10日。明城学院附属は県内有数の名門校だけあって夏休みの宿題はどっさり。
まだ何も手をつけていない呑気な学生も、そろそろ危機感を覚えてペンを持つ頃。
この二人はというと、割と早い時期からとりかかっていたのだが…。
 シンジ「まだこんなにあるんだ…本当にあと十日間で終わるかなぁ…」
 アスカ「なーに弱音吐いてんの。このくらい、お茶の子さいさいよ!」
最近はシンジを女子寮の自室に招いて勉強会(建前)を開くのがアスカの日課になっていた。
女子寮は男子禁制なのだが、夏休みで大半の学生が帰省していることもあり
近所迷惑になるほど騒いだり、何か事件を起こさない限りは基本的に黙認状態であった。
 アスカ「次は物理やるわよ。○○ページからね」
 シンジ「えっと…熱膨張率…?こんなの習った覚えないよ!酷いや、リツコ先生…」
 アスカ「熱膨張ねぇ…あたしの胸も、暖めれば大きくなるのかな?」
自分の胸に目をやったあと、上目遣いでチラッとシンジを見つめるアスカ。
 シンジ「知らないよ、そんなこと…」
テーブルに向いたまま溜め息交じりに言った。
 アスカ「な、なによそのやる気ない反応は!なんかムカつくわね~」
シンジの態度も無理はない。最初の頃はこの調子でアスカがシンジをからかい、「なんちゃって!」をして
その度にシンジが耳まで真っ赤にしていたのだった。いつもならそれで集中力が切れ、
気が付けば二人でゲームやテレビに熱中しているのが常だった。宿題が進まないのも当然といえば当然といえる。
しかしシンジもさすがに学習したのか、今回は軽くあしらった。アスカにしてみればあまり面白くない。
しばらく互いに無言になり、カツカツと文字を書く音だけが部屋に響いた。

470: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/08/21(水) NY:AN:NY.AN ID:???
>>469 
 シンジ「ふぅ…少し休憩しない?なんだか喉が渇いちゃってさ」
 アスカ「…あっそ。勝手にすれば?」
きつい口調で吐き捨てるように言う。アスカの顔を見上げると、どこかムスッとしているように見える。
 シンジ「アスカ、なんか怒ってる…?」
 アスカ「…興味ないみたいに言われると、プライド傷つくのよね」
 シンジ「へ?なんのことだよ」
 アスカ「ねぇシンジ、あたしの胸…触ってみる?こう見えて結構大きいのよ」
 シンジ「なっ…ま、また僕をからかう気だろ!も、もうその手は通じないからなっ!」
 アスカ「ふーん、せっかくのチャンスを無駄にするのね?」
 ズイッとシンジに近寄るアスカ。胸元の開いたワンピースから谷間を覗かせている。
 シンジ「えっ…ちょっ、アスカ……う、嘘だろ?そっそんなこと…急に…その…///」
思わず谷間を凝視してしまうシンジ。胸の膨らみに吸い込まれそうになる。
どうせまた冗談に決まってる、と思いながら心のどこかで期待している自分がいる。
 アスカ「なに?怖いわけ?ただ服の上から触るだけなのに。やっぱりあんたって臆病なのね」
 シンジ「べっ…別に怖くなんかないよっ!!///」
 アスカ「ふーん、じゃあ触ってみなさいよ」
そう言うと、シンジの前にちょこんと座り、クルッと体ごと後ろを向く。
明らかに普段のからかいとは様子が違う。予想外の出来事にシンジはテンパってしまう。
 シンジ「ア、アスカ…ほ、本気…なの?///」
 アスカ「ほら…はやくぅ」
好きな女の子の背中を前にして葛藤する。短い時の中で、様々な思いが交錯する。
相手から誘われたとはいえ、仲良くなってまだ数ヶ月の女の子の体に、こんなノリで触れていいのだろうか。
しかもここは女子寮の一室だ。自分はまだ高校一年生だ。なんだかいけない事をしている気がする。
なんともえいない背徳感に包まれる。心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うほど鼓動が高鳴る。
アスカの髪の毛からほのかに甘い香りが漂い、更に正常心を、理性を狂わせる。
ここまできてやっぱりやめようなんて言えない。逃げちゃだめだ!
もはや16歳の少年シンジに、内なる欲求を抑制する術はなかった。




562: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/09/23(月) 00:59:38.48 ID:???
>>265です。嵐の夜編、おしまいです。スレ汚し失礼しました。
まあ、なんというか、新海の「言の葉の庭」に触発されたことは否定しないw
ついでに言うと、「いつおいでになるの」云々の部分は蜻蛉日記にそんな感じのやり取りがあった気がしたのでそこから。
なにぶん古典の知識はうろ覚えですので、ググってみたら違う、とかいうこともあると思うので、生温かい目で見守ってくだされ(´・ω・`)
機会がありましたらまたそのうちにノシ

576: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/09/25(水) 23:37:49.80 ID:???
>>576
シンジ「ちょっと二人とも落ち着いてよ、僕達そんな話してないって!無茶苦茶だよ!」
声を荒げてミサトとヒカリの二人から問い詰められるシンジは説明に必死だったが、
その言葉は空しくも二人の耳には入っていなかった。
ヒカリ「碇君!アスカを妊娠させて碇君は責任取れるの!?」
ミサト「そうよシンジ君。もし仮にアスカをそんな体にしたらどうするつもり!?」
この事態を収拾させようとシンジは意を決して答えた。
シンジ「も、もしそうなったら、僕が責任を取ってアスカを・・・・お、お嫁さんに貰います!
    アスカを一生養っていきますよ。」
真剣な目で答えたシンジの言葉に二人は静かになった。
その横には顔を真っ赤にして下を向いたままのアスカが立っていた。
アスカ『シンジったら・・・・アタシのことお嫁さんにしてくれるって・・・・・』
本当なら嬉しさでシンジの胸に飛び込んでいきたいとこだったが、
ミサトとヒカリの目の前でそんなことをすれば間違いなくからかわれるので
アスカは必死でそれを我慢していた。
ヒカリ「碇君・・・・そこまでアスカのことを想ってたのね」
ミサト「そう、そこまでの覚悟があるのなら私は何も言わないわ。」
シンジの真面目な答えに少し安心したミサトとヒカリは落ち着きを取り戻していたが、
二人の表情はさっきとは打って変わって若干ニヤけていた。
シンジは今頃になって自分がとんでもない発言をしたこと、
その発言を聞いてニヤけ顔になった二人を見て青褪めていた。
ヒカリ「だからと言って二人とも、間違いだけは起こさないでね。
    私達まだ高校生なんだからね。でも・・・・・よかったわねアスカ。」
ミサト「一応教師として忠告しておくけど、在学中は一線を超えるなんて事は許されないから。
    くれぐれも自分に責任ある行動を心掛けてね!。あなた達はまだ高校生って身分なんだから。
    まあでも・・・・アスカは幸せ者ね。こんなに愛してくれる人がいるんだから。
    さっ、それじゃ邪魔者はサッサと消えましょうかねぇ~♪」
ニヤニヤしながら部屋から去っていく二人を、魂を抜かれたような呆然とした表情でシンジは見ていた――――

591: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:01:36.17 ID:???
ここ数日、気が付くと、目で追っている。
彼はどうして、あんなにも人に優しくできるんだろう?
今もアスカが言うところの「3バカトリオ」でふざけあってる。
放課後の掃除を押し付けられてもニコニコとしている彼。
…鈴原とは、全く違う。
「ねえ、ヒカリ」
話しかけられてドキッとする。今、このタイミングで一番話しかけられたくない相手だったかもしれない。
「な、なあにアスカ?」思わず裏返る声に自分でもびっくりする。
「ちょっと話があるんだけど…、いい?」
有無を言わせぬその迫力に、私は黙って頷くしかない。


放課後の体育館裏なんて、不良がたむろする悪の巣窟のようなイメージだったけど、
行ってみると案外そんなこともなく、木漏れ陽が風にそよいで気持ちがいい。
…目の前に不機嫌そうな面持ちで立つ、この親友がいなければ。
「あのさ、ヒカリ、悪いんだけど、」
アスカが単刀直入に切り出す。
「分かってると思うんだけど…、あたしのシンジに横目使っても無駄だから」
「へ?」思わず素っ頓狂な声が出てしまって赤面する。
「とぼけたって無駄よ、あんたがシンジのことを目で追っているの、あたし見てたんだからね!」
言葉に詰まる。完全に誤解なんだけど、でも私が碇君を目で追っていたのは事実。
でもそれを、どうやって説明しよう…。誤解だと理解してもらうためには、どうしても鈴原との
ことを話さなくてはならない。でもそれは明かしてはならない絶対の秘密。

592: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:02:06.20 ID:???
>>591
「何顔真っ赤にしてんのよ、親友だからって、人の恋人に手を出すのは許さないわよ」
「ううん、違うの、そんなんじゃないの…」首を振りながら、そこまで言うのが精一杯。
「ヒカリ、ダメよ、あんたには鈴原って男がいるじゃない、二股なんてガラじゃないでしょ?」
「え?ええええええええ?なな、な、なんで知ってるの?」
ほとんど悲鳴だった。後で聞いた話だと、その声は体育館裏に隣接する住宅地の
外れにある公園で、遊んでいる子供をあやしていたお母さん方にも聞こえたという…。
「っつ…ヒカリ、大声出しすぎ…」耳を押さえてアスカがうずくまっている。
「あ、ああああ、ごめんアスカ…大丈夫?」
そうは言ったものの、私の頭の中は???でいっぱいで、正直オーバーヒート寸前。
「大丈夫だけど…そんな今更そんなことで驚かなくてもいいじゃない…(´・ω・`)」
「え…だって…いつ知ったの?」少なくとも誤魔化せるものではないことが分かって、
多少の開き直りは出てきた私。アスカの前だから言えることでもあるけれど。
「知ったの?って…ぷっ…ヒカリ、あなたたちのことを知らない奴なんて、あのクラスには
いないわよ…。あんたらの仲が秘密だということは、クラス全員が知っている、ってやつね。
あ、うちの鈍感男はひょっとしたら気づいてないかもしれないけどw」
驚きで頭の中が真っ白になる。空っぽになった頭の中に思考能力が戻ってくるその瞬間に、
碇君のことを「うちの鈍感男」と呼んだアスカを、ちょっとだけ羨ましく思う。
私は、鈴原をまだそんなふうには呼べない。
「で…、シンジのことは何て言い訳するの?」
どうしよう、本当のことを話した方がいいのかな、でもアスカ怒らないかな…
「ほら、早く言いなさいよ。答えによっては本気で怒るわよ」
「ご、ごめんなさい。でもアスカが心配するようなことじゃないから、安心して」
「…それだけじゃ分からないわ。理由を説明して」
アスカの真剣な目つき、碇君は誰にも渡さない、という殆ど殺気に近い、強い強い意志の光を感じた私は、
誤解を解くためには本当のことを話さなければならないことを悟った。

593: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:02:41.78 ID:???
>>592
その次の土曜日。朝食の時間が過ぎた頃、私は寮の食堂で碇君とアスカに向かい合って座っていた。
「…ということで、お弁当のレシピを増やしたいんだって。」
アスカが隣に座る碇君に説明をしている。
うーん…ちょっと違うんだけどな、と思いながら私は黙って聞いている。
鈴原にお弁当を作って持っていくのが毎日の日課だったんだけど、毎日のように作っていると、
どうしてもレシピが不足してくる。料理本とか読んで作ってみても、何か一味足りない気がして仕方がない。
鈴原は毎日「うまかったで」とお弁当箱を返してくれるけど、時々ちょっと寂し気な目をする。
その目とその言葉に、私は彼の優しさと残酷さを感じてしまう。
「うまかったで」だけじゃ分からないことがたくさんある。
でも何度聞いても「いや、うまかったで。また頼むな」としか言ってくれない彼。
そんな時に同じように毎日アスカにお弁当を作っている碇君のことが頭に浮かんだ。
朝、同じような時間帯にキッチンを共有するような感じで、お互いお弁当を作っていたけど、
アスカに遠慮してなかなか話しかけられずにいた。碇君の作るお弁当は、横で見ている私が
落ち込むくらい美味しそうで、実際アスカにちょこっと食べさせてもらったら、
私が作るものより何倍も美味しくて、そのコツというかヒントみたいなものを、一度聞いてみたかった。
この前のハンバーグなんか、レストランで出してもおかしくないような出来栄えで、
なんかよく分からないけど、負けたような気分になった。
そんなようなことをあの日アスカに話したら、アスカの表情が急に明るくなった。
アスカは胸をポン、と叩き、ニコニコ顔で言った。
「なによヒカリ、そんなことで悩んでいたの。水臭いじゃない。あたしに任せて!」
そして、今日に至る。

594: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:03:43.80 ID:???
>>593
「なんだ委員長、そんなの料理している時に聞いてくれれば良かったのに…」
碇君の目は、いつも優しい。きっとこの目をアスカは好きになったんだな…と思う。
「え…(でも、あんまり色々話しかけたら、アスカに、悪いかなって…)」
心の中で呟く言葉は、きっと碇君には伝わらない。でも、それでいい。
この親友の独占欲にはちょっと困ることもあるけれど、でも、気持ちも分かる。
そう、碇君は誰にでも優しい。だから、実はクラスの女の子からかなり人気がある。
そもそも顔やスタイルもかなり良いし、勉強も出来る。スポーツだってなんでも人並み以上にはこなしている。
おまけに音楽も得意で、ピアノ、ギター、チェロまで弾けて、その腕は玄人はだし、と来ている。
ちょっと自分に自信がなさげで、頼りない気がすることもあるけれど、
そのマイナスを補って余りあるものが彼にはある。
これでモテなかったら嘘だ。まあ、私はもっと頼りがいがある人が好きで…で、鈴原を…うん////
とにかく、アスカはそれが自慢でもあり、同時に心配の種でもあるみたいで、この前の私のように、
放課後体育館裏や屋上に連れ出されて、シメられた子を私は何人か知っている。
だから、料理中に言葉を交わすことはあっても、話し込んだりすることはしなかったし、出来なかった。

595: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:04:19.06 ID:???
>>594
「じゃあ、とりあえず、作ってみようか」
碇君が立ち上がる。今日はあたしも一緒に作る、と言っていたアスカがそれについていく。
お揃いのエプロン姿の碇君とアスカは、なんだかまるで新婚の夫婦みたいだ。
横から見ていても、息がぴったり合っているのが分かる。
碇君が何も言わなくても、次に彼が何を必要としているのかがアスカには分かっているみたいで、
そう、新婚の夫婦でありながら、もう何十年も一緒に連れ添ってきたような、そんな雰囲気すらある。
「あ、ごめんアスカ」「あ、これでしょ、シンジ」
思わず溜め息が出る。なんで「あ、ごめんアスカ」でアスカは味醂を碇君に瞬時に手渡せるのか。
「…」「はい、アスカ」「ありがと」
碇君は更に強烈だ。アスカが何も言わなかったのに、そしてアスカの方を見てもいなかったのに、
一瞬の躊躇いもなく、スライサーをアスカに手渡している。もう殆どテレパシーの域に到達している。
「…すごい」私の独り言に
「え?何が?」2人同時に返答する。
何も言えずにただ笑うしかない私。困った、こんな領域には私と鈴原は到底届かない。
いや、全世界のカップルのうち、ここまで息が合ったカップルなんて何組いるんだろう。
「委員長、鍋、火が強いよ」
「え?あああ、大変」噴きこぼれそうになるお鍋の火を弱くして、細かい味付けをする。
里芋の煮えるいい匂いが立ち上がってくる。
「あぁ、いい匂い」隣でアスカが呟く。
「ヒカリ、全然気にすることなんかないんじゃない?あたしなんて絶対こんなの作れないわよ」
「…いいじゃないアスカには料理担当がいるんだから。
こっちは全然台所仕事とかしそうにない人だからね…」
その分私が頑張らないと。私は心の中でそう続けた。

596: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:07:21.20 ID:???
>>595
ずらっと並んだ料理の数々。寮生が何人か興味深そうに集まってきて、遠巻きに眺めている。
でもその中に、鈴原の姿はない。
アスカは待ちきれなさそうに、箸を持ってスタンバイしている。
このために朝ごはんを抜いたんだから当たり前かもしれないけど、
まるでお預けをくった飼い犬みたいで、見ていて可愛い。
「ん?何笑ってんのよバカシンジ」「え?いや、なんでもない」「ふーん…ならいいけど…。早く食べましょ」

作ってみた品々。ハンバーグ、だし巻き卵、豚肉の生姜焼き、ほうれん草のソテー、里芋の煮っ転がし、ナスのおひたし。
碇君はブリ大根と豚バラ煮込み、アスカはワカメと根菜と豆腐の入ったお味噌汁。そして舞茸の炊き込みご飯。
「ん…委員長、美味しいよ。別に悩んだりする必要ないんじゃない?」
碇君は微笑んでくれる。でも、碇君は優しいがゆえに、こういう時はあまり信用できない。
「で、でも、碇君が作るお弁当の方が、いつも何倍も美味しいと思うし…」
「それは隣の芝生は青く見える、ってやつだよ。委員長のだってとっても美味しいよ」
「そうよヒカリ、とっても美味しいわよ。これならご飯何杯でもいけちゃうわ」
実際にアスカは今にもご飯一膳を食べ終わろうかという勢いで、なんだか微笑ましい。
碇君が「アスカ、ほっぺに玉ねぎ付いてるよ」とか言って、アスカの頬についた玉ねぎの欠片をつまんでいる。
そしてそれを何気ない所作で自分の口へ運んでいる。
アスカはアスカで、碇君に「でもなんでシンジはブリ大根なのよ、こんなのお弁当にならないじゃない」
とか言ってる。その割にはブリ大根も豚バラ煮込みも半分以上アスカのお腹の中に納まってるみたいだけど。
碇君が何か言ってるけど、アスカは食べるのに夢中で聞いていない。
碇君がちょっと怒る。アスカがなだめる。何か言い返す碇君、今度はアスカが膨れ、
碇君がアスカのご機嫌を取っている。
そのやり取りを見ているだけでも、複雑な気持ちになる。
不思議と幸せな気分になって、この2人は、やっぱりお似合いだなぁ…なんて思うんだけど、
それと同時に、私たちなんてとてもかなわない、と少し憂鬱になる。

597: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:09:14.60 ID:???
>>596
「ありがとう…でも鈴原はね…なんだか物足りないみたいなんだ…」
夫婦漫才がしばし停止する。うーん…と碇君が箸を置いて何か言いたそうにしている。
「何、碇君、気づいたことがあったら教えてほしいの」
「ちょっと、なんか言いたいことがあったら言いなさいよバカシンジ」アスカが背中を叩く。
痛っと、言いながらも全然怒った様子も見せず、ちょっと申し訳なさそうな表情で、碇君は言う。
「美味しいんだけどさ、トウジってほら、関西出身じゃない?味付けを関西風にしてみたらどうかな?って…」あ、なるほど。
「あと…、委員長の料理って美味しいんだけどさ、なんていうか、レシピ通りの味付けで、
なんか…味付けとかはもっと適当にやってもいいかな、って思うんだけど…」
「関西風??それに適当ってどういうこと?」思わず身を乗り出す。
「いや、あの、そんなつもりで言ったわけじゃ…。なんか…偉そうなこと言ってごめん…」
なんでも、碇君はアスカの体調も考えながら味付けを決めているとのこと。前日体調が悪そうであれば、
消化の良いもので薄味に仕上げ、試験前なんかだと、脳に糖分を、ということで、
少し甘目に味をつけるとか。
料理本にある味付けの分量は、あくまでも目安でその時その時で適当に量を変えているとか。
確かに私は、大匙一杯、って書かれていたらしっかり大匙一杯、という感じで、失敗を恐れて
きちんきちんとしすぎて、もっと大切なことを見落としてしまっていたかもしれない…。

598: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:09:48.41 ID:???
>>597
「すごい…そんなところまで考えてるんだ…」
「いやいや、結局のところ、こうやって料理を作るのって、食べてくれる人が喜んでくれる、
その姿を見たいからじゃない?だからそのために僕は僕がやれるだけのことをするだけだよ」
そっか、とその時思った。今まで私は、鈴原の反応が怖かった。こんなものを食べさせて、
嫌われたりしないかな?とか、気に入ってくれなかったらどうしよう、とか、
マイナスなことばかり考えていた。
そうじゃなくて、単純に鈴原が喜んでもらえればそれでいいんだ。
「ありがとう、碇君。なんか目から鱗が落ちた気分だわ」
「ええ?…そう?…なんか気を悪くしたらごめん…」
「何よ、さっきまでの自信たっぷりな言い方はどこに行ったの?すごく助かったわ、ありがとう」

再びキッチンに立つ。今日は週末の土曜日。疲れも溜まっているはず。
関西風の優しい味付けを心掛けて、鈴原のために心を込めてお弁当を作る。

599: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 00:10:31.19 ID:???
>>598
「お、なんや朝っぱらから仰々しいやっちゃな」
11時も半分を過ぎた頃、彼が食堂に降りてくる。今の今まで寝ていたらしく、
いつものジャージ姿はヨレていて、頭は寝癖が目立つ。
「ほら、行きなさいよヒカリ」アスカが後ろからこそっと呟いて私の背中を押す。
「お、イインチョやないか、おはようさん。朝からエプロンなんかして…」
「あ、あの、鈴原…今日土曜日なんだけど、ちょっと作ってみたから…食べてみて」
緊張の一瞬。鈴原もほんの僅かな間だけど、目の動きが止まる。
ほんの1秒2秒のことなのに、何時間も経ったように感じてしまう。
「おっ、いつもわりぃな、ありがとさん」
いつも通りのセリフ。前はこんなところでは決して受け取らなかったのに、
最近ようやく公衆の面前でも、こうやってお弁当を受け取ってくれるようになった。
それは小さな一歩かもしれないけれど、すごく嬉しい。
「…ちょっといつもと味付けが違うかもしれないから…まずかったら、ごめんね」
「あぁ?イインチョが作るものに、まずいものなんてあらへんw」
そう言って彼は、食堂を出て行ってしまった。
「ヒカリ~、追いかけなくていいの?一緒に食べたらいいじゃない?」
後ろからアスカが背中を肘で突っついてくる。
「いいの///全然いいの////」振り返った私の顔を見て、アスカはそれ以上何も言わなかった。
すっごく嬉しそうな顔をしていたみたい。恥ずかしい////

603: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:15:40.63 ID:???
>>599
夕食時、ちょっとした予感があって、早めに食堂に降りて行ってみたら、
他には誰もいない食堂の中に、やっぱり彼はいた。
「お、イインチョ、ちょうどええとこにおったな。これ、ありがとな。」
さも偶然を装ったかのようなセリフ。全然嘘。それくらい知ってる。でもそれが嬉しい。
ハンカチに包まれたお弁当箱。手に持つと、空になっているのが分かる。
鈴原は、私がどんなお弁当を作っても、いつも綺麗に全部食べてくれる。そういう彼が、好き。
「今日のは今までの中で一番うまかったで」
「え?」お弁当箱に気を取られて彼の表情を見ていなかった。
「なんつーか、死んだおかんが作ってくれた晩飯を思い出したわ…。あれと同じ味やった…」
一瞬ちょっと遠い目をする鈴原。きっと亡くなったお母さんのことを思い出しているんだ…
なんか悪いことしちゃったかな…。
「ああ、気にせんでええで。おかんはおかん、イインチョはイインチョや」
自分の考えていたことを見透かされたようでドキッとする。思わず鈴原の顔を見上げてしまう。
鈴原はにっこりと笑うと、私の頭を撫でてくれる。
「これからも、頼むわ。こんなうまい弁当なら、毎日でも食べたいわ」
背中を向けて自分の部屋に戻っていく彼の姿を見ながら、今のセリフはひょっとして…、と
思い立ち、顔が真っ赤になる。まさか、鈴原がそこまで考えて言うわけない。
でも…もしかしたら…いやいや考えすぎよ、午前中にアスカと碇君の姿に影響されすぎたんだわ。
私の考えすぎ。そうに決まってる。だけど心拍数はどんどん上がっていく。
流しに行って顔を洗う。冷たい水が、あっという間に蒸発していく。
ああ、ダメだ。私、こんなにも鈴原のことが、好きなんだ。
ツンツン「見たわよ」ニヤリ

604: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:16:15.79 ID:???
>>603
「ひゃぁっ!」
思わず声が上がる。背中をつついてきたのは、後ろを振り返らなくても分かる。アスカだ。
「ちょっとぉ、どこから見てたの…?」
息が苦しい。目の前が、暗くなる。
「ちょっ、ヒカリ、大丈夫???」
気が遠くなる中、暗くなっていく視界に最後に映ったのは、食堂の天井だった。

605: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:16:57.21 ID:???
>>604
目が覚める。見知らぬ天井…いや、ここは…アスカの部屋?
「あ、気が付いた?大丈夫?」
アスカの顔が目の前に見える。
「ここ…は?」
「あたしの部屋よ」
「アスカ…の?」
「そうよ。ヒカリったら、急に過呼吸起こして卒倒するんだもん。びっくりしちゃったわよ」
過呼吸…?そういえば息苦しくなって、倒れちゃったんだ…。
「え?でも誰がここまで…?」
「バカシンジが運んでくれたわ。こういう時、男って使えるわねw」
「え?まさか女子寮に碇君入れたの?」思わず上半身が起き上がる。
「ん?平気よ平気。この階はあたしとヒカリしかいないし。」「いや、そうじゃなくて」
「あー、規則上はまずいかもしれないけど、緊急時だもの。しょうがないわ。」
でも、もしこれが後々問題になったとしたら、それは私のせい。
「ごめんなさいアスカ…」
「なによ、謝ることなんてないわよ。こっちこそごめんなさい。私のせいでこんなことになっちゃって…」
涙目になるアスカ。
「ああ、違うの。アスカのせいじゃないの。ちょっとあの時は考え事をしすぎて…」
と、その時のことを思い出し、また顔が赤くなる。
「考え事?あのバカジャージのこと?」
「…うん」人の彼氏を捕まえて、バカジャージなんて失礼じゃないか、とふと思ったけど、ここは黙っておく。
「ったく、あいつにはヒカリなんて勿体ないわよ。だいたいあいつのどこが好きになったのよ、不思議なもんだわ」
「…アスカには、分からないかもね…」
思わず口に出てしまう言葉。
ちょっとびっくりしたような顔をして、私の顔を眺めるアスカ。
そうね、こんな風に言い返したのって、初めてかもしれない。

606: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:18:02.57 ID:???
>>605
「ねえ、ちょっと聞いてもいい?」「いいけど…何?」
「アスカって…碇君のどこを好きになったの?」
瞬間、アスカの顔が真っ赤になる。
「な////なななな何をいきなり…」
「ご、ごめんなさい。でもちょっと聞いてみたかったの…。なんだかさ、羨ましくて…」
「羨ましい?」
「うん。アスカってさ、いつも碇君と一緒にいて、2人で1つ、みたいな感じじゃない?
ものすごーく仲がいいし、息もぴったりだし。で、不思議とそれがみんなを幸せな雰囲気に
させるっていうか、でもそういうのって、私たちには無理だな…なんて思って。」
しばしの静寂。私とアスカがいる空間が、こんなに静かになるなんて、なんだか怖いくらい。
しばらくして、アスカが口を開く。
「どこを好きになった、っていうか…気が付いたのよ。私の居場所がそこにあった、って。」
「居場所?」
「そう。今までずーっと探していたものが見つかったような感じで。
で、そこに納まってみると、すごく安心できるし、あいつ、あたしのことすごくよく分かっててくれて、
こんなあたしでもとっても大事にしてくれるし…、それにね、これが一番重要なんだけど、
バカシンジにとっても、あたしの隣があいつの居場所なの。総てがすっ、とそこに納まるの。
だから、好きっていうか、あたしたちにとっては、あれが自然なの。」
予想外の答え。2人でいることが自然なこと…

607: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:20:10.05 ID:???
>>606
「それって、すごい素敵…」
「うん…//ありがと」
アスカは顔を赤らめて続ける。
「こんなこと、ヒカリにしか言えないんだけど、あたしね、あいつとずーっと昔に出逢っていた
ような気がするの。初めて会った時には分からなかったけど、きっとあいつとあたしは、
前世でも過去世でも、必ず巡り逢って恋人同士になっていたと思うの。
決して思い出せないけど、その記憶はあたしたちの中に確かにあって、何度生まれ変わっても
その記憶があたしたちを引き寄せてるって…こんなこと言うのもすっごく恥ずかしいんだけど、
多分あたしが思ったり感じたりしていることを、シンジも思い、感じてくれてて、
それを言葉に出せなくても理解し合える…あいつとあたしは、
だから一緒にいることを定められているのよ…いるんだと思う…そうだといいな…///」
すごい。すごい。ほんとにすごい。それしか思いつかない。
そして、そう言われても納得してしまうようなものが、碇君とアスカには確かにある。
「きっと、そうだよ…アスカと碇君、これ以上ないほどお似合いだもの…」
私たちはどうなんだろう…きっとこの2人には遠く及ばない…

608: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:20:50.96 ID:???
>>607
「ヒカリたちもきっとそうだよ」
え?今自分が考えていたことを見透かされたようで、びっくりする。
「ヒカリたちも、きっと昔からそう運命づけられているのよ、間違いないわ」
「えええ?まさか…」
「そう思いたくないの?」「いや、そんなことないけど…」
「大丈夫よ。あのジャージ、ヒカリにぞっこんじゃない。あんたたちもお似合いのカップルよ。
うまくヒカリの方で手なづけちゃえば、あいつ意外と尽くす男になるかもよw」
アスカがいたずらっ子のように笑う。
「えー、でもそんなの鈴原じゃないよぉ」笑いながら私も返す。なんかちょっとほっとする。
アスカに言われると、少し自信が出てくる…気がする。
「…その割には、人の彼氏捕まえてバカジャージ呼ばわりしてたわよね?」
「ん…そんなこと言ったかしら?…まあ、あれよ、あたしがシンジのこと、なんて呼んでるか、
ヒカリも知ってるでしょ?」
「…バカシンジ」「そう」「…なるほど」
2人で笑う。心の中にぐるぐると巻かれていた鎖が、少しほどけたような気がする。
「ねぇアスカ…」「何?」
「碇君とは…その…もう…キス、とかしたの?」
「バっ、バ、バ、ババババカ…何を突然…」顔に答えが書いてある。
「したんだ。」「…////」コクコク「いいなぁ…私は手をつなぐのがやっと…」
「だ、だ大丈夫よ。好き合っていれば、自然とそうなるわよ」
ちょっと上から目線な言い方だけど、私は黙って頷く。
「まさか、キスの先も?」「まっまさか。まだそこまではしてないわよ…」
これは本当らしい。「まだ」っていうのが気になるけど。

609: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:21:52.59 ID:???
>>608
翌日の夕方。私はノートを買いに近くのコンビニに行った帰り。
コンビニから外に出ると、ちょっと先の歩道をあの2人が歩いている。
もう夕暮れ時だというのに、あの2人の間だけは、なんだか青空が広がっているような感じで、
見ていてホレボレするくらいに、清々しく2人だけの空間と時間を満喫しているようだ。
あそこまで自然な感じにくっついたりできるのは、ちょっとした奇跡なんじゃないだろうか。
この地球上に何億人の人がいるか知らないけど、あの2人は、お互いにその何億人何十億人の中から
自分にとって最高の相手を見つけ出したんだと思う。
いや、アスカの言葉を借りれば、2人は一緒になるべく定められていた、というべきか。
はぁ…昨日あんなことを言われたけど、やっぱり間近に見ると、羨ましい。
こっそりと、あの2人を私たちに置き換えてみる。じゃれあって、密着する私と鈴原…
…やっぱり恥ずかしい///

「イインチョやないか」
「きゃっ!」驚きのあまり心臓が飛び出しそうになる。
「うわっ、何そんなに驚いてるん…ワイが逆にびっくりや…」
鈴原が、自転車にまたがってそこにいた。
今、この瞬間まで密かに妄想していた相手が目の前に現実に立っている。

「…鈴原…どうしたの?」
「ん?いや、サッカー観に行った帰りや」
「そうなんだ…」
ちょっと気まずい…;;;
「おっ、またやっとりますな、夫婦漫才w 休みの日でもやっとるんか、たいしたもんや」
前の方を歩いている碇君とアスカを見つけたらしい。
「…でも…なんだかちょっと羨ましい」
つい、口にしてしまった。言ってしまった瞬間に後悔するが、もう遅い。

610: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:23:30.60 ID:???
>>609
「ん?羨ましいんか?別にええやんけ。」
「そう?」ドキドキしながら、恐る恐る鈴原の顔を見る。
目が合う。心臓の鼓動が早まる。
「いや、あいつらはあいつら。わしらはわしらでええんとちゃうか?」
「え?」
「だって、あいつら見てみい、もしバカップル世界選手権なんてのがあったら、
あやつら間違いなくぶっちぎりの金メダルや。あんなん、真似しよったってできんわwww
あいつらはあいつらのペースでやらしとき。うちらはうちらでええねん。」
瞬間、何か目の前がぱぁっと明るくなった気がした。
鈴原、なんだかんだ言って、色々と考えてくれてるんだ、そう感じたし、その言葉そのものも、
とっても嬉しかった。「うちらはうちらで」確かにそうだ。
「そっか…それもそうよね。」
「お、スッキリしたな」
鈴原がニヤッと笑う。このいたずらっ子のような笑顔が、たまらなく好きだ。
「ほら、帰るで」「うん//」
「ねぇ、鈴原、」「なんや」
「明日のお弁当、何がいい?」
「なんでもええねん。イインチョが作る弁当やったら、なんでもうまいからな」
「…ありがと///」

611: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/02(水) 23:24:34.43 ID:???
>>610
「チャリ、後ろ乗ってくか?」
「えー、それってダメなんだよ。警察来たら怒られるよ」
「いちいちうるさいやっちゃな、ならええわ」
先に行こうとして、ふと思いついたように自転車を降りて押し始める鈴原。
「まあええわ、チャリこいで、あの2人に追いついたらまたなんか言われんだろうし、今日は付き合うたるわ」
1日の終わりにこんな幸せが待ってるだなんて、今日はなんていい日なんだろう。
明日は、碇君直伝のハンバーグでも作ろうかしら。
そう思いながら、私は鈴原と寮へ向かった。ゆっくりと、ゆっくりと。



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