<管理人注>
このssは貞本エヴァからの最終話分岐LASです。
元スレでは、同じ作者のSSがバラバラになっていたので再構成しています。
【明城学院】シンジとアスカの学生生活【LAS】No.1
の続編です。
711: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:10:18.03 ID:???
天高く馬肥ゆる秋。
厳しい暑さの夏も終わり、空はまさに青く高く、澄んだ風が秋の香りを運んでくれる。
しかしその爽やかな秋空とは裏腹に、明城学院の普通科学生寮(の一部)は不穏な空気に包まれていた。
「…ねえアスカ、聞いた?」「何を?」
夕食後、ラウンジでシンジと共にくつろいでいたアスカは、背後からのヒカリの声で顔を上げた。
「出たらしいのよ、ここ」「何が?」
「何が、って、出たといったらアレに決まってるじゃない、幽霊よ」
「へ?」
「3階の真希波さんが見たんだって」
「は?あのコネメガネ、どーせまた話盛ってんじゃないの?」
3階に住む真希波マリ、アスカ達よりも1学年上で、身内に学院関係者がいるらしく、
そのせいでアスカからはコネメガネと呼ばれている。
いたずらが好きでトラブルに首を突っ込んでは話をもっと大きくさせることが多く、
言ってみれば寮内の問題児の1人でもあった。
「いやそれがね、今回は本当らしいのよ…週末になると夜更けに寮内の廊下を不気味な影が音もなくすーっと…」
アスカとシンジが思わず顔を見合わせる。一瞬の静寂。背後のテレビからニュースを読み上げる
アナウンサーの落ち着いた声だけが僅かに響く。
「そ、それは大変ね。でも本当なのかしら?」
「うん、だからね、今度有志を募って証拠探しをするらしいわよ」
「ほ、本当に?」とこれはシンジ。「うん」とヒカリ。
うーん…、と考え込むアスカ。それを見つめるシンジとヒカリ。
「ふん、どうせデマよデマ。よくある学園モノの安ドラマみたいなもんよ。くだらない。」
アスカはそう言い捨てると、立ち上がった。
「それはそうと、バカシンジ、あたし急にスイカバーが食べたくなったわ。」
「え?もうこんな時間なんだけど…」時計の針は20時を回っている。
「は?だからなんだっての。あたしは今食べたいんだから。ほら、コンビニ行くわよ。」
シンジを半ば強引に外に引っ張り出したアスカ。見送るヒカリはただ、
「(アスカのああいう気まぐれにいちいち付き合う碇君、えらいわ…)」
と自分が同じことを言ったら鈴原はどうするんだろう…なんていうことを考えていた。
厳しい暑さの夏も終わり、空はまさに青く高く、澄んだ風が秋の香りを運んでくれる。
しかしその爽やかな秋空とは裏腹に、明城学院の普通科学生寮(の一部)は不穏な空気に包まれていた。
「…ねえアスカ、聞いた?」「何を?」
夕食後、ラウンジでシンジと共にくつろいでいたアスカは、背後からのヒカリの声で顔を上げた。
「出たらしいのよ、ここ」「何が?」
「何が、って、出たといったらアレに決まってるじゃない、幽霊よ」
「へ?」
「3階の真希波さんが見たんだって」
「は?あのコネメガネ、どーせまた話盛ってんじゃないの?」
3階に住む真希波マリ、アスカ達よりも1学年上で、身内に学院関係者がいるらしく、
そのせいでアスカからはコネメガネと呼ばれている。
いたずらが好きでトラブルに首を突っ込んでは話をもっと大きくさせることが多く、
言ってみれば寮内の問題児の1人でもあった。
「いやそれがね、今回は本当らしいのよ…週末になると夜更けに寮内の廊下を不気味な影が音もなくすーっと…」
アスカとシンジが思わず顔を見合わせる。一瞬の静寂。背後のテレビからニュースを読み上げる
アナウンサーの落ち着いた声だけが僅かに響く。
「そ、それは大変ね。でも本当なのかしら?」
「うん、だからね、今度有志を募って証拠探しをするらしいわよ」
「ほ、本当に?」とこれはシンジ。「うん」とヒカリ。
うーん…、と考え込むアスカ。それを見つめるシンジとヒカリ。
「ふん、どうせデマよデマ。よくある学園モノの安ドラマみたいなもんよ。くだらない。」
アスカはそう言い捨てると、立ち上がった。
「それはそうと、バカシンジ、あたし急にスイカバーが食べたくなったわ。」
「え?もうこんな時間なんだけど…」時計の針は20時を回っている。
「は?だからなんだっての。あたしは今食べたいんだから。ほら、コンビニ行くわよ。」
シンジを半ば強引に外に引っ張り出したアスカ。見送るヒカリはただ、
「(アスカのああいう気まぐれにいちいち付き合う碇君、えらいわ…)」
と自分が同じことを言ったら鈴原はどうするんだろう…なんていうことを考えていた。
712: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:11:30.62 ID:???
>>711
「まずい、まずいわよシンジ」
寮の門を出て、周りに人がいないことを確認すると、アスカは言った。
「…やっぱり、あの幽霊って、僕のことだよね…」とシンジ。
「週末の夜更け…時間帯的にはバッチリよね、バカシンジ、なんでもっと注意しないのよ!」
頭をゴツンと小突くアスカ。「痛っ」と呻いて思わずその場にしゃがみこむシンジ。
「ちゃ、ちゃんと注意してたよ…誰にも見られていないはずなのに…今だって、怪しまれないように
わざとトボけた返事して嫌々な感じで出てきたじゃないか…そのくらいの気はつかってるよ…」
あの嵐の夜以来、なんとなく週末の夜更けにアスカの部屋を訪れることが習慣となっていたシンジ。
オートロックの暗証番号も教えてもらい、消灯時間が過ぎてからの秘密の訪い…。
それはシンジとアスカにとって、かけがえのない時間になっていた。
キスをし、抱き合って夜明け前まで眠る。そして夜明け前の朝靄に紛れてこっそりと非常階段を使って部屋に戻る。
アスカがいいと言うまで、その先は無し。
それでもシンジは満足だったし、アスカと一緒に過ごす夜が彼の生活に潤いと癒やしを与えていたのは間違いない。
だが、今やその時間は奪い去られようとしている。
それに事が露見すれば大変な事態を招くことは火を見るより明らか。
「だいたい何よあの尻軽女、胸ばっかでかくて頭ん中空っぽなんじゃないの?」
イライラした調子でアスカが言う。
「ははは、なにもそこまで言わなくても」
「は?何あんた悠長なこと言ってんの、まさかあいつに籠絡されたりなんてしてないでしょうね…」ギロッ
「ま、まさか。僕はアスカだけだよ」「ほんとに?」「ほんとだよ」「ふふっならいいわ」
アスカの機嫌が若干よくなってシンジはホッとする。
「まずい、まずいわよシンジ」
寮の門を出て、周りに人がいないことを確認すると、アスカは言った。
「…やっぱり、あの幽霊って、僕のことだよね…」とシンジ。
「週末の夜更け…時間帯的にはバッチリよね、バカシンジ、なんでもっと注意しないのよ!」
頭をゴツンと小突くアスカ。「痛っ」と呻いて思わずその場にしゃがみこむシンジ。
「ちゃ、ちゃんと注意してたよ…誰にも見られていないはずなのに…今だって、怪しまれないように
わざとトボけた返事して嫌々な感じで出てきたじゃないか…そのくらいの気はつかってるよ…」
あの嵐の夜以来、なんとなく週末の夜更けにアスカの部屋を訪れることが習慣となっていたシンジ。
オートロックの暗証番号も教えてもらい、消灯時間が過ぎてからの秘密の訪い…。
それはシンジとアスカにとって、かけがえのない時間になっていた。
キスをし、抱き合って夜明け前まで眠る。そして夜明け前の朝靄に紛れてこっそりと非常階段を使って部屋に戻る。
アスカがいいと言うまで、その先は無し。
それでもシンジは満足だったし、アスカと一緒に過ごす夜が彼の生活に潤いと癒やしを与えていたのは間違いない。
だが、今やその時間は奪い去られようとしている。
それに事が露見すれば大変な事態を招くことは火を見るより明らか。
「だいたい何よあの尻軽女、胸ばっかでかくて頭ん中空っぽなんじゃないの?」
イライラした調子でアスカが言う。
「ははは、なにもそこまで言わなくても」
「は?何あんた悠長なこと言ってんの、まさかあいつに籠絡されたりなんてしてないでしょうね…」ギロッ
「ま、まさか。僕はアスカだけだよ」「ほんとに?」「ほんとだよ」「ふふっならいいわ」
アスカの機嫌が若干よくなってシンジはホッとする。
713: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:12:45.62 ID:???
>>712
「とにかく、なんとかしないとマズイわね…」
「そうだね…、なんとかしないと…どうしよう?」
うーん…と2人して考え込むシンジとアスカ。コンビニなどとうに通り過ぎ、
気がつくと学校の近くまで歩いてきてしまっていた。
「あっ」「何よシンジ、どうしたの?」
「ねぇアスカ、」アスカの方に向き直り、シンジが思いついたように言う。
「その真希波さんの証拠探しってさ、早い話が幽霊を捕まえよう、ってことなのかな?」
「うーん…コネメガネの性格を考えるとその可能性が高いかもね…」
「だったらさ、僕たちもその探す側にいれば、見つかることはないんじゃないかな?」
「!」
「おまけに幽霊探しって夜なわけだから、おおっぴらに一緒にいられるかも…」
「!」
「…ってダメ?」
「ダメじゃないわ、全然いいわよそれ!採用!その線でいきましょ!」
アスカは目を輝かせてシンジの背中を叩く。
「ナイスアイディアよ、たまにはいいこと言うじゃないシンジ!」バチーン
「…だから、痛いよアスカ…」
「とにかく、なんとかしないとマズイわね…」
「そうだね…、なんとかしないと…どうしよう?」
うーん…と2人して考え込むシンジとアスカ。コンビニなどとうに通り過ぎ、
気がつくと学校の近くまで歩いてきてしまっていた。
「あっ」「何よシンジ、どうしたの?」
「ねぇアスカ、」アスカの方に向き直り、シンジが思いついたように言う。
「その真希波さんの証拠探しってさ、早い話が幽霊を捕まえよう、ってことなのかな?」
「うーん…コネメガネの性格を考えるとその可能性が高いかもね…」
「だったらさ、僕たちもその探す側にいれば、見つかることはないんじゃないかな?」
「!」
「おまけに幽霊探しって夜なわけだから、おおっぴらに一緒にいられるかも…」
「!」
「…ってダメ?」
「ダメじゃないわ、全然いいわよそれ!採用!その線でいきましょ!」
アスカは目を輝かせてシンジの背中を叩く。
「ナイスアイディアよ、たまにはいいこと言うじゃないシンジ!」バチーン
「…だから、痛いよアスカ…」
714: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:13:26.60 ID:???
>>713
「さて、と。集まったのは…これだけかにゃ?」
2日後の夕刻、食堂に集まったのは、アスカとシンジ、ヒカリとトウジ、そしてケンスケとマリ。
「おほん、」わざとらしい咳払いをした後、マリが始める。
「今夜はお忙しい中わざわざお時間をいただきまして、ありがとうございますにゃ。
これから明城学院ゴーストバスターズの結成式をおこなうにゃ!」
「…コネメガネ、何よそのゴーストバスターズって」アスカは既にかなり不機嫌そうだ。
「あら、姫ぇ、ゴーストバスターズをご存じない?それは残念。くだらなくて面白いにゃ。
いつかDVD借りて見るにゃ。」
「あのさぁ、そういうバカみたいなこと言ってると、帰るわよ」
「んもう、冗談が通じない姫だねぇ、いけずぅだねぇ」
「その冗談で人の男を弄ぼうとしたのはどこのどいつよ」ギラリッ
その一瞬吹き出た殺気にむしろシンジが恐れおののく。
「え?だってさぁ、姫たちを見てると何て言うかさ、ちょっかい出したくなっちゃうんだよね…
こんだけ熱々なのに、まだ何にもしてないんでしょ?そりゃぁ男の子にとっちゃ、最早毒だよそりゃw
ね、だからワンコ君、もし君がよければお姉さんが君のドーテーもらってあげてもよく
って痛ったあああああああああ」orz
テーブルに置いてあった箸置きがマリの顔面ど真ん中に命中している。投げたのは…言わずもがなw
「あんた、それ以上言ったらマジで殺すわよ(怒)」
怒髪天を衝く、とはこのことか。シンジはアスカの髪の毛が逆立ち、目の奥が殺気を隠そうともせず
青々と光り輝くのを見た気がした。
この光景を見ていてヒカリはマリのバイタリティに半ば呆れながらも感心している。
「(何度アスカに締められようとも懲りずに碇君にちょっかい出してる真希波さんってスゴイわ…
ひょっとしたら本当に碇君のこと、好きなのかも…///)」
「で、なんやねん人のこと呼び出しといて。用があるなら早よ言うてくれや」
トウジの声にマリが向き直る。ちょっと曲がったメガネを修正し、レンズをシャツの袖で拭いてかけ直す。
「さて、と。集まったのは…これだけかにゃ?」
2日後の夕刻、食堂に集まったのは、アスカとシンジ、ヒカリとトウジ、そしてケンスケとマリ。
「おほん、」わざとらしい咳払いをした後、マリが始める。
「今夜はお忙しい中わざわざお時間をいただきまして、ありがとうございますにゃ。
これから明城学院ゴーストバスターズの結成式をおこなうにゃ!」
「…コネメガネ、何よそのゴーストバスターズって」アスカは既にかなり不機嫌そうだ。
「あら、姫ぇ、ゴーストバスターズをご存じない?それは残念。くだらなくて面白いにゃ。
いつかDVD借りて見るにゃ。」
「あのさぁ、そういうバカみたいなこと言ってると、帰るわよ」
「んもう、冗談が通じない姫だねぇ、いけずぅだねぇ」
「その冗談で人の男を弄ぼうとしたのはどこのどいつよ」ギラリッ
その一瞬吹き出た殺気にむしろシンジが恐れおののく。
「え?だってさぁ、姫たちを見てると何て言うかさ、ちょっかい出したくなっちゃうんだよね…
こんだけ熱々なのに、まだ何にもしてないんでしょ?そりゃぁ男の子にとっちゃ、最早毒だよそりゃw
ね、だからワンコ君、もし君がよければお姉さんが君のドーテーもらってあげてもよく
って痛ったあああああああああ」orz
テーブルに置いてあった箸置きがマリの顔面ど真ん中に命中している。投げたのは…言わずもがなw
「あんた、それ以上言ったらマジで殺すわよ(怒)」
怒髪天を衝く、とはこのことか。シンジはアスカの髪の毛が逆立ち、目の奥が殺気を隠そうともせず
青々と光り輝くのを見た気がした。
この光景を見ていてヒカリはマリのバイタリティに半ば呆れながらも感心している。
「(何度アスカに締められようとも懲りずに碇君にちょっかい出してる真希波さんってスゴイわ…
ひょっとしたら本当に碇君のこと、好きなのかも…///)」
「で、なんやねん人のこと呼び出しといて。用があるなら早よ言うてくれや」
トウジの声にマリが向き直る。ちょっと曲がったメガネを修正し、レンズをシャツの袖で拭いてかけ直す。
715: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:14:33.91 ID:???
>>714
「そう、今日みんなに集まってもらったのは他でもない、この寮内に幽霊が存在するという噂がある!
そこで我々は一致団結してその幽霊の正体を突き止めるべく、ここに参集した次第にゃ。
今日はその作戦会議にゃ。」
ケンスケがプリントを配る。寮の平面図だ。女子寮の2階階段のところ、そして中庭に◎がついている。
「その◎のところが目撃ポイントにゃ。」
「誰が見たのよ?」とアスカ。足を組んで鋭い視線と口調で、まるでマリを威嚇するかのよう。
「私よ。深夜日付が変わる頃に私が部屋に戻ろうとしていた時、ふと気配を感じてそちらを見ると…」
「すーっと廊下の向こうに消えていく影がっ!」
マリのおどろおどろしい口調に、ヒカリがトウジにしがみつく。
「なんや、こんなん怖いんか」「…うん」「しゃーないなぁ」ナデナデ
その様子をシンジがぼんやりと見ている。それに気づいたアスカに足を踏まれて悶絶するシンジ。
それに構わずアスカが手を上げる。
「何かの見間違いじゃないの?メガネ外したら何にも見えない癖に」
「それはあり得ない。何故なら私にとってメガネこそがアイデンティティ。片時も離さず着用
しているにゃ!当然あの時もメガネをしていたし、私のセンサーが、ゴーストが、
そこに何かがいたと囁いてるにゃ!」
「テレビの見過ぎで頭腐れてんじゃないの?そもそも科学的根拠も何もないじゃない」
「うむ。確かに科学的根拠はないにゃ。だからこそ、ここで調査をしようと思ったわけでさぁ」
マリはケンスケの方に向き直ると
「ほら、そこのカメコ君!例のモノを用意するにゃ!」
と命令する。(いつの間にケンスケを手なずけたんだろう…?)という一同の疑問は置いておいて、
ケンスケがテーブルの下から監視カメラのようなものをいくつか取り出す。
「これを、当該箇所に設置し、記録を録ってみることを提案致します!」
「というのが、カメコ君の意見にゃ。みんなはどう思う?意見募集!」シャキーン
「そう、今日みんなに集まってもらったのは他でもない、この寮内に幽霊が存在するという噂がある!
そこで我々は一致団結してその幽霊の正体を突き止めるべく、ここに参集した次第にゃ。
今日はその作戦会議にゃ。」
ケンスケがプリントを配る。寮の平面図だ。女子寮の2階階段のところ、そして中庭に◎がついている。
「その◎のところが目撃ポイントにゃ。」
「誰が見たのよ?」とアスカ。足を組んで鋭い視線と口調で、まるでマリを威嚇するかのよう。
「私よ。深夜日付が変わる頃に私が部屋に戻ろうとしていた時、ふと気配を感じてそちらを見ると…」
「すーっと廊下の向こうに消えていく影がっ!」
マリのおどろおどろしい口調に、ヒカリがトウジにしがみつく。
「なんや、こんなん怖いんか」「…うん」「しゃーないなぁ」ナデナデ
その様子をシンジがぼんやりと見ている。それに気づいたアスカに足を踏まれて悶絶するシンジ。
それに構わずアスカが手を上げる。
「何かの見間違いじゃないの?メガネ外したら何にも見えない癖に」
「それはあり得ない。何故なら私にとってメガネこそがアイデンティティ。片時も離さず着用
しているにゃ!当然あの時もメガネをしていたし、私のセンサーが、ゴーストが、
そこに何かがいたと囁いてるにゃ!」
「テレビの見過ぎで頭腐れてんじゃないの?そもそも科学的根拠も何もないじゃない」
「うむ。確かに科学的根拠はないにゃ。だからこそ、ここで調査をしようと思ったわけでさぁ」
マリはケンスケの方に向き直ると
「ほら、そこのカメコ君!例のモノを用意するにゃ!」
と命令する。(いつの間にケンスケを手なずけたんだろう…?)という一同の疑問は置いておいて、
ケンスケがテーブルの下から監視カメラのようなものをいくつか取り出す。
「これを、当該箇所に設置し、記録を録ってみることを提案致します!」
「というのが、カメコ君の意見にゃ。みんなはどう思う?意見募集!」シャキーン
716: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:15:24.90 ID:???
>>715
「…そんなもの、勝手に設置しちゃっていいの?」とヒカリ。
「大丈夫にゃ。事前に寮長には相談し、了解済みにゃ。ね、冬月寮長!」
みんなが振り返ってマリの視線の先を見ると、いつの間にかそこには冬月寮長が座っていた。
「異議がないのなら別に構わんが、事故など起こさぬようにな」
「いつの間に…すごい…」思わずシンジが呟く。
「これぞまさに根回しw」なぜかドヤ顔のマリ。
「そんなちゃっちいカメラで写るんかいな?」とトウジ。
「超高感度、一昔前の軍事用並みの能力を持っております。性能は折り紙付きです!」
ケンスケが直立不動、敬礼をした状態で発言。
(軍オタは悪ノリし出すとタチが悪い…)と全員が思ったかどうかは定かではない。
「実際にカメコ君が事前にテスト撮影した映像がここにあるにゃ。見てみるかい?」
マリが持ってきたノートPCの前にみんなが集まる。そこには、深夜の男子寮の真っ暗な廊下で、
ケンスケがVサインをしているところが映っていた。
「おおお~っ」思わず歓声が上がる。
「でも電源はどうするの?廊下にコンセントなんてないんじゃない?」再びヒカリ。
「心配ご無用にゃ。清掃用のコンセントがあって、そこからケーブルを引っ張るにゃ。」
「い、いつから始めるのかな…?」シンジがおずおずと聞く。
「ん、出来れば今夜からでも始めたいところにゃ。」
マリとケンスケはやる気満々、といった格好。
「…で、姫は何かご意見などないのかにゃ?さっきから静ーかになってるけど…」
伏せた顔を上げて、アスカが答える。
「あのさ、ノリノリでぶち上げるのは結構なんだけど、これって他の寮生の迷惑とか考えてんの?
廊下にコード這わせて盗撮まがいのことしちゃってさ、こんなのプライバシーの侵害以外の何物でもないわ!」
思わぬ反撃?に一瞬ギクリ、とするマリ。
「…確かに、これって監視カメラみたいなもんだよね…」とシンジが呟く。
監視カメラ、という一言にヒカリが反応する。
「そっか私たち、監視されるんだ…。そんなのってイヤだな…」
「だいたいさ、」アスカが続ける。
「幽霊を見た、って、その時間になんであんたがそこに居たのかが解せないわ」ジロッ
「うっ…」ドキッ
「…そんなもの、勝手に設置しちゃっていいの?」とヒカリ。
「大丈夫にゃ。事前に寮長には相談し、了解済みにゃ。ね、冬月寮長!」
みんなが振り返ってマリの視線の先を見ると、いつの間にかそこには冬月寮長が座っていた。
「異議がないのなら別に構わんが、事故など起こさぬようにな」
「いつの間に…すごい…」思わずシンジが呟く。
「これぞまさに根回しw」なぜかドヤ顔のマリ。
「そんなちゃっちいカメラで写るんかいな?」とトウジ。
「超高感度、一昔前の軍事用並みの能力を持っております。性能は折り紙付きです!」
ケンスケが直立不動、敬礼をした状態で発言。
(軍オタは悪ノリし出すとタチが悪い…)と全員が思ったかどうかは定かではない。
「実際にカメコ君が事前にテスト撮影した映像がここにあるにゃ。見てみるかい?」
マリが持ってきたノートPCの前にみんなが集まる。そこには、深夜の男子寮の真っ暗な廊下で、
ケンスケがVサインをしているところが映っていた。
「おおお~っ」思わず歓声が上がる。
「でも電源はどうするの?廊下にコンセントなんてないんじゃない?」再びヒカリ。
「心配ご無用にゃ。清掃用のコンセントがあって、そこからケーブルを引っ張るにゃ。」
「い、いつから始めるのかな…?」シンジがおずおずと聞く。
「ん、出来れば今夜からでも始めたいところにゃ。」
マリとケンスケはやる気満々、といった格好。
「…で、姫は何かご意見などないのかにゃ?さっきから静ーかになってるけど…」
伏せた顔を上げて、アスカが答える。
「あのさ、ノリノリでぶち上げるのは結構なんだけど、これって他の寮生の迷惑とか考えてんの?
廊下にコード這わせて盗撮まがいのことしちゃってさ、こんなのプライバシーの侵害以外の何物でもないわ!」
思わぬ反撃?に一瞬ギクリ、とするマリ。
「…確かに、これって監視カメラみたいなもんだよね…」とシンジが呟く。
監視カメラ、という一言にヒカリが反応する。
「そっか私たち、監視されるんだ…。そんなのってイヤだな…」
「だいたいさ、」アスカが続ける。
「幽霊を見た、って、その時間になんであんたがそこに居たのかが解せないわ」ジロッ
「うっ…」ドキッ
717: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:16:05.98 ID:???
>>716
マリが言葉に詰まる。明らかに雰囲気が変わる。
「まずはそのあたりから説明してもらわないと、あたしは納得できないわ」
5人の視線が、一斉にマリに注がれる。
「べ、別に何も怪しいことなどしてないにゃ。ましてや厨房の冷蔵庫に隠してあるモンブランプリンを…って、あ…」
しばしの沈黙。それを破ったのはシンジ。クスクスと笑い出し、次いで言う。
「はははは、それって真希波さんらしいや」
顔を赤らめてマリが慌てて言う。
「バっババババ、バカ、そもそも私が買ってきたものにゃ。それに今回の本題とは関係ないにゃ!」
「部屋に冷蔵庫、あるのに…」ヒカリがぼそっと呟く。
「はっ、大方そっちはそっちでプリンだのゼリーだのケーキだので容量オーバーしてんじゃないの?」
アスカが見透かしたような感じで言う。
マリの表情からすると、図星らしい。
「それがその無駄にでかい胸の秘訣なわけね。まあでもそんな感じじゃ膨らむのは胸だけじゃなさそうだけど」
「アスカ、ちょっと言い過ぎだよ…」シンジがたしなめる。
「寄せて上げてのBカップにそんなこと言われたくないなぁ、悔しかったらEまで頑張ってみなさいよ」
マリが開き直る。
「はぁ?なんですってぇ」アスカの戦闘スイッチがONになる。
「ア、アスカ、落ち着いて」「これが落ち着いていられますかっちゅーの!」
「ひょっとして地雷踏まれたんか」「うっさいわねバカジャージ!」収拾がつかなくなる。
「アスカも真希波さんもやめてよ!」シンジが立ち上がって叫ぶ。
「今日はなんのために集まったの?時間ばかり無駄にしちゃうよ…」
その声にアスカもマリも大人しくなる。
「それに…僕はアスカの全てが、ありのままが好きなんだよ。その胸だって例外じゃないよ。」
座ろうとした時に、シンジがアスカの耳元でそっと囁く。それでアスカは機嫌を直す。
「(やっぱり碇君ってすごいわ…)」ヒカリが1人、感心している。
マリが言葉に詰まる。明らかに雰囲気が変わる。
「まずはそのあたりから説明してもらわないと、あたしは納得できないわ」
5人の視線が、一斉にマリに注がれる。
「べ、別に何も怪しいことなどしてないにゃ。ましてや厨房の冷蔵庫に隠してあるモンブランプリンを…って、あ…」
しばしの沈黙。それを破ったのはシンジ。クスクスと笑い出し、次いで言う。
「はははは、それって真希波さんらしいや」
顔を赤らめてマリが慌てて言う。
「バっババババ、バカ、そもそも私が買ってきたものにゃ。それに今回の本題とは関係ないにゃ!」
「部屋に冷蔵庫、あるのに…」ヒカリがぼそっと呟く。
「はっ、大方そっちはそっちでプリンだのゼリーだのケーキだので容量オーバーしてんじゃないの?」
アスカが見透かしたような感じで言う。
マリの表情からすると、図星らしい。
「それがその無駄にでかい胸の秘訣なわけね。まあでもそんな感じじゃ膨らむのは胸だけじゃなさそうだけど」
「アスカ、ちょっと言い過ぎだよ…」シンジがたしなめる。
「寄せて上げてのBカップにそんなこと言われたくないなぁ、悔しかったらEまで頑張ってみなさいよ」
マリが開き直る。
「はぁ?なんですってぇ」アスカの戦闘スイッチがONになる。
「ア、アスカ、落ち着いて」「これが落ち着いていられますかっちゅーの!」
「ひょっとして地雷踏まれたんか」「うっさいわねバカジャージ!」収拾がつかなくなる。
「アスカも真希波さんもやめてよ!」シンジが立ち上がって叫ぶ。
「今日はなんのために集まったの?時間ばかり無駄にしちゃうよ…」
その声にアスカもマリも大人しくなる。
「それに…僕はアスカの全てが、ありのままが好きなんだよ。その胸だって例外じゃないよ。」
座ろうとした時に、シンジがアスカの耳元でそっと囁く。それでアスカは機嫌を直す。
「(やっぱり碇君ってすごいわ…)」ヒカリが1人、感心している。
718: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/24(木) 00:17:05.82 ID:???
>>717
「じゃあ、そういうことで。決行は今週末にゃ!」
2時間の話し合いの後、ようやく会議?は終了、解散となった。ヒカリとトウジは2人で出て行き、
マリとケンスケは自室に戻っていった。
「はぁ…疲れたよ。」シンジは背もたれに寄りかかってぐったりしている。
「今日ばかりは、GJと褒めてあげるわ」アスカがシンジの頭を撫でる。
ここ、という議論のポイントポイントでのシンジの発言が功を奏し、この会議で決まったこととは…
・カメラは設置するが、録画はしない。別室で係がモニターをしていて、その上で異常があればその部分だけを手動で録画する。
・徹夜作業になるので、実施は授業に支障を来さないよう、週末の金曜日のみとする。
・係は各2名で途中で交代して仮眠をとる。
ということになり、モニターをする部屋は寮長の許可を得て、寮の空き部屋を使うこととなった。
そして組み合わせは当然のことながら、シンジとアスカ、トウジとヒカリ、マリとケンスケの3組に…。
「あのコネメガネの弱みを突いたところで一気に畳みかけることが出来たのがポイントだったわね」
「でも胸の話しとかされると…ちょっと恥ずかしかったな…」シンジが疲れた表情で言う。
「あ、でもあの話しは本当?」アスカが顔を赤らめてシンジに訊ねる。
「あの話しって?」「バカ、全てが好きって…///」
シンジはにっこりと笑ってアスカの頬を撫でる。
「もちろんだよ。別に僕はアスカの胸を好きになったわけじゃない、アスカのことが好きになったんだもの」
「…///ありがとうシンジ」シンジに抱きつくアスカ。
「あ、でも寄せて上げてのBカップ、っていうのは違うわよ。今はギリギリCはあるんだからね!」
思わず顔を赤らめるシンジ。抱き合って眠る時のあの胸の感触…。
「あ、想像したなエロシンジ!」ボカ「だから痛いって…すぐ殴るなよもう…」イテテテ
「じゃあ、そういうことで。決行は今週末にゃ!」
2時間の話し合いの後、ようやく会議?は終了、解散となった。ヒカリとトウジは2人で出て行き、
マリとケンスケは自室に戻っていった。
「はぁ…疲れたよ。」シンジは背もたれに寄りかかってぐったりしている。
「今日ばかりは、GJと褒めてあげるわ」アスカがシンジの頭を撫でる。
ここ、という議論のポイントポイントでのシンジの発言が功を奏し、この会議で決まったこととは…
・カメラは設置するが、録画はしない。別室で係がモニターをしていて、その上で異常があればその部分だけを手動で録画する。
・徹夜作業になるので、実施は授業に支障を来さないよう、週末の金曜日のみとする。
・係は各2名で途中で交代して仮眠をとる。
ということになり、モニターをする部屋は寮長の許可を得て、寮の空き部屋を使うこととなった。
そして組み合わせは当然のことながら、シンジとアスカ、トウジとヒカリ、マリとケンスケの3組に…。
「あのコネメガネの弱みを突いたところで一気に畳みかけることが出来たのがポイントだったわね」
「でも胸の話しとかされると…ちょっと恥ずかしかったな…」シンジが疲れた表情で言う。
「あ、でもあの話しは本当?」アスカが顔を赤らめてシンジに訊ねる。
「あの話しって?」「バカ、全てが好きって…///」
シンジはにっこりと笑ってアスカの頬を撫でる。
「もちろんだよ。別に僕はアスカの胸を好きになったわけじゃない、アスカのことが好きになったんだもの」
「…///ありがとうシンジ」シンジに抱きつくアスカ。
「あ、でも寄せて上げてのBカップ、っていうのは違うわよ。今はギリギリCはあるんだからね!」
思わず顔を赤らめるシンジ。抱き合って眠る時のあの胸の感触…。
「あ、想像したなエロシンジ!」ボカ「だから痛いって…すぐ殴るなよもう…」イテテテ
727: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 00:13:42.23 ID:???
>>718
さてと。週末の金曜日。決戦の金曜日。
消灯時間前に食堂に集まる。シンジは紫に緑のラインが入ったハーフパンツにパーカー。
トウジは…いつもの黒基調のジャージだ。ケンスケは…アーミールック。
女性陣と言えば、アスカは赤のランニングウェア上下。マリはピンク。ヒカリはトウジとお揃い。
「は?あんた戦争にでもいくつもり?なんで迷彩服着てんのよ」アスカが呆れたように言う。
「これが本官の正装であります!っていうか、こんなにワクワクするイベントだもん、気合い入れるさ」
ライフル(もちろんモデルガンだが)を下げ、カメラを抱えたケンスケが一番テンションが高い。
アスカとシンジが思わず目を見合わせて笑う。
この2人にしか分からない、ちょっとした秘密がある、その事実がシンジとアスカをより親密な気持ちにさせる。
「じゃあ、最初は私とカメコ君にゃ。2時になったら黒ジャージ夫妻にゃ、」
ヒカリとトウジが顔を見合わせて頬を染める。「そんなんじゃないよ…///」というヒカリの声は
小さすぎて他の5人には届かない。
「そして明け方、4時から6時までが姫とワンコ君にゃ。当番時間以外は部屋の中で仮眠、
当番の時間は私語は当然、まばたきも厳禁にゃ!」
「…いや、私語はともかくまばたきは無理やろ」「せいぜい居眠り厳禁、ってくらいじゃないかな…」
男2人の言葉は、だがしかしマリのテンションを下げる材料にはならない。
「ふん、最近の男は軟弱にゃ。」マリは鼻で2人をあしらうと、女子寮へ続く自動ドアを開ける。
「部屋は205を特別に使えるようにしてもらったにゃ。カメラは夕方のうちにセットしたよな、カメコ君?」
「はっ、もちろんであります!動作確認もバッチリであります」
「よろしい、優秀な部下を持つことが戦場を生き残る第一条件にゃ。私は恵まれておる。
これで幽霊でもルパン三世でも、袋のネズミにゃ!」
さてと。週末の金曜日。決戦の金曜日。
消灯時間前に食堂に集まる。シンジは紫に緑のラインが入ったハーフパンツにパーカー。
トウジは…いつもの黒基調のジャージだ。ケンスケは…アーミールック。
女性陣と言えば、アスカは赤のランニングウェア上下。マリはピンク。ヒカリはトウジとお揃い。
「は?あんた戦争にでもいくつもり?なんで迷彩服着てんのよ」アスカが呆れたように言う。
「これが本官の正装であります!っていうか、こんなにワクワクするイベントだもん、気合い入れるさ」
ライフル(もちろんモデルガンだが)を下げ、カメラを抱えたケンスケが一番テンションが高い。
アスカとシンジが思わず目を見合わせて笑う。
この2人にしか分からない、ちょっとした秘密がある、その事実がシンジとアスカをより親密な気持ちにさせる。
「じゃあ、最初は私とカメコ君にゃ。2時になったら黒ジャージ夫妻にゃ、」
ヒカリとトウジが顔を見合わせて頬を染める。「そんなんじゃないよ…///」というヒカリの声は
小さすぎて他の5人には届かない。
「そして明け方、4時から6時までが姫とワンコ君にゃ。当番時間以外は部屋の中で仮眠、
当番の時間は私語は当然、まばたきも厳禁にゃ!」
「…いや、私語はともかくまばたきは無理やろ」「せいぜい居眠り厳禁、ってくらいじゃないかな…」
男2人の言葉は、だがしかしマリのテンションを下げる材料にはならない。
「ふん、最近の男は軟弱にゃ。」マリは鼻で2人をあしらうと、女子寮へ続く自動ドアを開ける。
「部屋は205を特別に使えるようにしてもらったにゃ。カメラは夕方のうちにセットしたよな、カメコ君?」
「はっ、もちろんであります!動作確認もバッチリであります」
「よろしい、優秀な部下を持つことが戦場を生き残る第一条件にゃ。私は恵まれておる。
これで幽霊でもルパン三世でも、袋のネズミにゃ!」
728: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 00:14:18.05 ID:???
>>727
「狭いね…」シンジの一言を待つまでもなく、6畳ほどの1間に、男女6人。横になるスペースなどない。
「…まあ、これも良き青春の1ページってことでw」マリは気にもしない。
「あー、なんならそこのベッドに横になっていればいいにゃ。
時間になったら、お姉さんが優しく叩き起こして上げやう」ニヤリ
キラリと光るメガネと手に持つ金属バットに、眠気も吹っ飛ぶ男子2名。
「あれはヤバイ、ヤバイで…。起きるどころか永遠の眠りにつきかねん…」
「…どこからあんなもの持ってきたんだろう…」
「ほら、静かにするにゃ…」マリの言葉とほぼ同時に、廊下の照明が消える気配がする。
「いよいよスタートにゃ…」
「狭いね…」シンジの一言を待つまでもなく、6畳ほどの1間に、男女6人。横になるスペースなどない。
「…まあ、これも良き青春の1ページってことでw」マリは気にもしない。
「あー、なんならそこのベッドに横になっていればいいにゃ。
時間になったら、お姉さんが優しく叩き起こして上げやう」ニヤリ
キラリと光るメガネと手に持つ金属バットに、眠気も吹っ飛ぶ男子2名。
「あれはヤバイ、ヤバイで…。起きるどころか永遠の眠りにつきかねん…」
「…どこからあんなもの持ってきたんだろう…」
「ほら、静かにするにゃ…」マリの言葉とほぼ同時に、廊下の照明が消える気配がする。
「いよいよスタートにゃ…」
729: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 00:14:54.41 ID:???
>>728
机に置かれたモニター代わりのノートPCに釘付けになっている2人をよそに、トウジとヒカリはベッドに腰掛け、
シンジとアスカは床に持ち込みのクッションをしいて、その上に座っていた。
「そういえばさ、もし幽霊が出たら、どうするの?」シンジがマリに聞く。
「当然、追跡にゃ。出来れば生きたまま確保するにゃ。」
「幽霊って死んでるから幽霊なんやで…」トウジが突っ込む。
「そこは気合いと根性にゃ」モニターから目を離さずにマリが無茶を言う。
シンジとトウジが目を合わせて、肩をすくめる。
「ねえねえシンジ…」アスカが耳元で囁く。
「なんだかおかしいわね、お化けなんて出てくるわけないのにね。」
シンジがすっと立ち上がる。「ちょっと寒いね…」なんて言いながら、
クローゼットから毛布を取り出して、アスカに毛布をかけ、その中に自分も入って肩を寄せ合う。
ヒカリが羨ましそうな顔をする。トウジがやれやれ、と呟きながら、シンジと同じようにする。ヒカリ、満足。
毛布にくるまった状態で、シンジはアスカの手のひらに文字を書いていく。これなら誰にも分からない。
「ぼくたちがはんにんだなんて、だれもしらないしね」
アスカが手のひらに○を書く。「うん」ということらしい。
「しんじ」「なに?」「ふたりでくっついていると、あったかい」「そうだね」
「しんじ」「なに?」「あしたは、ホワイトシチューがたべたい」「わかった」
「しんじ」「なに?」「だいすき」「ぼくも」「ずっとそばにいてね」「あすかもね」
「しんじ」「なに?」「しんじといっしょにいると、あんしんする」「ありがとう」
「しんじ」「なに?」「だいすき」「さっききいたよ」「なんどでも、いいたいの」
「しんじ、だいすき」「あすか、だいすき」「しんじ、だいすき」「あすか、だいすき」
肩どころか、頬まで寄せ合って、シンジとアスカは2人の空間を満喫する。
ケンスケがその気配に気づいてシンジたちの方を向くが、
すぐに見なかったことにしようとばかりにモニターに向き直る。
心なしか、肩が震えているけど。(´・ω・`)
机に置かれたモニター代わりのノートPCに釘付けになっている2人をよそに、トウジとヒカリはベッドに腰掛け、
シンジとアスカは床に持ち込みのクッションをしいて、その上に座っていた。
「そういえばさ、もし幽霊が出たら、どうするの?」シンジがマリに聞く。
「当然、追跡にゃ。出来れば生きたまま確保するにゃ。」
「幽霊って死んでるから幽霊なんやで…」トウジが突っ込む。
「そこは気合いと根性にゃ」モニターから目を離さずにマリが無茶を言う。
シンジとトウジが目を合わせて、肩をすくめる。
「ねえねえシンジ…」アスカが耳元で囁く。
「なんだかおかしいわね、お化けなんて出てくるわけないのにね。」
シンジがすっと立ち上がる。「ちょっと寒いね…」なんて言いながら、
クローゼットから毛布を取り出して、アスカに毛布をかけ、その中に自分も入って肩を寄せ合う。
ヒカリが羨ましそうな顔をする。トウジがやれやれ、と呟きながら、シンジと同じようにする。ヒカリ、満足。
毛布にくるまった状態で、シンジはアスカの手のひらに文字を書いていく。これなら誰にも分からない。
「ぼくたちがはんにんだなんて、だれもしらないしね」
アスカが手のひらに○を書く。「うん」ということらしい。
「しんじ」「なに?」「ふたりでくっついていると、あったかい」「そうだね」
「しんじ」「なに?」「あしたは、ホワイトシチューがたべたい」「わかった」
「しんじ」「なに?」「だいすき」「ぼくも」「ずっとそばにいてね」「あすかもね」
「しんじ」「なに?」「しんじといっしょにいると、あんしんする」「ありがとう」
「しんじ」「なに?」「だいすき」「さっききいたよ」「なんどでも、いいたいの」
「しんじ、だいすき」「あすか、だいすき」「しんじ、だいすき」「あすか、だいすき」
肩どころか、頬まで寄せ合って、シンジとアスカは2人の空間を満喫する。
ケンスケがその気配に気づいてシンジたちの方を向くが、
すぐに見なかったことにしようとばかりにモニターに向き直る。
心なしか、肩が震えているけど。(´・ω・`)
730: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 00:16:10.17 ID:???
>>729
「おかしいにゃ…」マリが呟く。その声に、2組の夫婦は現実世界に引き戻される。
「どうしたの?真希波さん…」シンジが訊ねる。
「いや、もうとっくに現れてもいい時間のはずなんだけど…」モニターを睨みながら、
メガネの位置を直しながら、マリが言う。時計の針はまもなく1時。
「はん、厨房にプリンでも食べに行ったら?」アスカが冷ややかに言う。
「残念ながら、今日はもうここに用意してあるにゃ…」マリが指をパチンと鳴らす。ケンスケが
シンジとアスカを飛び越え、冷蔵庫からプリンを取り出してくる。
「あんた、太るわよ」アスカの声に「いいの、私の場合、糖分脂肪分炭水化物はみんな、胸と尻に行くから」
またスイッチが入りかかったアスカを、必死になだめるシンジ。
プリンが3つばかりマリのお腹に収まった頃、時計の針は2時を迎える。
「さあ、交代にゃ。」マリは背筋を伸ばし、思い切り伸びをしてから、トウジとヒカリに向き直る。
いつの間にか肩を寄せ合って眠っていたトウジとヒカリ。マリが2人の前まで行くと、肩を揺すって2人を起こす。
「お2人さん、交代の時間だよ。起きろ~」
その声にヒカリが目を覚まし、ついでトウジが目を覚ます。
「ふぁ、朝かいな」「何寝惚けてんのよ黒ジャージ君」「ん?ああそうやった。交代やな」
トウジとヒカリが机の前に。マリはベッドに横になり、ケンスケは「俺はちょっとトイレ」、
と言ってなぜか部屋を出たっきり…戻ってこない。(´・ω・`)
「なんやこれ、見てるだけっちゅーのは、退屈やなぁ」「鈴原、静かにして」「はいはい」
2人の様子を見て、声を立てずにクスクス笑うシンジとアスカ。
マリはいつの間にか、いびきをかいている。
「ほんと、コネメガネって親父臭いわよねぇ…」アスカが呆れたように言う。
「まあ、いいんじゃないの。僕だって疲れていればいびきかいて寝てるだろうし」
「おかしいにゃ…」マリが呟く。その声に、2組の夫婦は現実世界に引き戻される。
「どうしたの?真希波さん…」シンジが訊ねる。
「いや、もうとっくに現れてもいい時間のはずなんだけど…」モニターを睨みながら、
メガネの位置を直しながら、マリが言う。時計の針はまもなく1時。
「はん、厨房にプリンでも食べに行ったら?」アスカが冷ややかに言う。
「残念ながら、今日はもうここに用意してあるにゃ…」マリが指をパチンと鳴らす。ケンスケが
シンジとアスカを飛び越え、冷蔵庫からプリンを取り出してくる。
「あんた、太るわよ」アスカの声に「いいの、私の場合、糖分脂肪分炭水化物はみんな、胸と尻に行くから」
またスイッチが入りかかったアスカを、必死になだめるシンジ。
プリンが3つばかりマリのお腹に収まった頃、時計の針は2時を迎える。
「さあ、交代にゃ。」マリは背筋を伸ばし、思い切り伸びをしてから、トウジとヒカリに向き直る。
いつの間にか肩を寄せ合って眠っていたトウジとヒカリ。マリが2人の前まで行くと、肩を揺すって2人を起こす。
「お2人さん、交代の時間だよ。起きろ~」
その声にヒカリが目を覚まし、ついでトウジが目を覚ます。
「ふぁ、朝かいな」「何寝惚けてんのよ黒ジャージ君」「ん?ああそうやった。交代やな」
トウジとヒカリが机の前に。マリはベッドに横になり、ケンスケは「俺はちょっとトイレ」、
と言ってなぜか部屋を出たっきり…戻ってこない。(´・ω・`)
「なんやこれ、見てるだけっちゅーのは、退屈やなぁ」「鈴原、静かにして」「はいはい」
2人の様子を見て、声を立てずにクスクス笑うシンジとアスカ。
マリはいつの間にか、いびきをかいている。
「ほんと、コネメガネって親父臭いわよねぇ…」アスカが呆れたように言う。
「まあ、いいんじゃないの。僕だって疲れていればいびきかいて寝てるだろうし」
731: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 00:17:22.57 ID:???
>>730
何事も起こらぬまま、時間はじりじりと過ぎていった。
4時5分前になると、トウジは我慢できずに立ち上がる。
「すまんセンセ、もう限界や。交代交代!」
「ちょっと、鈴原、まだ時間じゃないわよ」ヒカリが止めるが、その声も聞かずにトウジは
そのまま床に寝転がり、瞬時に眠りの世界へ。
「…もう、」ヒカリがアスカに謝る。「ごめんね、まだ時間じゃないのに…」
「別に全然構わないわよ、さあシンジ、真打ちの出番よ」アスカとシンジは立ち上がる。
机のノートPCへ。この部屋のドアの向こう、二階廊下と、中庭の様子が映っている。
全く変化のない、静止画と間違えそうな映像が続いている。
「…確かに、これはヒマだわ。」開始後5分、早くもアスカが面倒臭そうに呟く。
「まあまあ、夜明けまでの我慢だよ」シンジがアスカの頭を撫でる。
気づくと、マリの隣でヒカリが、床でトウジがそのまま眠っている。
ケンスケは…行方不明(´・ω・`)
「やだもう退屈~」アスカが身をよじらせて駄々をこねる。
「まだ10分も経ってないじゃないか…」シンジも困り顔だ。と、その時、
何事も起こらぬまま、時間はじりじりと過ぎていった。
4時5分前になると、トウジは我慢できずに立ち上がる。
「すまんセンセ、もう限界や。交代交代!」
「ちょっと、鈴原、まだ時間じゃないわよ」ヒカリが止めるが、その声も聞かずにトウジは
そのまま床に寝転がり、瞬時に眠りの世界へ。
「…もう、」ヒカリがアスカに謝る。「ごめんね、まだ時間じゃないのに…」
「別に全然構わないわよ、さあシンジ、真打ちの出番よ」アスカとシンジは立ち上がる。
机のノートPCへ。この部屋のドアの向こう、二階廊下と、中庭の様子が映っている。
全く変化のない、静止画と間違えそうな映像が続いている。
「…確かに、これはヒマだわ。」開始後5分、早くもアスカが面倒臭そうに呟く。
「まあまあ、夜明けまでの我慢だよ」シンジがアスカの頭を撫でる。
気づくと、マリの隣でヒカリが、床でトウジがそのまま眠っている。
ケンスケは…行方不明(´・ω・`)
「やだもう退屈~」アスカが身をよじらせて駄々をこねる。
「まだ10分も経ってないじゃないか…」シンジも困り顔だ。と、その時、
732: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 00:18:01.44 ID:???
>>731
「…え?アスカ、これは…何?」
一瞬、廊下画面の横を何かが横切った。続いて中庭に何かがいる気配。
「え…まさか…」アスカ、顔面蒼白。
「まさか…」シンジもアスカと顔を見合わせる。
と同時に不鮮明だが影らしきものが現れる。
その影はスーッと女子寮の下から中庭を抜けて…建物の影で消えた。
「きゃあああああああああああああああああああ」
「何?何?何があったにゃ!」マリが飛び起きる。
「ででででで、出た…」アスカとシンジ、放心状態。
「ここ、中庭をすーっと影が横切ったんだよ…」シンジが冷静に説明をする。
トウジとヒカリも起き出す。状況を知り、トウジにしがみつくヒカリ。
「狙い通りにゃ。尻尾を掴んだぞ、いざ出陣にゃ!」
マリがドアを開け、非常階段に向かって駆け出す。シンジも後を追う。
アスカが「シンジ~待ってぇえええ」と涙目でシンジを追いかける。
ヒカリは…腰が抜けている。トウジは介抱、ケンスケは…行方不明のまま。
「どこにゃ、どのへんにゃ」マリが中庭に出て、幽霊の痕跡を探している。
「えっと、多分このへんから、こう通って行ったと思うよ」とシンジが説明する。
「うーん…足跡は残っていないにゃ…。晴れた日の芝生じゃ、そう残らないか…」
「…幽霊なんだから足はないんじゃないの?」アスカの突っ込みも、マリは聞いていない。
「むむむ…どこへ行った…」それこそ這いつくばんばかりにして、周囲を嗅ぎ回っている。
「…まるで犬ね」アスカが半ば呆れた様子で見ている。
「…え?アスカ、これは…何?」
一瞬、廊下画面の横を何かが横切った。続いて中庭に何かがいる気配。
「え…まさか…」アスカ、顔面蒼白。
「まさか…」シンジもアスカと顔を見合わせる。
と同時に不鮮明だが影らしきものが現れる。
その影はスーッと女子寮の下から中庭を抜けて…建物の影で消えた。
「きゃあああああああああああああああああああ」
「何?何?何があったにゃ!」マリが飛び起きる。
「ででででで、出た…」アスカとシンジ、放心状態。
「ここ、中庭をすーっと影が横切ったんだよ…」シンジが冷静に説明をする。
トウジとヒカリも起き出す。状況を知り、トウジにしがみつくヒカリ。
「狙い通りにゃ。尻尾を掴んだぞ、いざ出陣にゃ!」
マリがドアを開け、非常階段に向かって駆け出す。シンジも後を追う。
アスカが「シンジ~待ってぇえええ」と涙目でシンジを追いかける。
ヒカリは…腰が抜けている。トウジは介抱、ケンスケは…行方不明のまま。
「どこにゃ、どのへんにゃ」マリが中庭に出て、幽霊の痕跡を探している。
「えっと、多分このへんから、こう通って行ったと思うよ」とシンジが説明する。
「うーん…足跡は残っていないにゃ…。晴れた日の芝生じゃ、そう残らないか…」
「…幽霊なんだから足はないんじゃないの?」アスカの突っ込みも、マリは聞いていない。
「むむむ…どこへ行った…」それこそ這いつくばんばかりにして、周囲を嗅ぎ回っている。
「…まるで犬ね」アスカが半ば呆れた様子で見ている。
736: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 23:58:49.26 ID:???
>>732
カチャ
「きゃっ!今、なんか音したよね?」アスカがシンジにしがみつく。
「ドアの音だよ…」シンジが男子寮の非常階段に近づく。「あれ?なんだこれ?」
その声にマリとアスカが近づく。シンジが拾い上げたもの…
「羽?」「…うん。鳥の羽みたい」
カラスではなく、ハトでもなさそうだ。「なんだろうこれって…」
「うわっ」シンジが突然声を上げる。
「何?どうしたの?」
「…いや、ドアを開けようとしたら、ここが濡れていたんだ」
シンジが指さした先、ドアノブは、確かに濡れていた。
「晴れてるのに?」「うん。」「一体誰が…」アスカとマリが思わず顔を見合わせる。
「行ってみよう」シンジがドアを開ける。マリとアスカが続く。
男子寮女子寮とも、1階は大浴場と洗濯場、それと食堂へと続くラウンジがある。
シンジは順番に侵入者がいないか、確認をしていく。まだ暗い明け方の廊下に一斉にライトが点く。
「あ、あれ!」アスカが指差した先で、動くものがある。シンジが飛び出していく。
そこは食堂の入り口。
食堂はまだ無人で、朝食を作るおばちゃんも、まだ来ていない。
テーブルの下や生徒用のキッチンもくまなく探したが、誰かがいる、もしくは居た様子はなかった。
「…ねぇ、やっぱり…これって…」アスカの膝がガタガタ言っている。
「うーん、ワクワクするなぁ、クライマックスな匂いがするぞ~」マリはウキウキ。
残るは厨房だ。
厨房への扉を開けようとするシンジ。「あ!」シンジがしゃがみこむ。
「何?どうしたワンコ君!」マリがシンジの背後からのぞき込む。
「ここにも」とシンジが拾い上げたものは、鳥の羽。
3人で顔を見合わせ、頷きあう。「せーの!」バァン
扉を開く。クェッ
「あっちだ!」シンジが冷蔵庫に向かって走り出す。後を追う女子2人組。
厨房の隅にある業務用冷蔵庫の前まで来て、シンジが立ちすくむ。
「何?何?」こわごわとシンジの後ろから前を窺うアスカとマリ。
そこにいたのは…
カチャ
「きゃっ!今、なんか音したよね?」アスカがシンジにしがみつく。
「ドアの音だよ…」シンジが男子寮の非常階段に近づく。「あれ?なんだこれ?」
その声にマリとアスカが近づく。シンジが拾い上げたもの…
「羽?」「…うん。鳥の羽みたい」
カラスではなく、ハトでもなさそうだ。「なんだろうこれって…」
「うわっ」シンジが突然声を上げる。
「何?どうしたの?」
「…いや、ドアを開けようとしたら、ここが濡れていたんだ」
シンジが指さした先、ドアノブは、確かに濡れていた。
「晴れてるのに?」「うん。」「一体誰が…」アスカとマリが思わず顔を見合わせる。
「行ってみよう」シンジがドアを開ける。マリとアスカが続く。
男子寮女子寮とも、1階は大浴場と洗濯場、それと食堂へと続くラウンジがある。
シンジは順番に侵入者がいないか、確認をしていく。まだ暗い明け方の廊下に一斉にライトが点く。
「あ、あれ!」アスカが指差した先で、動くものがある。シンジが飛び出していく。
そこは食堂の入り口。
食堂はまだ無人で、朝食を作るおばちゃんも、まだ来ていない。
テーブルの下や生徒用のキッチンもくまなく探したが、誰かがいる、もしくは居た様子はなかった。
「…ねぇ、やっぱり…これって…」アスカの膝がガタガタ言っている。
「うーん、ワクワクするなぁ、クライマックスな匂いがするぞ~」マリはウキウキ。
残るは厨房だ。
厨房への扉を開けようとするシンジ。「あ!」シンジがしゃがみこむ。
「何?どうしたワンコ君!」マリがシンジの背後からのぞき込む。
「ここにも」とシンジが拾い上げたものは、鳥の羽。
3人で顔を見合わせ、頷きあう。「せーの!」バァン
扉を開く。クェッ
「あっちだ!」シンジが冷蔵庫に向かって走り出す。後を追う女子2人組。
厨房の隅にある業務用冷蔵庫の前まで来て、シンジが立ちすくむ。
「何?何?」こわごわとシンジの後ろから前を窺うアスカとマリ。
そこにいたのは…
737: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/25(金) 23:59:45.28 ID:???
>>736
「なんでペンギンがここにいるのよ?!?!?」クェックク
目の前にいたのは、身長が60cmほどのペンギン。冷蔵庫を開けて、夢中で中の食べ物を漁っている。
「…器用だなぁ…」シンジが半ば感心したようにペンギンを見つめている。
そのペンギンの足下には、封の開いたレトルト食品や、空になったプリンの容器が転がっている。
「に゛ゃっ!」マリが素っ頓狂な声を上げる。「あれは、私のプリン!」
ペンギンはマリを一瞥すると、口を大きく開けて欠伸をする。そして、シンジに気づく。
クエッ!!!「え?」
ペンギンが突如、シンジに向かって突進してくる。後ろにアスカとマリがいるシンジは避けきれない。
ズドーンドンガラガッシャーン
「ちょっ!シンジ大丈夫?」「ワンコ君、無事かにゃ?」
「ぶ、無事だけど…なんだぁ、このペンギン?!」シンジが目を白黒させている。
それもそのはず、なぜかそのペンギンはシンジに抱きついて頬ずりをしている。
まるで何年も会えなかった自分のご主人様に出会えた犬のよう。
「…シンジの前世ってペンギンだったの?」「知らないよ!」「また妙に好かれてるにゃ~」
「そもそもなんでこんなところにペンギンがいるんだよぉぉぉおおぉぉ」ペギー
「あ、そのペンギン…」ようやく追いついてきたヒカリがその様子を見るなり言う。
「この前ニュースでやっていたわ。閉鎖された動物園からペンギンが一匹逃げ出した、って。」
「いつの話しよ?」アスカがヒカリに訊ねる。
「この前…多分私がアスカに幽霊の話を初めてした時のこと、覚えてる?ラウンジで。」
アスカはその時のことを思い出す。シーンとなった背後から流れていたニュース…。
「あ…、確かにそんなこと言ってた気がするわ」
「きっと、近くに隠れていたんだね…」シンジが立ち上がる。ペンギンはシンジの足下にくっついている。
「なんでペンギンがここにいるのよ?!?!?」クェックク
目の前にいたのは、身長が60cmほどのペンギン。冷蔵庫を開けて、夢中で中の食べ物を漁っている。
「…器用だなぁ…」シンジが半ば感心したようにペンギンを見つめている。
そのペンギンの足下には、封の開いたレトルト食品や、空になったプリンの容器が転がっている。
「に゛ゃっ!」マリが素っ頓狂な声を上げる。「あれは、私のプリン!」
ペンギンはマリを一瞥すると、口を大きく開けて欠伸をする。そして、シンジに気づく。
クエッ!!!「え?」
ペンギンが突如、シンジに向かって突進してくる。後ろにアスカとマリがいるシンジは避けきれない。
ズドーンドンガラガッシャーン
「ちょっ!シンジ大丈夫?」「ワンコ君、無事かにゃ?」
「ぶ、無事だけど…なんだぁ、このペンギン?!」シンジが目を白黒させている。
それもそのはず、なぜかそのペンギンはシンジに抱きついて頬ずりをしている。
まるで何年も会えなかった自分のご主人様に出会えた犬のよう。
「…シンジの前世ってペンギンだったの?」「知らないよ!」「また妙に好かれてるにゃ~」
「そもそもなんでこんなところにペンギンがいるんだよぉぉぉおおぉぉ」ペギー
「あ、そのペンギン…」ようやく追いついてきたヒカリがその様子を見るなり言う。
「この前ニュースでやっていたわ。閉鎖された動物園からペンギンが一匹逃げ出した、って。」
「いつの話しよ?」アスカがヒカリに訊ねる。
「この前…多分私がアスカに幽霊の話を初めてした時のこと、覚えてる?ラウンジで。」
アスカはその時のことを思い出す。シーンとなった背後から流れていたニュース…。
「あ…、確かにそんなこと言ってた気がするわ」
「きっと、近くに隠れていたんだね…」シンジが立ち上がる。ペンギンはシンジの足下にくっついている。
738: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/26(土) 00:00:48.07 ID:???
>>737
「人を怖がらないのね…」アスカの声に反応するペンギン。
「あら、可愛い」ナデナデ「アスカにも懐いてるわね…」「ヒカリも触ってみたら?」
「えー怖いよ…」ナデナデ「♪」「お、」「喜んでるよ」「ほんまや」「わ、私も触りたいにゃ」
しばし時を忘れてペンギンと戯れる5人。
「でも、どうする?これって知らせないとダメだよね?」
「ね…でもこういうのって、どこに知らせるの?」「そんなん知らんがな」「役所じゃね?」
「でも…知らせたとして、この子はどうなるの?」
ヒカリの一言に、全員が黙り込む。
「引取先が見つかればええが…最悪は…保健所行きやな」トウジが呟く。
「ひどい!それだけはダメよ」「ダメにゃ!」アスカとマリが同時に叫ぶ。
「でも…どうするんだよこれ…」足にしがみつくペンギンに、少々困り顔のシンジ。
「そうだ、シンジ、このペンギン、ここで飼いなさい!」ビシッ
「無茶言うなよアスカ、そもそもペンギンの飼い方なんて、僕知らないよ…」トホホ
「とりあえず、先生に相談した方が…」ヒカリがおずおずと言う。
「今日の宿直当番って誰や?」「…ミサトだわ」
「葛城先生か…学院一、話がわかる先生にゃ、相談してみるべし!」
マリがそう言った後、続けてこう言った。
「そういえば、カメコ君はどこへ行ったにゃ?」
ケンスケがあまりの居心地の悪さに、肩をふるわせて自室に戻って不貞寝していることを、この段階では誰も知らない。
「人を怖がらないのね…」アスカの声に反応するペンギン。
「あら、可愛い」ナデナデ「アスカにも懐いてるわね…」「ヒカリも触ってみたら?」
「えー怖いよ…」ナデナデ「♪」「お、」「喜んでるよ」「ほんまや」「わ、私も触りたいにゃ」
しばし時を忘れてペンギンと戯れる5人。
「でも、どうする?これって知らせないとダメだよね?」
「ね…でもこういうのって、どこに知らせるの?」「そんなん知らんがな」「役所じゃね?」
「でも…知らせたとして、この子はどうなるの?」
ヒカリの一言に、全員が黙り込む。
「引取先が見つかればええが…最悪は…保健所行きやな」トウジが呟く。
「ひどい!それだけはダメよ」「ダメにゃ!」アスカとマリが同時に叫ぶ。
「でも…どうするんだよこれ…」足にしがみつくペンギンに、少々困り顔のシンジ。
「そうだ、シンジ、このペンギン、ここで飼いなさい!」ビシッ
「無茶言うなよアスカ、そもそもペンギンの飼い方なんて、僕知らないよ…」トホホ
「とりあえず、先生に相談した方が…」ヒカリがおずおずと言う。
「今日の宿直当番って誰や?」「…ミサトだわ」
「葛城先生か…学院一、話がわかる先生にゃ、相談してみるべし!」
マリがそう言った後、続けてこう言った。
「そういえば、カメコ君はどこへ行ったにゃ?」
ケンスケがあまりの居心地の悪さに、肩をふるわせて自室に戻って不貞寝していることを、この段階では誰も知らない。
739: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/26(土) 00:01:28.63 ID:???
>>738
「ちょっとぉ、何こんな朝早くからぁ…」寝惚け眼のミサト先生が食堂に現れたのは、それから10分後。
「ちょ…ミサト、酒臭いわよ…」アスカが顔をしかめる。
「っさいわねぇ、いいじゃない、明日休みなんだしちょっとくらい飲んだってさ…」ボリボリ
ミサトは頭をかきながら、シンジの前に立つ。
クェッ!!!
「で、何?何が見つかったってぇぇぇぇぇえええええええええええええええ」ドサッ
「え?」「ミサト!大丈夫?」「葛城先生大丈夫かにゃ?」「ちょっ、何が起きたん?」
それは、一瞬の出来事。さっきまでシンジの足下から離れなかったペンギンが、ミサトの姿を見るやいなや、
叫び声を上げて彼女に抱きついたのだ。その姿は、まるで三千里を旅した末に母に出会ったマルコのよう。
「ちょっと…」「え?」「嘘…」「ほんまかいな…」「このペンギン…」
「泣いてる…」(一同)
シンジたちが見たものは、ミサトに抱きつき、嗚咽するペンギンの姿。
「…ミサト、あんた前世でこのペンギンと夫婦かなんかだったんじゃない?」
ミサトは倒れ込んだまま、半分呆然としながらも、抱きついてきたペンギンの頭を、優しく撫でるのであった…。
「なんか、すっごく懐かしい気がするんだけど…気のせいかしら?」
「ちょっとぉ、何こんな朝早くからぁ…」寝惚け眼のミサト先生が食堂に現れたのは、それから10分後。
「ちょ…ミサト、酒臭いわよ…」アスカが顔をしかめる。
「っさいわねぇ、いいじゃない、明日休みなんだしちょっとくらい飲んだってさ…」ボリボリ
ミサトは頭をかきながら、シンジの前に立つ。
クェッ!!!
「で、何?何が見つかったってぇぇぇぇぇえええええええええええええええ」ドサッ
「え?」「ミサト!大丈夫?」「葛城先生大丈夫かにゃ?」「ちょっ、何が起きたん?」
それは、一瞬の出来事。さっきまでシンジの足下から離れなかったペンギンが、ミサトの姿を見るやいなや、
叫び声を上げて彼女に抱きついたのだ。その姿は、まるで三千里を旅した末に母に出会ったマルコのよう。
「ちょっと…」「え?」「嘘…」「ほんまかいな…」「このペンギン…」
「泣いてる…」(一同)
シンジたちが見たものは、ミサトに抱きつき、嗚咽するペンギンの姿。
「…ミサト、あんた前世でこのペンギンと夫婦かなんかだったんじゃない?」
ミサトは倒れ込んだまま、半分呆然としながらも、抱きついてきたペンギンの頭を、優しく撫でるのであった…。
「なんか、すっごく懐かしい気がするんだけど…気のせいかしら?」
740: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/26(土) 00:02:45.99 ID:???
>>739
「…まぁ、こうなるとしゃーないわよねぇ…。ここでこの子を保健所送りなんかにしたら、
女がすたるってもんだわさ、」
食堂と厨房を急いで片付けて、みんなの目に触れないように宿直室までやってきた6人+1匹。
「じゃあミサト、」アスカが目を輝かせる。
「うちにくるかい?ペンペン」ミサトがペンギンの頭を撫でながら、そう言う。
クエーッ
羽をパタパタさせて喜ぶペンギン。
「このペンギン、ペンペンって言うんですか?」シンジがミサトに尋ねる。
「ん?いや、思わず出てきた名前なんだけど…まあいっか、ペンペンで。可愛いしw」
「それにしても、幽霊がペンギンだったなんてねぇ…」ヒカリが信じられない、といった感じで首を振る。
時刻は午前10時。ミサトはペンペンをこっそりクルマに乗せて帰って行った。
今は、反省会と称して食堂でお茶をしている6人組。
「おまけに空き部屋の冷蔵庫を住処にしてたなんてね…」「器用すぎるやろあのペンギン」
「確かに、ドアや冷蔵庫開けたり、レトルトの封切ったりプリン食べたりしてたわよね…」
「テレビに出せば一儲けできるにゃw」「でもそれやると、保健所が飛んでくるんじゃない?」
「むー…そうかも」和気藹々と話し込む5人。
1人凹んでいるケンスケ「…我慢して残ってれば良かった」ショボン
「そのうちミサト先生の家に遊びに行けばええねん。落ち込むなやケンスケ」バシン
「落ち込んでるのはそのせいだけじゃないんだけどな…」ボソッ
「は?何か言うたか?」「いやいや何も」(´・ω・`)
「…まぁ、こうなるとしゃーないわよねぇ…。ここでこの子を保健所送りなんかにしたら、
女がすたるってもんだわさ、」
食堂と厨房を急いで片付けて、みんなの目に触れないように宿直室までやってきた6人+1匹。
「じゃあミサト、」アスカが目を輝かせる。
「うちにくるかい?ペンペン」ミサトがペンギンの頭を撫でながら、そう言う。
クエーッ
羽をパタパタさせて喜ぶペンギン。
「このペンギン、ペンペンって言うんですか?」シンジがミサトに尋ねる。
「ん?いや、思わず出てきた名前なんだけど…まあいっか、ペンペンで。可愛いしw」
「それにしても、幽霊がペンギンだったなんてねぇ…」ヒカリが信じられない、といった感じで首を振る。
時刻は午前10時。ミサトはペンペンをこっそりクルマに乗せて帰って行った。
今は、反省会と称して食堂でお茶をしている6人組。
「おまけに空き部屋の冷蔵庫を住処にしてたなんてね…」「器用すぎるやろあのペンギン」
「確かに、ドアや冷蔵庫開けたり、レトルトの封切ったりプリン食べたりしてたわよね…」
「テレビに出せば一儲けできるにゃw」「でもそれやると、保健所が飛んでくるんじゃない?」
「むー…そうかも」和気藹々と話し込む5人。
1人凹んでいるケンスケ「…我慢して残ってれば良かった」ショボン
「そのうちミサト先生の家に遊びに行けばええねん。落ち込むなやケンスケ」バシン
「落ち込んでるのはそのせいだけじゃないんだけどな…」ボソッ
「は?何か言うたか?」「いやいや何も」(´・ω・`)
741: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/26(土) 00:03:20.07 ID:???
>>740
「んー見事に解決したように見えるけど…何か腑に落ちないにゃ…」ズズズ・・・
「な、何が腑に落ちないのよ?」ドキッとした表情を必死に隠しながらアスカが言う。
「ぷはぁ、このアールグレイ、美味しいにゃぁ。さすがワンコ君、」
「真希波さん、アスカが」「ん?」「アスカが、質問に答えて、って顔してますよ」
「ん?あぁ、めんごめんご、いや、ね、私が初めて幽霊を見たのって、ペンペン君が
逃げ出す前だった気がするんだけどなぁ…」
「!」
「え、ま、真希波さん、多分それは動物園が閉園しちゃって、ペンペンが逃げ出したことに
気づくのが遅くなったせいなんじゃ…ない…かな…?」
「ん…そうかもしんないけど…私が見た影って、もっとおっきかったんだよな…、
そう、ちょうどワンコ君くらいの背格好でさ、」ブハッ
「うわっ、アスカどうしたの?」
「ごめ…ちょっとむせちゃって」ゴホゴホ
「ん~なんかわざとらしいにゃ…、まさか、ひょっとして、あの影は本当にワンコ君?」
ガタッ「ま、まさかそんなことあるわけ」
「なんで姫がそんなに慌てるにゃ。なんか怪しいなぁ…」ニヤリ
「あ、あんた、バカぁ?そんなこと、あり得ないでしょ!」
「あり得るかあり得ないかは姫が決めることではないにゃりよ」ニヤニヤ
「だいたい何よ、あんたあんなアラレもない格好でふんぞり返って爆睡しててさ、男子の前で
恥ずかしくないの?」
「ん?ワンコ君の前なら…恥ずかしくないにゃ。むしろ本当の私を見てて欲しいくらいにゃ///」ブッ
「このエロ!何流し目でシンジのこと誘惑してんのよ!」「してないにゃ」「してたわよ」
「それはそう感じる姫の潜在意識の問題にゃ。姫も相当溜まってんじゃにゃいにょ?」
「畜生!頭にきた!ぶっ殺す!」ムキー「ヤバイ、生命の危機を感じるにゃ。逃げるにゃ!」スタコラ
「んー見事に解決したように見えるけど…何か腑に落ちないにゃ…」ズズズ・・・
「な、何が腑に落ちないのよ?」ドキッとした表情を必死に隠しながらアスカが言う。
「ぷはぁ、このアールグレイ、美味しいにゃぁ。さすがワンコ君、」
「真希波さん、アスカが」「ん?」「アスカが、質問に答えて、って顔してますよ」
「ん?あぁ、めんごめんご、いや、ね、私が初めて幽霊を見たのって、ペンペン君が
逃げ出す前だった気がするんだけどなぁ…」
「!」
「え、ま、真希波さん、多分それは動物園が閉園しちゃって、ペンペンが逃げ出したことに
気づくのが遅くなったせいなんじゃ…ない…かな…?」
「ん…そうかもしんないけど…私が見た影って、もっとおっきかったんだよな…、
そう、ちょうどワンコ君くらいの背格好でさ、」ブハッ
「うわっ、アスカどうしたの?」
「ごめ…ちょっとむせちゃって」ゴホゴホ
「ん~なんかわざとらしいにゃ…、まさか、ひょっとして、あの影は本当にワンコ君?」
ガタッ「ま、まさかそんなことあるわけ」
「なんで姫がそんなに慌てるにゃ。なんか怪しいなぁ…」ニヤリ
「あ、あんた、バカぁ?そんなこと、あり得ないでしょ!」
「あり得るかあり得ないかは姫が決めることではないにゃりよ」ニヤニヤ
「だいたい何よ、あんたあんなアラレもない格好でふんぞり返って爆睡しててさ、男子の前で
恥ずかしくないの?」
「ん?ワンコ君の前なら…恥ずかしくないにゃ。むしろ本当の私を見てて欲しいくらいにゃ///」ブッ
「このエロ!何流し目でシンジのこと誘惑してんのよ!」「してないにゃ」「してたわよ」
「それはそう感じる姫の潜在意識の問題にゃ。姫も相当溜まってんじゃにゃいにょ?」
「畜生!頭にきた!ぶっ殺す!」ムキー「ヤバイ、生命の危機を感じるにゃ。逃げるにゃ!」スタコラ
742: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/26(土) 00:04:03.67 ID:???
>>741
「…ねぇ碇君、」「何?委員長」
「碇君ってすごいわよね…。あの2人の相手するの、疲れたりしないの?」
「え…特に疲れたりはしないかな。慣れてくるとなかなか楽しいもんだよ」
「…偉いわセンセ…わしゃそういう境地にはなれんw」
「うーん…ああ見えて、あの2人、すごく似てるんだよね」「似てる?」「うん、」
「どこがどう似てんねん?どっからどうみても水と油、猿と犬の仲みたいやで?」
「いや、そう見えるのはあの2人がお互いに素直じゃないからなんだと思うんだよね…。
ほら、同族嫌悪ってあるじゃない?あんな感じだと思うんだ」
「…」
「アスカの事はよく分かるけど、真希波さんもそれに近い感じがするんだよ。
いつもおちゃらけたキャラやってるけど、あれは演じているだけで、本当は心の中に
恐がりだけどプライドの高い、小さな女の子がいるような、そんな気がするんだ。」
「…」感心したように目を合わすヒカリとトウジ。
「ああ見えて、だからあの2人は結構仲良くやってるんだと思うよ」
「(碇君、やっぱりあなた、スゴイわ)」「(わしゃ真似できんし、真似したいとも思わん)」
「シンジ!腹立ったからヤケ食いよ!今からケーキバイキング行くわよ!」
「えー?そんなお金ないよ…」「うるさい!あんたあたしの彼氏でしょ、付き合いなさいよ!」「はいはい」ガタッ
「…いっちまいおったで」「…やっぱりスゴイわ」「ああ、惣流の言うこと黙って聞いとるようで、
実はうまくコントロールしとるよな…」
「…」「なんやその目は?」「なんでもない」クスッ
「…ねぇ碇君、」「何?委員長」
「碇君ってすごいわよね…。あの2人の相手するの、疲れたりしないの?」
「え…特に疲れたりはしないかな。慣れてくるとなかなか楽しいもんだよ」
「…偉いわセンセ…わしゃそういう境地にはなれんw」
「うーん…ああ見えて、あの2人、すごく似てるんだよね」「似てる?」「うん、」
「どこがどう似てんねん?どっからどうみても水と油、猿と犬の仲みたいやで?」
「いや、そう見えるのはあの2人がお互いに素直じゃないからなんだと思うんだよね…。
ほら、同族嫌悪ってあるじゃない?あんな感じだと思うんだ」
「…」
「アスカの事はよく分かるけど、真希波さんもそれに近い感じがするんだよ。
いつもおちゃらけたキャラやってるけど、あれは演じているだけで、本当は心の中に
恐がりだけどプライドの高い、小さな女の子がいるような、そんな気がするんだ。」
「…」感心したように目を合わすヒカリとトウジ。
「ああ見えて、だからあの2人は結構仲良くやってるんだと思うよ」
「(碇君、やっぱりあなた、スゴイわ)」「(わしゃ真似できんし、真似したいとも思わん)」
「シンジ!腹立ったからヤケ食いよ!今からケーキバイキング行くわよ!」
「えー?そんなお金ないよ…」「うるさい!あんたあたしの彼氏でしょ、付き合いなさいよ!」「はいはい」ガタッ
「…いっちまいおったで」「…やっぱりスゴイわ」「ああ、惣流の言うこと黙って聞いとるようで、
実はうまくコントロールしとるよな…」
「…」「なんやその目は?」「なんでもない」クスッ
743: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/26(土) 00:04:45.83 ID:???
>>742
ガラッ「あれ?姫とワンコ君は?」「なんか、ケーキバイキングに行くって」「なぬ?!しまったぁぁあ」orz
「何もそこまで落ち込まんでもええやんけ…」
「うーん…似てる?」「ワイには分からん」2人がこそこそと話すのを聞きつけるマリ。
「ん?何かにゃ?」
「あ…えっとね、碇君がさっきね、真希波さんとアスカが良く似てるって言ってたのよ」
「え…?」「なんかね、お互いに素直になれないところとか、心の中に怖がりでプライドの
高い小さな女の子がいるところとか、良く似てるって。」
「ワンコ君がそんな事言ってたの…?そっかぁワンコ君は何でもお見通しだにゃ」
「あれ?どうしたの真希波さん、」「ん?眠くなったから、部屋帰って寝るにゃ、おやすみ~」
てぺてぺと歩くマリの後ろ姿がドアの向こう側に消えていく。
「…私、何か変な事言っちゃったかな…?」「気にせんといてええんとちゃうか。それよか、腹減ったわ」
ガラッ「あれ?姫とワンコ君は?」「なんか、ケーキバイキングに行くって」「なぬ?!しまったぁぁあ」orz
「何もそこまで落ち込まんでもええやんけ…」
「うーん…似てる?」「ワイには分からん」2人がこそこそと話すのを聞きつけるマリ。
「ん?何かにゃ?」
「あ…えっとね、碇君がさっきね、真希波さんとアスカが良く似てるって言ってたのよ」
「え…?」「なんかね、お互いに素直になれないところとか、心の中に怖がりでプライドの
高い小さな女の子がいるところとか、良く似てるって。」
「ワンコ君がそんな事言ってたの…?そっかぁワンコ君は何でもお見通しだにゃ」
「あれ?どうしたの真希波さん、」「ん?眠くなったから、部屋帰って寝るにゃ、おやすみ~」
てぺてぺと歩くマリの後ろ姿がドアの向こう側に消えていく。
「…私、何か変な事言っちゃったかな…?」「気にせんといてええんとちゃうか。それよか、腹減ったわ」
747: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 00:58:21.17 ID:???
>>743
その日の夜。女子大浴場。
「はぁ…疲れたわ。今日は朝から大変だったもんねぇ…」
消灯時間間際の入浴。元々入寮生も少なく、女子大浴場は実質貸し切りのことが多いのだが、
この時間帯になると、さらにその傾向は強まる。というか、入寮してからこのかた、
この時間帯はアスカ以外の生徒がいたことがない、実質占有状態だ。
その分のんびりとお湯に浸かれるし、周りの子に気兼ねすることもなく身体を洗ったりも出来る。
「ん?」
アスカの視界にぼんやりとだが、人影が入る。珍しい、誰かがいる。それでも浴場の端と端。
アスカはあまり気にせずに、椅子に腰掛けて、頭からシャワーのお湯を浴びる。
適温。身体から疲れがお湯に溶けていくようだ。
シャンプー、コンディショナーときて、ボディソープに手を伸ばしたその時、アスカは気配を感じる。
カラリ、という音と共に誰かが隣に座る気配。さっきの子だ。
衝立があって、直接姿が見えるわけではないが、アスカはいぶかしげに、隣にいるであろう
自らのテリトリーへの侵入者に鋭い視線を浴びせる。
「ひーめ、」マリだ。
「なんだ、コネメガネか。何よ、何の用?」
「ん、今日はお疲れ様。しかし相変わらず冷たいね。姫を待っていたというのに。」
「あたしには何の用もないわ。今忙しいんだけど。」
「ああ、手を止めずにそのまま聞いてくれるだけでいいから。ちょっと…いいかな?」
猫語なしのマリの言葉に、ちょっとした不気味さを感じながら、アスカは構わず身体を洗い出す。
「ワンコ君のことなんだけどさぁ、」「ダメよ絶対ダメ」
「…まだ何も言ってないんだけど(^_^;;;」
「言わなくても分かるわよ。そもそもシンジのこと、犬呼ばわりしないでくれる?」
「ん、だって、彼、子犬みたいな目をしてるんだもの。それに、姫の飼い犬みたいだし。」
「は?こんなところに来てまで喧嘩売ってんの?」「いやいやいや、そうじゃなくて」
「じゃあなんなのよ」
「ん、…まあそんな、イライラしないで聞いてよ」
その日の夜。女子大浴場。
「はぁ…疲れたわ。今日は朝から大変だったもんねぇ…」
消灯時間間際の入浴。元々入寮生も少なく、女子大浴場は実質貸し切りのことが多いのだが、
この時間帯になると、さらにその傾向は強まる。というか、入寮してからこのかた、
この時間帯はアスカ以外の生徒がいたことがない、実質占有状態だ。
その分のんびりとお湯に浸かれるし、周りの子に気兼ねすることもなく身体を洗ったりも出来る。
「ん?」
アスカの視界にぼんやりとだが、人影が入る。珍しい、誰かがいる。それでも浴場の端と端。
アスカはあまり気にせずに、椅子に腰掛けて、頭からシャワーのお湯を浴びる。
適温。身体から疲れがお湯に溶けていくようだ。
シャンプー、コンディショナーときて、ボディソープに手を伸ばしたその時、アスカは気配を感じる。
カラリ、という音と共に誰かが隣に座る気配。さっきの子だ。
衝立があって、直接姿が見えるわけではないが、アスカはいぶかしげに、隣にいるであろう
自らのテリトリーへの侵入者に鋭い視線を浴びせる。
「ひーめ、」マリだ。
「なんだ、コネメガネか。何よ、何の用?」
「ん、今日はお疲れ様。しかし相変わらず冷たいね。姫を待っていたというのに。」
「あたしには何の用もないわ。今忙しいんだけど。」
「ああ、手を止めずにそのまま聞いてくれるだけでいいから。ちょっと…いいかな?」
猫語なしのマリの言葉に、ちょっとした不気味さを感じながら、アスカは構わず身体を洗い出す。
「ワンコ君のことなんだけどさぁ、」「ダメよ絶対ダメ」
「…まだ何も言ってないんだけど(^_^;;;」
「言わなくても分かるわよ。そもそもシンジのこと、犬呼ばわりしないでくれる?」
「ん、だって、彼、子犬みたいな目をしてるんだもの。それに、姫の飼い犬みたいだし。」
「は?こんなところに来てまで喧嘩売ってんの?」「いやいやいや、そうじゃなくて」
「じゃあなんなのよ」
「ん、…まあそんな、イライラしないで聞いてよ」
748: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 01:00:31.18 ID:???
>>747
いつもとは違うマリの口調に、シャワーコックを捻ろうとした手を一端止めて、アスカはマリの方を見る。
衝立の向こうにほんの僅かに頭が見える。
「まあ、結論から言えば、私は姫に謝らなくちゃいけない。ワンコ君にちょっかい出していたのは事実だもの。
そしてその理由は姫が思っている通りなんだもの。」
沈黙。そしてシャワーを出す音。
「…」「え?何?聞こえない」マリが衝立越しにアスカに言う。
「知ってたわ」
水音の中から、それだけの単語を、そしてその意味を汲み取るのにマリは少しばかり苦労をする。
アスカにしては、か細い声。
「私、姫とワンコ君と3人で仲良くなりたかった。ワンコ君のあの優しさは…
正直姫にはもったいないくらいだと思ったし、私にもその優しさがほんの少しだけでも…
一瞬でもいいから振り向いてくれたらな…、って」
「うん、だから?」アスカが続きを促す。
「…だから、」続きの言葉が出てこない。
「何よ、言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」
アスカの苛ついた言葉には返事をせず、マリは立ち上がると湯船にざぶんと飛び込む。
「ふぅぁああぁ~、極楽極楽w」
「ちょっとあんた、ふざけてる場合じゃないでしょ!」アスカが振り向く。
マリは背を向けて、畳んだタオルを頭の上に乗せている。その姿を見て、思わずアスカが吹き出す。
「何よその親父臭い格好はwww」
沈黙。その重苦しい雰囲気に、アスカの笑い声も消える。
いつもとは違うマリの口調に、シャワーコックを捻ろうとした手を一端止めて、アスカはマリの方を見る。
衝立の向こうにほんの僅かに頭が見える。
「まあ、結論から言えば、私は姫に謝らなくちゃいけない。ワンコ君にちょっかい出していたのは事実だもの。
そしてその理由は姫が思っている通りなんだもの。」
沈黙。そしてシャワーを出す音。
「…」「え?何?聞こえない」マリが衝立越しにアスカに言う。
「知ってたわ」
水音の中から、それだけの単語を、そしてその意味を汲み取るのにマリは少しばかり苦労をする。
アスカにしては、か細い声。
「私、姫とワンコ君と3人で仲良くなりたかった。ワンコ君のあの優しさは…
正直姫にはもったいないくらいだと思ったし、私にもその優しさがほんの少しだけでも…
一瞬でもいいから振り向いてくれたらな…、って」
「うん、だから?」アスカが続きを促す。
「…だから、」続きの言葉が出てこない。
「何よ、言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ」
アスカの苛ついた言葉には返事をせず、マリは立ち上がると湯船にざぶんと飛び込む。
「ふぅぁああぁ~、極楽極楽w」
「ちょっとあんた、ふざけてる場合じゃないでしょ!」アスカが振り向く。
マリは背を向けて、畳んだタオルを頭の上に乗せている。その姿を見て、思わずアスカが吹き出す。
「何よその親父臭い格好はwww」
沈黙。その重苦しい雰囲気に、アスカの笑い声も消える。
749: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 01:01:44.32 ID:???
>>748
「いいんだよ、笑ってよ。ほんと、お笑いぐさなんだからさ、」マリが言う。
「…あんた、泣いてるの?」「まさか」鼻をすすりながら、マリ。
「あんだけ、オトナのオンナ気取ってさ、でも本当は怖くってさ、バカみたいだよ。
影じゃビッチだの援交顔だの言われてるけどさ、まだこのカラダはキレイなまんまなんだよ、
信じられる?このひねくれた性格が災いしてさ、誰も寄りついて来やしないさ。
寄ってくるのはカラダ目当ての盛った犬ばっか。そんなのはこっちから蹴飛ばしてやる」
「…」アスカは思う。今まで気づかなかったけど、マリって、自分に似ている。
素直になれない自分とマリ、外に顕れるものは違っていても、内面は同じ色で出来ているのかもしれない。
「でもね、ワンコ君は違った。初めてワンコ君と話した時、彼は私のありのままを受け入れてくれた。
変人扱いもせず、下心も何もなくただ純粋に、微笑んでくれた。彼は私の王子様だと思った。
でも既にそこには姫がいて…、悔しいけど、王子様とお姫様の最高のカップルじゃん。
…私は…そこに入りたかった。家来でも友人枠でもなんでもいい、王子様に近づいてみたかった。
目を合わせて、笑いあってみたかった。だから、王子様をワンコ君と呼び、色々ちょっかい出してみた。
ガキだよね、保育園児レベルだよね…、でもそのくらいしか、出来なかった。」
「あんた…」アスカが何か言おうとする。でも、次の言葉が出てこない。
「これ、姫は知らないと思うんだけどさ、夏休み前くらいかな?ワンコ君捕まえてさ、
思い切って言ってみたんだよ、水臭いな、同じ寮生同士、真希波さんじゃなくて、マリでいいよ、って。」
「…知らなかった」アスカが呟く。
「もうさ、こっちはドッキドキだよ。でさ、そうしたら、ワンコ君は何て言ったと思う?」
「…」
アスカは答えない。答えられない。再びマリに背を向けて、頭からシャワーを浴びる。
「いいんだよ、笑ってよ。ほんと、お笑いぐさなんだからさ、」マリが言う。
「…あんた、泣いてるの?」「まさか」鼻をすすりながら、マリ。
「あんだけ、オトナのオンナ気取ってさ、でも本当は怖くってさ、バカみたいだよ。
影じゃビッチだの援交顔だの言われてるけどさ、まだこのカラダはキレイなまんまなんだよ、
信じられる?このひねくれた性格が災いしてさ、誰も寄りついて来やしないさ。
寄ってくるのはカラダ目当ての盛った犬ばっか。そんなのはこっちから蹴飛ばしてやる」
「…」アスカは思う。今まで気づかなかったけど、マリって、自分に似ている。
素直になれない自分とマリ、外に顕れるものは違っていても、内面は同じ色で出来ているのかもしれない。
「でもね、ワンコ君は違った。初めてワンコ君と話した時、彼は私のありのままを受け入れてくれた。
変人扱いもせず、下心も何もなくただ純粋に、微笑んでくれた。彼は私の王子様だと思った。
でも既にそこには姫がいて…、悔しいけど、王子様とお姫様の最高のカップルじゃん。
…私は…そこに入りたかった。家来でも友人枠でもなんでもいい、王子様に近づいてみたかった。
目を合わせて、笑いあってみたかった。だから、王子様をワンコ君と呼び、色々ちょっかい出してみた。
ガキだよね、保育園児レベルだよね…、でもそのくらいしか、出来なかった。」
「あんた…」アスカが何か言おうとする。でも、次の言葉が出てこない。
「これ、姫は知らないと思うんだけどさ、夏休み前くらいかな?ワンコ君捕まえてさ、
思い切って言ってみたんだよ、水臭いな、同じ寮生同士、真希波さんじゃなくて、マリでいいよ、って。」
「…知らなかった」アスカが呟く。
「もうさ、こっちはドッキドキだよ。でさ、そうしたら、ワンコ君は何て言ったと思う?」
「…」
アスカは答えない。答えられない。再びマリに背を向けて、頭からシャワーを浴びる。
750: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 01:03:18.86 ID:???
>>749
「ごめん、って。僕が名前で呼ぶのはアスカだけだから、って。
真希波さんのことも嫌いじゃないけど、アスカは特別なんだ、って。」
ふぅ…、と溜め息をついて、マリは続ける。
「ほんと、かなわないな…って思ったよ。姫とワンコ君の間にはスキマなんてありゃしない。
それこそヘリウム原子1個分ほどのスペースも開いていない…」
マリはメガネを外してお湯で洗い、続いて顔をざぶざぶと洗って、湯船から立ち上がった。
「よいしょっと…だから、これからは姫とワンコ君の仲を応援することにした。」
その言葉に、アスカが顔を上げる。
「諦めたわけじゃないけど、一番近くで、姫達の夫婦漫才を見させてもらうから」
「は?余計なお世話よ」
「いいじゃない、届かないことを認める代わりに、そのくらいはさせてよ。
ワンコ君、アスカのこと、ものっすごく考えてるよ。姫はそれに報いてあげられてるの?
愛って与えるものだよ。求めるものじゃないんだよ。」
痛いところを突かれる。
「ふ、ふん!何よ負け犬にぎゃーぎゃー言われたくないわ」
「姫、」マリがアスカの方に向き直る。そしてアスカの背中に向かって声をかける。
「素直になりなよ、姫。私、分かるよ、姫の気持ち。私とおんなじだから。」
「うるさい!」「姫、」「うるさいうるさいうるさい!」
「シンジは誰にも渡さない!シンジはあたしの全てなの、シンジがいなくなったら、あたし…生きていけないもん」
シャワーの音で泣いているのが少しは誤魔化せるかしら…アスカはほんの少し、そんなことも考えた。
そう、このイライラする気持ち、本当は気づいていた。マリにシンジを取られるんじゃないかという恐怖。
自分にはあんな誘い方は出来ない。人前で、あんなストレートに甘えたり出来ない。
「シンジとあたしは…ずーっと昔から、前世やもっと前から、ずっと一緒だったの。
証拠なんてないわよ。笑いたければ笑いなさいよ、…でも2人ともそう信じているのは事実よ。
…お互いに何を考えているのか、感じるし、隣にいれば安心する。あたしとシンジの出会いは
偶然なんかじゃない、必然や運命を超えたところにその理由があるの。そう思うの。だから…」
「ごめん、って。僕が名前で呼ぶのはアスカだけだから、って。
真希波さんのことも嫌いじゃないけど、アスカは特別なんだ、って。」
ふぅ…、と溜め息をついて、マリは続ける。
「ほんと、かなわないな…って思ったよ。姫とワンコ君の間にはスキマなんてありゃしない。
それこそヘリウム原子1個分ほどのスペースも開いていない…」
マリはメガネを外してお湯で洗い、続いて顔をざぶざぶと洗って、湯船から立ち上がった。
「よいしょっと…だから、これからは姫とワンコ君の仲を応援することにした。」
その言葉に、アスカが顔を上げる。
「諦めたわけじゃないけど、一番近くで、姫達の夫婦漫才を見させてもらうから」
「は?余計なお世話よ」
「いいじゃない、届かないことを認める代わりに、そのくらいはさせてよ。
ワンコ君、アスカのこと、ものっすごく考えてるよ。姫はそれに報いてあげられてるの?
愛って与えるものだよ。求めるものじゃないんだよ。」
痛いところを突かれる。
「ふ、ふん!何よ負け犬にぎゃーぎゃー言われたくないわ」
「姫、」マリがアスカの方に向き直る。そしてアスカの背中に向かって声をかける。
「素直になりなよ、姫。私、分かるよ、姫の気持ち。私とおんなじだから。」
「うるさい!」「姫、」「うるさいうるさいうるさい!」
「シンジは誰にも渡さない!シンジはあたしの全てなの、シンジがいなくなったら、あたし…生きていけないもん」
シャワーの音で泣いているのが少しは誤魔化せるかしら…アスカはほんの少し、そんなことも考えた。
そう、このイライラする気持ち、本当は気づいていた。マリにシンジを取られるんじゃないかという恐怖。
自分にはあんな誘い方は出来ない。人前で、あんなストレートに甘えたり出来ない。
「シンジとあたしは…ずーっと昔から、前世やもっと前から、ずっと一緒だったの。
証拠なんてないわよ。笑いたければ笑いなさいよ、…でも2人ともそう信じているのは事実よ。
…お互いに何を考えているのか、感じるし、隣にいれば安心する。あたしとシンジの出会いは
偶然なんかじゃない、必然や運命を超えたところにその理由があるの。そう思うの。だから…」
751: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 01:04:16.04 ID:???
>>750
「だから?」
「…だから…怖かったのよ…。コネメガネ、あんたが今のあたしを粉々に突き崩してしまいそうな気がして。
シンジを…奪っていっちゃいそうな気がして…。」
「…姫…」
「ダメ。ホントはこんな素直じゃないあたしを、あたしは好きになれない。
もっと自分が変わらなくちゃ、って思う。けど、出来ない。強がりでプライドばっか高くて…
でも、そんなあたしをシンジは好きだって言ってくれる。ずっと一緒だよ、って言ってくれる。
この幸せを、誰にも渡したくないし、渡さないわ」
「姫、」「なによ、なんか文句あるっての?」
「いいや、でもさ、姫、姫はもっとワンコ君のことを信じてあげた方がいいよ」
「どういうこと?」
「ワンコ君だって、今の幸せを誰にも渡すつもりなんてない、ってこと」
涙をちょっと拭いて、マリが続ける。
「振られた私が言うんだもの、間違いないわ」
「コネメガネ…」
マリは何も言わずに、風呂から上がり、またアスカの隣にやってくる。今度は立ったまま、
シャワーを浴びる。
「ふぅぅ…のぼせちまった。」そのままアスカの背後を通って脱衣所へ向かう。
「…まあ、よく分かったよ、姫の気持ち。それだけでも良かった」
扉に手をかける。「待って」
アスカの声にマリの動きが止まる。
「コネメガネ…ごめん」「え?」「もういい。一度しか言わないから」
ふふっ、と笑ってマリが言う。
「それはそうと、姫ってさ、本当にまだワンコ君と、してないの?」
「はぁ?なななななななななな何をまたいきなり…」顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。
「だから?」
「…だから…怖かったのよ…。コネメガネ、あんたが今のあたしを粉々に突き崩してしまいそうな気がして。
シンジを…奪っていっちゃいそうな気がして…。」
「…姫…」
「ダメ。ホントはこんな素直じゃないあたしを、あたしは好きになれない。
もっと自分が変わらなくちゃ、って思う。けど、出来ない。強がりでプライドばっか高くて…
でも、そんなあたしをシンジは好きだって言ってくれる。ずっと一緒だよ、って言ってくれる。
この幸せを、誰にも渡したくないし、渡さないわ」
「姫、」「なによ、なんか文句あるっての?」
「いいや、でもさ、姫、姫はもっとワンコ君のことを信じてあげた方がいいよ」
「どういうこと?」
「ワンコ君だって、今の幸せを誰にも渡すつもりなんてない、ってこと」
涙をちょっと拭いて、マリが続ける。
「振られた私が言うんだもの、間違いないわ」
「コネメガネ…」
マリは何も言わずに、風呂から上がり、またアスカの隣にやってくる。今度は立ったまま、
シャワーを浴びる。
「ふぅぅ…のぼせちまった。」そのままアスカの背後を通って脱衣所へ向かう。
「…まあ、よく分かったよ、姫の気持ち。それだけでも良かった」
扉に手をかける。「待って」
アスカの声にマリの動きが止まる。
「コネメガネ…ごめん」「え?」「もういい。一度しか言わないから」
ふふっ、と笑ってマリが言う。
「それはそうと、姫ってさ、本当にまだワンコ君と、してないの?」
「はぁ?なななななななななな何をまたいきなり…」顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。
752: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 01:06:58.01 ID:???
>>751
「ははは、姫、可愛いよ。…でもそっか、その手があったか」ニヤリ
「な、何よ?」「いや、なんでもない」「あんたのそのなんでもない、はなんでもなくないでしょ!」
「ん…いやさ、男の子なんて所詮はみんなおっぱい星人、姫も早くしないと、私のこのおっぱいで
ワンコ君をメロメロにしちゃうわよ~」
「バ、バカ!何を…そ…んな」思わず立ち上がったアスカだが、次の瞬間、言葉が途切れる。
「で…でかっ!…でも綺麗…」アスカの目が釘付けになる。アスカの目の前にあったのは、マリの胸。
「お尻もいい形してるでしょ?」マリが後ろを向く。こっちもデカいがツンと上を向いている。
ゴクリ…。思わずアスカが生唾を飲み込む。…シンジもこんなのが好きなのかしら…。
「あ、今考えたでしょ、シンジもおっきい方が喜んでくれるのかな?とかってw」
「お、思ってない!」カァァァ
「姫、いいこと教えて上げるよ。彼氏に揉んでもらうのが一番いいらしいよw試してみなよ」グヘヘ
アスカの動きが一瞬止まる。自分の胸を包み込むようにして触れるシンジの手…
「あ、今考えたでしょ?想像しちゃったでしょ?いいなぁ、青春だなぁw」
飛んでくる洗面器をひょいっと避けて、マリが出て行く。
「ワンコ君によろしくにゃ」ノシ
アスカ、しばらくその場から動けない。脱衣所からはマリが歌うのが聞こえてくる。
「~あなたにぃ、つげよおぉ、まよわずにぃ、いくことおぉ~♪
「…誰の歌よ」アスカの呟きに「美空ひばりにゃ」という声が返ってくる。
「…あんたいくつよ?絶対サバ読んでるでしょ?」「え?姫より1コ上なだけにゃぁ」
~すべてぇわぁ、こころのぉ、きめぇたぁ、まぁぁま、にぃいぃぃ♪」
「…バカ」
その言葉と共に、アスカも風呂に飛び込む。頭まで湯に浸かって、
色々な思いを、憂いをを流してしまおう。
アスカはぼんやりとだけど、そんなふうに考えている。
弱みを見せお互いを認め合った2人が、親友になるにはもう少し時間がかかるけど、でもそれは、別の話。
「ははは、姫、可愛いよ。…でもそっか、その手があったか」ニヤリ
「な、何よ?」「いや、なんでもない」「あんたのそのなんでもない、はなんでもなくないでしょ!」
「ん…いやさ、男の子なんて所詮はみんなおっぱい星人、姫も早くしないと、私のこのおっぱいで
ワンコ君をメロメロにしちゃうわよ~」
「バ、バカ!何を…そ…んな」思わず立ち上がったアスカだが、次の瞬間、言葉が途切れる。
「で…でかっ!…でも綺麗…」アスカの目が釘付けになる。アスカの目の前にあったのは、マリの胸。
「お尻もいい形してるでしょ?」マリが後ろを向く。こっちもデカいがツンと上を向いている。
ゴクリ…。思わずアスカが生唾を飲み込む。…シンジもこんなのが好きなのかしら…。
「あ、今考えたでしょ、シンジもおっきい方が喜んでくれるのかな?とかってw」
「お、思ってない!」カァァァ
「姫、いいこと教えて上げるよ。彼氏に揉んでもらうのが一番いいらしいよw試してみなよ」グヘヘ
アスカの動きが一瞬止まる。自分の胸を包み込むようにして触れるシンジの手…
「あ、今考えたでしょ?想像しちゃったでしょ?いいなぁ、青春だなぁw」
飛んでくる洗面器をひょいっと避けて、マリが出て行く。
「ワンコ君によろしくにゃ」ノシ
アスカ、しばらくその場から動けない。脱衣所からはマリが歌うのが聞こえてくる。
「~あなたにぃ、つげよおぉ、まよわずにぃ、いくことおぉ~♪
「…誰の歌よ」アスカの呟きに「美空ひばりにゃ」という声が返ってくる。
「…あんたいくつよ?絶対サバ読んでるでしょ?」「え?姫より1コ上なだけにゃぁ」
~すべてぇわぁ、こころのぉ、きめぇたぁ、まぁぁま、にぃいぃぃ♪」
「…バカ」
その言葉と共に、アスカも風呂に飛び込む。頭まで湯に浸かって、
色々な思いを、憂いをを流してしまおう。
アスカはぼんやりとだけど、そんなふうに考えている。
弱みを見せお互いを認め合った2人が、親友になるにはもう少し時間がかかるけど、でもそれは、別の話。
756: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:14:55.14 ID:???
お化け騒動が一応の解決をみてから、初めての週末。
夜が明ける前、いつも通りシンジは中庭を抜けて、男子寮の非常階段をそぉーっと上る。
アスカ宛にメールを打ちながら、2階のドアを静かに開け、廊下に入る。誰も起きては居ない、
早朝独特の静けさの中、無音で自室のドアを開けて、今日も無事に帰還…
「おはよう、碇シンジ君。今日も早くからご苦労様だね」
全身が硬直し、眠気が吹き飛ぶ。
シンジの部屋のドアの向こう側、シンジの室内、そこに立っていたのは、冬月寮長。
早朝にも関わらず、茶色のスーツにしっかりアイロンのかかった薄いブルーのシャツ。
そして品の良いネクタイ。姿勢の良さも手伝って、凜とした雰囲気がある。
「まあとにかく、ここで話すのもなんだし、ちょっとご足労願おうか」
アスカからの返信を告げる灯りが、空しく輝いている。
夜が明ける前、いつも通りシンジは中庭を抜けて、男子寮の非常階段をそぉーっと上る。
アスカ宛にメールを打ちながら、2階のドアを静かに開け、廊下に入る。誰も起きては居ない、
早朝独特の静けさの中、無音で自室のドアを開けて、今日も無事に帰還…
「おはよう、碇シンジ君。今日も早くからご苦労様だね」
全身が硬直し、眠気が吹き飛ぶ。
シンジの部屋のドアの向こう側、シンジの室内、そこに立っていたのは、冬月寮長。
早朝にも関わらず、茶色のスーツにしっかりアイロンのかかった薄いブルーのシャツ。
そして品の良いネクタイ。姿勢の良さも手伝って、凜とした雰囲気がある。
「まあとにかく、ここで話すのもなんだし、ちょっとご足労願おうか」
アスカからの返信を告げる灯りが、空しく輝いている。
757: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:15:41.35 ID:???
>>756
寮長室。入るとそこには応接セットと事務机。奥の扉の向こうには仮眠室があるらしい。
「ここに来るのは初めてかね?」「…はい」「まあ、座りたまえ」
ソファに腰掛ける。寮長は奥の扉の向こうに消えたかと思うと、お茶を淹れて戻ってくる。
「すまんな、番茶くらいしかなくてな」「…」
シンジの反対側に腰掛け、番茶を一口すする冬月寮長。
「あの…」シンジが言いかけるのを手で制して寮長が言う。
「最初に言っておくが、言い訳は不要だ。ここはそういう場ではない」
ダメだ、寮長は全てを分かった上で、このような行動に出ている。シンジは確信する。
逃げても無駄だ。
「あの…なぜ、分かったんですか?」
寮長は茶をゆっくりと飲みながら、シンジにチラリと視線をやり、湯呑みを置いてから言う。
「足跡だよ」「足跡?」「そうだ」
「実は、過去にもこういうことがあってね。私はもう30年近くこの仕事をしているから、
寮のことは大抵わかる。
「ある日の朝、あれは前の夜に雷が落ちて停電した時だったかな、私は中庭の芝生に足跡を見つけた。
サイズは25センチ。男性のものだ。おそらくスニーカーか室内サンダルの類。
歩幅からおおよその身長も分かる。足跡の深さから体重も見当がつく…」
寮長が一瞬、シンジの目をまっすぐに見つめる。弓矢で射られたような鋭い視線。
シンジは何も言えず、ただ黙って頷くことしかできない。
「これは侵入者かとも思ったが、門と玄関に設置されている監視カメラには何も映っては居ない。
前夜は雨だったということは、この足跡は雨が止んだ後、すなわち明け方につけられたものだ。
今も言ったとおり、門と玄関の監視カメラには誰も映っては居なかった。
門以外からの侵入も考えられなくはないが、ここだけの話、センサーがあってね、それも無反応だった。
つまり、侵入者でも門限破りでもなく、内部の人間がどこからか出て、どこかに向かった、ということだ。
ここは寮だ。一般的に考えて、誰かの部屋から誰かの部屋へ、という考えが一番合理的だ。
そしてここは男女の寮棟が別れている。経験則から言っても、女子寮から男子寮への移動、
ということが、足跡の向きから見ても、一番合理的だ。違うかね?」
寮長室。入るとそこには応接セットと事務机。奥の扉の向こうには仮眠室があるらしい。
「ここに来るのは初めてかね?」「…はい」「まあ、座りたまえ」
ソファに腰掛ける。寮長は奥の扉の向こうに消えたかと思うと、お茶を淹れて戻ってくる。
「すまんな、番茶くらいしかなくてな」「…」
シンジの反対側に腰掛け、番茶を一口すする冬月寮長。
「あの…」シンジが言いかけるのを手で制して寮長が言う。
「最初に言っておくが、言い訳は不要だ。ここはそういう場ではない」
ダメだ、寮長は全てを分かった上で、このような行動に出ている。シンジは確信する。
逃げても無駄だ。
「あの…なぜ、分かったんですか?」
寮長は茶をゆっくりと飲みながら、シンジにチラリと視線をやり、湯呑みを置いてから言う。
「足跡だよ」「足跡?」「そうだ」
「実は、過去にもこういうことがあってね。私はもう30年近くこの仕事をしているから、
寮のことは大抵わかる。
「ある日の朝、あれは前の夜に雷が落ちて停電した時だったかな、私は中庭の芝生に足跡を見つけた。
サイズは25センチ。男性のものだ。おそらくスニーカーか室内サンダルの類。
歩幅からおおよその身長も分かる。足跡の深さから体重も見当がつく…」
寮長が一瞬、シンジの目をまっすぐに見つめる。弓矢で射られたような鋭い視線。
シンジは何も言えず、ただ黙って頷くことしかできない。
「これは侵入者かとも思ったが、門と玄関に設置されている監視カメラには何も映っては居ない。
前夜は雨だったということは、この足跡は雨が止んだ後、すなわち明け方につけられたものだ。
今も言ったとおり、門と玄関の監視カメラには誰も映っては居なかった。
門以外からの侵入も考えられなくはないが、ここだけの話、センサーがあってね、それも無反応だった。
つまり、侵入者でも門限破りでもなく、内部の人間がどこからか出て、どこかに向かった、ということだ。
ここは寮だ。一般的に考えて、誰かの部屋から誰かの部屋へ、という考えが一番合理的だ。
そしてここは男女の寮棟が別れている。経験則から言っても、女子寮から男子寮への移動、
ということが、足跡の向きから見ても、一番合理的だ。違うかね?」
758: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:17:23.46 ID:???
>>757
ほんの少しだけ、寮長が笑う。シンジを追い詰めるサディスティックな笑いではなく、
自分の推理が正しいことを確信している、そういう類の微笑だ。
「それから、注意して見ていた。女子寮2階の非常階段のドアノブの汚れが幾分綺麗に
なっていることに気がついたのはそれから2週間ほど後の頃だ。
女子寮の非常階段の扉は外からは開かない。これは、誰かが内から外に出たということを意味しているし、
つまり、犯人、まあここでは犯人と呼ぶが、2階の部屋に用件があったと推測できる。2階の住人は2名。
洞木ヒカリと惣流アスカだ。この2人にはそれぞれ恋人がいる。鈴原トウジと碇シンジ。
身長体重靴のサイズは全て、あそこを出たのが君だということを示している。
そんな中での幽霊騒ぎだ。真希波マリの声がけに君たちが出ているのを見て、推測は確信に変わった。
あれはうまくカムフラージュしたつもりだったのだろうが、私の目は誤魔化せん。
結果は予想外のものだったが、かえってこれで、再開の日は早かろうと睨んだ。
そして、あれから初めての週末。結果はご覧の通りだ。」
寮長はゆっくりと背もたれに寄りかかり、続ける。
「何か相違点はあるかな?」
黙ってシンジは首を横に振る。逃げられない。まるでシャーロック・ホームズみたいだ。
「僕たちは…どうなるんですか?せめてアスカだけは…」
「だから言っただろう、ここはそういう場ではないと。正式にそういう場を設けようか?
君にとって、かなり良くない結果になるだろうがね。」
シンジは混乱する。じゃあ何故寮長は自分を待ち伏せして、ここに連れてきたのか。
寮長の真意が分からない。それを見透かしたかのように、冬月寮長が続ける。
「私が聞きたいのは2点だ。惣流アスカと性的関係はあるのかどうかと、彼女をどう思い、
これからどうしようと考えているのか、ということだ。
「以前言ったと思うが、寮内での男女同衾は即時退寮が規則だ。
これは、学院の風紀衛生委員会によって決定される。いいかね、私はそこの委員をしている立場ではあるが…
出来れば、君たちを助けたい。」
ほんの少しだけ、寮長が笑う。シンジを追い詰めるサディスティックな笑いではなく、
自分の推理が正しいことを確信している、そういう類の微笑だ。
「それから、注意して見ていた。女子寮2階の非常階段のドアノブの汚れが幾分綺麗に
なっていることに気がついたのはそれから2週間ほど後の頃だ。
女子寮の非常階段の扉は外からは開かない。これは、誰かが内から外に出たということを意味しているし、
つまり、犯人、まあここでは犯人と呼ぶが、2階の部屋に用件があったと推測できる。2階の住人は2名。
洞木ヒカリと惣流アスカだ。この2人にはそれぞれ恋人がいる。鈴原トウジと碇シンジ。
身長体重靴のサイズは全て、あそこを出たのが君だということを示している。
そんな中での幽霊騒ぎだ。真希波マリの声がけに君たちが出ているのを見て、推測は確信に変わった。
あれはうまくカムフラージュしたつもりだったのだろうが、私の目は誤魔化せん。
結果は予想外のものだったが、かえってこれで、再開の日は早かろうと睨んだ。
そして、あれから初めての週末。結果はご覧の通りだ。」
寮長はゆっくりと背もたれに寄りかかり、続ける。
「何か相違点はあるかな?」
黙ってシンジは首を横に振る。逃げられない。まるでシャーロック・ホームズみたいだ。
「僕たちは…どうなるんですか?せめてアスカだけは…」
「だから言っただろう、ここはそういう場ではないと。正式にそういう場を設けようか?
君にとって、かなり良くない結果になるだろうがね。」
シンジは混乱する。じゃあ何故寮長は自分を待ち伏せして、ここに連れてきたのか。
寮長の真意が分からない。それを見透かしたかのように、冬月寮長が続ける。
「私が聞きたいのは2点だ。惣流アスカと性的関係はあるのかどうかと、彼女をどう思い、
これからどうしようと考えているのか、ということだ。
「以前言ったと思うが、寮内での男女同衾は即時退寮が規則だ。
これは、学院の風紀衛生委員会によって決定される。いいかね、私はそこの委員をしている立場ではあるが…
出来れば、君たちを助けたい。」
759: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:19:37.51 ID:???
>>758
「え?」シンジが顔を上げる。
「意外かね?」「…はい」「個人的な理由でね、あまり言いたくはないのだが…」
「僕たち、」シンジが寮長の言葉が続かないことを確認してから、一呼吸置いてから話し出す。
「2人で同じことを考えていたんです。僕たちは、何かの生まれ変わりで、生まれ変わる前も、その前も、
さらにその前でも、ずっと一緒だったんじゃないか、って。なんていうか、運命とかそういう
言葉を超えたところで、僕たちは繋がっていて、例えば戦友であったり恋人であったり、
夫婦であったり親子であったり、そういう縁でずっと繋がっていたんじゃないか、って」
「ふむ…微笑ましいな。しかしそれには科学的根拠は一切ない」
「科学的根拠は一切ない」シンジは冬月の言葉を繰り返す。ここ数日で何度この言葉を聞いただろう。
「確かにそうです。ですが、逆に言えば、僕たちが前世もその前も、ずっと一緒だったことを
否定する科学的根拠も一切ない」
「…ふむ、まあそうかもしれんな」
「大事なのは、僕たちがそれを確信していることです。本能的にそれを理解しているということです。
事実であるかどうかは証明ができませんが、それが僕たちの真実だと信じています。」
まっすぐに冬月寮長の目を見つめてシンジは言う。
「ですから、僕とアスカの間には、そういう意味ではまだ何もありません」
「でも、いつかはそうなる?」言われて顔が真っ赤になる。嘘はつけない。
「…でも寮内では誓ってそんなことには…」
ふっ、と笑うと冬月寮長は腰掛け直す。
「すまん、ちょっと苛めがすぎたかな。しかし、君の気持ちはよく分かった。
なかなか俄には信じがたいことではあるが…しかし君は嘘をつける人間ではない。信じてもいい」
シンジの顔がぱぁっ、と明るくなる。が、すぐにまた元の陰鬱とした表情に戻る。
「それで…処分は?」
「されたいのかね?」寮長が即座に答える。
驚くシンジ。「い、いや」
冬月寮長は再び深く腰掛けると、両手を顔の前で組み、話を始める。
「え?」シンジが顔を上げる。
「意外かね?」「…はい」「個人的な理由でね、あまり言いたくはないのだが…」
「僕たち、」シンジが寮長の言葉が続かないことを確認してから、一呼吸置いてから話し出す。
「2人で同じことを考えていたんです。僕たちは、何かの生まれ変わりで、生まれ変わる前も、その前も、
さらにその前でも、ずっと一緒だったんじゃないか、って。なんていうか、運命とかそういう
言葉を超えたところで、僕たちは繋がっていて、例えば戦友であったり恋人であったり、
夫婦であったり親子であったり、そういう縁でずっと繋がっていたんじゃないか、って」
「ふむ…微笑ましいな。しかしそれには科学的根拠は一切ない」
「科学的根拠は一切ない」シンジは冬月の言葉を繰り返す。ここ数日で何度この言葉を聞いただろう。
「確かにそうです。ですが、逆に言えば、僕たちが前世もその前も、ずっと一緒だったことを
否定する科学的根拠も一切ない」
「…ふむ、まあそうかもしれんな」
「大事なのは、僕たちがそれを確信していることです。本能的にそれを理解しているということです。
事実であるかどうかは証明ができませんが、それが僕たちの真実だと信じています。」
まっすぐに冬月寮長の目を見つめてシンジは言う。
「ですから、僕とアスカの間には、そういう意味ではまだ何もありません」
「でも、いつかはそうなる?」言われて顔が真っ赤になる。嘘はつけない。
「…でも寮内では誓ってそんなことには…」
ふっ、と笑うと冬月寮長は腰掛け直す。
「すまん、ちょっと苛めがすぎたかな。しかし、君の気持ちはよく分かった。
なかなか俄には信じがたいことではあるが…しかし君は嘘をつける人間ではない。信じてもいい」
シンジの顔がぱぁっ、と明るくなる。が、すぐにまた元の陰鬱とした表情に戻る。
「それで…処分は?」
「されたいのかね?」寮長が即座に答える。
驚くシンジ。「い、いや」
冬月寮長は再び深く腰掛けると、両手を顔の前で組み、話を始める。
760: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:22:40.12 ID:???
>>759
「内緒の話だがね、実は、君は3番目なのだ、」「3番目?」シンジにはよく分からない。
「そう、こうやって夜間、恋人の住む部屋へ決死の覚悟で通い続けた寮生が、君以外に2人いたのだ。」
え?と驚くシンジ。初耳だ。
「君の前にそれをやっていたのは…」少し間を持たせて寮長が言う。
「今は学院で社会科の教師をしておるよ。不思議な事に、相手も学院内で教師をしとるな」
シンジの脳裏に2人の顔が浮かぶ。
「ひょっとして、それって…加持先生と葛城先生ですか?」
「否定も肯定もせんよ」そして懐かしそうな表情を浮かべながら、冬月は続ける。
「そして栄えある第一号は…実は君の父親でね。」
「え!」シンジは驚く。その反応を見ながら、冬月の話は続く。
「相手は君の母親だった。両人とも私の教え子でね。あんな硬派を絵に描いたような男が、
夜な夜なこんなことをしているとは、と驚いた記憶がある。
そのときは男の方が退寮になった。私はまだ学院の教員で、こちらの方には明るくなかったからな。
で、結果として、男は、君の父親は、どうやったか知らないが市内に部屋を借り、
やがて君の母親と一緒に住むようになった。風紀を守るはずが、守られたのは学院のくだらない規則だけでな…
もう30年近く前の話だ」
シンジは、物心ついた時には叔母さんに預けられていた。それが両親が亡くなったからだと
知ったのは小学校5年生の時で、だからつまり、シンジに両親の記憶はない。
「内緒の話だがね、実は、君は3番目なのだ、」「3番目?」シンジにはよく分からない。
「そう、こうやって夜間、恋人の住む部屋へ決死の覚悟で通い続けた寮生が、君以外に2人いたのだ。」
え?と驚くシンジ。初耳だ。
「君の前にそれをやっていたのは…」少し間を持たせて寮長が言う。
「今は学院で社会科の教師をしておるよ。不思議な事に、相手も学院内で教師をしとるな」
シンジの脳裏に2人の顔が浮かぶ。
「ひょっとして、それって…加持先生と葛城先生ですか?」
「否定も肯定もせんよ」そして懐かしそうな表情を浮かべながら、冬月は続ける。
「そして栄えある第一号は…実は君の父親でね。」
「え!」シンジは驚く。その反応を見ながら、冬月の話は続く。
「相手は君の母親だった。両人とも私の教え子でね。あんな硬派を絵に描いたような男が、
夜な夜なこんなことをしているとは、と驚いた記憶がある。
そのときは男の方が退寮になった。私はまだ学院の教員で、こちらの方には明るくなかったからな。
で、結果として、男は、君の父親は、どうやったか知らないが市内に部屋を借り、
やがて君の母親と一緒に住むようになった。風紀を守るはずが、守られたのは学院のくだらない規則だけでな…
もう30年近く前の話だ」
シンジは、物心ついた時には叔母さんに預けられていた。それが両親が亡くなったからだと
知ったのは小学校5年生の時で、だからつまり、シンジに両親の記憶はない。
761: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:26:30.67 ID:???
>>760
「父は、母は、どんな人だったんですか?…僕、両親の記憶とかがないんです…
だから、覚えている範囲で教えてくれませんか?」
シンジは身を乗り出す。冬月は組んだ両手の向こう側から遠くの方を懐かしげに眺めた後、
ひとつだけ、シンジに伝える。
「君は、よく似ておるよ、父親に。碇、ゲンドウ君にな」
「僕が…父さんに?」「うむ。彼の高校時代にそっくりだ」そのまま冬月は言う。
「ご両親は事故で亡くらなれたそうだな。惜しいことをした。2人とも有能な科学者になれただろうに…」
そして話は終わりだ、とばかりに立ち上がる。つられて、シンジも。
「今回の件は、不問に処してもいい。今後についても、君なら分かるだろうが、
ある程度であれば目を瞑ってもいい。」
シンジは頷く。よろしい、というように冬月も頷く。
「なに、こちらとしては丁度いいボケ防止の頭の運動だったよ」
ふふふ、と笑う冬月と、ははは、と乾いた笑い声をあげるシンジ。
この人にはかなわない、逆らっちゃ絶対ダメだ。そうシンジは感じる。確信する。
「だがね、ひとつだけ、条件があるんだが…」
ふいに、シリアスな表情で、寮長が囁く。この場合、シンジに選択の余地はない。
シンジはその条件が、せめてアスカには害が及ばないものであることを願った。
「父は、母は、どんな人だったんですか?…僕、両親の記憶とかがないんです…
だから、覚えている範囲で教えてくれませんか?」
シンジは身を乗り出す。冬月は組んだ両手の向こう側から遠くの方を懐かしげに眺めた後、
ひとつだけ、シンジに伝える。
「君は、よく似ておるよ、父親に。碇、ゲンドウ君にな」
「僕が…父さんに?」「うむ。彼の高校時代にそっくりだ」そのまま冬月は言う。
「ご両親は事故で亡くらなれたそうだな。惜しいことをした。2人とも有能な科学者になれただろうに…」
そして話は終わりだ、とばかりに立ち上がる。つられて、シンジも。
「今回の件は、不問に処してもいい。今後についても、君なら分かるだろうが、
ある程度であれば目を瞑ってもいい。」
シンジは頷く。よろしい、というように冬月も頷く。
「なに、こちらとしては丁度いいボケ防止の頭の運動だったよ」
ふふふ、と笑う冬月と、ははは、と乾いた笑い声をあげるシンジ。
この人にはかなわない、逆らっちゃ絶対ダメだ。そうシンジは感じる。確信する。
「だがね、ひとつだけ、条件があるんだが…」
ふいに、シリアスな表情で、寮長が囁く。この場合、シンジに選択の余地はない。
シンジはその条件が、せめてアスカには害が及ばないものであることを願った。
762: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/10/27(日) 23:28:39.53 ID:???
>>761
「…ほんとにバレてたの…?」真っ青なアスカ。「うん、」とシンジ。
「でも、よく許してくれたわよね…」
食堂で朝食を摂りながら、ひそひそと話すアスカとシンジ。
「うん…でもひとつだけ条件があってね、」「何?」ドキドキ
ポン「第3の少年、時間が空いたら寮長室まで来るように」「は、はい」ビクッ
突然肩を叩かれて驚くシンジとアスカ。
去り際に寮長の口角にほんの少し皺が寄ったように見えたのは、微笑んだのか。
「将棋、週一回」「え?」「その条件」「えええ?なによそれ」「まあ、そのくらいなら、ね」
「確かにね…でも今、あの寮長、シンジのこと、『第3の少年』って言ったわよね?どうして?」
「ん?さあ…僕にもよく分かんないよ(^_^;;;」
「…ほんとにバレてたの…?」真っ青なアスカ。「うん、」とシンジ。
「でも、よく許してくれたわよね…」
食堂で朝食を摂りながら、ひそひそと話すアスカとシンジ。
「うん…でもひとつだけ条件があってね、」「何?」ドキドキ
ポン「第3の少年、時間が空いたら寮長室まで来るように」「は、はい」ビクッ
突然肩を叩かれて驚くシンジとアスカ。
去り際に寮長の口角にほんの少し皺が寄ったように見えたのは、微笑んだのか。
「将棋、週一回」「え?」「その条件」「えええ?なによそれ」「まあ、そのくらいなら、ね」
「確かにね…でも今、あの寮長、シンジのこと、『第3の少年』って言ったわよね?どうして?」
「ん?さあ…僕にもよく分かんないよ(^_^;;;」
778: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:48:02.98 ID:???
秋晴れの日曜の午後。
半分以上の生徒が実家に戻る3連休、寮内は閑散としている。
シンジがラウンジでチェロを弾いている。バッハの無伴奏チェロ組曲第一番プレリュード。
比較的ゆったりしたテンポで、一音一音を慈しむかのように弾いている。
目の前で聴いているアスカ。2人の時間に時々こうやってシンジが楽器を弾いてくれるのを楽しみにしている。
この前は放課後に音楽室のピアノで、バッハのゴルトベルク変奏曲を全曲!弾いてくれた。
最後まで聴いていると、長旅を終えて住処に帰ってきたような気持ちになった。少し、泣いた。
先週は学校の文化祭のリハーサルも兼ねて、こっそりとギターでThe Beatles とoasisの曲を何曲か
弾き語ってくれた。正直、キュンキュンとやられまくって、後で下着が大変なことになった。
そして今、チェロの暖かみのある音色に目を閉じて全身を委ね、この時間を楽しんでいる。
この時間を2人だけで過ごせるというのは、アスカにとっても幸せいっぱいだったし、
なにより楽器を弾いているシンジは、何度惚れ直しても足りないくらいにかっこいい。
伏し目がちに楽器を弾くシンジの、その長い睫毛を見つめているとゾクゾクするくらいの色気があって、
それはきっとアスカ以外誰も知らないシンジの隠れた一面なのだ。
シンジが音楽に堪能だということは入学当初から一部の人には有名で、その噂を聞きつけた先生に頼まれ、
最初の音楽の授業の後、音楽室に居残ってピアノ、チェロ、ギターと、何曲か弾いたこともある。
その翌週から、なぜか音楽の教師が一ヶ月間病欠したのだが、それが曲解され、
音楽の教師が自分よりも遙かに上手いことにショックを受けて鬱病になったとか、
そんな都市伝説?まで流布されている。(実は事実なのだが、それは校長と理事長と教師本人しか知らない)
そのせいもあってか、シンジは人前では滅多に楽器を弾かない。だからこれはもうアスカの特権とも言える。
半分以上の生徒が実家に戻る3連休、寮内は閑散としている。
シンジがラウンジでチェロを弾いている。バッハの無伴奏チェロ組曲第一番プレリュード。
比較的ゆったりしたテンポで、一音一音を慈しむかのように弾いている。
目の前で聴いているアスカ。2人の時間に時々こうやってシンジが楽器を弾いてくれるのを楽しみにしている。
この前は放課後に音楽室のピアノで、バッハのゴルトベルク変奏曲を全曲!弾いてくれた。
最後まで聴いていると、長旅を終えて住処に帰ってきたような気持ちになった。少し、泣いた。
先週は学校の文化祭のリハーサルも兼ねて、こっそりとギターでThe Beatles とoasisの曲を何曲か
弾き語ってくれた。正直、キュンキュンとやられまくって、後で下着が大変なことになった。
そして今、チェロの暖かみのある音色に目を閉じて全身を委ね、この時間を楽しんでいる。
この時間を2人だけで過ごせるというのは、アスカにとっても幸せいっぱいだったし、
なにより楽器を弾いているシンジは、何度惚れ直しても足りないくらいにかっこいい。
伏し目がちに楽器を弾くシンジの、その長い睫毛を見つめているとゾクゾクするくらいの色気があって、
それはきっとアスカ以外誰も知らないシンジの隠れた一面なのだ。
シンジが音楽に堪能だということは入学当初から一部の人には有名で、その噂を聞きつけた先生に頼まれ、
最初の音楽の授業の後、音楽室に居残ってピアノ、チェロ、ギターと、何曲か弾いたこともある。
その翌週から、なぜか音楽の教師が一ヶ月間病欠したのだが、それが曲解され、
音楽の教師が自分よりも遙かに上手いことにショックを受けて鬱病になったとか、
そんな都市伝説?まで流布されている。(実は事実なのだが、それは校長と理事長と教師本人しか知らない)
そのせいもあってか、シンジは人前では滅多に楽器を弾かない。だからこれはもうアスカの特権とも言える。
779: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:49:26.25 ID:???
>>778
曲を弾き終えたシンジがゆっくりと立ち上がる。アスカの拍手を微笑んで受け止めて、一礼する。
「最近あんまり弾いてないから、上手く弾けなかったかも…ごめん」
「何言ってんの、ものっすごく上手いわよ。シンジってばこれで飯食っていけるわよ」
アスカはそう言いながら、自分が世界的演奏家碇シンジを支える貞淑な妻、
碇アスカになっているところを想像して、顔を赤らめる。
「いやいや、そんなの無理だし、頑張ってる人に失礼だよ…。」
本気で照れているシンジを見て、アスカはまた顔を赤らめる。
「いやでも、世界中を演奏旅行とかで2人で巡るっていうのもいいかな…って///」
それを聞いてシンジもその未来を想像してみる。悪くない、自分にもっと才能があれば。
「そうできたらいいけど、残念ながら僕の腕じゃ無理だよ…」
「何よつまんないわね」
「しょうがないだろ、どんなに努力しても越えられない壁っていうのはあるんだよ…」
それに、とシンジが続ける。
「世界中を回らなくたって、僕たちは2人でいられれば、それでいいんじゃないかな?」
「…それもそうね///」
一見平凡に見える生活であっても、2人が一緒にいるならば、それだけでも十分満たされる。
シンジもアスカも、それ以上は言わなくても、そのことを理解しあっていた。
「そういえば、来週音楽鑑賞教室があるよね、」シンジが思い出したように言う。
「そんなのあったっけ?」「あったよ。確か木曜日あたりだったはず…」
「そうだっけ?まあいいわ、木曜なら嫌いな科目ばっかりだから、願ったり叶ったりよ」
「でもアスカって、クラシック音楽なんてあんまり聴かないんじゃない?」
「…うーん、そうね、クラシックなんて、シンジが弾いてるのを聴いたのが初めてかも…」
「へー…そうなんだ。僕は叔母さんがクラシック好きで、小学生までは、バッハとかモーツァルトとか
ベートーベン、時々マーラーとストラヴィンスキー、そんな感じだったんだ。
中学に入ってから初めてビートルズを聴いて、それからかな、音楽が好きになったのって。」
「ふーん…なんかあたしと全然違うわね…。」とアスカが感心したように言う。
「あたしなんか毎週歌番組欠かさず見ていたけど…でも何も覚えてないわw」
曲を弾き終えたシンジがゆっくりと立ち上がる。アスカの拍手を微笑んで受け止めて、一礼する。
「最近あんまり弾いてないから、上手く弾けなかったかも…ごめん」
「何言ってんの、ものっすごく上手いわよ。シンジってばこれで飯食っていけるわよ」
アスカはそう言いながら、自分が世界的演奏家碇シンジを支える貞淑な妻、
碇アスカになっているところを想像して、顔を赤らめる。
「いやいや、そんなの無理だし、頑張ってる人に失礼だよ…。」
本気で照れているシンジを見て、アスカはまた顔を赤らめる。
「いやでも、世界中を演奏旅行とかで2人で巡るっていうのもいいかな…って///」
それを聞いてシンジもその未来を想像してみる。悪くない、自分にもっと才能があれば。
「そうできたらいいけど、残念ながら僕の腕じゃ無理だよ…」
「何よつまんないわね」
「しょうがないだろ、どんなに努力しても越えられない壁っていうのはあるんだよ…」
それに、とシンジが続ける。
「世界中を回らなくたって、僕たちは2人でいられれば、それでいいんじゃないかな?」
「…それもそうね///」
一見平凡に見える生活であっても、2人が一緒にいるならば、それだけでも十分満たされる。
シンジもアスカも、それ以上は言わなくても、そのことを理解しあっていた。
「そういえば、来週音楽鑑賞教室があるよね、」シンジが思い出したように言う。
「そんなのあったっけ?」「あったよ。確か木曜日あたりだったはず…」
「そうだっけ?まあいいわ、木曜なら嫌いな科目ばっかりだから、願ったり叶ったりよ」
「でもアスカって、クラシック音楽なんてあんまり聴かないんじゃない?」
「…うーん、そうね、クラシックなんて、シンジが弾いてるのを聴いたのが初めてかも…」
「へー…そうなんだ。僕は叔母さんがクラシック好きで、小学生までは、バッハとかモーツァルトとか
ベートーベン、時々マーラーとストラヴィンスキー、そんな感じだったんだ。
中学に入ってから初めてビートルズを聴いて、それからかな、音楽が好きになったのって。」
「ふーん…なんかあたしと全然違うわね…。」とアスカが感心したように言う。
「あたしなんか毎週歌番組欠かさず見ていたけど…でも何も覚えてないわw」
780: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:50:25.13 ID:???
>>779
ははは、と2人で笑う。こんな時間が2人にとってはとても重要で、何物にも代えがたい、大切なひととき。
「確か音楽鑑賞教室、バッハを中心としたバロック音楽なんだよな、楽しみだなぁ…」
シンジが心底楽しそうに微笑む。その笑顔を見るだけで、アスカもなんだか幸せな気分になる。
「バッハは知ってるけどね…。我がドイツの誇る音楽の父でしょ」「うん、そうそう」
「…でも、多分聴いたことないわw」ソファにひっくり返ってアスカは足を組む。
「え?そうかな?バッハくらいだと、意外と聴いていないようで、あちこちで聴いているもんだよ、」シンジが言う。
「そう?」
「そうだよ。そもそも僕が今弾いていたのだって、バッハだし、この前ピアノで弾いた曲だって、バッハだよ」
「え?そうなの?知らなかった…意外と心に残るメロディよね」
「うん。今度の木曜日、少しは楽しみになってきたでしょ?」
「…あたしはシンジと一緒なら、どこに行っても何をしてても楽しいもん///」
「///…ありがとう」「…ん」チュッ
その木曜日。シンジ達1年生は授業を午前中で終え、市民ホールに向かう。
バスに乗りながら、早くも演奏される曲をハミングしているシンジ。
「(シンジったら、本当に楽しみなのね…あたしも今度色々と研究してみようかしら…)」
隣の席に座っているシンジの横顔を見ながら、そんなことをぼんやりと考えるアスカ。
「(そういえば、シンジと知り合ってから、あたしの世界って随分広がったような気がするわ…)」
2人でいることで、お互いの趣味や嗜好を共有するようになり、確かにアスカもシンジも今までにない
経験をたくさん積んできた。
「(そしてこれからも…シンジとずっとずっと一緒に…///)」
シンジの腕に頬を寄せる。黙ってその頬を撫でてくれるシンジに、例えようもない幸せを感じるアスカだった。
ははは、と2人で笑う。こんな時間が2人にとってはとても重要で、何物にも代えがたい、大切なひととき。
「確か音楽鑑賞教室、バッハを中心としたバロック音楽なんだよな、楽しみだなぁ…」
シンジが心底楽しそうに微笑む。その笑顔を見るだけで、アスカもなんだか幸せな気分になる。
「バッハは知ってるけどね…。我がドイツの誇る音楽の父でしょ」「うん、そうそう」
「…でも、多分聴いたことないわw」ソファにひっくり返ってアスカは足を組む。
「え?そうかな?バッハくらいだと、意外と聴いていないようで、あちこちで聴いているもんだよ、」シンジが言う。
「そう?」
「そうだよ。そもそも僕が今弾いていたのだって、バッハだし、この前ピアノで弾いた曲だって、バッハだよ」
「え?そうなの?知らなかった…意外と心に残るメロディよね」
「うん。今度の木曜日、少しは楽しみになってきたでしょ?」
「…あたしはシンジと一緒なら、どこに行っても何をしてても楽しいもん///」
「///…ありがとう」「…ん」チュッ
その木曜日。シンジ達1年生は授業を午前中で終え、市民ホールに向かう。
バスに乗りながら、早くも演奏される曲をハミングしているシンジ。
「(シンジったら、本当に楽しみなのね…あたしも今度色々と研究してみようかしら…)」
隣の席に座っているシンジの横顔を見ながら、そんなことをぼんやりと考えるアスカ。
「(そういえば、シンジと知り合ってから、あたしの世界って随分広がったような気がするわ…)」
2人でいることで、お互いの趣味や嗜好を共有するようになり、確かにアスカもシンジも今までにない
経験をたくさん積んできた。
「(そしてこれからも…シンジとずっとずっと一緒に…///)」
シンジの腕に頬を寄せる。黙ってその頬を撫でてくれるシンジに、例えようもない幸せを感じるアスカだった。
781: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:51:30.08 ID:???
>>780
市民ホールは他の高校からも生徒が来ているらしく、様々な制服姿で混雑していた。
「ちょっと…こんなにいるの?すごいわね…少子化なんてどこの国の話よ?」
アスカは溜め息をつく。まるであの受験の日の電車の中にいるようだ。
なにせ1,000人近い高校生がいるのだ。館内は雑然騒然としている。
アスカも落ち着かずに、座席についてからも周囲をきょろきょろと見回しては、
他クラスの知り合いの子を見つけると手を振ったりしている。
「シンジ、何してるの?」「ん、プログラムを見てるんだよ」
そこには「第35回○○市音楽鑑賞教室」とあり、デカデカとバロック音楽に親しんでみよう、と書いてあった。
シンジの手元をのぞき込むアスカ。「さっき教室で配ってたよ」と言いながらも、イヤな顔はしないシンジ。
それが分かってるからやってるのよ、という顔でシンジの顔をちょっと見つめた後、ウインクをするアスカ。
プログラムにはこう書かれていた。
~チェロの音色を楽しもう~
バッハ「無伴奏チェロ組曲第一番プレリュード」
~チェンバロを知る~
バッハ「ブランデンブルク協奏曲第五番第一楽章」
ヘンデル「調子の良い鍛冶屋」
~きっと聴いたことがある名曲たち~
バッハ「管弦楽組曲第三番よりアリア」
パッヘルベルのカノン
バッハ カンタータ147番より「主よ、人の望みの喜びよ」
「ほら、この一番最初のは、この前僕が弾いたやつだよ」シンジが一番最初の曲目を指で差す。
「へー、あれってこんな長い名前がついてたのね」アスカはシンジの演奏を思い出して、ちょっと顔を赤らめる。
と、ブザーが鳴る。開演だ。
市民ホールは他の高校からも生徒が来ているらしく、様々な制服姿で混雑していた。
「ちょっと…こんなにいるの?すごいわね…少子化なんてどこの国の話よ?」
アスカは溜め息をつく。まるであの受験の日の電車の中にいるようだ。
なにせ1,000人近い高校生がいるのだ。館内は雑然騒然としている。
アスカも落ち着かずに、座席についてからも周囲をきょろきょろと見回しては、
他クラスの知り合いの子を見つけると手を振ったりしている。
「シンジ、何してるの?」「ん、プログラムを見てるんだよ」
そこには「第35回○○市音楽鑑賞教室」とあり、デカデカとバロック音楽に親しんでみよう、と書いてあった。
シンジの手元をのぞき込むアスカ。「さっき教室で配ってたよ」と言いながらも、イヤな顔はしないシンジ。
それが分かってるからやってるのよ、という顔でシンジの顔をちょっと見つめた後、ウインクをするアスカ。
プログラムにはこう書かれていた。
~チェロの音色を楽しもう~
バッハ「無伴奏チェロ組曲第一番プレリュード」
~チェンバロを知る~
バッハ「ブランデンブルク協奏曲第五番第一楽章」
ヘンデル「調子の良い鍛冶屋」
~きっと聴いたことがある名曲たち~
バッハ「管弦楽組曲第三番よりアリア」
パッヘルベルのカノン
バッハ カンタータ147番より「主よ、人の望みの喜びよ」
「ほら、この一番最初のは、この前僕が弾いたやつだよ」シンジが一番最初の曲目を指で差す。
「へー、あれってこんな長い名前がついてたのね」アスカはシンジの演奏を思い出して、ちょっと顔を赤らめる。
と、ブザーが鳴る。開演だ。
782: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:53:00.38 ID:???
>>781
「始まるよ、聴こう」
シンジの囁き声を合図に、アスカは右腕をシンジの左腕にからめ、頬をシンジの左肩に寄せて、目を閉じる。
2分半ばかりの演奏の後、拍手がパラパラと起こる。シンジは熱心に拍手をしている。
「ふん、まあまあね…。やっぱりシンジの方が上手かったわ…」
「まさか、そんなことはないよ」シンジが慌てた様子で言う。
「そんなことないわよ、少なくともあたしにとってはシンジの方が上手かったわ」
アスカは本気だ。シンジはにっこりと笑って「なんだか照れくさいけど、でもありがとう」と言う。
アスカも微笑み返す。そんなことをしている間に2曲目が始まろうとしている。
楽団の人がチェンバロの説明をしている。
「ねぇ、チェンバロって何?」アスカが聞く。
「今説明してたよ、ほら、あの真ん中にあるピアノみたいなのがそうだよ」
「へー、黒いところと白いところが逆になってるわ…」「アスカ、よく見えるね」
「へへ~両目1.5よ、コンタクトだけど」「なんだw」
「ほら、静かにしなさい」ミサトが後ろから2人の頭を押さえつける。
「あ…すいません」2人とも同時に首をすくめ、椅子に深く沈み込む。
「仲がいいのは結構だけど、今は授業中なのよ、ちゃんと話を聞きなさい」「は~い」
演奏が始まる。
シンジは目を閉じて、曲の流れに身を任せている。その隣でシンジと腕を組んでいるアスカも
目を閉じて、曲の流れ…というよりはシンジと一緒になっている。
チェンバロのカデンツァが終わり、フィナーレを迎える。拍手をしながらシンジが目を開き、
アスカを見て微笑む。
アスカもシンジが目を開くのを感じて、シンジに微笑み返す。
その光景を見て、後ろでミサトが身悶えしているのも知らずに、2人は頬を寄せ合って幸せそうだ。
「始まるよ、聴こう」
シンジの囁き声を合図に、アスカは右腕をシンジの左腕にからめ、頬をシンジの左肩に寄せて、目を閉じる。
2分半ばかりの演奏の後、拍手がパラパラと起こる。シンジは熱心に拍手をしている。
「ふん、まあまあね…。やっぱりシンジの方が上手かったわ…」
「まさか、そんなことはないよ」シンジが慌てた様子で言う。
「そんなことないわよ、少なくともあたしにとってはシンジの方が上手かったわ」
アスカは本気だ。シンジはにっこりと笑って「なんだか照れくさいけど、でもありがとう」と言う。
アスカも微笑み返す。そんなことをしている間に2曲目が始まろうとしている。
楽団の人がチェンバロの説明をしている。
「ねぇ、チェンバロって何?」アスカが聞く。
「今説明してたよ、ほら、あの真ん中にあるピアノみたいなのがそうだよ」
「へー、黒いところと白いところが逆になってるわ…」「アスカ、よく見えるね」
「へへ~両目1.5よ、コンタクトだけど」「なんだw」
「ほら、静かにしなさい」ミサトが後ろから2人の頭を押さえつける。
「あ…すいません」2人とも同時に首をすくめ、椅子に深く沈み込む。
「仲がいいのは結構だけど、今は授業中なのよ、ちゃんと話を聞きなさい」「は~い」
演奏が始まる。
シンジは目を閉じて、曲の流れに身を任せている。その隣でシンジと腕を組んでいるアスカも
目を閉じて、曲の流れ…というよりはシンジと一緒になっている。
チェンバロのカデンツァが終わり、フィナーレを迎える。拍手をしながらシンジが目を開き、
アスカを見て微笑む。
アスカもシンジが目を開くのを感じて、シンジに微笑み返す。
その光景を見て、後ろでミサトが身悶えしているのも知らずに、2人は頬を寄せ合って幸せそうだ。
783: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:53:39.38 ID:???
>>782
「シンジ…」「…アスカ」「ん…」
「…こら、そっから先はいかに私と言えども許さないわよ…」ムンズ
危うく?キスしそうになるところを、後ろから再びミサトに押さえつけられるご両人w
「2人だけの世界に浸るのも結構ですけどね、ここは公共の場よ、授業中よ、あんたたちいい加減にしときなさい」
やっかみもいくらか混じりながら、ミサトが諭す。「ちぇっ、つまんないの」という顔をして
そっぽを向くアスカと、顔を赤らめて下を向くシンジ。
バッハとは違う軽快なメロディが会場内に慎ましく響いている。
休憩時間。生徒達はトイレに行ったり、その場で伸びをしたり、あるいは爆睡中だったり。
「ん~思ってたよりもいい感じじゃない」
アスカがその場で伸びをしながらシンジに向かって言う。
「良かった、アスカもきっと気に入ってくれると思ってたんだ」シンジがほっとしたように言う。
「こういう曲を聴きながら、午後のお茶するのも悪くないわよね…」アスカはまたもや妄想の世界に入り込む。
頭の中では、シンジと2人でイギリス調庭園で紅茶を楽しんでいる。いや、シンジと2人きりではない。
庭の向こう側で遊んでいるのは…娘と息子だ。もちろん、シンジとの子供。
足下には子犬がいて、のんびりと昼寝をしている。お茶を飲みながら微笑みあい、キスをする2人。
「ん…ダメよシンジ…子供たちが見ているわ…」ウットリ
「何言ってるのアスカ?寝てるの?」ユサユサ「!」ビクッ
顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。「な、なんでもない///」
シンジの方を見ながら、ふとアスカは思う。
「(そういえば、最近あの悪夢を見なくなったな…)」
現実に王子様が目の前にいるからかしら?そう思ってまたアスカの顔は赤くなる。
「どうしたのアスカ?具合でも悪いの?」シンジがよく分からず心配している。
「なんでもないわよ、ほら、第二部始まるわよ、」
そう言いながら、アスカは最後に小さい声で付け加えてみる。
「…あなた」と。
「シンジ…」「…アスカ」「ん…」
「…こら、そっから先はいかに私と言えども許さないわよ…」ムンズ
危うく?キスしそうになるところを、後ろから再びミサトに押さえつけられるご両人w
「2人だけの世界に浸るのも結構ですけどね、ここは公共の場よ、授業中よ、あんたたちいい加減にしときなさい」
やっかみもいくらか混じりながら、ミサトが諭す。「ちぇっ、つまんないの」という顔をして
そっぽを向くアスカと、顔を赤らめて下を向くシンジ。
バッハとは違う軽快なメロディが会場内に慎ましく響いている。
休憩時間。生徒達はトイレに行ったり、その場で伸びをしたり、あるいは爆睡中だったり。
「ん~思ってたよりもいい感じじゃない」
アスカがその場で伸びをしながらシンジに向かって言う。
「良かった、アスカもきっと気に入ってくれると思ってたんだ」シンジがほっとしたように言う。
「こういう曲を聴きながら、午後のお茶するのも悪くないわよね…」アスカはまたもや妄想の世界に入り込む。
頭の中では、シンジと2人でイギリス調庭園で紅茶を楽しんでいる。いや、シンジと2人きりではない。
庭の向こう側で遊んでいるのは…娘と息子だ。もちろん、シンジとの子供。
足下には子犬がいて、のんびりと昼寝をしている。お茶を飲みながら微笑みあい、キスをする2人。
「ん…ダメよシンジ…子供たちが見ているわ…」ウットリ
「何言ってるのアスカ?寝てるの?」ユサユサ「!」ビクッ
顔が真っ赤になるのが自分でも分かる。「な、なんでもない///」
シンジの方を見ながら、ふとアスカは思う。
「(そういえば、最近あの悪夢を見なくなったな…)」
現実に王子様が目の前にいるからかしら?そう思ってまたアスカの顔は赤くなる。
「どうしたのアスカ?具合でも悪いの?」シンジがよく分からず心配している。
「なんでもないわよ、ほら、第二部始まるわよ、」
そう言いながら、アスカは最後に小さい声で付け加えてみる。
「…あなた」と。
784: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:54:24.00 ID:???
>>783
しかし、異変はその直後に起こった。第二部、バッハの管弦楽組曲第三番からアリア。
美しいはずのメロディだが、アスカは何故か身体が震えて止まらない。
そしてこの絶え間ない恐怖心。思わずシンジの手を握りしめる。力一杯。
その様子にシンジも驚く。「どうしたのアスカ?」小声でアスカに訊ねる。
「…ん、大丈夫…でもちょっと寒気が…」「…アスカ、顔が真っ青だよ」
シンジがアスカに手を握り返す。アスカのおでこに触れるシンジの手のひら。
その僅かな温もりに、少し安心するアスカ。
「…シンジ、」「何?アスカ、」「…ダメ、怖い…怖い…」
アスカが震えている。「大丈夫?アスカ、外で横になる?」シンジがそっと立ち上がろうとする。
「…ダメ、離さないで…」シンジの手を握りしめ、しがみつくようにもたれかかるアスカ。
シンジは気が気ではない。アリアが終わり、ミサトを呼ぼうかと後ろを振り返ろうとしたその時、
ドスン
しかし、異変はその直後に起こった。第二部、バッハの管弦楽組曲第三番からアリア。
美しいはずのメロディだが、アスカは何故か身体が震えて止まらない。
そしてこの絶え間ない恐怖心。思わずシンジの手を握りしめる。力一杯。
その様子にシンジも驚く。「どうしたのアスカ?」小声でアスカに訊ねる。
「…ん、大丈夫…でもちょっと寒気が…」「…アスカ、顔が真っ青だよ」
シンジがアスカに手を握り返す。アスカのおでこに触れるシンジの手のひら。
その僅かな温もりに、少し安心するアスカ。
「…シンジ、」「何?アスカ、」「…ダメ、怖い…怖い…」
アスカが震えている。「大丈夫?アスカ、外で横になる?」シンジがそっと立ち上がろうとする。
「…ダメ、離さないで…」シンジの手を握りしめ、しがみつくようにもたれかかるアスカ。
シンジは気が気ではない。アリアが終わり、ミサトを呼ぼうかと後ろを振り返ろうとしたその時、
ドスン
785: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/03(日) 00:59:07.31 ID:???
参考映像(管理人注:作者さんがシンジ君が弾いたと記述している曲の数々らしいです。元スレとは異なり、公式の動画をリンクしてます)
Glenn Gould: Bach Goldberg Variations 1981 Studio Video
789: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 00:57:52.54 ID:???
Glenn Gould: Bach Goldberg Variations 1981 Studio Video
789: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 00:57:52.54 ID:???
>>784
背中に何かが突き刺さったような衝撃があって、僕の目の前は真っ赤になった。
不思議と痛みは感じなかったけど、僕はその場で倒れてしまったらしい。
気がつくと、僕は浮かんでいた。狭く暗い部屋の中で、浮かんでいた。
そして血のような、海辺にいるような、不思議な匂い。液体の中に浮かんでいるのに、
息が出来ないのに、苦しくもない。とすると、これは夢か。夢ならまだ安心できる。
少なくとも僕は死んではいないわけだ。
ここはどこ?どう控えめに考えても、コンサートホールではない。なんだこれ?僕はどこにいるんだ?
「…」何かが聞こえる。
僕はその音が聞こえる方向に身体の向きを変え、音の発生源を探ろうとする。
操縦席のようなものが下に見える。そちらの方向に泳ぎ出す。
微かに、微かにだけど、カノンが聞こえる。パッヘルベルのカノン。
そういえば、音楽鑑賞教室で今流れているのはこのカノンのはずだ。
何かが動く。誰かがいる。操縦席の後ろから、僕はその影をのぞき込む。
「あれは…僕?」そして、僕と向かい合っている青い髪の女の子。見た事がある気がするけど…
「綾…波?」
その瞬間、僕の手を引っ張るものに気づく。僕の左手に繋がれていたもの、それは…
「アスカ!」
僕は、目が覚める。目覚める瞬間に、全て思い出す。そうだ、僕たちは仕組まれた子供だったんだ…。
そして同時に気がつく。僕が目覚めた時、今思い出したことは全て、忘れてしまっていることを。
そうだ、ひょっとしたら毎夜毎夜、僕はこんな夢を見ているのかもしれない。前世の夢を。
そして毎朝毎朝、それらを忘れて目覚める。
どうしようもなく、無力感に打ちひしがれる。
けれども、僕にはやらなければいけないことがある。アスカを、守らなきゃ。
それだけは忘れてはならない。というか、僕はそのために何度でも生まれてきたんだ。
僕の生まれてきた理由は、そこにあるんだ。
僕は、アスカを助けに行く。そして、立ち上がる。
「アスカ!」
背中に何かが突き刺さったような衝撃があって、僕の目の前は真っ赤になった。
不思議と痛みは感じなかったけど、僕はその場で倒れてしまったらしい。
気がつくと、僕は浮かんでいた。狭く暗い部屋の中で、浮かんでいた。
そして血のような、海辺にいるような、不思議な匂い。液体の中に浮かんでいるのに、
息が出来ないのに、苦しくもない。とすると、これは夢か。夢ならまだ安心できる。
少なくとも僕は死んではいないわけだ。
ここはどこ?どう控えめに考えても、コンサートホールではない。なんだこれ?僕はどこにいるんだ?
「…」何かが聞こえる。
僕はその音が聞こえる方向に身体の向きを変え、音の発生源を探ろうとする。
操縦席のようなものが下に見える。そちらの方向に泳ぎ出す。
微かに、微かにだけど、カノンが聞こえる。パッヘルベルのカノン。
そういえば、音楽鑑賞教室で今流れているのはこのカノンのはずだ。
何かが動く。誰かがいる。操縦席の後ろから、僕はその影をのぞき込む。
「あれは…僕?」そして、僕と向かい合っている青い髪の女の子。見た事がある気がするけど…
「綾…波?」
その瞬間、僕の手を引っ張るものに気づく。僕の左手に繋がれていたもの、それは…
「アスカ!」
僕は、目が覚める。目覚める瞬間に、全て思い出す。そうだ、僕たちは仕組まれた子供だったんだ…。
そして同時に気がつく。僕が目覚めた時、今思い出したことは全て、忘れてしまっていることを。
そうだ、ひょっとしたら毎夜毎夜、僕はこんな夢を見ているのかもしれない。前世の夢を。
そして毎朝毎朝、それらを忘れて目覚める。
どうしようもなく、無力感に打ちひしがれる。
けれども、僕にはやらなければいけないことがある。アスカを、守らなきゃ。
それだけは忘れてはならない。というか、僕はそのために何度でも生まれてきたんだ。
僕の生まれてきた理由は、そこにあるんだ。
僕は、アスカを助けに行く。そして、立ち上がる。
「アスカ!」
790: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:13:23.60 ID:???
>>789
ここはどこ?あたしは、沈んでいる。これは…あの夢だ。顔がない白い巨人に襲われる夢。
シンジが王子様となって、助けてきてくれる夢。
そうと分かりながらも、いつもと違うことに、あたしは気がつく。匂いだ。
いつもの夢は、総天然色音声付きではあったけれど、匂いはなかった。
この匂い…血の匂いに近い。でも何故か、懐かしい感じがする。
あたしは、起き上がる。そう、この赤い巨人に乗って、敵を倒すんだわ。
一度はボロボロにやられてしまうけれど、シンジが助けに来てくれる。分かっているから、気が楽だ。
でもどうしちゃったんだろう、あたしってば音楽鑑賞教室で、バッハを聴いていたはず。
音楽を聴きながら眠ってしまったのかしら…?
イヤ、違う。あたしは突如として思い出す。この白い巨人と戦い、奴らに陵辱されている時に、
流れていたのがこの曲だ。聴いた事ない、なんて嘘だ。あたしの潜在意識の中に、焼き付いているのがこの曲だ。
いつもとは違う、そんな違和感を覚えながら、あたしは戦う。腕を食いちぎられる痛み。
背中を刺される痛み。でも、これを乗り越えれば、シンジが助けに来てくれる。
あたしは、待つ。電源が切れて為す術もなくなったエヴァ弐号機に乗って、待つ。
エヴァ弐号機?何よそれ?
ふと浮かんだ単語に意識を奪われたせいなのか、シンジが現れずに場面が進み出す。え、ちょっと待って、
あたしの声は届かない。槍が左目に突き刺さる。激痛。思わず叫ぶ。シンジ、シンジ、どこにいるの?助けてよシンジ…。
右手を空に向かって…そこであたしは気がつく。
この手!そうだ、あたし、シンジと手を繋いでいたんだ!
シンジ!あたしは思いっきり、繋いでいた手を引き寄せる。そしてそこに飛び込む。
そうやって、あたしは目覚める。
目覚める瞬間に、全て思い出す。そうだ、あたしたち、仕組まれた子供だったんだわ。
そして同時に悟る。目覚めた時に、この秘密はあたしたちの記憶からすっぽりと抜け落ちている事を。
鍵のかかった部屋に、仕舞われていくあたしたちの過去世。
でも、それと引き替えにシンジを手に入れることができるのであれば、あたしは迷わない。
「シンジ!」
ここはどこ?あたしは、沈んでいる。これは…あの夢だ。顔がない白い巨人に襲われる夢。
シンジが王子様となって、助けてきてくれる夢。
そうと分かりながらも、いつもと違うことに、あたしは気がつく。匂いだ。
いつもの夢は、総天然色音声付きではあったけれど、匂いはなかった。
この匂い…血の匂いに近い。でも何故か、懐かしい感じがする。
あたしは、起き上がる。そう、この赤い巨人に乗って、敵を倒すんだわ。
一度はボロボロにやられてしまうけれど、シンジが助けに来てくれる。分かっているから、気が楽だ。
でもどうしちゃったんだろう、あたしってば音楽鑑賞教室で、バッハを聴いていたはず。
音楽を聴きながら眠ってしまったのかしら…?
イヤ、違う。あたしは突如として思い出す。この白い巨人と戦い、奴らに陵辱されている時に、
流れていたのがこの曲だ。聴いた事ない、なんて嘘だ。あたしの潜在意識の中に、焼き付いているのがこの曲だ。
いつもとは違う、そんな違和感を覚えながら、あたしは戦う。腕を食いちぎられる痛み。
背中を刺される痛み。でも、これを乗り越えれば、シンジが助けに来てくれる。
あたしは、待つ。電源が切れて為す術もなくなったエヴァ弐号機に乗って、待つ。
エヴァ弐号機?何よそれ?
ふと浮かんだ単語に意識を奪われたせいなのか、シンジが現れずに場面が進み出す。え、ちょっと待って、
あたしの声は届かない。槍が左目に突き刺さる。激痛。思わず叫ぶ。シンジ、シンジ、どこにいるの?助けてよシンジ…。
右手を空に向かって…そこであたしは気がつく。
この手!そうだ、あたし、シンジと手を繋いでいたんだ!
シンジ!あたしは思いっきり、繋いでいた手を引き寄せる。そしてそこに飛び込む。
そうやって、あたしは目覚める。
目覚める瞬間に、全て思い出す。そうだ、あたしたち、仕組まれた子供だったんだわ。
そして同時に悟る。目覚めた時に、この秘密はあたしたちの記憶からすっぽりと抜け落ちている事を。
鍵のかかった部屋に、仕舞われていくあたしたちの過去世。
でも、それと引き替えにシンジを手に入れることができるのであれば、あたしは迷わない。
「シンジ!」
791: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:14:29.23 ID:???
>>790
「気がついた?良かったぁぁぁぁ」
シンジとアスカが同時に目を開ける。そこにはミサトがいる。涙ぐんでる。
「…」声が出ない。声にならない。
「ア、アスカは?」ようやく出たシンジの声は、やはりアスカを呼ぶ。
ミサトはほっとしたように息を吐くと、シンジの隣を見やる。
「あなたの奥様はすぐ隣でお目覚めよ。」
シンジがやっとの思いで頭を動かすと、左隣にアスカがいた。アスカもシンジの方を向いている。
「アスカ…」「シンジ…」
「アスカ…どうしたの?左目が真っ赤だよ」
「わからない…でも大丈夫よ。シンジは大丈夫なの?」アスカが
「何か、夢を見ていた気がするんだ。とっても大事な夢だったと思うんだけど、でも思い出せない」
「あたしも夢をみていたわ…。いつも見る夢だったんだけど、いつもとちょっと違ってた。
いつもはシンジが助けに来てくれるんだけど、今見た夢は、あたしがシンジを見つけ出すの」
その会話を聞きながら、ミサトが呆れたように言う。
「ほんっと、夢の中でも仲がよろしいこと。あんたたち、気を失っていても手だけは離さないんだもの、
おまけにどうやっても引き離せないし…医務室に運ぶの大変だったのよ」
後で聞いたところによると、鑑賞教室終了後に眠っているかのように折り重なる2人をミサトが見つけ、
大騒動になったらしい。救急車を呼ぼうかということにもなったみたいなのだが、
呼吸も血圧も安定していたので、ひとまず医務室で様子を見ようということになったのだとか。
だがしかし、シンジとアスカが繋いだ手は、まるで一体化したかのように固く固く結ばれ、
男性教師が3人がかりになっても引き離すことが出来ず、最後は半ば自棄気味に、ミサトの命によって
まとめてストレッチャーで運ばれたらしい。ストレッチャーに乗せてる時も、シンジがまるで
アスカを守るように自然と右腕でアスカを抱き留めるような姿勢になったとか。
これはこれで後に学院の伝説となるのだが、今回は詳述しない。
「気がついた?良かったぁぁぁぁ」
シンジとアスカが同時に目を開ける。そこにはミサトがいる。涙ぐんでる。
「…」声が出ない。声にならない。
「ア、アスカは?」ようやく出たシンジの声は、やはりアスカを呼ぶ。
ミサトはほっとしたように息を吐くと、シンジの隣を見やる。
「あなたの奥様はすぐ隣でお目覚めよ。」
シンジがやっとの思いで頭を動かすと、左隣にアスカがいた。アスカもシンジの方を向いている。
「アスカ…」「シンジ…」
「アスカ…どうしたの?左目が真っ赤だよ」
「わからない…でも大丈夫よ。シンジは大丈夫なの?」アスカが
「何か、夢を見ていた気がするんだ。とっても大事な夢だったと思うんだけど、でも思い出せない」
「あたしも夢をみていたわ…。いつも見る夢だったんだけど、いつもとちょっと違ってた。
いつもはシンジが助けに来てくれるんだけど、今見た夢は、あたしがシンジを見つけ出すの」
その会話を聞きながら、ミサトが呆れたように言う。
「ほんっと、夢の中でも仲がよろしいこと。あんたたち、気を失っていても手だけは離さないんだもの、
おまけにどうやっても引き離せないし…医務室に運ぶの大変だったのよ」
後で聞いたところによると、鑑賞教室終了後に眠っているかのように折り重なる2人をミサトが見つけ、
大騒動になったらしい。救急車を呼ぼうかということにもなったみたいなのだが、
呼吸も血圧も安定していたので、ひとまず医務室で様子を見ようということになったのだとか。
だがしかし、シンジとアスカが繋いだ手は、まるで一体化したかのように固く固く結ばれ、
男性教師が3人がかりになっても引き離すことが出来ず、最後は半ば自棄気味に、ミサトの命によって
まとめてストレッチャーで運ばれたらしい。ストレッチャーに乗せてる時も、シンジがまるで
アスカを守るように自然と右腕でアスカを抱き留めるような姿勢になったとか。
これはこれで後に学院の伝説となるのだが、今回は詳述しない。
792: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:16:36.78 ID:???
>>792
「どうする?一応病院行って検査受けてくる?」
ミサトが心配しながら言う。
「特にシンジ君、あなたの手のひらに出来ているアザ、どこかにぶつけたの?
それにしては変な場所に出来ているけど…」
言われてシンジは初めて気がつく。左の手のひらの中央部分に黒い痣が出来ている。
どうしてなんだろう?よくわからない。ほんの一瞬迷ったが、心に決める。そして力強く答える。
「いえ、多分大丈夫です。別にどこもおかしくないから」アスカも頷く。
「そう?ならいいけど…。でも数日は様子を見るのよ、吐き気とか痺れとかがあったら、すぐに言いなさい」
ミサトの言う事に、素直に頷く2人。
「じゃあ、帰るわよ。学校まで送っていくわ。」「あれ?みんなは?」
「は?とっくに帰ってるわよ。今何時だと思ってんの?」時計を見る。17時。
アスカとシンジは顔を見合わせる。2人して苦笑いをする。
ミサトはやれやれ、と言った顔をして立ち上がる。
「ほら、いつまで手ぇ握ってんの?それとも本当に同化しちゃったの?」
「どうする?一応病院行って検査受けてくる?」
ミサトが心配しながら言う。
「特にシンジ君、あなたの手のひらに出来ているアザ、どこかにぶつけたの?
それにしては変な場所に出来ているけど…」
言われてシンジは初めて気がつく。左の手のひらの中央部分に黒い痣が出来ている。
どうしてなんだろう?よくわからない。ほんの一瞬迷ったが、心に決める。そして力強く答える。
「いえ、多分大丈夫です。別にどこもおかしくないから」アスカも頷く。
「そう?ならいいけど…。でも数日は様子を見るのよ、吐き気とか痺れとかがあったら、すぐに言いなさい」
ミサトの言う事に、素直に頷く2人。
「じゃあ、帰るわよ。学校まで送っていくわ。」「あれ?みんなは?」
「は?とっくに帰ってるわよ。今何時だと思ってんの?」時計を見る。17時。
アスカとシンジは顔を見合わせる。2人して苦笑いをする。
ミサトはやれやれ、と言った顔をして立ち上がる。
「ほら、いつまで手ぇ握ってんの?それとも本当に同化しちゃったの?」
793: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:17:15.24 ID:???
>>792
「あんたたち、スゴイうなされていたのよ…」
帰りのクルマの中で、ミサトが後部座席に座った教え子達に言う。
詳しくは語らないけど、その言葉の裏で、ミサトがどれだけ2人のことを心配していたのかが伝わってくる。
「本当にすいませんでした…」「ごめんなさい」2人が口々に謝る。
「別に謝るようなことじゃないからいいのよ、それよりあんたがたが心配だわさ」
左折の巻き込み確認をしながら、ちら、とミサトが後部座席を見る。
「大丈夫だと思います…。そのときのことは覚えてないけど…」シンジがゆっくりと言う。
シンジは気づいている。左手のひらの痣、アスカと繋いでいた右手のひらにも同じような痣が出来ていたことを。
そしてうっすらと血のような匂いがしたことを。ただ、それが何を意味するのかは、思い出せない。
クルマは静かに校内に滑り込む。
「あんたたち、どうする?荷物取ったら寮まで送ろうか?」クルマを降りる時にミサトが言う。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」シンジが返す。
「ありがとうミサト、今度ラーメンくらいなら奢るわよ」アスカが手を振る。
「…まあ、それだけ元気なら大丈夫か。じゃああたしはちょっと仕事してから帰るから」
ミサトは職員室に消えていく。アスカとシンジは教室に鞄を取りに戻る。
「あんたたち、スゴイうなされていたのよ…」
帰りのクルマの中で、ミサトが後部座席に座った教え子達に言う。
詳しくは語らないけど、その言葉の裏で、ミサトがどれだけ2人のことを心配していたのかが伝わってくる。
「本当にすいませんでした…」「ごめんなさい」2人が口々に謝る。
「別に謝るようなことじゃないからいいのよ、それよりあんたがたが心配だわさ」
左折の巻き込み確認をしながら、ちら、とミサトが後部座席を見る。
「大丈夫だと思います…。そのときのことは覚えてないけど…」シンジがゆっくりと言う。
シンジは気づいている。左手のひらの痣、アスカと繋いでいた右手のひらにも同じような痣が出来ていたことを。
そしてうっすらと血のような匂いがしたことを。ただ、それが何を意味するのかは、思い出せない。
クルマは静かに校内に滑り込む。
「あんたたち、どうする?荷物取ったら寮まで送ろうか?」クルマを降りる時にミサトが言う。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」シンジが返す。
「ありがとうミサト、今度ラーメンくらいなら奢るわよ」アスカが手を振る。
「…まあ、それだけ元気なら大丈夫か。じゃああたしはちょっと仕事してから帰るから」
ミサトは職員室に消えていく。アスカとシンジは教室に鞄を取りに戻る。
794: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:19:06.03 ID:???
>>793
「シンジ…」アスカがシンジに寄り添うように歩きながら訊ねる。
「あたしたち、同じ夢を見ていたのかな…?」
「どうだろう…よく分かんないよ」シンジは頭を押さえながら廊下を歩く。ちょっとよろける。
「シンジ大丈夫?」アスカがシンジの腕を取って支える格好になる。「頭、痛いの?」
「…ん…人類…補…完計…画…」「え?なにそれ?」
「よく分かんないけど、突然頭に浮かんだんだ。」いててて、と頭を押さえながらシンジが答える。
「シンジ、大丈夫?保健室寄って、頭痛薬もらってくる?」アスカが心配そうだ。
「ん…大丈夫だよ。このくらいの頭痛なら時々あるんだ」とは言うものの、シンジの顔色は良くない。
玄関を出てから、またふらつくシンジ。
「少し、休んでいきましょ、」アスカが体育館横にあるベンチを指差す。2人で腰を下ろす。
「ほら、見て見てシンジ、いちばん星が綺麗」アスカに言われるまでもなく、
夕焼け空から星空に変わりつつある空に見とれているシンジ。
「…いつになっても、こんな空を眺めている2人でいたいよね…」シンジが呟く。
「当たり前じゃない、いたいよね、じゃないわ、いるのよ」シンジの肩に頬を寄せるアスカ。
少しずつ暗くなる中で、一瞬、2人のシルエットが重なる。
「あれ?」シンジが顔を上げる。「どうしたの?」
「ピアノの音が聞こえたような気がしたんだけど…」シンジがいぶかしげに体育館の方を見る。
「こんな時間に?あたしには聞こえなかったわ」アスカが不安そうにシンジを見つめる。
「ちょっと見てみる」シンジは立ち上がると、体育館の中を覗きこむ。
音楽鑑賞教室があったために部活動はお休みで、体育館の中は薄暗く、誰も居ない。
「あ、」シンジが声を上げるとそのまま体育館の中に入っていく。「え、どうしたの?」アスカが慌てて後を追う。
「ピアノが…」シンジが舞台の一点を凝視している。
「シンジ…」アスカがシンジに寄り添うように歩きながら訊ねる。
「あたしたち、同じ夢を見ていたのかな…?」
「どうだろう…よく分かんないよ」シンジは頭を押さえながら廊下を歩く。ちょっとよろける。
「シンジ大丈夫?」アスカがシンジの腕を取って支える格好になる。「頭、痛いの?」
「…ん…人類…補…完計…画…」「え?なにそれ?」
「よく分かんないけど、突然頭に浮かんだんだ。」いててて、と頭を押さえながらシンジが答える。
「シンジ、大丈夫?保健室寄って、頭痛薬もらってくる?」アスカが心配そうだ。
「ん…大丈夫だよ。このくらいの頭痛なら時々あるんだ」とは言うものの、シンジの顔色は良くない。
玄関を出てから、またふらつくシンジ。
「少し、休んでいきましょ、」アスカが体育館横にあるベンチを指差す。2人で腰を下ろす。
「ほら、見て見てシンジ、いちばん星が綺麗」アスカに言われるまでもなく、
夕焼け空から星空に変わりつつある空に見とれているシンジ。
「…いつになっても、こんな空を眺めている2人でいたいよね…」シンジが呟く。
「当たり前じゃない、いたいよね、じゃないわ、いるのよ」シンジの肩に頬を寄せるアスカ。
少しずつ暗くなる中で、一瞬、2人のシルエットが重なる。
「あれ?」シンジが顔を上げる。「どうしたの?」
「ピアノの音が聞こえたような気がしたんだけど…」シンジがいぶかしげに体育館の方を見る。
「こんな時間に?あたしには聞こえなかったわ」アスカが不安そうにシンジを見つめる。
「ちょっと見てみる」シンジは立ち上がると、体育館の中を覗きこむ。
音楽鑑賞教室があったために部活動はお休みで、体育館の中は薄暗く、誰も居ない。
「あ、」シンジが声を上げるとそのまま体育館の中に入っていく。「え、どうしたの?」アスカが慌てて後を追う。
「ピアノが…」シンジが舞台の一点を凝視している。
795: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:19:43.20 ID:???
>>795
普段は舞台袖の倉庫に収納されているピアノが、なぜか舞台上に居る。蓋も開いている。
「なんでだろう…?誰か片付け忘れたのかしら?」アスカが呟く。
シンジは黙って真っ直ぐにそのピアノに向かっていく。「ちょ、ちょっとシンジ、」
アスカがシンジの後を追いかける。
「勝手に触ったら怒られるわよ」
だがシンジは無言のまま、舞台に上がるとピアノの前に立つ。
「どうしたのシンジ?」今日の出来事があるから、アスカは不安でたまらない。
「…なんか、このピアノが僕を呼んでる気がしたんだ」シンジがピアノに優しく触れる。
とても古いピアノで、調律も出来ているのか分からない。普段は舞台袖の奥の倉庫の中で埃をかぶっていて、
年に数回も弾かれる機会がない、そんな半ば骨董品と化したピアノ。
シンジは椅子に腰掛ける。そして、曲を弾き出す。
穏やかで、静かで、美しいメロディ。
「この曲…何?」「バッハのカンタータ147番のコラールだよ、主よ、人の望みの喜びよ、って言われてる曲」
「それって…」「そう、音楽鑑賞教室の最後にやったはずの曲だよ。僕たち、聞けなかったからね…」
アスカがビクッとする。「多分、大丈夫だと思うよ」シンジは、そんなアスカの気持ちを理解して、言う。
「でも具合悪くなるようなら言って。すぐに止めるから」
「…どうして大丈夫だと思うの?」アスカが訊ねる。
「どうしてかわかんないけど…このピアノがこの曲を弾いてくれ、って言ってるような気がしたんだ」
シンジはコラール部分を口ずさみながら、ゆっくりとしたテンポで弾いていく。
Jesus bleibet meine Freude , Meines Herzens Trost und Saft
Jesus wehret allem Leide , Er ist meines Lebens Kraft
Meiner Augen Lust und Sonne , Meiner Seele Schatz und Wonne
Darum lass ich Jesum nicht , Aus dem Herzen und Gesicht.
アスカは歌詞の意味を噛みしめながら、シンジの隣に立って、曲を聴いている。
時間にして僅かに4分ほどではあったが、曲が終わった時、アスカは自分が泣いていたことを知る。
シンジはじっと自分の両手を見ている。両手のひらにあった黒い痣が、消えている。
シンジは感じる。自分はおそらく正しい道を来たんだ、と。何かに導かれたにせよ、間違えはしなかったんだ、と。
普段は舞台袖の倉庫に収納されているピアノが、なぜか舞台上に居る。蓋も開いている。
「なんでだろう…?誰か片付け忘れたのかしら?」アスカが呟く。
シンジは黙って真っ直ぐにそのピアノに向かっていく。「ちょ、ちょっとシンジ、」
アスカがシンジの後を追いかける。
「勝手に触ったら怒られるわよ」
だがシンジは無言のまま、舞台に上がるとピアノの前に立つ。
「どうしたのシンジ?」今日の出来事があるから、アスカは不安でたまらない。
「…なんか、このピアノが僕を呼んでる気がしたんだ」シンジがピアノに優しく触れる。
とても古いピアノで、調律も出来ているのか分からない。普段は舞台袖の奥の倉庫の中で埃をかぶっていて、
年に数回も弾かれる機会がない、そんな半ば骨董品と化したピアノ。
シンジは椅子に腰掛ける。そして、曲を弾き出す。
穏やかで、静かで、美しいメロディ。
「この曲…何?」「バッハのカンタータ147番のコラールだよ、主よ、人の望みの喜びよ、って言われてる曲」
「それって…」「そう、音楽鑑賞教室の最後にやったはずの曲だよ。僕たち、聞けなかったからね…」
アスカがビクッとする。「多分、大丈夫だと思うよ」シンジは、そんなアスカの気持ちを理解して、言う。
「でも具合悪くなるようなら言って。すぐに止めるから」
「…どうして大丈夫だと思うの?」アスカが訊ねる。
「どうしてかわかんないけど…このピアノがこの曲を弾いてくれ、って言ってるような気がしたんだ」
シンジはコラール部分を口ずさみながら、ゆっくりとしたテンポで弾いていく。
Jesus bleibet meine Freude , Meines Herzens Trost und Saft
Jesus wehret allem Leide , Er ist meines Lebens Kraft
Meiner Augen Lust und Sonne , Meiner Seele Schatz und Wonne
Darum lass ich Jesum nicht , Aus dem Herzen und Gesicht.
アスカは歌詞の意味を噛みしめながら、シンジの隣に立って、曲を聴いている。
時間にして僅かに4分ほどではあったが、曲が終わった時、アスカは自分が泣いていたことを知る。
シンジはじっと自分の両手を見ている。両手のひらにあった黒い痣が、消えている。
シンジは感じる。自分はおそらく正しい道を来たんだ、と。何かに導かれたにせよ、間違えはしなかったんだ、と。
796: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/04(月) 01:20:46.30 ID:???
>>795
「ひょっとしてひょっとすると、あたしたち本当に前世も一緒にいたんじゃないかしら…」
体育館を出て、寮への道を歩きながら、アスカが呟く。
「うん…僕も同じことを考えていたよ」シンジが答える。
「きっと、アスカの見ていた夢がキーなんだ、」「うん」
しばらく無言のまま、2人は歩いている。
「…すごく、怖かったわ…」寮が見えてくるころ、アスカがぽつりと言う。
「…でも、シンジが助けに来てくれた。夢の中でも、現実でも、シンジはあたしを助けてくれる。」
「…もちろんだよ、夢の中でも現実でも…、例え前世でも来世でも、僕はアスカを全力で守るから」
「うん…ありがとうシンジ。あたしも、シンジのこと、全力で守るから//」
「うん」門の前まで来て、シンジもアスカもまるで示し合わせたように立ち止まる。
「アスカ、」シンジがアスカの目を見て言う。
「僕たちは、そばにいることで、一緒にいることで、離れないことで、お互いを守っていこう。
支え合って、手を取り合って、僕たちの道を一歩一歩、歩んでいこうよ」
「うん、」アスカがシンジに抱きつく。「きっとあたしたちは、昔からそう決まっていたのよ」
2人の抱擁とキスは、静かに、監視カメラのメモリーに記録されていく…。
その後数日間、2人は冬月寮長から生暖かい視線を送られるのだが、2人ともその理由は分からないまま。
「ひょっとしてひょっとすると、あたしたち本当に前世も一緒にいたんじゃないかしら…」
体育館を出て、寮への道を歩きながら、アスカが呟く。
「うん…僕も同じことを考えていたよ」シンジが答える。
「きっと、アスカの見ていた夢がキーなんだ、」「うん」
しばらく無言のまま、2人は歩いている。
「…すごく、怖かったわ…」寮が見えてくるころ、アスカがぽつりと言う。
「…でも、シンジが助けに来てくれた。夢の中でも、現実でも、シンジはあたしを助けてくれる。」
「…もちろんだよ、夢の中でも現実でも…、例え前世でも来世でも、僕はアスカを全力で守るから」
「うん…ありがとうシンジ。あたしも、シンジのこと、全力で守るから//」
「うん」門の前まで来て、シンジもアスカもまるで示し合わせたように立ち止まる。
「アスカ、」シンジがアスカの目を見て言う。
「僕たちは、そばにいることで、一緒にいることで、離れないことで、お互いを守っていこう。
支え合って、手を取り合って、僕たちの道を一歩一歩、歩んでいこうよ」
「うん、」アスカがシンジに抱きつく。「きっとあたしたちは、昔からそう決まっていたのよ」
2人の抱擁とキスは、静かに、監視カメラのメモリーに記録されていく…。
その後数日間、2人は冬月寮長から生暖かい視線を送られるのだが、2人ともその理由は分からないまま。
828: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/14(木) 23:40:49.82 ID:???
>>827
あれは、一体なんだったんだろう?
音楽鑑賞教室が終わってから2週間、時々シンジはぼんやりと考える。
あの日、バッハのアリアが終わったあたりから、シンジには記憶がない。
気がついたら医務室で横になっていた。
アスカも同様だ。アスカはアリアが始まってからの記憶がない。
そしてシンジと同じように、気がついたら医務室のベッドの上。
シンジの手のひらの痣とアスカの真っ赤な左目。
両方ともすぐに消え、ミサトや他の人の不安を煽るようなことはなかったけれど、
シンジはあの痣とあのアスカの目を忘れる事が出来ない。
そして体育館のピアノも。
翌日学校に行き、すぐにシンジは体育館に出向いた。ピアノが気になったからだ。
ある意味予想していた事だが、舞台の上にピアノはなく、奥の倉庫のこれまた一番奥で、
黄色いシミと埃だらけの布に覆われて、ピアノは佇んでいた。動かされた形跡すらない。
アスカ以外、誰もこのことを知らない。ミサトや、ましてやクラスメイト達も。
クラスでもしばらくの間は彼らを心配する声や、その原因や謎についての話題でざわついていたが、
それから何の変化もない、またいつもの日常が戻ってくると、
そんな話題すぐに忘れ去られたかのように大人しくなった。
シンジとアスカも2人きりの時に少し話題にしてみたりもしたが、謎は謎のまま、ただ日々が過ぎていった。
そんな時に突破口というものは現れる。
あれは、一体なんだったんだろう?
音楽鑑賞教室が終わってから2週間、時々シンジはぼんやりと考える。
あの日、バッハのアリアが終わったあたりから、シンジには記憶がない。
気がついたら医務室で横になっていた。
アスカも同様だ。アスカはアリアが始まってからの記憶がない。
そしてシンジと同じように、気がついたら医務室のベッドの上。
シンジの手のひらの痣とアスカの真っ赤な左目。
両方ともすぐに消え、ミサトや他の人の不安を煽るようなことはなかったけれど、
シンジはあの痣とあのアスカの目を忘れる事が出来ない。
そして体育館のピアノも。
翌日学校に行き、すぐにシンジは体育館に出向いた。ピアノが気になったからだ。
ある意味予想していた事だが、舞台の上にピアノはなく、奥の倉庫のこれまた一番奥で、
黄色いシミと埃だらけの布に覆われて、ピアノは佇んでいた。動かされた形跡すらない。
アスカ以外、誰もこのことを知らない。ミサトや、ましてやクラスメイト達も。
クラスでもしばらくの間は彼らを心配する声や、その原因や謎についての話題でざわついていたが、
それから何の変化もない、またいつもの日常が戻ってくると、
そんな話題すぐに忘れ去られたかのように大人しくなった。
シンジとアスカも2人きりの時に少し話題にしてみたりもしたが、謎は謎のまま、ただ日々が過ぎていった。
そんな時に突破口というものは現れる。
829: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/14(木) 23:41:45.67 ID:???
>>828
金曜の夕食後、シンジとアスカは翌日見に行こうとしている映画の時間をネットで検索していた。
ランチの前にするか後にするかで一通り揉めた後、いつも通りシンジが折れ、ランチの後で近場の映画館を探す。
「うーん…WALD9が一番時間的にはいいのかな…」「えー新宿遠い~」
「電車で1本だし、そんなに遠くはないと思うけどな…ってなんだこれ?」
シンジがマウスを動かす手を止めて、画面を凝視する。
検索結果の表示画面で、何故か一番上に来ていたのが「夢占いの館 ドル・グルドゥア」というもの。
「…トールキンだ」「なにそれ?」「指輪物語、ミドルアースだよ、知らない?」「知らない」
「えーと…まあいいや話が長くなるから」脱線しかかるのをシンジが止めて、話を元に戻す。
「何よこれ?夢占い…ふむふむ…あなたの見ていた夢は、あなたの過去を、未来を見せてくれます…
って、これ…」
既にシンジの話を聞かずにホームページを熱心に読んでいるアスカ。
「この前の?占ってもらうの?」シンジがアスカに言う。
「なんか面白そうじゃない?ひょっとしたらヒントくらいは見つかるかもしれないわ」
アスカの目の輝きを見て、週末の予定は変更だな…、とシンジは悟った。
「で、そのネクロマンサーの住処はどこにあるの?」
金曜の夕食後、シンジとアスカは翌日見に行こうとしている映画の時間をネットで検索していた。
ランチの前にするか後にするかで一通り揉めた後、いつも通りシンジが折れ、ランチの後で近場の映画館を探す。
「うーん…WALD9が一番時間的にはいいのかな…」「えー新宿遠い~」
「電車で1本だし、そんなに遠くはないと思うけどな…ってなんだこれ?」
シンジがマウスを動かす手を止めて、画面を凝視する。
検索結果の表示画面で、何故か一番上に来ていたのが「夢占いの館 ドル・グルドゥア」というもの。
「…トールキンだ」「なにそれ?」「指輪物語、ミドルアースだよ、知らない?」「知らない」
「えーと…まあいいや話が長くなるから」脱線しかかるのをシンジが止めて、話を元に戻す。
「何よこれ?夢占い…ふむふむ…あなたの見ていた夢は、あなたの過去を、未来を見せてくれます…
って、これ…」
既にシンジの話を聞かずにホームページを熱心に読んでいるアスカ。
「この前の?占ってもらうの?」シンジがアスカに言う。
「なんか面白そうじゃない?ひょっとしたらヒントくらいは見つかるかもしれないわ」
アスカの目の輝きを見て、週末の予定は変更だな…、とシンジは悟った。
「で、そのネクロマンサーの住処はどこにあるの?」
830: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/14(木) 23:42:44.56 ID:???
>>829
翌日、電車で1時間半かけて、シンジとアスカは知らない街に辿り着いた。
とは言っても駅前はかなり栄えていて、デパートなんかもある。
「ねえねえ、可愛いお店がいっぱいあるわよ、帰りに寄っていきましょうよ」
シンジの腕を引っ張りながらアスカが楽しそうに言う。
「そうだね、」そう言いながらシンジは地図とにらめっこだ。
「えーと…このアーケードを抜けて右…二つ目の信号を左に行って、3つ目のビルの地下のはず…」
商店街を抜け、閑散としてきた通りを進んでみると古い尖塔のようなビルがあり、
その階段入り口に確かに「夢占いの館 Dol Guldur」という小さい看板が掲げられている。
「ここだ」「そうね」「…なんだか怪しい雰囲気満点だよ」シンジが怖じ気づく。
「なによ、占いなんてみんなこんなもんよ。胡散臭いとか怪しい雰囲気とか、そんなの占いの枕詞みたいなもんよ」
アスカは意に介さず、木製のドアを開けた。
翌日、電車で1時間半かけて、シンジとアスカは知らない街に辿り着いた。
とは言っても駅前はかなり栄えていて、デパートなんかもある。
「ねえねえ、可愛いお店がいっぱいあるわよ、帰りに寄っていきましょうよ」
シンジの腕を引っ張りながらアスカが楽しそうに言う。
「そうだね、」そう言いながらシンジは地図とにらめっこだ。
「えーと…このアーケードを抜けて右…二つ目の信号を左に行って、3つ目のビルの地下のはず…」
商店街を抜け、閑散としてきた通りを進んでみると古い尖塔のようなビルがあり、
その階段入り口に確かに「夢占いの館 Dol Guldur」という小さい看板が掲げられている。
「ここだ」「そうね」「…なんだか怪しい雰囲気満点だよ」シンジが怖じ気づく。
「なによ、占いなんてみんなこんなもんよ。胡散臭いとか怪しい雰囲気とか、そんなの占いの枕詞みたいなもんよ」
アスカは意に介さず、木製のドアを開けた。
831: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/14(木) 23:44:56.14 ID:???
>>830
ギギギギギ…と派手に軋みながらもドアが閉じる。
ドアが閉まる瞬間、バタァン、と不思議なほど響いた音がする。
薄暗い。いや、殆ど真っ暗で何も見えない。
「…やってないんじゃない?」シンジが不安そうにアスカに言う。
「うーん…ネット見た限りではやってるはずなんだけど…」アスカはさすがに不安そうだ。
「…ようこそ、君たちが来るのを待っていたよ」ビクゥゥゥッ
突然の声。小さな声だったのにも関わらず、思わずシンジに抱きつくアスカ。
「…あの、すいません、暗くて何も見えないんですけど…」シンジが暗闇に向かって恐る恐る声をかける。
「目が慣れれば大丈夫、ゆっくりこちらへどうぞ」
最初は目を閉じていても開いていても違いが分からないくらいの暗闇だったのが、
しばらくするとぼんやりとだが室内の様子が分かるようになってくる。
右手には木製のボードだろうか、壁のようなものがあり、声はその壁が途切れるあたりの空間から聞こえてくる。
「アスカ、行こう」「うん」
2人はゆっくりと進み出す。
2,3歩前に進むと、ぼんやりとだがものの形が見えてくる。
その壁の途切れる向こう側、誰かがテーブルの向こうに座っている。
手元にぼうっと光るランプのようなものが置いてある。心なしか、彼自身が纏っているマントも
輪郭が薄く光っているかのように感じる。
「ようこそ、夢占いの館、Dol Guldurへ。私がこの世界の案内人にして管理者、仮の名をタブリスといいます、」
落ち着いた男の声。しかし若くもあり年老いてもいるような、不思議なトーンの声。
彼は続ける。
「今日君たちに会ったのは、きっと運命のお導きです、何か心配事や相談事があるようだね、
どうか気楽に僕に話してご覧」
シンジが何か訊こうと言いかけるのを彼は左手を立てて押しとどめる。
「僕は冥王の使いでも死人占い師でもないよ、安心して、」
その左手中指には指輪が輝いている。しかしその奥にある表情は、深く深く被ったフードのせいで見えない。
ギギギギギ…と派手に軋みながらもドアが閉じる。
ドアが閉まる瞬間、バタァン、と不思議なほど響いた音がする。
薄暗い。いや、殆ど真っ暗で何も見えない。
「…やってないんじゃない?」シンジが不安そうにアスカに言う。
「うーん…ネット見た限りではやってるはずなんだけど…」アスカはさすがに不安そうだ。
「…ようこそ、君たちが来るのを待っていたよ」ビクゥゥゥッ
突然の声。小さな声だったのにも関わらず、思わずシンジに抱きつくアスカ。
「…あの、すいません、暗くて何も見えないんですけど…」シンジが暗闇に向かって恐る恐る声をかける。
「目が慣れれば大丈夫、ゆっくりこちらへどうぞ」
最初は目を閉じていても開いていても違いが分からないくらいの暗闇だったのが、
しばらくするとぼんやりとだが室内の様子が分かるようになってくる。
右手には木製のボードだろうか、壁のようなものがあり、声はその壁が途切れるあたりの空間から聞こえてくる。
「アスカ、行こう」「うん」
2人はゆっくりと進み出す。
2,3歩前に進むと、ぼんやりとだがものの形が見えてくる。
その壁の途切れる向こう側、誰かがテーブルの向こうに座っている。
手元にぼうっと光るランプのようなものが置いてある。心なしか、彼自身が纏っているマントも
輪郭が薄く光っているかのように感じる。
「ようこそ、夢占いの館、Dol Guldurへ。私がこの世界の案内人にして管理者、仮の名をタブリスといいます、」
落ち着いた男の声。しかし若くもあり年老いてもいるような、不思議なトーンの声。
彼は続ける。
「今日君たちに会ったのは、きっと運命のお導きです、何か心配事や相談事があるようだね、
どうか気楽に僕に話してご覧」
シンジが何か訊こうと言いかけるのを彼は左手を立てて押しとどめる。
「僕は冥王の使いでも死人占い師でもないよ、安心して、」
その左手中指には指輪が輝いている。しかしその奥にある表情は、深く深く被ったフードのせいで見えない。
832: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/14(木) 23:46:22.15 ID:???
>>831
シンジとタブリスの会話を聞いていたアスカがふふん、と鼻を鳴らして彼に話しかける。
「そうね、ここは占いの館なんでしょ?」「そうですよ、」「じゃあまず、あたしたちの相性を占って欲しいわ。
あたしたちがずっと仲良く一緒にやっていけるかどうか、教えてくれない?」
アスカの要望に対して、何をするでもなく、占い師は即答する。
「喧嘩は多い。でもそれはお互いをより深く理解するため。君たち以上に強く濃く結びついている
2人はいない。君たちは離ればなれにならない限り、運命づけられたかのような数奇な、
それでいて穏やかな人生を送れるはず…」
暗闇で表情までは分からないが、アスカが嬉しそうにしているのが分かる。手を握る力が
ぎゅっと強くなる。
「それより、君たちがほんとうに占って欲しいことは、他にあるんだろう?」
アスカがその言葉にピクッと反応する。その緊張した気配が占い師に伝わる。
「僕は、本当に聞きたい事がある人の前にしか、現れない。さあ、お嬢さん、」
すっと、右手を出して、アスカに話を促す。
「実は…夢を、毎日のように同じ夢を見ていたの…」アスカが話し出す。アスカが良く見る夢のことを。
先日の音楽鑑賞教室のことを。そこで起きたこと、自分たちが経験したこと、ひとつひとつ、
ゆっくりと話す。
占い師は、黙って聞いている。時々本当に聞いているのか不安になるアスカとシンジだが、
そのたびに彼は手のひらを差し出して、話を続けるようにと促す。
「…覚えているのはそこまでなのかな?」
短くはない話が終わると、タブリスはそう言う。「え…、ええ」アスカが言う。
「…そうか…」そう言うとまた黙って考え込む占い師。
手相とかタロットとか、そういうものを想像していたアスカは、別の意味でも不安になってくる。
「シンジ、」シンジに話しかけようとした瞬間に、占い師が話し出す。
「非常に興味深いね…。非常に興味深いし、それでいて厳しい夢でもある、」
シンジとアスカが居住まいを正す。背筋が自然と伸びる。
「お嬢さん、そしておそらく僕の推測が正しければ、少年よ、君も見ているはずなんだけど…、
この夢の正体を、知りたいかい?」
シンジとタブリスの会話を聞いていたアスカがふふん、と鼻を鳴らして彼に話しかける。
「そうね、ここは占いの館なんでしょ?」「そうですよ、」「じゃあまず、あたしたちの相性を占って欲しいわ。
あたしたちがずっと仲良く一緒にやっていけるかどうか、教えてくれない?」
アスカの要望に対して、何をするでもなく、占い師は即答する。
「喧嘩は多い。でもそれはお互いをより深く理解するため。君たち以上に強く濃く結びついている
2人はいない。君たちは離ればなれにならない限り、運命づけられたかのような数奇な、
それでいて穏やかな人生を送れるはず…」
暗闇で表情までは分からないが、アスカが嬉しそうにしているのが分かる。手を握る力が
ぎゅっと強くなる。
「それより、君たちがほんとうに占って欲しいことは、他にあるんだろう?」
アスカがその言葉にピクッと反応する。その緊張した気配が占い師に伝わる。
「僕は、本当に聞きたい事がある人の前にしか、現れない。さあ、お嬢さん、」
すっと、右手を出して、アスカに話を促す。
「実は…夢を、毎日のように同じ夢を見ていたの…」アスカが話し出す。アスカが良く見る夢のことを。
先日の音楽鑑賞教室のことを。そこで起きたこと、自分たちが経験したこと、ひとつひとつ、
ゆっくりと話す。
占い師は、黙って聞いている。時々本当に聞いているのか不安になるアスカとシンジだが、
そのたびに彼は手のひらを差し出して、話を続けるようにと促す。
「…覚えているのはそこまでなのかな?」
短くはない話が終わると、タブリスはそう言う。「え…、ええ」アスカが言う。
「…そうか…」そう言うとまた黙って考え込む占い師。
手相とかタロットとか、そういうものを想像していたアスカは、別の意味でも不安になってくる。
「シンジ、」シンジに話しかけようとした瞬間に、占い師が話し出す。
「非常に興味深いね…。非常に興味深いし、それでいて厳しい夢でもある、」
シンジとアスカが居住まいを正す。背筋が自然と伸びる。
「お嬢さん、そしておそらく僕の推測が正しければ、少年よ、君も見ているはずなんだけど…、
この夢の正体を、知りたいかい?」
833: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/14(木) 23:46:52.79 ID:???
>>832
最後の「知りたいかい?」の言葉が、まるで部屋の中に浮かんでいるような、そんな残響感がある中、
シンジとアスカは同時に答える。
「知りたいです(わ)」
「それは、ひょっとすると、君たちにとって、かなりつらく苦しいものになるかもしれないけれど、
それでも知りたいかい?」
穏やかでいて、凄味のある言葉が、シンジのアスカの両肩にのしかかる。それでも2人は答える。
「知りたいです(わ)」
「そう…、よく分かったよ、」
シンジには、占い師が頷いて微笑んだように感じた。
タブリスが立ち上がる。すらっとしたスタイルのようだが、マントが全身を覆い尽くしていて、よく分からない。
「特別に、君たちに教えて上げよう。おいで、」
そういうと彼は2人を部屋の裏に案内する。
観葉植物で出来たアーチのようなものをくぐり、案内された部屋。さきほどの部屋よりは幾分明るい気がする。
「シンジ、見て、」アスカがシンジの手を引っ張る。
「うわっ、星空だ…」
天井が何故か満天の星空となって、その灯りがうっすらと降り注いでいる。
そしてその部屋の中央には石碑があり、その石碑の上にはお盆のようなものが乗っている。
タブリスが水差しから水をそのお盆に注ぐ。銀で出来たお盆に水が溜まると、その水面が落ち着くまで彼は待つ。
「さあ、」数分後、占い師は、指輪が光る方の手を差し出して、2人をその石碑のところに導く。
「これを覗いてご覧。これはね、君たちの過去、現在、未来を映し出す鏡だ。
どれが過去でどれが未来なのか、それは君たちにしか分からない。でも、君たちには分かるはずだ。
ここで見たものを僕に報告はしなくていいよ。なぜなら僕は知っているからね…」
(知っている?何を?何故?) シンジの脳裏に疑問が去来するが、今はその時間ではない。
シンジとアスカは手を繋いだまま、石碑のすぐ横に立ち、その鏡を覗き込んだ。
最後の「知りたいかい?」の言葉が、まるで部屋の中に浮かんでいるような、そんな残響感がある中、
シンジとアスカは同時に答える。
「知りたいです(わ)」
「それは、ひょっとすると、君たちにとって、かなりつらく苦しいものになるかもしれないけれど、
それでも知りたいかい?」
穏やかでいて、凄味のある言葉が、シンジのアスカの両肩にのしかかる。それでも2人は答える。
「知りたいです(わ)」
「そう…、よく分かったよ、」
シンジには、占い師が頷いて微笑んだように感じた。
タブリスが立ち上がる。すらっとしたスタイルのようだが、マントが全身を覆い尽くしていて、よく分からない。
「特別に、君たちに教えて上げよう。おいで、」
そういうと彼は2人を部屋の裏に案内する。
観葉植物で出来たアーチのようなものをくぐり、案内された部屋。さきほどの部屋よりは幾分明るい気がする。
「シンジ、見て、」アスカがシンジの手を引っ張る。
「うわっ、星空だ…」
天井が何故か満天の星空となって、その灯りがうっすらと降り注いでいる。
そしてその部屋の中央には石碑があり、その石碑の上にはお盆のようなものが乗っている。
タブリスが水差しから水をそのお盆に注ぐ。銀で出来たお盆に水が溜まると、その水面が落ち着くまで彼は待つ。
「さあ、」数分後、占い師は、指輪が光る方の手を差し出して、2人をその石碑のところに導く。
「これを覗いてご覧。これはね、君たちの過去、現在、未来を映し出す鏡だ。
どれが過去でどれが未来なのか、それは君たちにしか分からない。でも、君たちには分かるはずだ。
ここで見たものを僕に報告はしなくていいよ。なぜなら僕は知っているからね…」
(知っている?何を?何故?) シンジの脳裏に疑問が去来するが、今はその時間ではない。
シンジとアスカは手を繋いだまま、石碑のすぐ横に立ち、その鏡を覗き込んだ。
836: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/16(土) 01:06:53.72 ID:???
>>833
最初は何も映らなかった。アスカとシンジが目を見合わす。
「これ、何も映らないじゃない」アスカがそう言った瞬間、シンジが「あっ!」と叫ぶ。
「え、どうしたのシンジ…ってあっ…」アスカもその鏡に視線を落とし、そのまま動かなくなる。
いや、動けなくなる。
その鏡に映っていたのは、赤い服を着たアスカと白と青の服を着たシンジ。
アスカの夢に酷似している。2人とも巨大なロボットのようなものに乗っている。
そして敵を倒す。ある時は単独で、ある時はコンビを組んで。
その戦いを通して2人の間に、嫌悪、信頼、愛憎、そんな言葉がちらつく。
鏡の向こうにいるアスカは、シンジを憎み嫌い軽蔑し、それでもシンジへの想いを断ち切れない。
そのジレンマと壊れていく自分を、半ば呆然としながら見つめるアスカ。
でも、膝が震えている。失禁しそうなくらいに震えている。全身の血液が凍り付いたかのようで、
ただ、握りしめているシンジの手が温かい。それがあるから生きているんだって思える。
ふと、場面が変わる。そこに現れたのは学院の面々。
「ミサトがいる…!」「赤木先生も…委員長やトウジも!」
シンジとアスカが口々に叫ぶ。
「加持先生も…」アスカが口ごもる。これは…何?鏡の中の自分は加持先生に恋をしている。
執拗に迫り、彼を困らせる。でもここから見ると分かる。
それは憧れとプライドが作り出した幻想に似たものであることを。
しかし、やがて加持の姿は消え、そこにシンジがスライドしてくるかのように現れてくる。
倒れるアスカ。心配するシンジ。なんであんたは気がついてくれないの?
あたしが、こんなにもあんたのことを求めているのに!鏡の向こう側でアスカが叫んでいる。
声にならない声、でもそれは、こちら側のアスカにははっきりと聞こえる。
そこにまた現れる敵。敵敵敵。
また胸が苦しくなる。息が苦しくなる。右手でシンジの手をぎゅっと握りしめて、
左手で自分の胸元をぎゅっと握りしめて、アスカは鏡を見る。
そして、とうとうそれは現れる。
白い巨人。顔のない巨人。
「エヴァシリーズ…完成していたの?」
思わず声に出る。「え?今の言葉は私が言ったの?」
ゾクゾクっとした悪寒が背筋を走る。
最初は何も映らなかった。アスカとシンジが目を見合わす。
「これ、何も映らないじゃない」アスカがそう言った瞬間、シンジが「あっ!」と叫ぶ。
「え、どうしたのシンジ…ってあっ…」アスカもその鏡に視線を落とし、そのまま動かなくなる。
いや、動けなくなる。
その鏡に映っていたのは、赤い服を着たアスカと白と青の服を着たシンジ。
アスカの夢に酷似している。2人とも巨大なロボットのようなものに乗っている。
そして敵を倒す。ある時は単独で、ある時はコンビを組んで。
その戦いを通して2人の間に、嫌悪、信頼、愛憎、そんな言葉がちらつく。
鏡の向こうにいるアスカは、シンジを憎み嫌い軽蔑し、それでもシンジへの想いを断ち切れない。
そのジレンマと壊れていく自分を、半ば呆然としながら見つめるアスカ。
でも、膝が震えている。失禁しそうなくらいに震えている。全身の血液が凍り付いたかのようで、
ただ、握りしめているシンジの手が温かい。それがあるから生きているんだって思える。
ふと、場面が変わる。そこに現れたのは学院の面々。
「ミサトがいる…!」「赤木先生も…委員長やトウジも!」
シンジとアスカが口々に叫ぶ。
「加持先生も…」アスカが口ごもる。これは…何?鏡の中の自分は加持先生に恋をしている。
執拗に迫り、彼を困らせる。でもここから見ると分かる。
それは憧れとプライドが作り出した幻想に似たものであることを。
しかし、やがて加持の姿は消え、そこにシンジがスライドしてくるかのように現れてくる。
倒れるアスカ。心配するシンジ。なんであんたは気がついてくれないの?
あたしが、こんなにもあんたのことを求めているのに!鏡の向こう側でアスカが叫んでいる。
声にならない声、でもそれは、こちら側のアスカにははっきりと聞こえる。
そこにまた現れる敵。敵敵敵。
また胸が苦しくなる。息が苦しくなる。右手でシンジの手をぎゅっと握りしめて、
左手で自分の胸元をぎゅっと握りしめて、アスカは鏡を見る。
そして、とうとうそれは現れる。
白い巨人。顔のない巨人。
「エヴァシリーズ…完成していたの?」
思わず声に出る。「え?今の言葉は私が言ったの?」
ゾクゾクっとした悪寒が背筋を走る。
837: 名無しが氏んでも代わりはいるもの 2013/11/16(土) 01:07:51.13 ID:???
>>836
やがて、アスカはズタズタにされる。ボロボロに切り苛まれる。引きちぎられ、喰われ、そして死ぬ。
その痛みが、ここにいるアスカにも伝わってくる。思わずよろめく。が、倒れない。足を踏ん張って、耐える。
倒れてなるものか。シンジと一緒に戦うんだ。あたしが生まれてからずっと抱えてきた謎を、
真実を見つけ出すまでは、目を背けたりするものか。
鏡の向こう側のアスカに伝えたい。大丈夫だから、シンジはあんたをきっと助けにくるから、と。
と、突然水面が揺らぐ。つられてこちらも目眩がして足下がふらつく。シンジも同じようによろけ、
お互いに肩を抱くようにして支え合う。2人とも肩で息をしている。
シンジも、戦っているんだ。アスカはそう感じる。
揺らいでいた水面が元に戻る。画面は、ちょっと前に巻き戻っている。
「あれ?」
そこにいたのはシンジ。紫色のロボットに乗って、初号機に乗って、アスカを助けに来たシンジ。
「ごめんアスカ、遅くなって」懐かしい声。愛おしい声。
シンジが、戦う。アスカを守るために。
「ああ、あたしの王子様」心の中で思っていただけのはずなのに、言葉にしていることに、アスカは気づかない。
だが、倒しても倒しても立ち上がってくる敵に、シンジも疲れる。絶望感が彼を支配する。
「姫を助けろ、男だろッ!」
「え…コネメガネ?」「真希波さん?」
一瞬、何かが混線したかのように、真希波マリの声が混じる。
ピンク色の機体が見えたような気がしたが、次にシンジとアスカが見たものは、
白い巨人に上空まで引き揚げられていくシンジの機体の姿だった。
やがて、サードインパクトが始まる。
やがて、アスカはズタズタにされる。ボロボロに切り苛まれる。引きちぎられ、喰われ、そして死ぬ。
その痛みが、ここにいるアスカにも伝わってくる。思わずよろめく。が、倒れない。足を踏ん張って、耐える。
倒れてなるものか。シンジと一緒に戦うんだ。あたしが生まれてからずっと抱えてきた謎を、
真実を見つけ出すまでは、目を背けたりするものか。
鏡の向こう側のアスカに伝えたい。大丈夫だから、シンジはあんたをきっと助けにくるから、と。
と、突然水面が揺らぐ。つられてこちらも目眩がして足下がふらつく。シンジも同じようによろけ、
お互いに肩を抱くようにして支え合う。2人とも肩で息をしている。
シンジも、戦っているんだ。アスカはそう感じる。
揺らいでいた水面が元に戻る。画面は、ちょっと前に巻き戻っている。
「あれ?」
そこにいたのはシンジ。紫色のロボットに乗って、初号機に乗って、アスカを助けに来たシンジ。
「ごめんアスカ、遅くなって」懐かしい声。愛おしい声。
シンジが、戦う。アスカを守るために。
「ああ、あたしの王子様」心の中で思っていただけのはずなのに、言葉にしていることに、アスカは気づかない。
だが、倒しても倒しても立ち上がってくる敵に、シンジも疲れる。絶望感が彼を支配する。
「姫を助けろ、男だろッ!」
「え…コネメガネ?」「真希波さん?」
一瞬、何かが混線したかのように、真希波マリの声が混じる。
ピンク色の機体が見えたような気がしたが、次にシンジとアスカが見たものは、
白い巨人に上空まで引き揚げられていくシンジの機体の姿だった。
やがて、サードインパクトが始まる。
【明城学院】シンジとアスカの学生生活【LAS】No.3
元スレ:http://engawa.5ch.net/test/read.cgi/eva/1370587184/
コメント
エヴァがループするなら、貞本版のエンドが一番しっくりきていたから、その続きであるこれが読めて嬉しいです。
管理人様、作者様ありがとうございます。
楽しみにしています。
それと、本編をしっかりと踏襲した作品で本当に脱帽させられます…
最後まで楽しませて貰います!
何かもう心臓発作で死にそう
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